第3回 愛媛クリニカルパス研究会大会
 
  『当院のクリニカルパスはここまで進んだ ~工夫したこと、これからの問題点~
 
◇ 抄録一覧
特別講演   「クリニカルパスによるチーム医療の推進  ~具体例を中心に~」 医療法人近森会 近森病院 クリニカルパス委員会委員長 高橋潔
特別講演   「近森病院におけるクリニカルパスの現状と今後の課題
          ~パス作成の過程に焦点をあてて~」
近森病院 外来統括&クリニカルパス看護師長 久保田 聰美
一般演題1 ① 「大腸切除術クリティカルパスにおけるリハビリテーション科の関わり」 松山赤十字病院 リハビリテーション科 坪内健一 他
一般演題1 ② 「当院における大腿骨頚部骨折のリハビリパスの紹介」 石川病院 リハビリテーション科 横内俊弘 渡辺好隆
一般演題1 ③ 「糖尿病チーム2年目を迎えて~ 一目でわかるパスを目指して~ 村上記念病院 中尾知恵子
一般演題1 ④ 「糖尿病教育入院クリニカルパスの現状と今後の課題」 市立宇和島病院 看護師 川口ミサト 他
一般演題1 ⑤ 「当院産婦人科におけるクリニカルパスについて」 西条中央病院 山中研二
一般演題2 ① 「栄養士からクリニカルパスに対して何ができたか?」 栄養部 越智 泉 他
一般演題2 ② 「当院循環器領域におけるクリニカルパスの取り組みと問題点」 松山市民病院 薬局 葛城文子 他
一般演題2 ③ 「クリニカルパスにおける抗菌薬適正使用の推進」 愛媛労災病院 薬剤部 小野雅文
一般演題2 ④ 「クリニカルパス専任事務員からみたクリニカルパスの管理方法と問題点」 独立行政法人国立病院機構四国がんセンター 山田純子
一般演題2 ⑤ 「電子カルテシステムによるクリニカルパス導入の試み」 十全総合病院 脳神経外科 中村 寿
   
   
◇ 抄録    
  特別講演 クリニカルパスによるチーム医療の推進  ~具体例を中心に~
           
医療法人近森会 近森病院 クリニカルパス委員会委員長 高橋潔
     
 

 近年、病院は以前にも増して多職種が専門的知識・技術を持ち寄って、患者の治療
にあたる事が求められるようになってきている。以前であれば 各科の医師や看護師
とのコミュニケーションが大事であったが、医療安全や感染対策、NSTなど、幅広
い活動が医療全体の底上げに必要となり、医師・看護師以外の専門的職種もチームの
一員として参画が求められている。クリニカルパスは、チーム医療の推進にも非常に
有用なツールである。
 医師は医療の中心的存在であるが、これまで看護師以外の職種との接点が少なく、
他の職種の専門性の理解が不足勝ちである。服薬指導や栄養指導などの強化に伴って
他の職種も病棟の患者のベッドサイドに来るようになったが、医師との接点は今ひと
つ薄いように感じられる。原因は医師の側の多忙性や、パターナリズム的な治療方針
以外に他の職種が医師との意思疎通を遠慮する傾向が見られる。
 クリニカルパスを推進することにより看護師以外の職種とも連携向上が期待できる。
パス作成は医師と看護師で作成してしまいがちであるが、関連する職種全体で共有す
ることが大事である。当初から多職種のチームで共同作業をすることによりチームの
一員としての自覚と責任が生じ医療に積極的に関わっていけるのではないだろうか。
また、共有するパスをコミュニケーション手段として個々の患者の経過を医師と比較
検討することでよりよいチーム医療が達成できる。
 当院では一つのパスに対して色々な職種が意見を発表するクリニカルパス大会を定
期的に開催している。毎回、約3時間の討論を行なっている。大会では薬剤師・臨床
検査技師・管理栄養士・医療ソーシャルワーカー・リハビリスタッフなどが普段指摘
しづらいことや、議論しないことも取り上げ、具体的なデータを提示して検討してい
るのでこれに関しては具体的に供覧したい。
 医師は先端医療へは熱心であるが、多くの定型的経過をとる一般的疾患には関心が
薄い。学会やガイドラインなど多くの決め事があるが安静の展開や、食事、排泄など
患者にとって身近で大事なことが医学的に議論される場がこれまで存在しなかった。
しかし、少ない確率であっても定型的疾患は非常に多いのでその治療を行う上で、
全体としてみた場合多くの症例で何らかの障害が生じることになる。パスはこういっ
た確立された治療を滞りなく安全に的確に行なうことに対しては非常に有用である。
パスの手法を用いて治療内容の向上を図ろうとするとクリニカルインディケーターの
抽出やパリアンス分析を繰り返しパスの改定が必要である。一つのパスに深く精通す
ることも必要であるが、広く色々な職種による検討・チーム医療が見落としがちな視
点を提供し有用と考える。

