第4回 愛媛クリニカルパス研究会大会
 
  『 地域に広げようクリニカルパスの輪
 
◇ 抄録一覧
特別講演 「バリアンスを怖れるなかれ!バリアンスを使いこなそう!」 福井総合病院  勝尾 信一
「当院における胃癌パスの検討」 済生会今治病院  外科 藤澤 憲司
「胃癌手術のクリニカルパス -作成過程における工夫と改善点について-」 済生会西条病院 看護師 鈴木真由子 他
「胃がん手術におけるクリニカルパスの変遷」 独立行政法人 四国がんセンター 胃がんパスワーキンググループ
「幽門側胃切除術におけるクリティカルパス導入経験」 愛媛県立中央病院 外科 椿 雅光
「当院における大腿骨頚部骨折地域連携パスの取り組み」 済生会今治病院 整形外科 高杉茂樹
ワークショップ「地域連携におけるパスの役割」 愛媛大学病院医療福祉支援センター長 櫃本真聿
「当院における大腿骨頚部骨折用地域連携パスの紹介」 松山赤十字病院 リハビリテーション科 PT 高岡達也
「地域連携におけるパスの役割」 独立行政法人 四国がんセンター がん相談支援・情報センター 舩田 千秋 他
「地域連携パスについて」 愛媛県立中央病院 地域医療連携室 山岡傅一郎
   
   
◇ 抄録    
  特別講演 バリアンスを怖れるなかれ!バリアンスを使いこなそう!
   
福井総合病院  勝尾 信一
     
 

 バリアンスは「達成目標が達成されなかったとき」と定義され、パスとは切っても
切れない関係にある。けれどもバリアンスという言葉のイメージから、悪いものと誤
解される向きがある。この誤解を解消し、バリアンスを有効利用することが、病院の
質の向上につながる。
バリアンスの利用としては、バリアンス発生時に正しい対応をすることと、多くの症
例を経験した後のバリアンス分析によって改善策を提案することにある。
バリアンス発生時の対応は、患者状態の異常にいか対応するかということになるが、
その患者状態の異常を的確に捉えることが前提となる。そしてその異常の判断に際に、
アウトカムが達成されたかの判断基準を用いることができる。したがって、より広い
範囲で異常を捉えるためには、アウトカム設定を広い範囲で明確な基準で行うことが
必要となる。このような観点からアウトカムを設定しバリアンスかどうかを判断する
ことは、それぞれの患者の個別性を際立たせることになり、よりきめやかなケアの提
供が行えることになる。
次に、何とかバリアンスの判断まではするものの、バリアンス分析につなげること
が大きな壁になっている施設も多い。その理由として、バリアンス分析方法が確立さ
れていないために、バリアンス分析に対して多大な労力を要することがあげられる。
したがってその分析方法を確立し、効率よく行えるようにすることが課題となる。当
院で行っているバリアンス分析では、まずバリアンスと判断する段階で要因分類を行
い、コードを付けてバリアンスシートに記載する。バリアンス分析に際してはバリア
ンスシートからバリアンスを収集し、コード別・項目別に分類する。そしてバリアン
ス分析基本方針表に基づいて改善策の提案を行う。このバリアンス分析基本方針表は、
バリアンスコードとその詳細(発生頻度等)に対応した、改善策の考え方が表になっ
ている。
このようにバリアンス分析方法を確立することによって、最大限に広い範囲での異常
を捉える方法として、オールバリアンス方式によるバリアンス収集が可能となった。
バリアンスは決して悪いものではなく、むしろ有効利用できるようになると、いいも
のにも思えてくる。そのあたりの気持ちを是非愛媛の方々にも伝えたい。

   
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当院における胃癌パスの検討

   
済生会今治病院  外科 藤澤 憲司
   
 

