第2回 愛媛クリニカルパス研究会大会
 
  『 愛媛県内の入院施設を持つ医療機関におけるクリニカルパスの普及と整備 』
 
◇ 抄録一覧
特別講演   「クリニカルパスと質の管理」 済生会熊本病院 副院長 TQMセンター部長 副島 秀久
一般演題① 「当院におけるクリニカルパスの導入と今後の課題」 愛媛労災病院 クリニカルパス委員会 南條和也
一般演題② 「婦人科化学療法のオールインワンパスの改善
          ― パクリタキセル・シスプラチン療法 ―」
独立行政法人国立病院機構四国がんセンター看護部 森脇寿奈美 他
一般演題③ 「患者個々のQOLに焦点をあてた糖尿病教育入院クリニカルパス」 松山赤十字病院  糖尿病医療チーム 看護師 高瀬裕子
一般演題④ 「当院白内障パス導入におけるチーム医療の推進とその効果
          ―現状と問題点―」
愛媛県立中央病院   山本恵美
一般演題⑤ 「経尿道的膀胱腫瘍切除術(TUR-Bt)のバリアンス評価と分岐パス作成」 独立行政法人国立病院機構四国がんセンター 看護部 佐伯光子 他
 
パネルディスカッション① 「当院における大腿骨頚部骨折のクリニカルパスの紹介
                   ― 人工骨頭置換術法とCHS法の比較検討 ―」
済生会西条病院 リハビリテーション科 山内 正雄 他
パネルディスカッション② 「チーム医療とクリニカルパス ― 現状と問題点 ―」 住友別子病院 看護部 齊藤君子
パネルディスカッション③ 「済生会今治病院におけるクリニカルパスの普及と整備」 済生会今治医療センター   クリニカルパス委員長  武田定典
パネルディスカッション④ 「四国がんセンターにおける薬剤科とクリニカルパスのかかわり」 独立行政法人国立病院機構 四国がんセンター 薬剤科 坂本 聡
パネルディスカッション⑤ 「クリニカルパスから展開するチーム医療に参画して」 松山赤十字病院 栄養課 中村英子
   
   
◇ 抄録    
  特別講演  クリニカルパスと質の管理
   
済生会熊本病院 副院長 TQMセンター部長 副島 秀久
     
 

クリニカルパスの最近の進歩
 クリニカルパス(以下パス)は、1980年代にアメリカで開発された疾患管理の
方法で、DRG/PPSの導入後に急速に普及した。日本では1990年代より紹介
され始めたが、インフォームドコンセントや医療の標準化と言った事が主目的であっ
た。パスは在院日数の短縮や経済効果のみが強調され、その医療の質管理といった普
遍的な意義に関してはあまり理解されてない。確かに初期のパスは予定表や指示簿の
域を出なかったが、最近のアウトカム志向のパスは治療の目標管理であり、治療成績
を比較的容易に出すことが出来る。更に標準的な治療の原価計算も容易に算出可能で、
従来のパスのコンセプトとは違った総合医療管理ツールとして発展している。したが
って無駄を省き効率化を行うことで個々の治療プロセスの改善が図られ、結果的に在
院日数が減少していく。すなわち最初に在院日数ありきではなく、退院時アウトカム
達成日が入院期間となるわけで、アウトカムが達成されれば早くても遅くてもかまわ
ない。問題はアウトカムすなわち治療目標を明確に設定しないまま医療が行われる事
と、それをスタッフ間で共有できてない事にある。

医療の質の管理
 アウトカムが達成出来ない場合や目標からはずれつつある場合をバリアンスとよび、
患者の個別性が発生しつつある事を意味している。多くのアウトカムのうち、とくに
治療経過に重大な影響のあるアウトカムをクリティカル・インディケータ-とよび、こ
れはすべての医療者が共有すべき重要な目標である。これは経験のある医療者では殆
ど頭の中にある治療上のポイントであるが、紙の上に明示し医療者間で共有しておく
ことが重要である。バリアンスを分析する事で、治療プロセスの中でどのような問題
があったかが明らかになる。すなわちバリアンス分析を行ってエピデンスに基づいた
改善のフィードバックがなされれば、治療成績の向上が期待できる。