   
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  特別講演

近森病院におけるクリニカルパスの現状と今後の課題

       ~パス作成の過程に焦点をあてて~ 」
   
近森病院 外来統括&クリニカルパス看護師長 久保田 聰美
   
 

1.チーム医療における看護の役割
 チーム医療の推進に伴い、-人の患者に多職種が関わる場面が増えてきている。
しかし、こうした状況が進めば進むほど、情報の共有や調整といったことが課題とな
り、24時間患者の側にいる看護職にその役割が求められている。こうした構造から
も、パスが現場のナースから求められる場合が多いと思われる。
2.現象を熟知することとパスの視点をもつ意味
 通常パス作成には、対象疾患や対象となる現象を熟知したナースを中心としたスタ
ッフが関わることが多い。しかし、現象を熟知したナースだけでは、その現象を熟知
するあまりに言語化することが難しくなることがある。また、臨床現場の熟練ナース
=パス作成の視点をもつナースとは言い難いのが現状である。
3.パス作成のプロセスが重要
 そこで、パス委員等の所属部署を超えた現象から少しはなれた目でパス作成をサポ
ートするスタッフが求められるようになる。当院では、パス作成に熟練した部署と初
心者の部署の差をなくす為にも、3ヵ月毎に開催されるパス大会等を通じて教育的な
関わりを行っている。最近では、パス作成は各部署の自律的な活動に徐々に移行して
きている。
4.役割の分担と協働
 こうした活動を可能にしているのも、パス作成を影で支える地道な活動を担うスタ
ッフによるものは大きい。当院では、現場のスタッフが持ち寄った紙ベースのアイデ
ィアを当院の様式にすばやく変換、多種多様なパスの一元管理、パス委員会の招集と
議事録作成、パス大会の案内やアンケートの集計に至るまで、すべてを図書室の司書
さんが担ってくれている。そうした役割を分担してくれる職種のおかげで現場のコ・
メディカルの協働が円滑に行われている。
5.パス使用の鍵は?
 どんなに苦労して作成したパスも一部のスタッフにしか理解されないものでは意味
がない。そこで、新しいパスの使用前の説明会は重要である。しかし、説明会は、最
後の仕上げに過ぎない。パス作成の過程で多職種を巻き込み、議論を重ねたパスでは
自然と参加者も多く、質問も活発である。ただ、パス適応を決定する職種である、医
師の参加をいかに促していくかが今後の課題である。

   
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  一般演題1 ① 大腸切除術クリティカルパスにおけるリハビリテーション科の関わり
   

松山赤十字病院 リハビリテーション科  ○坪内健一 田口浩之 定松修一

     
 