 クリ二カルパスは医療の質的標準化や病院経営の効率化を目的に開発され、本邦で
も1990年代からさまざまな疾患を対象に導入されてきた。当院でも2003年より現在の
胃癌に対するクリ二カルパスを導入している。
同パスは入院診療計画書を兼ねた患者用パス、看護師用オーバービューパス、実際の
指示や患者の状態などを記録するオールインワンパスの3部より形成されている。
当院では現在、胃癌入院治療に対するクリ二カルパスの適応除外基準に関しては明確
な基準が設定されておらず、主治医の判断に委ねているのが現状である。さらにこの
クリ二カルパスにおけるバリアンス(変動・逸脱・脱落)に関しても同様で、やはり
主治医の裁量に任せているのが現状である。今回過去2年間の全胃癌患者について検
討を行い(特にパス使用時のバリアンスについて)、現在使用している胃癌クリ二カ
ルパスの問題点を明らかにしていきたいと思う。

   
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    胃癌手術のクリニカルパス -作成過程における工夫と改善点について-
   

済生会西条病院  看護師1)、看護部長2)、外科3)
         O 鈴木真由子1)、佐藤祥子1)、青野恵美子1)、大仲道子2)、石井博3)

     
 

 胃癌手術のクリニカルパス(以下パス)は、胃切除術と胃全摘術の2種類のバスが存在
しており、今回胃全摘術のパスを紹介する。胃全摘術のパスは胃切除術のパスが使用さ
れた後の平成17年6月より使用を開始した。当院におけるバス作成過程は科によって若
干異なっており、今回提出する外科に関しての作成過程を提示する。
 月2回の外科医師のパスカンファレンスで従来のパスを基本として骨子を作成し、
それに応じて看護師がパス原本を作成し、週1回の看護師のカンファレンス時に要望事
項、改善点などを話し合って最終案を作成する。作成された最終案は再度医師のパスカ
ンファレンスに提出され、最終的に月1回のパス委員会の承認を得て使用を許可される。
医師、看護師以外のパラメディカルに関してはパス委員会で進言し、その部分に関して
内容を改訂し使用を開始する。パス改訂は必要時に随時行われパス委員会で承認後使用
を許可されるが、その他年2回開催されるパス大会で使用されたパスの解析を行い、各
職種の意見交換を施行しパスの定期的な改訂を行っている。
 当院におけるパス作成の工夫は、初めに院内で用語とフォーマットの統一を全職種間
で行い、全科のパスフォーマットは統一されていることである。そのため、患者用パス、
医療従事者用パス、日めくり型パスに関して、新たな疾患に対するパスが内容を少し変
更するだけで容易に作成できる利点がある。また医師主導でパス作成を行うため作成の
スピードが早く、1年間で約70種類のパスが作成されている。しかし、「患者サービス」を第
一義とし急速に拡大したため、アウトカムの設定やバリアンスの解析が織り込み不足で、
パス大会において解析する以外はTQMとして役にたたない面がある。また、日めくりバ
スは業務改善型パスの形式であり、アウトカム志向型パスには縁遠い印象も強い。従って
外科系や処置のバスは充実しているが、内科系のパスが遅れている欠点がある。またリハ
ビリテーション、服薬指導、褥瘡対策・栄養管理指導、MSWの介入などもパスと十分な関
連付けは出来ていない。
 現在は退院時のアウトカムのみの設定であるが、経過中のアウトカムを詳細に決定し、
アウトカムに関する観察項目の設定と標記方法(疼痛に関するフェイススケールの導入
など)を現在の業務改善型パスに関連付けること、あるいはリハビリテーション、褥瘡対
策・栄養管理などのユニットパスとの関連付けなどを改善の課題としたい。

   
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    胃がん手術におけるクリニカルパスの変遷
   

独立行政法人 国立病院機構 四国がんセンター  胃がんパスワーキンググループ
                       栗田 啓¹)平岡久美²)、山室美智²)橋本数江²)、
                       岸本美子²)、森田 綾²)、井上光子²)、岡崎愛子²)
                      

     
 

