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内分泌の病気

のうしんけいげか
鞍結節部髄膜腫
「鞍結節髄膜腫」とはどのような病気ですか

脳は髄膜という膜に包まれています。髄膜は硬膜、クモ膜、軟膜の三枚からなりますが、クモ膜の細胞から発生し硬膜に沿って成長する腫瘍が髄膜腫です。髄膜腫の9割は良性であり、成長もゆっくりであることがほとんどです。髄膜腫は髄膜のあるところであればどこにでも発生する可能性があり、頭蓋骨の中心部で脳を下から支えている「頭蓋底」といわれる部分にも発生します。鞍結節は頭蓋底の一部であり、周囲には視神経や下垂体、内頚動脈といった重要な構造物が存在します。この鞍結節に発生する髄膜腫が「鞍結節髄膜腫」です(図1)。

この病気はどのような人に多いのですか

髄膜腫は成人女性に多く、高齢になるほど発生率が高いと言われています。

この病気の原因はわかっているのですか

鞍結節髄膜腫の発生原因はまだ分かっていません。髄膜腫全般については、発生に関与すると考えられる遺伝子の異常が見つかっています。また、女性ホルモンの影響や治療に用いた放射線の関与を示唆する報告があります。神経線維腫症Ⅱ型という病気では髄膜腫ができやすくなります。

この病気ではどのような症状がおきますか

無症状の患者さんが脳ドックなどで偶然発見されることもありますが、鞍結節髄膜腫は視神経に近接しているため、腫瘍により視神経や視交叉が圧迫されて視力・視野の障害でみつかることが多くなります。視神経は視神経管と呼ばれる骨のトンネルを通過して眼球へ向かいますが、髄膜腫が視神経に沿って視神経管の中へ進展するとさらに視力・視野の障害が生じやすくなります。

どのような時に治療が必要となりますか

多くの髄膜腫が良性であることから、腫瘍が小型で無症状の場合には、特別な治療は行わずに注意深く経過観察を行うこともあります。ただし、鞍結節髄膜腫は腫瘍が小さくとも視力・視野障害を生じやすい腫瘍なので、無症状であっても今後視力低下を来す可能性が高いと判断される場合には治療をお勧めすることがあります。腫瘍により視神経が圧迫されて既に視力・視野障害を発症されている場合には、放置すれば更に症状が悪化して失明に至りますので治療が必要となります。

この病気にはどのような治療法がありますか

有効な薬剤治療はなく、手術か放射線治療を行います。髄膜腫は一般に良性腫瘍であることから、全摘出により治癒も期待されますので、手術が治療の基本となります。ただし、周囲には視神経・下垂体・内頚動脈などの重要な構造物が存在するため、他部位の髄膜腫にくらべて摘出の難易度は高くなります。また、視神経管内に腫瘍が進展している場合には、その部分の腫瘍もしっかり摘出する必要があります。

手術方法としては、頭部を切開して脳を慎重に持ち上げ、腫瘍を摘出する方法(経頭蓋手術、図2左紫)が多く行われており、大きな腫瘍にも対応することが可能です。経頭蓋手術はさらに、前方から腫瘍へ到達する方法と、前側方から到達する方法に分けられ、腫瘍の進展方向などを考慮して選択されます(図2右)。一方で小型の腫瘍に対しては、鼻の孔から内視鏡を用いて腫瘍を摘出する方法(経鼻手術、図2左青)も用いられるようになってきました。経鼻手術は頭部を切開する必要がなく、より低侵襲な手術となります。経頭蓋手術と経鼻手術にはそれぞれ利点・欠点があり、腫瘍の大きさや周囲の重要構造物との位置関係などを考慮して選択されます。

手術により全摘出ができない場合や、全身麻酔が受けられない患者さんに対しては放射線治療を行います。放射線治療の際、とくに注意が必要なのは視神経障害です。最近は放射線治療機器の進歩により視神経にあまり放射線が当たらないように工夫しながらの治療も可能になってきています。

治療後も通院は必要ですか

無治療で経過観察中の患者さんや治療後の患者さんにおいて、腫瘍の増大や再発がないかを観察する必要がありますので、定期的な通院が必要です。とくに腫瘍が残っている患者さんでは注意深い観察が必要となります。CTやMRIの撮影が基本となりますが、MRIでは小型の腫瘍や視神経も観察が可能です。

図説

図1 鞍結節髄膜腫の発生場所

左の図は頭蓋底を上方から観察したイラストで、右の図は脳の内側面を左方から観察したイラストです。赤で示す鞍結節髄膜腫は黄色で示す視神経や緑で示す下垂体に近接して発生します。右の図のように視神経の下側に沿って視神経管の中へと進展することもあります。


図2 鞍結節髄膜腫の手術方法

左図:頭部を切開した後に脳を慎重に持ち上げて腫瘍の摘出を行う経頭蓋手術(紫)と、頭部の切開は行わずに鼻孔から内視鏡を用いて腫瘍の摘出を行う経鼻手術(青)があります。

右図:経頭蓋手術には、前方から腫瘍に到達する方法と前側方から到達する方法があります。