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内分泌の病気

のうしんけいげか
ラトケ嚢胞
ラトケ嚢胞とは

ラトケ嚢胞は、胎生期のRathke's pouchという遺残組織(胎児期の臓器になる前の構造のことで、臓器形成につれて通常は消失しますが時に残ってしまうことがあります。)から発生する非腫瘍性嚢胞性病変です。多くは正常下垂体の前葉と後葉の間に成長し、鞍上部に進展し視神経・視交叉・視床下部などを圧迫することがあります。近年では無症候の状態で診断されることが多いですが、重要構造物へ影響を及ぼすと症状が出現したりホルモン異常を来したりします。

この病気の患者さんはどのくらいいるのですか

剖検例では1000例の中で37例(3.7%)に発見されたという報告があります。剖検例の報告は、0.5-22%と非常に幅があります。近年では脳ドックをはじめとするMRI検査の普及により無症候で診断されるラトケ嚢胞が増えています。これは発症が増えているわけではなく診断率の向上によるものです。このように偶然診断されるラトケ嚢胞は決して少なくありませんが、治療対象になるのは一部です。

この病気はどのような人に多いのですか?

一般的には男性よりも女性に多く、30-60歳の成人に多くみられるとされていますが、高齢化社会や画像診断の普及により、近年では60歳以上の方にも少なからずみられます。

この病気の原因はわかっているのですか?

上記のような発生過程をとり、遺残組織が原因ではありますが、それが存在していてもラトケ嚢胞が生じる人とそうでない人がいる根本的な原因は分かっていません。

この病気は遺伝するのですか

そのような報告は見られず一般的には遺伝しないと理解されています。

この病気ではどのような症状がおきますか?

症状としては、視力・視野障害、ホルモン異常、頭痛などがあります。ラトケ嚢胞が大きくなり視神経や視交叉を圧迫すると視力・視野障害を来すことがあります。典型的な視野障害は両耳側(視界の外側)の欠損であり、初期は上方から始まり進行すると下方も見えにくくなり最終的には両耳側半盲の状態になります。

ホルモン異常は、単独~多数のホルモンの分泌低下を来すことがあります。下垂体前葉ホルモン分泌不全、高プロラクチン血症や後葉ホルモン異常である尿崩症があります。原因は嚢胞による正常下垂体の圧迫の場合と、嚢胞は小さくても炎症が正常下垂体に波及して機能低下を来す場合があります。一般的には後者が多いとされていますが、両方が複合的に原因となっている場合もあります。具体的には、全身倦怠感、易疲労感、不妊、性欲低下、成長障害、食思不振、多尿、口渇感などが見られます。進行すれば多系統のホルモン分泌不全を来します。高プロラクチン血症では月経不順・無月経、不妊を来します。

頭痛では、ラトケ嚢胞がその原因かどうかの見極めが難しいことが少なくありません。

この病気にはどのような治療法がありますか

全くの無症状でホルモン異常も来していなければ治療の必要はなく、MRIでの経過観察が行われます。下垂体機能低下を来している場合には適切なホルモン補充療法を行うことが重要です。無症候でもMRI上視交叉の圧迫があれば、予防的に手術(経蝶形骨洞手術)が選択されることが多いです。もちろん年齢も考慮されます。また、患者さん本人は無症候と思っていても、視交叉の圧迫を認める場合には精査により視野欠損が検査上診断されることが少なくありません。こういった場合も手術が勧められます。明らかな視力・視野障害を来して場合には手術が行われます。術後に症状は改善することが多いですが、かなり進行した状態では改善しないこともあります。また、手術の合併症として術後に視機能の悪化や尿崩症を含む下垂体機能の悪化の可能性は否定できません。ホルモン異常のみで手術適応とするかどうかは議論のあるところですが、少数のホルモン系統異常のうちに手術をすれば回復の可能性がありますが、多系統障害では回復の可能性が低いというのは事実です。また、頭痛に関してはその原因がラトケ嚢胞なのかの判断が難しい場合が少なくないことも含めて、手術適応とすることには議論があります。ただし、難治性頭痛があるため手術を行い、術後に劇的に頭痛が改善する症例があるのも事実です。基本的に放射線治療や薬物治療は行われません。

この病気はどのような経過をたどるのですか?

上記のように、治療適応がない場合には定期的にMRIで経過観察します。ラトケ嚢胞では自然に病変が縮小することがあります。ただしその後再増大することもあるのでホルモン値とともに定期的な経過観察が必要です。上記のような治療適応に当てはまるようになれば治療を考慮します。

この病気は日常生活でどのような注意が必要ですか

基本的に通常の日常生活を送ることができます。症候性の場合には症状に応じた注意点があります。