 こうした質の改善をさらに効果的・持続的に院内全体に波及させるためには様々な
仕掛けが必要であり、パスのみならずTQM活動は今後ますます充実させる事が必要
です。われわれの実践はまだまだ不十分ですが、パスからTQMへ至る経過と質改善
の実際を紹介し、ご批判、ご意見を頂ければと考えております。

   
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  一般演題①

 当院におけるクリニカルパスの導入と今後の課題

   
愛媛労災病院 クリニカルパス委員会 南條和也
     
 

【はじめに】
  当院では平成14年2月にクリニカルパス(以下パス)委員会を組織し、パスの導入
活動を行ってきた。そしてさらに、バリアンスの集計、分析を行い、パスの改良も行
ってきた。そこで今回、パスの導入から現在までの経過と現状、今後の課題について
報告する。
【経過と現状】
  平成16年5月現在38のパスが作成されている。年次別の作成パス数は平成14年度16、
平成15年度22、平成16年度0であった。パスの使用率は全体で96.1%であった。科別
の使用率は内科29.1%、外科90.6%、循環器科99.6%、眼科99.7%、産婦人科96.5%、
整形外科30.4%であり、内科、整形外科は低く、循環器科、眼科、産婦人科が高かっ
た。なお、腰椎椎間板ヘルニア根治術など使用率の極端に少ないパスや腋臭症手術な
ど使用率0%のパスもあった。院内の職員に対する啓蒙活動としては、パス委員会で
TQM活動発表会を企画し、その中でパスに関する発表を行った。これまで3回開催し、
多数の職員の参加が得られた。バリアンスは現在オールバリアンス方式で集計、分析
を行っている。集計は平成15年4月より開始し、平成16年3月までのバリアンス数は1242
であり、パス適応数の60.5%であった。
そこでバリアンスの分析を行い、眼科、産婦人科のパスの変更を行ったところ、変更
前後のバリアンス数は眼科が適応数の20.8%から12.7%へ、産婦人科が153.2%から
87.5%へと半減した。
【今後の課題】
  1)さらにパスの数を増やす。現在統一フォーマットにてパスを作成しているが、違
ったパスも取り入れる。2)内科の使用率を上げる。使用率の低いパスについては、そ
の原因を分析し改良していく。3)学会発表など体外的な活動を積極的に行う。4)バ
リアンスの分析をさらに進める。アウトカムバリアンスも検討する。5)多方面からパ
スの効果について検討する。などが必要であると考えられた。

   
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  一般演題②  婦人科化学療法のオールインワンパスの改善
  ― パクリタキセル・シスプラチン療法 ―
   

森脇寿奈美1) 上田小須枝1) 中岡初枝1) 高田喜久美1) 野川孝充2)
独立行政法人国立病院機構 四国がんセンター 看護部1)、婦人科2)

     
 

【はじめに】
 当病院の婦人科では医師と共にパクリタキセル・シスプラチン療法のクリ二カルパ
ス(以下TPパスと略す)作成に取り組み、診療者用TPパスをガントチャート式で
作成した。クリニカルパス管理委員会承認後、32例使用したが有効に活用されていな
いことが多かったため、現在はオールインワンパスを作成し使用している。そこで、
現在使用しているオールインワンパスの問題点を明らかにし改善していくことで、有
効活用できるように日々検討している。
【目的】
 TPオールインワンパスの問題点を明らかにし改善点を検討する。
【方法】
 TPオールインワンパスを使用した看護師から意見を求め、問題点を提示した。
【結果】
 以下の9点を改善した。1.TPパスの使用開始をケモ前日から入院日に変更
2.アウトカムを具体的に表示3.嘔吐時のルーチン指示を変更4.点滴速度の変更
に伴いベナ錠の内服時間を変更5.ジェルコ針留置の明記6.経過記録の記入方法を
変更7.ケモ当日の観察事項であるジェルコ刺入部異常の記入方法の明示8.バリア
ンスシートの回収方法の明確化9.パクリタキセル過敏症出現時の対応方法の明確化、
を行った。
【考察】
 パスは流動的なもので常に見直しが必要なため、今後も他部門との連携を図り定期
的に見直し・改善を行っていく必要がある。

   
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  一般演題③  患者個々のQOLに焦点をあてた糖尿病教育入院クリニカルパス
   
松山赤十字病院  糖尿病医療チーム 看護師 高瀬裕子
     
 

