会長挨拶

会長挨拶  

一般社団法人日本補体学会会長  井上徳光   和歌山県立医科大学 分子遺伝学講座   
若宮伸隆

       日本補体学会のさらなる飛躍をめざして

去る9月6日に開催されました理事会及び第57回日本補体学会総会におきまして、酪農学園大学 若宮伸隆教授の後任として、一般社団法人日本補体学会会長を務めるよう推挙されました。

私は、小児科医として世界初症例の先天性CD59欠損症の患者様との出会いをきっかけに、発作性夜間ヘモグロビン尿症の病態を解明するために、1991年から大阪大学微生物病研究所の木下タロウ教授のご指導のもとで、特別研究学生として補体研究を始めました。それから約30年間、補体研究に何らかの形で関わってきました。

2009年からは、木下タロウ前々会長のもと事務局長を野中勝氏より引き継ぎ、11年に渡って日本補体学会の事務局運営に携わってきました。この間に、木下タロウ前々会長から若宮伸隆前会長に引き継がれ、2014年に企業からの研究サポートが受けやすい形態にするために、補体研究会から一般社団法人日本補体学会に組織再編が行われました。さらに、2016年には藤田禎三氏をChairとして、26th International Complement Workshop (ICW)のSecretaryとして金沢市での開催のお手伝いをさせていただきました。そして、この度、日本補体学会のさらなる発展のために会長に推挙されましたので、微力ながら精一杯がんばっていく所存です。 

1964年に第1回の補体シンポジウムが東京で開かれてから毎年開かれてきた補体シンポジウム・学術集会でしたが、今年は、新型コロナウイルスの感染拡大により、第57回日本補体学会学術集会の開催の1年延期を余儀なくされました。ドイツベルリンで開かられる予定だった28th ICWも同様に1年延期となり、人類にとって大きな危機に直面しています。しかし、補体研究の世界では、新型コロナウイルス感染症の重症化に補体の関与が示され、これまでのC5を標的にした治療薬のみならず、他の補体経路や補体タンパク質を標的にしたいくつかの抗補体薬の治験も進んでおり、今後、ますます多くの補体を標的にした治療薬が登場してくると考えられます。そのため、世界的に補体に対する注目度は上昇しています。

日本補体学会の会員数も、年々少しずつ増加し、補体や補体が関連する疾患に対する医師や研究者の関心は少しずつですが高まりつつあります。臨床的に、抗C5モノクローナル抗体eculizumabの適応疾患が、発作性夜間ヘモグロビン尿症 (PNH)(2010年)に加え、第2経路の制御異常が原因の非典型溶血性尿毒症症候群 (aHUS) (2013年)、自己抗体が原因の免疫グロブリン大量静注療法又は血液浄化療法による症状の管理が困難な全身型重症筋無力症 (2017年)、視神経脊髄炎スペクトラム障害の再発予防 (2019年)に拡大しています。さらに、長時間作用型の抗C5モノクローナル抗体ravulizumabがPNH (2019年)とaHUS (2020年)に適応となりました。

遺伝性血管性浮腫 (HAE)に対しても、血液製剤である乾燥濃縮ヒトC-1インアクチベーターのみでしたが、新たにブラジキニンB2受容体遮断薬(icatibant)が加わりました。このように、この10年間で多くの抗補体薬が日本で承認され、今後も補体関連疾患の適応拡大や、新規抗補体薬の承認が続くと思います。これらの薬の登場によって、日本の補体関連疾患に対する注目度は高まってきていますが、多くは、これまでの日本も含めた世界の補体研究の進歩に支えられています。この先10年〜20年後の発展のためには、基礎的な補体研究の底上げが必要と考えられます。確かに、日本補体学会の会員数は毎年増加してきていますが、まだまだ日本からICWやEuropean Meeting on Complement in Human Diseaseなどの国際学会に参加する研究者が少ないのが現状です。今後、日本から世界に日本の補体研究が発信できるよう、日本補体学会を発展させていきたいと思います。 

今回、日本補体学会会長に就任するにあたり、日本補体学会を発展させるためには、日本補体学会を牽引する新体制の構築が極めて重要と考えています。第57回日本補体学会総会で新たに赤津裕康氏(名古屋市立大学医学研究科 教授)を加えた12人の新理事が選出されました。さらに、これまで日本補体学会の発展に寄与いただいた堀内孝彦氏(九州大学病院別府病院 院長)には引き続き副会長として日本補体学会をサポートしていただくと共に、新たに、水野正司氏(名古屋大学大学院医学系研究科 教授)に副会長になっていただきました。また、私が長年務めさせていただきました事務局長の後任は、関根英治氏(福島県立医科大学 教授)にお願いしました。これからの日本補体学会を発展させる強力な布陣を作る事ができたのではないかと考えています。 

2021年度は、大阪大学 村上良子氏を集会長として延期となっておりました第57回日本補体学会学術集会が大阪で9月10日 (金) ・11日 (土) に開かれます。皆様、来年、大阪で会いましょう。今後とも、皆様のご指導ご鞭撻をよろしくお願いいたします。 
                                                                   

(2020年12月吉日)

 

 

 

