101-110

101.血液透析をしながら働く壮年期男性の周囲の人々との関係 非糖尿病性腎症患者の場合
 Author:鈴木美津枝(獨協医科大学 看護学部), 稲垣美智子
 Source:日本腎不全看護学会誌(1344-7327)10巻2号 Page56-63(2008.11)
 論文種類:原著論文
 Abstract:血液透析をしながら働く壮年期男性が周囲の人々との関係をどのように捉え、人間関係を結んでいるのかを明らかにすることを目的に、30~60歳の壮年期で透析治療導入から3年以上が経過している男性患者11名を対象に半構成的面接を行った。内容分析の結果、【透析をしている自分と周囲の人たちとの関係を自分が調整する】をコアカテゴリーとする、以下の10のカテゴリーが抽出された。1)透析をしている自分と周囲の人たちとの関係を自分が調整する。2)透析をしながら普通の人と同じように働ける。3)周囲の人たちが透析前と変わらない。4)透析をしながら普通の人と同じように楽しい時間を過ごせる。5)透析をしながら働くことが難しい。6)過去の経験が現在の働くことへつながる。7)世の中の人は透析を知らない。8)体調を支えてくれる医師の存在がある。9)透析しながらの生活は特別ではない。10)透析は羽休めである。

102.肥満となった若年男性労働者の就職以降に体重増加に繋がった要因の背景
 Author:田甫久美子(金沢大学 大学院医学系研究科保健学専攻看護科学領域博士後期課程), 稲垣美智子, 釜谷友紀, 山崎松美
 Source:金沢大学つるま保健学会誌(1346-8502)32巻1号 Page69-76(2008.07)
 論文種類:原著論文
 Abstract:肥満となった若年男性労働者を対象に就職以降に体重増加に繋がる要因の背景を明らかにする目的で、質的研究を行い体重増加に繋がる思考・行動を抽出し面接聞き取り調査を行った。対象は20歳以上35歳未満で、フルタイムで勤務しており、就職以降にBMIが1以上増加したBMI25以上の男性とした。質問項目は体重増加の要因と考えられる8項目で、「定期的な運動習慣の有無とその運動強度」8カテゴリー・「バランスのとれた食事時間と食事内容」4カテゴリー・「食事の過剰摂取」6カテゴリー・「食事時間がもつ価値」3カテゴリー・「ストレス」7カテゴリー・「健康管理意識」8カテゴリー・「体格認識」9カテゴリー・「食べ物を提供する相手との関係性」3カテゴリーの計48カテゴリーが抽出された。面接聞き取り調査に協力が得られた20名と参考意見が聴取された3名の計23名(平均33.2±1.3歳・身長171.9±3.8cm・体重80.3±11.8kg・腹囲93.1±10.0cm)であった。その結果、健康意識では仲間の存在が別格であり、仲間と一緒であることがキーワードとなっており、肥満と健康という言葉は繋がっておらず、減量や体力維持という言葉との繋がりが強かった。若年男性労働者にとっては健康への関心よりも成人社会における新たな仲間の中でのアイデンティティの確立のための模索により多くの関心が寄せられていることが推測された。また肥満となった若年男性労働者では目の前の食事は全て平らげるものだという刷り込みがあること、食べ過ぎの指標は満腹になるかならないかであることであった。このことから感覚的な食べすぎからエネルギー過剰摂取が食べすぎであるという知識の伝授が必要であることが示唆された。以上より、就職以降に体重増加に繋がる要因の背景を48カテゴリー抽出し質問紙として調査した結果、肥満に繋がる思考・行動から健康教育・保健指導の方略が示唆された。