【目的】
 我々糖尿病医療チーム(医師・外来及び病棟看護師・栄養士・薬剤師・理学療法士・
検査技師)は、それぞれが専門職の立場で情報を最大限に共有し、患者のQOLの向
上を基盤としたアウトカムに個別性を持たせるよう努力している。このようなチーム
医療を充実させるプロセスによって、個別性の対応に向けたクリニカルパス(以下、
パスと略す)を進化させることができたので報告する。
【方法】
1.既存のパスに各科専門医・検査技師を新たに加え、合併症の予防を目的としたパ
  スの充実を図った。
2.多職種のスタッフ全員で患者一人ひとりの治療・療養指導を検討するチームカン
  ファレンスを毎週開催することとした。
3.個々の患者が行動変容の必要性を認識し、退院後の行動目標を持てるような個人
  指導を充実させた。
【結果】
 医師が糖尿病の基礎知識を、看護師が日常生活指導を、栄養士・理学療法士・薬剤
師が治療の3本柱食事・運動・薬物療法を、各科専門医が合併症について、検査技師
が入院中施行する検査について担当する。このように数多くの専門職者が、各々の役
割を担い、各々の得た患者の情報を看護師がコーディネートすることによって、それ
ぞれが専門職として患者と向き合えるシステムを作った。その結果、患者に効率的・
計画的で、安心・満足が得られる医療の提供に大きな力を発揮している。

   
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  一般演題④  当院白内障パス導入におけるチーム医療の推進とその効果
   
愛媛県立中央病院   山本恵美
     
   当病棟では平成10年6月に眼科医師の異動と増員に伴い,それまで3週間だった白内
障の入院期間が1週間に短縮され、手術件数も大幅に増加した。業務が煩雑化する中で、
医療看護の質の保障は重要であり、その為にはパスの導入が不可欠であると考えた。そ
こで在院日数の短縮、患者満足の向上、医療看護の質の均一化、業務改善を目的に白内障
クリニカルパスへの取り組みを開始した。
 導入当初は看護師・医師による取り組みであったが、H11年、院長からパス推進の方
針が示された。その結果医師・看護師に加えて薬剤師・検査技師・医事課からなるチーム
での取り組みが行なわれ、毎月カンファレンスをもつことが出来るようになった。カン
ファレンスでは各部門が専門性を出し合い活発な意見交換を行なうことで、EBMに
基づいたパスの評価修正を行い、在院日数が短縮をできた。また入院費用の概算や一連
のスケジュールの説明を行なう事で、患者満足に繋がったと考える。
 パスはスタッフの教育ツールになり、新人からベテランまで均一化したケアができる
ため専門病棟以外でも入院を受け入れる事ができ、また入院期間が決まっているためベ
ッドコントロールが容易であり、有効な空床利用に役立っている。更に医師及びコメディ
カルがパス用紙を共有することで記録時間・情報収集の短縮ができ業務の改善とスタッ
フの満足に繋がった。
 今後は、高齢化に伴う転倒転落や服薬管理のアセスメントを現在のパス表にどのよう
に一体化して記録していくのか、検討が必要であると考えている。
   
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  一般演題⑤

 経尿道的膀胱腫瘍切除術(TUR-Bt)のバリアンス評価と分岐パス作成

   

独立行政法人国立病院機構 四国がんセンター
看護部  ○佐伯光子 青木清美 宮内一恵
同泌尿器科  橋根勝義 住吉義光

     
   当泌尿器科では、2003年2月よりTUR-Btの日めくり形式オールインパス
を使用している。2003年2月から8月までにTUR-Btを施行した膀胱癌患者
35名に対してパリアンスを収集し、その内容(正・負、変動・逸脱)について検討、
分岐パスを作成した。
  パスからの脱落例は35例中16例に認めたが、そのうち10例は病理組織検査の
結果術後追加治療(BCG膀注)が必要となり脱落した。残りの6例は、腎孟癌から
の再発で追加検査が必要2例、他の重複癌3例、腫瘍が大きく再手術が必要1例であっ
た。逸脱は血尿が持続した1例、穿孔のためバルン抜去までに1週間を要した1例で
あった。変動の多くは術後1日目のシャワー浴で、実施した人はほとんどなかった。
その他の変動は、前日入院でなかったもの、追加検査がなされたもの、合併症のため
に点滴などが変更になったもの、血尿を認めたものであった。またバリアンスはすべ
て負で正のバリアンスはなかった。
  バリアンスの分析結果から術後の追加治療の多くは膀注療法であるため、BCG膀
注の分岐パスの作成をした。
   
