成人の心肺蘇生法
成人の突然死の主な原因には、急性冠症候群(心筋梗塞)、脳卒中、窒息があります。まずはこれらの病気について勉強しましょう。正しい病気に対する認識を持ち、病気にかからないように予防したり、健康に留意したり、病気になっても異常に早く気づいたりすることは心肺蘇生法を行うよりも大切です。
急性冠症候群:
心臓の筋肉に酸素を送る動脈(冠動脈)が閉塞して、酸素を心筋に送れなくなったために、心筋が壊死し、痛みやその他の症状が現れます。この場合の症状は前胸部の締めつけられるような激痛や圧迫感です。その他の症状として、呼吸困難、吐き気、冷や汗、歯痛、肩への放散痛もあります。これらの症状が5分以上継続する様な場合は、119番通報するのがよいでしょう。
心筋梗塞は発症早期(1時間以内)の死亡率は高いですので、夜間でもすぐに通報するようにして下さい。特に、40歳以上の男性(女性は50歳以上)、糖尿病、高血圧、高コレステロール血症、狭心症の既往がある人では心筋梗塞の可能性が高いです。
また、心室細動と呼ばれる致死性不整脈が原因で、突然倒れられる方もいます。これは、ちょうど心臓がけいれんを起こしている状態です。この状態では、血液を心臓から十分に送り出すことはできないので、脳に酸素が運べなくなり、その結果、意識が突然なくなります。中には、正常な呼吸ではありませんが、喘いでいるような呼吸をしている場合があります。このような患者さんは最も救命の可能性の高いですので、慌てず直ぐに119番通報するようにして下さい。
喘いでいるような呼吸は正常の呼吸ではありませんので、指令課に呼吸はありますか?と聞かれたら、呼吸はありませんと答えて下さい。そうすれば、救急隊は除細動等の必要な資機材を持って駆けつけてくれるはずです。また、通報後は救急隊が側に来るまで必要な心肺蘇生法を行うようにしましょう。
脳卒中
脳卒中には、脳の血管が血栓や塞栓によって閉塞して、脳の一部が酸素不足になった脳梗塞、脳の血管からの脳出血、脳動脈瘤の破裂によるくも膜下出血があります。この中で、最も怖いのがくも膜下出血です。
くも膜下出血の特徴は、突然頭が割れるような激しい頭痛です。このような症状が見られたら、直ぐに119番通報して下さい。急変だということで、家族みんなが慌てたりして、患者さんも興奮してしまいますと、血圧が上がり、再度破裂して、状態をさらに悪化させてしまう場合もありますので、まず患者さんを落ち着かせ、救急車が来るまで状態を観察して下さい。決して興奮させないように心がけましょ
う。嘔吐する場合もありますので、窒息には注意して下さい。
脳卒中を疑った場合は、以下の検査をしてみるのも良いです。
これらの症状が見られたら、脳卒中の可能性が高いです。直ぐに119番通報しましょう。
その他の症状としては、意識状態がおかしい(名前が解らない、誕生日を間違える、傾眠、昏睡状態)、突然の四肢や顔の片側の脱力感やマヒ、不明瞭な会話、目のかすみ、失神、めまい、吐き気、嘔吐、複視等が見られます。脳の細胞が酸素不足のため、一端細胞が障害を受けてしまいますと、回復できません。そのため、できるだけ早く、血栓溶解療法等の治療を行い、血管の閉塞を改善することが大切です。朝まで待ってから病院では遅すぎます。
窒息
窒息はもち、ご飯等により気道が閉塞され、呼吸ができなくなった状態です。気道の閉塞状態により、完全閉塞と不完全閉塞があります。不完全閉塞では、声が出ますし、咳をすることもできますが、完全閉塞では、発声、咳等を行うことができません。しかし、窒息初期であれば、まだ体に酸素が残っていますので、呼吸運動は見られますし、何らかの反応もあります。しかし、呼吸があるからといって安心しないで下さい。その呼吸は正常ではありません。
正常な呼吸は胸とお腹が一緒に動きますが(息を吸えばどちらも上昇し、吐けば、下がる)、シーソ呼吸では吸っている時、胸は下がり、お腹は上がり、吐いている時は胸が上がり、お腹が下がるといった胸とお腹の動きが逆になります。これは気道が完全に閉塞しているために、横隔膜が息を吸おうとして下がっても胸に酸素が入ってきませんので、胸が広がった分、胸の中の圧が陰圧となり、大気圧の影響を受け、胸が下がります。この呼吸は一見呼吸しているように見えますが、呼吸をしているわけではありません。このシーソ呼吸が見られると、完全気道閉塞だと判断して、直ぐに、異物を取り出す方法を実行して下さい。
1. 周囲の安全を確認します。
救助者の安全第一です。
2. 意識の確認

大声で声を掛けたり、肩を叩いたりして、意識があるか確認します。
3. 119番通報
一人の場合は、119番通報します。複数いる場合は、大声で人を呼び、119番通報してもらいます。