103.終末期がん患者のスピリチュアルペインが緩和される過程 看護により癒される体験から
(A process for mitigating spiritual pain in patients with terminal cancer: the experiences of patients to help palliative care nurses)(英語)
 Author:高橋正子(金沢大学 医学系研究科保健学専攻), 稲垣美智子
 Source:金沢大学つるま保健学会誌(1346-8502)32巻1号 Page49-57(2008.07)
 論文種類:原著論文
 Abstract:緩和ケア病棟に入院している終末期がん患者16名と担当看護師12名を対象に非構成的面接を行い、語られた内容を解釈学的現象学的に分析した。その結果、研究に参加された終末期がん患者16名のうち看護師の関わりによりスピリチュアルペインが緩和された者は12名であった。終末期がん患者のスピリチュアルペインが緩和される過程では、患者と看護師は、投企された世界に共同存在しており、看護師が「残された時間を意識したケア」を個別に配慮をしながら関わっている中で、患者が「身体的苦痛の緩和」と「自分のことを気遣ってくれている言葉や行動」と認知した時に、状況を肯定的に意味づけし、嬉しく思い、癒されていくことが明らかになった。以上より、「身体的苦痛の緩和」が前提として重要であることと、理解した上での患者への「配慮された言葉かけや行動」が患者の見方を変化させ、意味を見出す契機となっていることが示唆された。また、看護師の関わりでは、患者への「関心」が患者への「配慮」を導いていた。患者にとって癒された体験として語られた内容は、患者が最も辛いと感じていることに関連していた。

104.糖尿病患者の食事療法に対する認識に焦点を当てた看護ケアの提言
(A proposal for the nursing care of diabetics focusing on their perception of food therapy)(英語)
 Author:渡邉亜紀子(金沢大学 医学部保健学科), 稲垣美智子
 Source:金沢大学つるま保健学会誌(1346-8502)32巻1号 Page25-37(2008.07)
 論文種類:原著論文
 Abstract:糖尿病患者13名を対象にインタビューを行い、10の食事療法に対する認識のサブカテゴリーが明らかとなった。それらは「規範」「葛藤の自覚」「有能感の取得」「統合」の四つのカテゴリーに統合され、「規範」から「統合」の順に認識が発展していくことで、望ましい食事療法が実施できていることが明らかとなった。また、量的アプローチとして、質的アプローチで明らかとなった10のサブカテゴリーと患者の基本属性より、研究者が独自で質問紙を作成し、糖尿病患者103名より有効回答を得た。分析の結果、糖尿病患者の食事療法の認識は、「影響要因」「他律的認識」「自律的認識」の3因子に分類され、「影響要因」より「他律的認識」へ、「他律的認識」より「自律的認識」へと因果関係が認められた。

105.要介護透析患者にかかわる家族介護者の在宅ケアの構造に関する研究
(Research on the structure of home-based nursing care provided by family caregivers responsible for dialysis patients requiring nursing care)(英語)
 Author:林一美(金沢大学 医学系研究科保健学専攻), 稲垣美智子
 Source:金沢大学つるま保健学会誌(1346-8502)32巻1号 Page1-12(2008.07)
 論文種類:原著論文
 Abstract:石川県内に在住する10の透析センターにおいて通院治療中の要介護透析患者にかかわる家族介護者22名を対象に、半構造的面接を実施し、修正版グランデット・セオリー・アプローチでデータ分析した。その結果、家族介護者の在宅介護継続の経過において、透析介護への自己投入、介護体制を整えていく・療養の要領をつかむ、介護と生活が落ち着く、の三つの段階が見いだされ、「在宅介護獲得プロセス」と命名した。介護者は常に「余命を意識した介護」という思いを抱えており、それが、"介護体制を整えていく・療養の要領をつかむ"段階の中心部にあり、"生活株式の転換"、"透析時間に合わせた生活時間の調整"、"透析介護に関する要領の体得"である介護の取り組みに影響を与えていた。

106.糖尿病患者の家族サポートと血糖コントロールとの関連 自己管理の姿勢、情報の共有に焦点を当てて
 Author:村角直子(金沢大学 大学院医学系研究科保健学専攻看護科学領域), 稲垣美智子, 多崎恵子, 松井希代子
 Source:日本看護科学学会学術集会講演集27回 Page239(2007.11)
 論文種類:会議録

107.Failed Back Surgery Syndromeの患者の手術や痛みの体験と生活の意味づけ
 Author:山口恵子(金沢看護専門学校), 稲垣美智子
 Source:日本看護科学学会学術集会講演集27回 Page207(2007.11)
 論文種類:会議録