【はじめに】
 胃がん手術のパスは数回の変遷を経て,現在では術式にかかわらず一つのパスに統一
した。その経緯を紹介する。
【対象と方法】
 パスを使用した2000年8月から2001年11月までの133例(旧パス)と1998年1月から20
00年11月までのパス非使用例181例(重複期間有り)、さらにパスの改変を行った“新
パス”使用例305例に関し,胃切除I(幽門側胃切除)と胃切除Ⅱ(胃全摘術)に分け、
パス便用例と非使用例別に術後入院日数,入院期間内の医療費の比較検討を行った。
旧パスは、その時点までの術後経過を明文化したものであったが、新パスでは、主と
して術後食のスピードアップを図り術後入院期間を短縮した。また、抗生剤投与を術
直前と1PODまでとし、胃全摘術ではCVカテからの栄養補給を省いた点が主な相違点で
ある。
【結果】
 術後在院日数は、胃切除I、Ⅱともに新パス群でパス無しに比して明らかに短縮さ
れた。入院中の医療費は、胃切除IにおいてはB類においてのみ、パス無し群と旧パ
ス群間に有意差を認めた。胃切除Ⅱでは、基本料,A,B,C,D類ともに新パス群とパスな
し群の間に有意差があった。入院1日あたりの費用は、胃切除Iでパス無し群と他の
2群間に有意差があった。胃切除Ⅱでは各群間に有意差があった。胃切除IとⅡの間に
は経口開始が1日しか違わないことより、また、医療安全の面からパスの数は少ない
方が有利であるとの考えのもと、パスを一本化した。1年経過したが良好な結果であ
る。
【まとめ】
パスの改良に伴い胃全摘術、幽門側胃切除術ともに1日あたりの入院費は上昇した。
パスを一本化することにより間違いの少ない良質な診療が行えるようになったと考え
ている。


1) 独立行政法人国立病院機構 四国がんセンター 外科
2) 同 看護部 外科病棟

   
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    幽門側胃切除術におけるクリティカルパス導入経験
   
愛媛県立中央病院  外科 椿 雅光
     
   県立病院では入院期間の短縮を目的として、平成14年1月から三島病院で幽門側胃切
除術のクリティカルパスが導入された。その後、中央病院では平成16年4月1日から試
験運用を開始し、改良を経て平成17年5月11日から本格的に導入された。パス作成では、
他の癌専門病院でのパスをベースに当院の歴史的な習慣を加えて違和感の少なくなる
ように配慮した。最初のパス(三島病院)は以下の通りである。
(1)対象は、幽門側胃切除術適応症例のうち根治手術可能で重篤な合併症がなく、
リンパ節郭清度はD2以下の症例とした。(2)パスの概要は、1)胃管抜去:手術当日
または術後1日目、2)水分開始:術後3日目、3)流動食開始:術後4から5日目、1日
ずつアップ、4)硬膜外チューブ:術後3日目までに抜去、5)バルーンカテーテル:
術後3日目までに抜去、6)抜糸・ドレーン抜去:術後7から9日目まで、7)術後日数
:21日以内、8)入院日数:28日以内、術前の日数は規定しなかった。この初代パス
は17例に使用し、結果は完遂9例、変動6例、逸脱2例であった。変動の最大原因は患
者希望の入院期間延長であった。またこの経験から術後14日目頃には、多くの患者が
退院可能になることがわかった。そこで中央病院でのパス導入の際には、術後日数を
14日、入院日数を17日とした。食事開始は意見調整ののち、術後5日目に流動食開始
で1日ずつアップとなった。約1年の試験運用で大きな問題点もなかったため、正式
に運用を開始した。この第2世代パスの適応症例は根治手術可能なものだけでなく、
たとえば腹水細胞診陽性であっても主治医の判断で使用可としている。
今後の予定は、食事の開始時期と流動食の廃止、胃全摘術や噴門側胃切除術への適応
拡大、入院期間の短縮の検討である。パス導入後の問題点はパリアンス分析が不十分
なことである。パス改良のためにも今後は詳細な分析が必要と考えている。
   
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当院における大腿骨頸部骨折地域連携パスの取り組み

   