写真はうつ伏せの状態で発見された場合です。この場合は、写真(右)のように頭と体幹を一体にしてひっくり返します。
3. 気道確保(頭部後屈あご先挙上法)
額に手を当て、肘は床につけます。こうしますと、目線が下がりますので、胸の動きも観察しやすいです。

額に手を置いたまま、反対側の手の指2本をあごの堅い骨の上に置き、顎を前方に持ち上げます。
4. 呼吸の確認

気道確保した状態、耳を近づけ、胸が上がるかを見て、息を吐き出す音を聞き、空気の流れを感じて、正常な呼吸があるか10秒以内に観察します。
はっきり解らない場合や喘ぐような呼吸が見られる場合は呼吸がないと判断して下さい。
注:突然、心臓が止まった場合、まだ体の中に酸素が残っていますので、正常ではありませんが、喘ぐような呼吸が見られる場合があります。この原因が心筋梗塞等の心疾患によるものであれば、救急救命士の行える除細動によって救命できる可能性が高いです。
5. 人工呼吸
呼吸がなければ、人工呼吸を行います。喘ぐような呼吸や不規則な呼吸、胸の上昇がはっきりしない呼吸が見られる場合も人工呼吸を行います。
呼吸がある場合は、気道確保した状態で救急隊が到着するまで観察します。
口対口人工呼吸

鼻をつまみ、口から息を吹き込む。吹き込み後は、鼻をつまんでいた指を離す。
人工呼吸は気道確保した状態で、2回、ゆっくり(2秒)吹き込みます。吹き込み
ながら、胸が上がるか目で確認して下さい。
以前よりも吹き込む量は少なくなりました。(体重1kgが当り、10ml見当です。体重50kgでは吹き込む量は 500mlになります)。
注:吹き込む量が多いと胃にも空気が入りますので、胃の内容物が逆流して、気
道内を流入する危険性もあります。そうならないように、吹き込む量が今回少なく
なりました。
感染等の問題で、人工呼吸を躊躇する場合は、心臓マッサージだけでも行うように
して下さい。また、指令課で口頭指導を行う場合も心臓マッサージだけを指導して
も構いません。
感染防止器具(フェイスシールド(左)、ポケットマスク(右))を車に載せて置くのも良いで
しょう。
| ポケットマスクの保持の仕方
左図はマスクを親指と人さし指でCの字にしてマスクを保持している。下顎角(えら)の所の前後に指がかかるようにする。 上右図は両親指でマスクを保持、他の指をえらの後ろに置き、下顎を引き上げる。 |
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| ポケットマスクの保持方法
正面で保持する方法と横で保持する方法がある。横で保持したほうが心マッサージ等を円滑に行える。 右手親指をマスクにおき、他4指であごを引き上げ、左手でマスク上方を上から漏れないように押さえる(写真左)。 参 アンビュバッグによる人工呼吸 |
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心臓マッサージのみを行う場合は、呼吸の確認を行い、なければ、循環のサインの確認を続けて行います。
6. 循環のサインの確認

人工呼吸を2回行った後、気道確保した状態で、正常な呼吸をしているか見て、聞いて、感じて判断し(左)、そのまま上半身を起し、咳をしているか、四肢は動くか等(右)を10秒以内に観察し、生きている証しを捜します。
7. 心臓マッサージ
循環のサインがあれば、人工呼吸を続けます。この場合は、5秒に1回人工呼吸を行います。循環のサインがない場合は、心停止と判断し、心臓マッサージを行います。

心臓マッサージの位置は胸骨の下半分の所です。ろっ骨の縁のそって、両方のろっ骨が交わる所(胸骨の下縁)まで指を持っていき、胸骨の下縁を決めます。こうすれば、間違って剣状突起(胸骨の下にある突起で、折れやすい)を押さないです。
乳首と乳首の間で、胸の真ん中を圧迫点にしても構いません。
また、以前の方法で位置を決めても構いません。

手先は伸ばし、圧迫点に手根部を置き、その上に対側の手を重ねます。肘は伸ばし、ちょうど2等辺三角形に両腕がなるように、また肩が手のまっすぐ上にあるようにして1分間に100回のリズムで4-5cm胸が沈むように押します。手は胸から離してはいけません(心臓マッサージの位置が変わってしまいます)。
人工呼吸(2回)と心臓マッサージ(15回)を救急隊があなたのそばに来るまで続けて下さい。

注:以前は一人法は人工呼吸2回、心臓マッサージ15回、二人法が人工呼吸1回、心臓マッサージ5回となっていましたが、今回からは一人法も二人法も人工呼吸2回、心臓マッサージ15回になりました。
心肺蘇生1分後に評価(循環のサインの確認)を行います。何らかの所見がなければ、評価はしない地域もあります。
| 二人法
一人法も二人法も人工呼吸:心マッサージは2:15になりました。以前は二人法が1:5でした。 |
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