 近年、開腹開胸術施行患者の早期離床を目的としたリハビリテーションが積極的
に行われてきている。当院においても地域支援病院での急性期医療を行うにあたり、
セラピストもチームの一員として周術期の治療に関わっている。
 今回、当院外科スタッフを中心に大腸切除術クリティカルパス(以下パス)を作
成したので、パス施行前後におけるリハビリテーションの流れを比較検討し報告する。
 パスは、平成16年10月から、医師・看護師・理学療法士・作業療法士等で作
成をはじめ、同年12月より適応患者にパスを使用している。内容は、入院から退
院までの全体の流れを表したオーバービュー(医療者用・患者用)と、治療・処置・
内服・検査・症状等を記載する日めくり式のパスである。この日めくり式パスにて、
日々の外科医師からの指示、コメディカルの指示受け・実施が確認され、内容のチ
ェックが可能となっている。また必要があれば共通情報欄に記入するようにしてい
る。
 リハビリテーション内容は、術後の合併症を予防する目的で、術前に足関節底背
屈・呼吸指導・排痰指導を行い、術後1日目よりbed上での足関節底背屈・呼吸・
排痰指導、可能であれば起き上がり・端座位・立位・歩行を実施する。歩行が安定
すれば1週間にてリハビリテーションを終了としている。
 今回大腸切除術パスを使用することにより、短期間での離床と機能回復を行うこ
とができた。術前よりリハビリテーションが関与し、パスの説明と指導を促すこと
で、術後の治療がスムーズに行えるようになった。

   
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  一般演題1 ② 当院における大腿骨頚部骨折のリハビリパスの紹介
   
石川病院 リハビリテーション科 横内俊弘 渡辺好隆
   
 

 近年の在院日数の短縮化により、医療の質を保ちながらいかに効率よく、かつ安
全性の高い医療の提供が求められている。このため、各医療分野においてクリニカ
ルパスが導入されている。特に、リハビリテーション分野では、多職種によるチー
ム医療であるため発症早期から各専門職がアプローチを進める上での情報の共用の
場としても必要不可欠である。整形外科疾患におけるクリニカルパスの利用頻度は
高く、安全性及び効率性からの面での効果が多く報告されている。
 当院では、患者用、医療用パスに加え、リハビリパス(以下リハパス)を用いて
いる。リハパスでは、立位や歩行などある程度の目標別に何段階の活動レベル(ス
テップ)を設定し、各ステップには中間アウトカムを設定し、達成することにより
次に進むといったステップ方式を採用し、患者に合わせてどのステップまでを退院
時のリハアウトカムにするか、最終的なリハビリゴールにするかを決定している。
 そこで今回、当院での大腿骨頚部骨折におけるリハパスを紹介し、現状と今後の
課題について検討して行きたい。

   
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  一般演題1 ③ 糖尿病チーム2年目を迎えて~ 一目でわかるパスを目指して~
   
村上記念病院 中尾知恵子
     
   当院では、数年前より医師と看護師、パラメディカルによる主に外来患者を対象と
して、月2回の糖尿病教室を行っていた。しかし、患者が糖尿病に関する知識と理解
を得、自己コントロールができるように支援するため、昨年4月より糖尿病チームを
結成し、教育入院指導の強化を始めた。それに伴い、医師の指導のもとにクリニカル
パスを作成し、昨年10月よりパスに基づき教育入院指導を行っているので現状報告
する。
 外来診察時、糖尿病教育入院が決定すると、医師はパスに目を通し、患者に不必要
な項目を消去する。外来看護師は、医師のパス確認後、病棟看護師に教育入院がある
ことを伝達する。病棟看護師は、各職種にFAXでその旨伝達する。患者入院後はパスに
沿って検査や指導を行う。2週間の教育入院中、指導教室は4回で、医師、看護師、
理学療法士、栄養士、薬剤師、臨床検査技師が指導にあたっている。病棟では、糖尿
病チーム以外の看護師教育スケジュールを組むこともあるが、マニュアルがあるにも
かかわらず、戸惑ったり、手続きが不十分なことがあった。また、常勤指導医師が1
名であるため、糖尿病専門外来非常勤医師の協力を得るには、指導教室の曜日変更が
必要となった。そこで、他の部分の修正もかねて、パスの改正を行った。
 新旧のパスの大きな違いは、患者に自身の目標を立てていただくところにある。
これは、他者の話を単に聞くだけでなく、自ら目標を立て評価することにより、教育
の意識付けや自己管理能力の獲得、強化につながることを目的とした。現在、患者用
パスは、文字が多くわかりにくいという意見もあり、イラストなどを取り入れ、より
理解しやすい工夫を考慮中である。また、入院後に患者個別の指導状況や理解度など
を、簡単に委員会で話し合っているが、より統一した教育と患者の個別性を考えた指
導、支援ができるよう、各専門職種間カンファレンスを委員会とは別に行う必要があ
り、現在準備中である。
   
