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内分泌の病気

のうしんけいげか
神経下垂体性胚細胞腫
胚細胞腫って何?

胚細胞腫瘍は精巣や卵巣のような生殖器に発生する悪性腫瘍です。しかし、稀に頭蓋内にも発生することがあります。

胚細胞腫瘍は組織によりさらに胚腫(ジャーミノーマ)、奇形腫(成熟奇形腫と未分化奇形腫)、卵黄嚢腫瘍、絨毛癌、胎児性癌、混合性胚細胞腫瘍に分類され、それぞれの種類によって治療成績が異なります。

どうして、胚細胞腫は脳に出来るの?

脳内に発生する理由は、胎児期の神経・脳の発生過程で胚細胞が脳内に迷入すると言う説等がありますが、正確なところは解っていません。

脳のどこに出来るの? 神経下垂体性胚細胞腫とは?

脳では正中部に発生しやすく、特に松果体に最もできやすく57%程度で(図1)、次いで鞍上部(神経下垂体部~視床下部:図2)に18%程度、基底核に10%程度(図3)に出来ると言われています。

腫瘍発生時には70%が上記のうちで一か所に出来ることが多いのですが、30%は松果体と鞍上部等の二か所に多発することがあります。

上記の鞍上部に発生する腫瘍を特に神経下垂体性胚細胞腫と呼びます(図2)。

胚細胞腫になる頻度は?

頭蓋内胚細胞腫瘍は欧米に比し、日本をはじめとするアジア圏で発生しやすい特徴があります。実際、本邦では脳腫瘍全体の2.3%ですが、米国では0.4%と明らかに本邦に多い傾向にあります。

胚細胞腫になりやすい年齢は?

腫瘍が発症する年齢は10歳~20歳代に多く80%くらいと言われていますが、10歳未満でも7%に発生し、小児から30歳以下の若年成人で約9割を占めます。一方、40歳以上の高齢になると腫瘍の発生は1.3%と急激に減少します。

男女差はあるの?

男女差は、胚細胞腫全体では男児に5倍多い傾向にありますが、鞍上部の神経下垂体性では男女差はほぼ同等か、やや女児に多い傾向にあります。

神経下垂体性胚細胞腫の症状は?

神経下垂体性では、視床下部・下垂体の障害によるホルモン症状と神経の障害の2つが主な症状となります。

ホルモン症状で多いのは尿崩症(86%)、女性では無月経、小児では低身長です。

神経の障害では視神経障害による視力・視野障害(85%)や、動眼神経・外転神経などの障害による複視(24%)を呈しやすくなります。

胚細胞腫の診断は?

診断には腫瘍が作る腫瘍マーカーを測定する方法と画像検査があります。

腫瘍マーカーは、先に分類した胎児性癌では α―フェトプロテイン(AFP)が、絨毛癌ではhuman chorionic gonadotropin (HCG)が高くなり、奇形腫ではAFP,HCGが種々の程度で混在します。一方、胚腫ではAFPは上昇せず、HCGが軽度に上昇することがあります。

画像では図1-3のように造影MRIで造影され、胚腫ではほぼ均一に造影されますが、奇形腫や胎児性癌ではいろいろな所見が混在し、不均一な造影効果を示します。絨毛癌は腫瘍出血が起こりやすい特徴があります。

神経下垂体性胚細胞腫は、分類のなかで胚腫の頻度が高いため、下垂体・下垂体丙・視床下部に均一な造影を示すことが多い傾向にあります(図2)。

胚細胞腫の治療は?

先の腫瘍マーカーや画像で診断が確定しない場合は手術で腫瘍を採取し、診断をします。

基本的に胚細胞腫は放射線治療と抗がん剤治療の両方を必要とします。成熟した奇形腫では放射線や抗がん剤が効きにくい部分が含まれており、手術的に摘出しなければならない場合があります。

治療した後の経過(転帰)は?

神経下垂体部胚細胞腫に多い胚腫では放射線、抗がん剤治療により5年生存はほぼ100%期待できます。一方、絨毛癌や胎児性癌、未熟な奇形腫では放射線・抗がん剤治療を行っても成績が悪く、3年間に50%の生存を目標とするレベルです。

図1:松果体胚細胞腫の造影MRI(軸状断)

図2:神経下垂体性(鞍上部)胚細胞腫の造影MRI(冠状断)

図3:基底核部に発生した胚細胞性腫瘍の造影MRI(冠状断)