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補体学会の足跡

一般社団法人日本補体学会の沿革

1964年
第1回補体シンポジウムが箱根で開催される(8月30, 31日)
(集会長 進藤宙二, 世話人 西岡久壽彌)
1968年
日米補体セミナーが東京で開催される(11月11~13日)
1983年
International symposium on frontiers of complement researchが伊勢志摩で開催される(9月1~3日)
(組織委員 西岡久壽彌、橘武彦、井上公蔵、高橋守信)
1985年
補体研究会会則が施行され、正式に研究会が組織される(3月1日) (事務局長 岡田秀親)
1993年
第15回International Complement Workshop(国際補体学会)が、アジアで初めて日本で開催される(9月26~10月1日)(集会長 井上公蔵)
1994年
初代補体研究会会長に岡田秀親が就任
2002年
「補体学への招待」を補体研究会から発刊 (PDFはこちらから)
2010年
遺伝性血管性浮腫(HAE)ガイドライン2010を補体研究会から発表
2010年
「補体学入門」を、北村肇が発刊
2011年
「補体への招待」を補体研究会から発刊
2014年
学会誌として「補体」を発刊
2014年
一般社団法人日本補体学会に移行し、若宮伸隆が引き続き会長に就任(9月3日)
2014年
遺伝性血管性浮腫(HAE)ガイドライン改訂2014年版を発表(12月22日)
2015年
2015年7月14日付けで日本学術会議協力学術研究団体に指定
2016年
第26回International Complement Workshopが金沢で開催決定(集会長 藤田禎三)
2020年
井上徳光 会長に就任(9月6日)
2020年
遺伝性血管性浮腫(HAE)ガイドライン改訂2019年版を発表
歴代会長

1994~1997年 岡田秀親(補体研究会)
1997~2003年 藤田禎三(補体研究会)
2003~2007年 瀬谷 司(補体研究会)
2007~2013年 木下タロウ(補体研究会)
2013~2014年 若宮伸隆(補体研究会)
2014~2016年 若宮伸隆(一般社団法人日本補体学会)
2016~2020年 若宮伸隆(一般社団法人日本補体学会)
2020年~ 井上徳光(一般社団法人日本補体学会)

 

会長補佐および副会長

2005~2007年 木下タロウ(補体研究会・会長補佐)
2008~2013年 野中 勝(補体研究会・会長補佐)
2013~2014年 堀内孝彦(補体研究会・会長補佐)
2014~2016年 堀内孝彦(一般社団法人日本補体学会・副会長)
2016~2020年 堀内孝彦(一般社団法人日本補体学会・副会長)
2020~2022年 堀内孝彦・水野正司(一般社団法人日本補体学会・副会長)

学会組織

理事会

会長 井上 徳光
副会長 堀内 孝彦     水野正司
理 事 赤津 裕康
今井 優樹
大谷 克城
奥 健志
関根 英治
塚本 浩
中尾 実樹
西村 純一
堀内 孝彦
水野 正司
村上 良子
監 事 宮川 周士
若宮 伸隆
事務局長 関根 英治
次期集会長 堀内 孝彦
次々期集会長 西村 純一

各種委員会

  • 研究推進委員会
  • 委員長 堀内 孝彦
    副委員長 中尾 実樹
  • 学術委員会
  • 委員長 村上 良子
    委員 塚本 浩
    大谷 克城
    堀内 孝彦
    西村 純一
  • 学会誌編集委員会
  • 委員長 水野 正司
    委員 赤津 康浩
    今井 優樹
  • 国際委員会
  • 委員長 関根 英治
  • 教科書編集委員会
  • 委員長 西村 純一 
    委員 木下 タロウ
    堀内 孝彦
    村上 良子
    植田 康敬
    井上 徳光
  • 倫理・利益相反委員会
  • 委員長 塚本 浩 
    副委員長 竹田 憲司
  • 広報委員会
  • 委員長 井上 徳光 

名誉会員

※五十音順

 天野哲基
 大井洋之
 岡田則子
 岡田秀親
 北村 肇
 近藤元治
 田村 昇
 野中 勝
 松尾清一

賛助会員

※五十音順

 旭化成ファーマ株式会社
 アレクシオンファーマ合同会社
 Rx Healthcare
 サノフィ株式会社
 CSL Behring株式会社
 重松貿易株式会社
 Swedish Orphan Biovitrum Japan 株式会社
 武田薬品工業株式会社
 鳥居薬品株式会社
 株式会社日本臨牀社
 ノバルティスファーマ株式会社

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日本補体学会事務局

事務局

〒960-1295  福島市光が丘1 
公立大学法人福島県立医科大学  免疫学講座内 

事務局長 : 関根 英治 
Tel : 024-547-1148    Fax : 024-547-1148
E-mail : xxxxx-gakkai@umin.ac.jp (xxxxxにhotaiと書いて下さい)

経理関係事務

竹田公認会計士事務所
〒541-0041 大阪市中央区北浜2-5-23 小寺プラザビル6F
TEL:06-6282-7568

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日本補体学会ロゴマークについて

ロゴマークについて

シンボルマーク

一般社団法人日本補体学会は、39個のComplementによって、ComplementのCをかたどったマークをロゴに使用しています。また、ヘッダーの紫、ピンク、オレンジからなる3本の帯は、それぞれ、レクチン経路、古典経路、第2経路を表しています。いずれも、神戸常盤大学客員教授の北村肇先生のデザインです。

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