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  一般演題1 ④

糖尿病教育入院クリニカルパスの現状と今後の課題

   

市立宇和島病院 看護師 ○川口ミサト 西川恵子 田中信枝 近藤俊子

   
   2003年5月にクリニカルパス(以下、パスとする)作成基準、2003年9月
にパス登録基準を決定し、現在32種類のパスを活用している。
 糖尿病教育入院パスは、2003年9月登録から2回の改訂を行い、合計52名の
患者に使用した。パス用ベッド2床を確保し、毎週火曜日に2週間の日程で男女交互
に入院の受け入れを行っている。
 入院中は、糖尿病の知識の習得、血糖コントロール、コメディカルによる療養指導
を行っている。入院1日目よりビデオを利用し糖尿病の正しい知識を知ってもらいな
がら、患者にあったペースで指導を進める。8日目には、入院中に学んだことを実践
できるように、一泊二日の試験外泊を実施している。また、コメディカルは、8日目に
症例カンファレンスを開き、情報交換や今後の治療についての意見交換を行い指導に
反映させる。病棟看護師は外来での継続指導が行えるよう、強化したい指導内容や、
注意事項などを退院サマリーに記入し、外来と連携をしている。退院後はHbA1C
検査値が、目立った変動もなく良好であったという成果が得られている。
現在、糖尿病指導を必要とする患者数は日々増加しており、ベット数2床では足りな
い状況が続いている。今後は、内服指導、食事指導とレベルに応じた短期のパス導入
も検討中である。また、CDEを中心に療養指導の質の向上を図るために、勉強会を
行っていく必要があると考える。
   
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一般演題1 ⑤

当院産婦人科におけるクリニカルパスについて

   

西条中央病院 山中研二

   
   西条中央病院産婦人科では、平成10年ごろより、クリニカルパス(当初はクリティ
カルパスの名称を使用。以下はクリニカルパスと表現を統一して説明する)の導入・整
備を進めてきた。現在、以下の如き8種類のクリニカルパス関連書類が存在している。
 1.婦人科開腹術(全身麻酔)、2.婦人科開腹術(腰椎麻酔)(卵管結さつ術目的)、
3.帝王切開、4.産褥期、5.膣式子宮全摘術(子宮脱手術目的)、6.子宮内清掃術
7.子宮筋腫手術(複式単純子宮全摘・筋腫核出術)
 今回、これら各種クリニカルパスの概要と、当産婦人科における平成16年4月から
平成17年2月における、使用状況を説明する。さらに加えて、最近作成した子宮筋腫
手術に関するクリニカルパスについて、工夫した点などの説明を行う。
   
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  一般演題2 ① 栄養士からクリニカルパスに対して何ができたか?
   
栄養部 ○越智 泉 黒子純子 松永尚子
外科   石井 博 循環器科 末田章三
     
 

 当院のクリニカルパス(以下パス)は、現在80 種類であるが、その使用率は約40%
である。パスのほとんどは、医師と看護師の共同作業によって作成されており、管理
栄養士は作成後のパスを月一回開かれる委員会で確認するのみであった。今回、院内
クリニカルパス大会において栄養部から提案し改善できた例を報告する。
 胆嚢摘出術のクリニカルパスでは、術後食事開始時の食種が普通食となっている。
平成14 年4月から平成17 年3月までに当院で腹腔鏡下胆嚢摘出術を受けた30症例を対
象に術後食事開始時の食種と摂取量を調査し、普通食が適当であるかどうか検討した。
その結果、一番多かった食種は五分粥食で次いで普通食,全粥食であった。摂取量は、
普通食においては80%以上の患者が2割以下の摂取であったが、五分粥食と全粥食にお
いては、約70%の患者が8割以上摂取していた。以上より、胆嚢摘出術後の食事開始時
の食種は、全粥食とした方がよいと考えられた。これらをパス大会にて提案し、パス
内容を変更した。