済生会今治病院  整形外科  高杉茂樹

     
   今年度の診療報酬改正にて大腿骨頸部骨折患者の治療に対して地域連携パス評価点
数が新設された。計画管理病院は平均在院日数17日以内の急性期病院となっており、
十分な機能回復を患者の退院時に得るためには転医入院によるリハビリ治療継続が必
要となる。当院ではこれまで大腿骨頸部骨折患者の術後リハビリについて地域の病院
に転医入院をお願いしていた。そのような経緯を踏まえてこれまで転医をお願いして
いた病院、およびリハビリ可能な病院と連携パス導入を行うこととして検討を行った。
計画管理病院と連携医療機関は情報交換のための会合を年3回程度定期的に開催する
ことが決められておりその1回目を兼ねて5月29日検討会が開催された。 
 参加には医師のみでなく看護師、理学療法士、事務関係職員の参加もあり各問題点
を話し合った。基本的に大腿骨頸部内側骨折人工骨頭挿入術施行患者、大腿骨頸部外
側骨折骨接合術施行患者について、歩行訓練開始時に全荷重歩行開始し術後14日以内
での転医を目指すこととして立案した。問題点として全荷重歩行可能状態での転医は
連携施設の医師側の問題点を少なくするが転倒リスクなどの問題について管理病院か
らの説明が重要であるとの意見があった。看護部門からは看護用の連携パスと看護添
書の両方が必要かどうかの問題提起があり、看護添書はやはり必要との意見が多かっ
た。理学療法部門からは管理病院入院中は歩行訓練などの基本訓練でのパスが主体と
なるが、連携施設では退院にむけてのADL訓練がより重要性であると問題提起され
た。
 この会を通じての今後の地域連携パスについて計画管理病院としての当院の取り組
みについても報告する。
   
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ワークショップ 「地域連携におけるパスの役割」

   
愛媛大学病院医療福祉支援センター長  櫃本真聿
     
 

 国政府は、医療制度改革大綱の下に、大幅な見直しを行う方針を明確にした。その
基本的な考え方は、①国民の医療に対する安心・信頼を確保し、質の高い医療サービ
スが適切に提供される体制を確立する。②治療重点から疾病予防を重視した保健医療
体系へ転換を図る。③国民皆保険を持続可能なものとするため、医療費の過度の増大
を招かないよう、経済財政と均衡がとれたものとする。④老人医療費を中心に国民医
療費が増大しており、新たな高齢者医療制度を創設する。⑤高齢者世代と現役世代の
負担を明確化し、公平で分かりやすい制度とする。などである。これを段階的に進め
るために、今年度の診療報酬も大きく改変され、「患者満足度の向上」と「医療費の
抑制」という、一見矛盾する関係の二つの命題を如何に実現していくかという、医療
運営にとって極めて厳しい命題が課せられた。
 医療界全体にとってこの状況はピンチではあるが、-方医療が変革するチャンスで
もあると考えている。今後、国の指導や制度の流れに委ねることなく、地域において
保健・医療・福祉関係機関が互いに目的を共有し、各機関の機能や役割分担を明確に
しながら、地域発信型のネットワークを構築することが不可欠であり、地域医療連携
や退院支援を担う愛媛大学医療福祉支援センターのような機関の役割が重視され活躍
できるチャンス到来とも言える。
 ワークショップのテーマ「地域連携におけるパスの役割」の中で、特に大学病院の
ような急性期病院においては、院内のクリティカルパスの充実や地域との連携パスの
積極的な導入が必要であり、今後、前方・後方連携の強化を担う当センターの立場か
ら、これからの目指すべき方向や具体的な戦略などについて発言したい。

行政の参画 保健所 医師会
中核病院 急性期病院からのスタート
クリティカルパス
支援センターの役割
大学病院の特質
在宅介護資源への触発
安心感の提供
医療の目的の変化(推移)
医療制度の流れ
目指すべき方向や具体的な戦略
医療モデル 生活モデル

   
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    当院における大腿骨頸部骨折用地域連携パスの紹介
   
松山赤十字病院 リハビリテーション科 PT 高岡達也
     
 

【はじめに】
2006年6月より、当院を「計画管理病院」とし、5カ所の連携医療機関との間で、大
腿骨頚部骨折用地域連携パス(以下、連携パス)の運用を開始した。今回はこの連携
パス(医療者用)を紹介する。

【連携パスの特徴】
 当院からは、術後約2週で転院となる。荷重時期・退院時活動ランク(図右上)が主
治医より指示される。パスにはリハの進行状況を詳細に記述し、連携医療機関に送られ、
引き続き、同一の目標に向かってリハが行われる。連携医療機関退院時には、当該患者
に係る診療情報が計画管理病院に送られる。

【効果】
 ①転院後の治療計画・目標等を転院先と共有できる。②患者が安心して転院できる。
③高い患者満足度。④在院日数の短縮。⑤計画管理病院では、転院後の当該患者の経過
を把握できる。⑥地域連携診療計画管理料の算定。