108.専門外来から 医師と看護師および患者の糖尿病薬物治療における考えかた・かかわりの違い
 Author:小泉順二(金沢大学附属病院 総合診療内科), 多崎恵子, 尾山治, 前田哲生, 浅野昭道, 北谷真子, 八木邦公, 野村英樹, 稲垣美智子
 Source:プラクティス(0289-4947)25巻5号 Page586-592(2008.09)
 論文種類:原著論文
 Abstract:医師5名、糖尿病専門医3名、総合診療医2名、看護師2名、糖尿病看護経験10年の大学院生2名、糖尿病患者4名を対象に、糖尿病薬物療法への考え方・立場についてアンケート調査を行った。医師、看護師、患者の3グループに分け、糖尿病薬物治療に関して各々グループワークで意見交換した。その後、思いついたことをカードに記入してもらい、KJ法で質的に検討した。医師は、病態を考慮して患者のアウトカムを考え、実施に当たっては薬物の特徴や患者の特性を考慮するとの意見であった。看護師は、看護師は処方権が無く、医師の指示で医療を行い、薬物治療の実施にどのように関わるかは医師との関係を含めた職場環境が影響し、実施に当たっては患者の特性を考慮するとの意見であった。患者は、薬物療法を受容する前提に疾病受容、自己効力があり、不安・心配などの考えと、医師との治療方針の一致や治療方針決定における態度に折り合いが付くことで薬物治療を受容する考え方が示された。

109.看護師の糖尿病教育スタイル別チーム連携の意識と実践意欲の実態
 Author:多崎恵子(金沢大学 医薬保健研究域保健学系), 稲垣美智子, 松井希代子, 村角直子
 Source:糖尿病(0021-437X)51巻8号 Page797-802(2008.08)
 論文種類:原著論文
 Abstract:糖尿病教育における看護師のチーム連携の意識や実践意欲の実態を教育スタイル別に明らかにし比較することを目的に,質問紙による全国調査を行い1,096通の有効回答を得た.その結果,看護師のチーム連携の意識や自信・意欲は「心に密着し生活心情がみえているスタイル」で最も高く,次いで「冷静で距離をおく生活心情がみえているスタイル」であった.最も低かったのは「一般的知識を提供するスタイル」であり,このスタイルの看護師に対し,チーム連携の意識や自信・意欲が持てるよう何らかの支援が必要と考えられた.また3スタイルとも,他職種から信頼されている手応えは比較的低い傾向であり,現行の患者教育への満足感も低い結果であった.看護師の他職種とのチーム連携の意識を高めるとともに,各職種が医療チームとして連携できるシステム整備の重要性が示唆された.(著者抄録)

110.2型糖尿病患者への家族介入に対する看護師の認識
 Author:横堀智美(金沢大学附属病院), 岡野英里, 角真代, 樋口麻衣子, 柳澤絵美, 多崎恵子, 稲垣美智子
 Source:日本糖尿病教育・看護学会誌(1342-8497)12巻2号 Page128-135(2008.09)
 論文種類:原著論文
 Abstract:2型糖尿病患者への家族介入をどのように看護師が認識しているのかを明らかにすることを目的に、17名の参加者を得て、質的因子探索研究を行った。データを分析・検討した結果、以下の結論に達した。看護師の2型糖尿病患者への家族介入に対する認識は、【協力者としての家族を認知する】、【患者・家族相互関係の功罪を認知する】、【患者・家族がともに歩むきっかけをつくる】、【家族ととにかく話す機会を設ける】、【具体的な行動変化により効果を判定する】、【静かな態度の変容により効果を判定する】、【もう一歩家族介入に踏み出せない】、【業務のなかで家族介入の優先順位が上がらない】の8つであった。以上のことから、今後の看護師の取り組みの方向性として、看護師が家族介入の確かな技術力をもつこと、家族介入が実践されやすくなる看護師教育およびシステムの整備が課題であることが示唆された。(著者抄録)