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パネルディスカッション①

当院における大腿骨頚部骨折のクリニカルパスの紹介
  ― 人工骨頭置換術法とCHS法の比較検討 ―

   

済生会西条病院  リハビリテーション科
○山内 正雄 渡部 俊郎 工藤 和美
明比 統祐 水間  恒 山下亜紀子
山田 睦美 末廣 忠延

     
   近年の医療保険制度改革に伴う大幅な診療報酬の改定により、亜急性期を含む急性
期医療と慢性期医療に大別されるようになってきた。そして、急性期医療を担う病院
においては、在院日数の短縮が進み、素早く・的確な判断に基づく効果的な治療が必
要となってきた。また、高齢者の急速な増加に伴う医療費の高騰は、出来高制による
報酬から、DPCによる包括診療報酬に変わろうとしている。
 1980年に米国で登場したクリニカルパスは、導入当初こそ批判を浴びたものの、
現時点では他職種間での情報の共有化、医療・ケアの標準化、インフォームドコンセ
ント、在院日数の短縮化等のため、その必要性が認識されて我が国においても急速に
普及してきている。
 当院においても、平成14年12月より各科の医師とコメディカルスタッフによる
クリニカルパス委員会を設置し、毎月会合を開き、個々の疾患に対するパスを作成し
使用してきている。しかし検査入院等の一部のバリアンスが少ないパスは比較的順調
に使用されているものの、高齢者が多く罹患する脳血管障害や大腿骨頚部骨折等に伴う
入院に関しては、バリアンスが多くあまりうまく活用されていないのが現状である。
 今回我々は、昨年5月に作成した大腿骨頚部骨折のクリ二カルパスに、過去1年間
の大腿骨頚部骨折患者の入院から退院までの理学療法のデータに基づいて、患者さん
の安静度についての検討を加え、今年の5月より修正を加えたクリニカルパスを使用
しているので報告する。
   
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  パネルディスカッション② チーム医療とクリニカルパス ― 現状と問題点 ―
   
住友別子病院 看護部 齊藤君子
     
 

 クリニカルパスは、医療の効率化と標準化、在院日数の短縮、チーム医療の実践、
情報開示さらにはインフォームドコンセントの充実(患者参加型の医療)に成果を上
げている。今回、われわれはPTCDを中心にクリニカルパスのチーム医療における
有用性について報告する。
 当院では地域中核病院として、急性期医療に対応すべ<1999年から医師、看護師、
コメディカルからなるクリニカルパス委員会が発足された。このパス委員会を中心に
現在、72のパスが作成され、運用されている。当消化器病棟でも消化管のEMRや胆
膵系の治療を中心に5つのパスが運用されている。
 従来は医師の指示が出て初めて、各スタッフが対応を考える状況であったが、クリ
ニカルパスを使用することにより、全てのスタッフにあらかじめ、どのタイミングで
何を行うべきかが知らされるようになった。このことがチーム医療の中でそれぞれの
スタッフが、自分の担うべき役割を明確に理解し、それをより高めていくよう努力す
るうえで大きな手助けになっていることは言うまでもない。特にPTCDのように処
置後のケアが日々変化していくものはパスなしではどの段階でどのような対応が行わ
れるのか理解しづらい。看護計画を立ててケアや精神的なサポートを行なったり、問
題点を検討する上でPTCDのパスを利用することにより、チーム内で情報を共有し、
意思の疎通をはかることが可能になった。加えてオーダーリングシステムとリンクす
ることにより、指示に関わる労力が減り、間違いの少ない指示が出せるようになって
いる。
 しかし、まだ、パス作成をして運用するだけで分析まで行う余力がなく、アウトカ
ム設定とバリアンスの分析がなされていない現状である。今後はさらにアウトカムと
バリアンスの内容を細かく分析し、対応策を考え、工夫を加えていく予定である。

   
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  パネルディスカッション③

済生会今治病院におけるクリニカルパスの普及と整備

   

済生会今治医療センター   クリニカルパス委員長  武田定典

     
 

