第3回 愛媛クリニカルパス研究会学術講演会


日時 
平成17年11月13日(日) 13:00~16:00
場所 
愛媛県医師会館 3Fホール
テーマ 
「褥瘡処置の新知見とクリニカルパス」
   
  13:00     講演1 「褥瘡パスにおける看護ケアの客観的評価
    講師 スミス・アンド・ネフー ウンドマネジメント(株) 学術推進課 西出薫 先生
           講演2 「医療の質管理を意識した褥瘡対策」
    講師 健和会大手町病院 形成外科部長 石井義輝 先生
  14:25     特別講演  「褥瘡管理におけるクリニカルパスの活用」
    講師 トヨタ記念病院 形成外科部長 岡本泰岳 先生
  16:00     閉会
   
共催 
スミス・アンド・ネフュー ウンドマネジメンド株式会社
 
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<抄録>
 

講演 2  「医療の質管理を意識した褥瘡対策」    健和会大手町病院 形成外科部長 石井義輝 先生
   

 

 近年、「医療の質」が問題にされるようになり、その対応の一つとしてクリニカルパスの普及が進んでいる。当院においては2000年の褥瘡対策開始時点より、褥瘡対策を直接・間接的に病院の質向上に役立たせることを意識していくつかの工夫を行ってきたので、これらについて報告する。

<当院での方法>
当院では褥瘡の定義を幅広く取り、患者についての情報と褥瘡そのものの情報を分離して管理した。また、2004年からではあるが特定日の全入院患者のOHスケールでのリスク保有状況および褥瘡保有患者の状況についても調査を開始した。さらに、被覆材をはじめとする材料の購入方法、皮膚潰瘍治療薬および材料の使用方法も整備した。

<結果・考察>
対策開始当初より褥瘡の定義を幅広く取り重症度にかかわらず一括管理したことと、患者データと創傷データを別個に集積することとしたことから、大量のデータが蓄積されさまざまな観点からの分析に有用であった。また、個々の患者ばかりでなく病院全体の動向も把握が容易になったため、病院全体の管理にも有用な資料となった。さらに、薬剤・被覆材の購入量・使用量についてもかなり正確に把握できており、巷間いわれている材料費・薬剤費に関する話題にも冷静に対処可能であった。 昨今広まりつつある褥瘡対策・感染対策・NST活動はいずれも意識付けを明確に行えば、個々の目的を越えて病院の質向上に有用であることを強調したい。当院の活動がその参考の一つになれば幸いである。

 

特別講演  「創傷管理におけるクリニカルパスの活用」 -医療現場におけるアウトカムマネジメントの実践-
                                            トヨタ記念病院 形成外科部長 岡本泰岳 先生

[はじめに]
近年、医療の質を効率的にまた継続的に向上させる手段としてアウトカムマネジメントの手法が導入されている。また、多くの病院で導入が進んでいるクリニカルパスは、その活用方法を間違えなければ、医療現場においてアウトカムマネジメントを実践するツールとなる。創傷管理をアウトカムマネジメントの視点からとらえると、どのような発想になり、どのような実践になるのかを私見をまじえて解説したい。

[アウトカムマネジメントとクリニカルパス]
これは1980年代後半から米国で強調されるようになった「結果からの統制法」といわれる管理手法の一つである。アウトカム(期待される成果、達成すべき目標、)を事前に明示し、それに基づいて資源投資(人員配置、予算配分、時間配分など)を計画的に行う。運用にあたってはPDCA (Plan→Do→Check→Action)サイクルによる継続的改善を基本とするものである。実際の医療現場においてアウトカムマネジメントを実践していくには、アウトカムの設定と治療計画が標準化・書式化されている必要がある。これを満たすツールがクリニカルパスである。医療におけるアウトカム設定は一般に①臨床アウトカム(臨床成績、合併症など)②拘束期間(入院期間、機能障害期間)③財務アウトカム(収益性、費用対効果)④顧客満足(患者満足、医療従事者満足)の4つに大別される。質の高い医療とは、これら4つのアウトカムが高いレベルで達成されることであると考える。

[創傷管理とアウトカムマネジメント]
創傷は臨床的に「治りやすいキズ」と「治りにくいキズ」が存在する。この違いを創傷治癒過程から急性創傷と慢性創傷に分類して解説する。それぞれに対してアウトカムを設定することで、患者さん本位の質の高い創傷管理を提供できると考える。さらに慢性創傷の局所治療に有用なコンセプトである、WBP(Wound Bed Preparation;創床環境調整)理論に基づくTIMEコンセプトを紹介する。

[褥瘡対策の標準化とアウトカムマネジメント]
慢性創傷の代表である褥瘡は、発生の直接要因が多岐にわたるだけでなく、介在要因も複雑にからむため、アウトカムの設定と治療(予防)計画の標準化には様々な工夫が必要である。さらにチーム医療によるトータルケアの実践には、治療方針やケア計画に共通理解が必要である。褥瘡対策の標準化と継続的な質の向上を目指して作成した褥瘡治療クリニカルパスを提示する。さらに褥瘡対策における臨床指標を活用したアウトカムマネジメントの実際も紹介したい。