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内分泌の病気

ふくじん
クッシング症候群
クッシング症候群とは

副腎から分泌されるコルチゾールの作用が過剰になることにより、特徴的な身体徴候を呈する病気です。コルチゾールは副腎から分泌されるホルモンの中で最も重要なホルモンであり、あらゆる生体機能をサポートするはたらきを持ちますが、多すぎても少なすぎても病気につながる繊細なホルモンです。副腎の異常でコルチゾールが過剰分泌される病態(副腎性クッシング)の他に、ACTH(副腎皮質刺激ホルモン)の過剰が原因となる病態(ACTH依存性クッシング)、コルチゾールと同様の作用を持つ薬剤によってコルチゾール作用過剰の症状を呈する病態(薬剤性クッシング)もあります。副腎性クッシングでは、コルチゾール過剰によるネガティブフィードバックでACTHが低値となります。ACTHが低値にもかかわらずコルチゾールが正常~高値を呈する場合、この病気を疑います。コルチゾール値が正常の場合でも、深夜のコルチゾール高値やデキサメタゾン負荷後のコルチゾール高値が見られ、これらの所見が確認されると確定診断となります。また、このような検査値の異常があっても、特徴的な身体徴候を欠く場合は、サブクリニカルクッシング症候群と診断されます。

この病気の患者さんはどのくらいいるのですか?

1965~1986年に行われた全国調査では、年間50症例程度の発症と報告されていますが、近年では人間ドックなどでの画像検査を契機に副腎腫瘍が発見される機会が増えたため、この病気(特にサブクリニカルクッシング症候群)が診断される頻度は増していると考えられています。

この病気の原因は何ですか?

主な原因は副腎皮質腺腫です。副腎皮質腺腫には、ホルモン過剰産生を伴わない非機能性腫瘍もあり、腫瘍からのコルチゾール過剰産生の確認には、131I-アドステロールシンチグラフィーが行われます。稀に副腎皮質癌が原因となることもあり、DHEA-S高値など他の副腎皮質ホルモンの過剰を伴う場合には、悪性の可能性も疑います。また、両側副腎の結節性過形成が原因となることもあり、この場合はBMAH(bilateral macronodular adrenal hyperplasia)(注)と呼ばれます。近年、腫瘍やBMAHの組織内に、それぞれPRKACAやARMC5の遺伝子異常が高頻度で確認されることが報告され、さらなる原因解明が進んでいます。
注)AIMAH(ACTH非依存性大結節性副腎皮質過形成)とも呼ばれます。

この病気は遺伝するのですか?

一般には、遺伝しない病気と考えられていますが、近年、上述のような新たな遺伝子変異の発見の背景から、ARMC5の胚細胞変異を有するBMAHなど、家系内発症の報告も見られています。

この病気ではどのような症状がおきますか?

特徴的な身体徴候として、満月様顔貌、野牛肩、中心性肥満、皮膚菲薄化、腹部赤色皮膚線条、近位筋の筋力低下などが見られます。また、高血圧、耐糖能異常、骨粗鬆症、月経異常、うつ症状など、この病気への特異性は高くないものの、日常診療で比較的高い頻度で認める臨床徴候も呈します。後者しか認めない場合は、なかなか診断に至らないことも多く、本疾患の診断には注意深い身体徴候の観察が重要です。

この病気にはどのような治療法がありますか?

副腎腫瘍の摘出術を行います。健常側の副腎はACTH低値の影響を受けて萎縮しているため、術後には一定期間、副腎不全症状の回避を目的としてコルチゾールの補充を行います。BMAHに対しては、両側副腎の摘出術は行わず、コルチゾール過剰による症状の軽減を目的として、片側副腎摘出が行われます。また遠隔転移を伴う副腎皮質癌など根治が期待できない症例においては、副腎皮質ホルモン合成酵素阻害薬(ミトタン、メチラポンなど)を投与し、コルチゾールを低下させてホルモン症状のコントロールを行います。ミトタンには、ホルモン合成阻害だけでなく、抗腫瘍効果も見られます。

この病気はどのような経過をたどるのですか?

副腎皮質腺腫が原因の場合は、根治が期待できます。術後のコルチゾール補充は、通常6ヶ月~1年程度で終了しますが、2年以上と長期にわたる症例もあります。コルチゾールの補充量が不適切だと、術後の方が術前より体調が悪いと感じることもありますが、いずれは元の体調に回復します。満月様顔貌などの症状は時間をかけて消失して行きますが、骨密度は正常まで回復しないこともあり、そのような症例では術後も骨粗鬆症の治療の継続を要します。症状を呈するクッシング症候群(顕性クッシング)では、無治療だと感染症や心血管疾患のリスクが上昇し、寿命が短縮することが示されています。サブクリニカルクッシング症候群の長期予後については十分なエビデンスがないため、症状の程度により治療方針が異なります。