   
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  一般演題2 ②

当院循環器領域におけるクリニカルパスの取り組みと問題点

   

松山市民病院 薬局 葛城文子 松久知由 片岡梓 高田智子 井上智喜

   
 

【目的】
  当院薬局では、平成14年1月から心臓カテーテル検査(CAG)における薬剤管理指
導業務を行っている。CAG施行後に、引き続き経皮的冠動脈形成術(PCI)を行う症例が
多いため、通常3日間の入院日数が増え、バリアンスを生むこととなり、パスの一部
導入に留まっている。
 さて、昨年3月に承認された薬剤溶出型冠動脈ステント(Cypher)にかかわる標準的
な抗血小板療法の期間は3ヶ月とされ、塩酸チクロピジンが推奨されている。この副作
用を早期発見するには、初期症状の患者への説明を充実させる必要があるなど、現在の
パスにおける問題点と今後の課題を検討したので報告する。
【結果】
 当院循環器領域における服薬指導は、主治医・看護師が必要と判断した患者に対して
依頼される。特にCypherステント留置患者に対しては、看護師間でも必ず申し送りが行
われ、服薬指導も全症例に行う流れとなっている。2004年8月から2005年3月までの間に
当ステントを留置した患者は183例、うち176例に対して服薬指導を実施した(実施率
96%)
 また、薬剤管理指導業務におけるアウトカムを具体的に設定しチェックシートを作成
することで、患者への指導の方向性・目標が明確になり業務の充実につながった。逆に
問題点としては、①全症例がカバーできていないこと、②短期入院のため他の医療スタ
ッフとの連携が不十分な場合がある、などが挙げられた。
【総括】
 薬剤管理指導業務では、全ての患者を対象とした実施・質の向上が求められるが、そ
のためには業務の効率化・他の医療スタッフとのさらなる連携強化が必須である。医薬
品の適性使用の面でも貢献できるよう、随時見直しを行いたい。

   
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  一般演題2 ③

クリニカルパスにおける抗菌薬適正使用の推進

   

愛媛労災病院 薬剤部 小野雅文

     
 

 周術期抗菌薬予防投与においては、その有効性、安全性、経済性を考慮して抗菌薬
を投与する必要がある。周術期における抗菌薬適正使用において、
1.投与薬剤の選択 2.投与開始のタイミング 3.投与期間 の3点は重要なポ
イントであり、当院でもクリニカルパス作成時には薬剤師が関与し、適正な内容とな
っているかチェックを行っている。
 尚、現在のクリニカルパス作成の流れは下記のようになっている。
1.医師及び看護師(クリニカルパス委員)によるパス原案の作成。
2.薬剤部内で薬剤使用法のチェック。問題があれば原案作成者へ改善を依頼。
3.薬剤部からの改善依頼に対する返答
4.クリニカルパス委員会で最終確認を行い完成

H17年5月現在、当院では24種類の手術についてクリニカルパスが作成されて
おり、術後感染予防に用いる抗菌薬のうち88%を第1.2世代セフェム系・ペニ
シリン系薬が占め、投与期間は術日を含め平均3.2日となっている。今後 DPC
の導入に向け、更なる投与期間の短縮、よりコストパフォーマンスの高い薬剤への
移行が必要と思われる。

   
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  一般演題2 ④

クリニカルパス専任事務員からみたクリニカルパスの管理方法と問題点

   