 済生会今治病院においては、平成10年6月からクリニカルパスを導入し、平成12年9
月にクリニカルパス委員会が発足した。以来合計80あまりのパスが作成され、実際に
運用されており、一部のパスは数回の改変を加えている。また、パス大会は平成13年
10月に第1回が催され、この6月に第6回の大会が施行された(予定)。今回我々は、当
院におけるクリニカルパスの現状を確認し、今後の展開につき検討した。
  当初パスの作成に当たって、同時多発的に作成を開始したこともあり、統一したフ
ォーマットがなかった。そのため平成14年より、いつでもどこでもどんな疾患でも
フォーマットを統一するにすることによって、所属部署が変わっても、また疾患が変
わってもパスに関しては同一の認識が可能になり、また作成上も比較的容易にでき、
だれもがパス作成に参加できることを目指してパスの作成を重ねてきた。今回はこの
第1次のパスについて、十分な検討を加えるとともに、今後、議論を重ねていきたい
第2次のパスについてわれわれの試行錯誤について報告する。あわせてチーム医療を
進めるに当たっての当院での試みについて報告する。

   
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  パネルディスカッション④

四国がんセンターにおける薬剤科とクリニカルパスのかかわり

   

独立行政法人国立病院機構 四国がんセンター 薬剤科 坂本 聡

     
 

【はじめに】
 薬剤科においては薬剤管理指導業務、抗がん剤無菌調製業務の実施により、薬剤の適
正使用に努めている。今回乳がん化学療法パスを例に服薬指導業務、外来化学療法との
連携について紹介する。
【当院薬剤科の概要】
 薬剤師7名 助手3名
 院外処方箋発行率 89.0%(2003年度)
 薬剤管理指導件数 750件(2003年度)
 抗がん剤無菌調製件数 4,403件(2003年度)
【結果とまとめ】
 当院においては1999年より乳がん手術パスが導入され、その後各科においてパスが
導入され現在認定されたものは56件にのぼる。
 2003年4月より乳がん化学療法パスが運用を開始された。本パス開始時には服薬指導
も行われ薬剤師による薬剤、副作用、投与スケジュール等の説明を実施している。また
同月より外来化学療法室(通院治療室)が開設された。外来化学療法において薬剤科で
はレジメン、プロトコール票(レジメン・薬剤・用量・ BSA・スケジュール等を記載)、
注射箋による薬剤、投与量、投与間隔等の監査及び無菌調製を実施している。
 乳がんの補助化学療法は通常、初回のみ入院で実施され2回目以降は外来で行われ
るため、乳がん化学療法診療用パスの表紙をプロトコール票としても利用して、外来
を含めたスケジュールが記入できるものとした。これにより入院から外来へ移行時の
情報の把握が容易になった。

   
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  パネルディスカッション⑤

クリニカルパスから展開するチーム医療に参画して

   

松山赤十字病院 栄養課 中村英子

     
   当院におけるクリニカルパス(以下パス)が発展しているなか、管理栄養士もパ
スに参画している。いまや、医療職の壁を越えて全職種で関わるようになり、栄養
士の役割を再構築する機会となっている。なかでも、従来の糖尿病教育入院にパス
が導入され、パス作成から関わり医療チームの役割が明確化された。
 当初3週間から2週間に入院期間が短縮され、患者中心の医療サービスを提供し
ていく事を年頭において試行錯誤を重ね、個々の患者に応じたアウトカムにそって
医療チームで療養指導を進めている。医療ケアは、医師,看護師,薬剤師,理学療
法士,検査技師,栄養士が、チーム医療の要であるカンファレンスや病棟回診を毎
週実施し患者情報などを共有している。
 そこで、栄養士はパスとどのように関わっているか報告する。まず、栄養指導は
患者参加型の教育カリキュラムや体験学習を取り入れながら集団指導と個人指導を
行っている。また、多くの人が関われるよう家族参加を呼びかけている。なお、退
院後の継続管理において個々の患者のアウトカムに応じ支援をしている。
 今後、すでに運用されているパス,そしてNSTの栄養管理(栄養スクリーニン
グ、栄養アセスメント、栄養ケアプラン、実施、モニタリング、評価など)を体系
的に取り組み成果があげられるようスキルアップ に努めたい。
 また、バリアンスについてアウトカムの判断基準に照らした設定が的確に行われ
ていない現状もあり、今後の検討課題としたい。
   
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