近藤さんの救命奮闘記
ー夫・救急隊・病院の連携プレーで妻助かる!ー
近藤さん一家の紹介
夫34才,妻32才,長男小学2年生,次男幼稚園年長組
なお,妻は以前から不整脈が指摘され,市立病院に通院中。
時々,胸が苦しくなることがある。
とある日曜日の朝。その日は近藤さん一家が、待ちに待ったキャンプに出かける日。子ども達はいつもより早起きをしてはしゃいでいる。奥さんは台所で身支度にとりかかろうとしていた。すると突然、うなり声を発して倒れた。居間で新聞を読んでいた旦那さんが異変に気づき、奥さんのもとへ駆け寄り呼びかけたが、何の反応もない。
「大変だ!救急車だ!」
旦那さんは,奥さんを助けるために119番に通報した。

指令課1
はい、119番です。
火災ですか,救急車ですか?
救急車をおねがいします。
住所はどちらですか?
秋田市鳥海町9-3、近藤です。
どなたが,どうしました?
家内が台所で急に倒れて,意識がないんです。
指令課2予備指令
かかりつけの病院はありますか?
32歳です。以前から不整脈で市立病院に通 院しています。
指令課2出動指令
口頭指導
近藤さん、救急車はもう出動をしていますから,私の話を落ち着いて聞いて下さい。まず、奥さんは呼吸をしていますか?
いやぁ、わかりません。
それでは,奥さんの呼吸を確認するために一端受話器をおいて、あご先を挙げて、空気の通り道を作って、奥さんの口と鼻にあなたの耳を近づけて,普段通りの息をしているか確認してください。

わかりました。---------------
息が感じとれません。呼吸してないようです!
呼吸がないとは、普段通りの呼吸をしていない場合と10秒以内に呼吸しているかどうか解らない場合が含まれます。また、変な呼吸例えば喘いでいるような呼吸は呼吸がないと判断します。
わかりました。それでは近藤さん、今から奥さんを助けるための方法をお教えしますので、あせらず冷静に行って下さい。私と一緒に奥さんを助けましょう。
はっ、はい--------やってみます。
まず,はじめにあなたの片方の手で奥さんのあごの先をつまんで、天井のほうへ上げて下さい。そして、もう一方の手で奥さんの鼻をつまみます。それが出来たら、あなたの口を奥さんの口につけて息を2回、胸が軽くふくらむ程度に吹き込んで下さい。

新しい心肺蘇生法では、口頭での指示する時は、胸骨圧迫のみでも良いことになっています。その場合は、胸の真ん中の固い骨の上を1分間に100回のリズムで、4~5cm沈む程度に押してくださいといった指導になります。
はい、わかりました。やってみます。------
やってみました。でも何の反応もありません。
わかりました。それでは次にあなたの両手を重ねて,奥さんの乳首と乳首の間、丁度胸の真ん中を、4〜5センチ沈む程度に30回押して下さい。その後はまた2回息を吹き込みます。胸骨圧迫30回と人工呼吸2回を救急車が着くまで、頑張って行って下さい。
胸骨圧迫のみの指導では、胸の真ん中の固い骨の上を1分間に100回のリズムで押し続けて下さいといった内容になります。

わかりました。やってみます。
現場到着。
秋田救急隊です。旦那さん!心肺蘇生法をやっててくれたんですね。後は救急隊に任せて下さい。奥さんを助けるために頑張ります。

ありがとうございます。お願いします。
意識なし、呼吸なし、脈なし。モニター装着、CPR開始!
隊長,心電図は心室細動です。

心室細動
了解。AED電源ON。電極パッド装着。自動解析。救急救命士はすぐに旦那さんに状況を説明し、電気ショックを。
了解。旦那さん、私は救急救命士の中島です。今、奥さんの心臓と呼吸が止まっている状態です。心臓は痙攣を起こしている状態ですので、これから行う処置は病院で行う処置と同じで、早ければ早いほど奥さんの助かる可能性が高くなります。旦那さん、今ここで医療行為(電気ショック)を行ってもいいですか?

わかりました。お願いします。
AEDは自動で充電、通電ボタンを押してくださいとの音声指示がAEDから流れてきた。
電気ショックを実施します。みんな奥さんから離れて!

電気ショック時は安全確認として、自分が離れている、酸素も外してある、みんな離れていることを確認して押します。タイミングとしては、1、2、3、ショックという感じですか。
実施!----。
心室細動の状態では、喘ぎ様の呼吸が早期に見られることがあります。これを決して呼吸があると判断しないようにしましょう。この状態は最も救命の可能性が高いですので、早い対応が大切です。
心停止になると、1分間に7%から10%づつ救命率が低下していきますので、より早い判断、連絡だけでも救命率はあがります。
隊長、心電図上で心臓が正常に近い状態で動きだしました。脈も触れます。

正常心電図
よし、それでは胸骨圧迫中断。血圧を測ってくれ。
わかりました。--------血圧150です。----あっ、隊長! 呼吸がでてきました。
了解。救急救命士は呼吸を確認してくれ。
了解。------- 呼吸1分間に6回です。でもまだ弱いので、補助呼吸を行います。
わかった。---- 旦那さん、たった今奥さんの心臓が動き、呼吸もでてきました。
ただ、まだ弱い呼吸なので引き続きマスクにて補助換気を行いながら病院へ向かいます。
わかりました。ありがとうございます。
隊員、すぐにストレッチャーをもってきて救急車へ収容だ。


先生、救急救命士の中島です。除細動1回で、心拍は再開しました。
血圧は触診で100、脈は80です。呼吸は4回と少ないので、補助呼吸で搬送します。3分で病院に到着しますので、よろしくお願いします。
わかりました。
病院到着
先生、現場で除細動を実施したところ心臓が動きました。また、呼吸ももどりましたが、弱いため補助呼吸を継続中です。
わかりました。ごくろうさま!
救急外来の外で
旦那さん、奥さんの心臓は戻って、呼吸もし始めました。これは、旦那さんの適切な早期通報、そして何よりも早期に心肺蘇生法を行ったから助かったのです。
奥さんを救ったのは、”近藤さん、あなた”です!!

妻があんな状態になったのは初めてだったので、かなり気が動転しましたが、119番通報した時に、指令課の方が落ち着かせてくれたおかげで、冷静に処置を行うことが出来ました。本当に感謝しています。
今、先生は奥さんの処置中で、後で、先生からお話があると思いますので、待っててください。旦那さんも頑張って下さい。
それでは,救急隊は帰ります。お大事にしてください。
ありがとうございました。
夫の見事な判断で救われた奥さん。夫〜救急隊〜病院と見事な連携プレーで奥さんの命を繋いだのは、なんといっても旦那さんです。
その後奥さんは約1カ月の入院生活を送った後、何の後遺症もなく、元気に病院を退院しました。
家庭で
おかあさん!おかえり!!よかったね!!!
おとうさんが、助けたんだよ、すごいねぇ!!
この奮闘記は実際にあった事例を元に作成しました。奥さんは元気に退院しましたが、不整脈の薬は今も服用しています。旦那さんはまたいつ起るかわからない奥さんの発作に備え、消防署で心肺蘇生法を習うことにしたそうです。
その話を聞き付けた近所の奥さん達も、自分の家族を救うために、心肺蘇生法を習うそうです。
いつ、どこで、だれが遭遇するかわからない心肺停止。あなたの家族や隣人を守るために、家族や近所の方と一緒に講習会に参加されては如何ですか。