クリニカルパス講演会


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日時 
 平成25年2月28日(木) 18:30~20:00
場所 
 四国がんセンター 3F 研修室
   
共催 
愛媛クリニカルパス研究会
 
中外製薬株式会社
 
参加申し込みはこちらから
 
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<抄録>

特別講演  「パスからみた肺癌化学療法の変遷」
                                            KKR札幌医療センター 磯部 宏 先生


1983年にシスプラチンがわが国で承認され30年が経過しました。この間、肺癌の化学療法は緩急の差はあったものの間違いなく前進しています。この30年間を約10年毎の3期に大きく分けることができます。この各期の変遷をパス(クリニカルパス、クリティカルパス)を見ながら思い起こし、今後の肺癌治療の方向性を考えたいと思います。

プラチナ併用療法の時代(1983年CDDP登場から)
シスプラチンに続きビンデシン、エトポシド、カルボプラチンと登場してきました。プラチナ併用療法が主流で、確かに腫瘍縮小効果は見られるものの、それが長期延命に寄与しているか疑問でもあった時代です。この時代の重要なキーワードは「病名告知」と「チーム医療」だと思います。私達はこの病名告知の是非を問うのではなく、病名告知後の患者不安解消に勢力を注ごうと、そのために行った活動の1つにより、1997年(次の時代ではありますが)に肺癌化学療法パスが生まれました。

第3世代抗癌剤の時代(1994年CPT-11登場から)
イリノテカン、ドセタキセル等の第3世代と呼ばれる抗癌剤が登場しました。多くの併用療法があり、副作用もそれぞれの特徴がありました。キーワードは「患者参加・患者中心医療」だと思います。パスは抗癌剤の投与スケジュールを示すだけではなく、日々の副作用の自己チェックを導入した患者自己管理型パスに改良しました。次コースの早期対応や外来化療への移行に役立てました。

分子標的薬の時代(2002年ゲフィチニブ登場から)
ゲフィチニブ、次いでエルロチニブが登場しました。キーワードはもちろん「個別化医療」です。自己管理・在宅治療のためイレッサパスやTS-1パスを作成しました。抗癌剤治療は当科で、次の治療までの日常生活の支援は地元で、という地域連携抗癌剤パスも少しずつ動き出しました。しかし、最近では維持療法患者も増え、それぞれの抗癌剤治療の遂行・管理は認定看護師さんや薬剤師さんにお願いし、私は全体の長期スケジュール管理といった感もあります。

抗癌剤治療に進歩は見られるものの、残念ながら肺癌は今なお予後不良な疾患です。今後、個別化や電子化のために「パス」がどのような変遷を遂げるかは分かりませんが、パスのマインド(これまで挙げたキーワードです)をしっかり見据えれば、診療の大きな流れを見失うことはないと思っています。今後の肺癌診療にとっては、早期緩和ケアも叫ばれており、如何に生きるかを支援することが私達の重要な役割だと考えております。