   
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地域連携におけるパスの役割

   

独立行政法人  四国がんセンター がん相談支援・情報センター
                       ○舩田 千秋、亀島貴久子、菊内 由貴、
                        閏木 裕美、谷水 正人、河村 進

     
 

【はじめに】
 新病院移転にあたり「がん相談支援・情報センター」(以下、相談支援センター)
が開設され、新規業務として退院調整を開始した。退院調整を行うには、院内外の資源
を集約的に活用できるツールが必要となり、クリニカルパス(以下、パス)の手法を
導入することとした。加えて、退院後も患者に必要なサポート体制を整え、安心・安
全な医療を提供するためには地域連携が必須であると考えている。この、退院調整パ
ス導入から地域連携への展望を紹介する。

【取り組み】
 当院では平成15年から緩和ケア外来を開設し、専任看護師が在宅療養支援・転院
サポートを行っていた。退院調整パスでは、これら在宅療養支援・転院サポートの体
制をより明確にし、“退院”に対する院内の意識統一、院内外の人的・物的資源の活
用と連携、各職種間での情報と目標の共有を目的とした。在宅移行や在宅療養支援は
患者個々で介入方法が異なり一律的な介入が行えない。しかし、調整に要する時間に
長短はあっても、当院で提供できる人的・社会的資源は限られ、その時々の目標や調
整の流れが患者の個別性で変化するものではないと考えた。そこで、調整の流れをフ
ェーズ(段階)でとらえ、フェーズごとに目標を設定、調整する項目をピックアップして
いくシート式で作成した。各フェーズでどの人的・物的資源との調整が必要か、調整
後に実施される介入は何かなどをチェックしていく。このパスは、各専門チームやエ
キスパートの持つ経験や知識、技術を点で示したような図式となる。パス自体から得ら
れる情報は少ないが、個々の介入を記録に残し資料として一元化することにより、目
標と情報を共有できる。また患者に対しても、退院後の在宅療養支援・医療連携の情報
はパスの中に可視化され、緊急時の対処や自宅での療養等での安心を提供できると考
えている。

【今後の展望】
 18年度診療報酬改定で地域医療連携パスに対する加算が開始された。このことは、
パスに取り組む医療職への朗報として受け止められ、今後、地域連携パスが発展するも
っとも重要な足がかりになるであろう。しかし、連携する各医療機関でのパスの理解
に温度差があることは否めない。また連携後、施設間のコミュニケーション不足等が
患者の不安を誘発することもあり、同じ目標と、情報を共有できるツールとして連携
先との共同利用を進めて行きたいと考えている。

   
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地域連携パスについて

   

愛媛県立中央病院  地域医療連携室 山岡傅一郎

     
 

 愛媛県立中央病院に地域医療連携室が開設されたのは2003年6月であり、この7月で
5年目を迎えた。一方、クリニカルパス検討委員会も2003年4月に設置され、クリニカ
ルパスの導入を推進している。
 この地域医療連携とクリニカルパスの両者から生まれた医療連携クリニカルパス(
「連携パス」)という概念が最近注目されている。厚労省は、「連携パスの普及で病院の平
均在院日数を短縮させ、これで2025年までに医療給付費を4.1兆円削減できる」との試
算を打ち出している。また、病院内でパスを導入した病院が地域にそれを広げて、「
急性期から回復期、および慢性期まで切れ目ない医療」を提供しようとする試み」が全
国的に広がりつつある。
 私共の中央病院における連携パスは、まだ準備段階(の一歩手前)にあることを正
直に申し上げたい。クリニカルパスの承認件数も増加し、パス研究会も実施されてい
る。一方、前方および後方連携件数も年ごとに増加している。しかし、連携パスに関
してはまだどの分野でも実質的な活動状況を提示するところまでは進んでいない。
 当院では、昨年9月にオーダリングが始まり、今年10月からは電子カルテが導入され
る。この様なIT化のなかでこそ、必要であろうと思われる連携パスについて、この度
の研究会において他病院や診療所での活動内容を教えて戴きながら、今後の当院での
運用を進めるための指針としたいと考える。

   
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