独立行政法人国立病院機構 四国がんセンター
クリニカルパス専任事務員     山田 純子
クリニカルパス推進委員会委員長 河村 進

   
  【はじめに】
 クリニカルパス(以下パス)が使用開始されて5年が経過したが、パスの種類の増
加と度重なる更新によりパスファイルの管理が曖昧となってきた。
そこで昨年4月から、更新ファイル管理やスムーズなパス審査のために事務担当者を
設けることとなった。事務担当者として1年間パスに関わった経過と現状、今後の問
題点を報告する。
【経過と現状】
 1999年からパスの使用を開始し、2001年12月にパス推進委員会が発足した。毎月の
開催で、細分化された各ワーキンググループによるパスの報告を行ってきた。2003年
7月にはパス管理委員会が設置されてからはパスの審査と承認も行っている。 現在承
認されたパスは77件、平成17年3月の退院患者数に対するパス使用率は49.12%であっ
た。
 現在パス管理委員会は診療録管理委員会に統合され、月1回の委員会でパスの審査
がなされている。専任事務員の役割としては、審査申請されたパスを各委員が目を通
し易いような資料として配布し収集する。各委員が審査用紙に記載した疑問点や意見
を取りまとめ申請者に差し戻して回答を提出してもらう。委員会ではその回答を参考
に審議し承認か保留かを決定する。
 管理面では、パスファイルを確実に最新のものにするため専任事務員がそれを収集・
管理することとした。提出されたファイルは院内 LAN 上の全ての端末からファイ
ルが参照できるようにグループウェアソフトの文書管理機能を利用して、随時更新し
ている。これにより常に最新のパスの印刷が可能になった。
【今後の課題】
 現在の方法ではファイルの受け取りが受動的である為、最新であるかどうかの確認
が出来ない。専任事務員が印刷しているパスは常に最新のファイルであるが、使用件
数が少なく各病棟で印刷しているパスは、変更があっても把握できていないのが現状
である。確実に最新のファイルへと更新できるシステム作りが必要である。
 今後は、各端末で最新のパスが印刷できるように、さらにパスについての理解を深
めバリアンス収集などについてもスタッフの手助けが出来るよう取り組んでいきたい。
   
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  一般演題2 ⑤

電子カルテシステムによるクリニカルパス導入の試み  

            ~その利便性と問題点~
   

十全総合病院 脳神経外科 電子カルテシステム管理委員会 中村 寿

   
   十全総合病院では平成13年4月に電子カルテシステム導入プロジェクトを立ち上
げ、横河電機株式会社と病院情報システムの共同開発を行った。我々はすべての医療
従事者の操作性を重視することと、いろいろな施設のワークフローに柔軟に対応でき
るシステムにすることを開発コンセンプトとし、システムの基本モジュールを一つず
つ創り上げていった。そして、平成15年1月に愛媛県下の病院では最初の電子カル
テによる運用を開始した。
 システムの開発と現場での運用はいくつかの段階を踏みながら進めていったが、開
発当初よりその最終目標はスムーズなクリニカルパス運用のできるシステム構築であ
り、電子カルテの運用開始後2年経過した本年1月にパス機能をリリースした。
 元来コンピュータは定型的な作業処理に大きな威力を発揮する。その意味では電子
カルテシステムにおけるパスの機能は極めて有用なものと言える。特にオーダリング
機能との連携により、パス適用期間中のすべてのオーダーは主治医による初回適用時
の操作のみで完了してしまう。看護計画や処置・観察項目の設定なども同時に引用さ
れるため、入院などのタイミングでパスが適用されると多くの雑務が省力化できる。
またパスとは別に病院全体の情報がシステム化されていることにより、患者様に関わ
る医療者全員での情報共有が極めて容易となるが、このことがチーム医療を円滑に進
めることに大きく貢献している。
 一方、紙ベースでのパス運用と比べると曖昧さがない分、逆にささやかな融通を利
かせにくいという側面もある。
 実際のクリニカルパス導入に関しては、当院はかなり立ち後れている。院内各部署
の代表者によるクリニカルパス委員会が発足したのは1年半前であるし、委員会で院
内統一パスの承認作業を始めてまだ1ヶ月も経たない現状である。そのための混乱や
パス普及の遅延がある中での電子カルテシステムによるクリニカルパス導入の現状を
報告する。
   
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