第3回がん三次元培養研究会 報告記

「三次元培養に基づくがん精密医療への展開」


第3回のがん三次元培養研究会年会が、予定通り2019年11月18日(月)に行われましたので、御報告させていただきます。
 文責:代表幹事 岡本 康司

1. 学会概略

第3回研究会は、国立がん研究センター新研究棟にて、「三次元培養に基づくがん精密医療への展開」をテーマに行われました。 三次元培養研究者の発表を中心としたメインプログラムは、午後1時過ぎより6時過ぎまで大会議場で行われました。 一方、ポスターセッション及び企業展示は、隣接するセミナールームにおいて行われました。


2. 学会発表

当研究会の顧問である間野博行研究所長による開会のご挨拶の後、9名のアカデミアの先生方による、それぞれの最新の研究知見に関する発表が行われました。 三次元培養法については、がん臨床検体のオルガノイド培養、スフェロイド培養、CTOS法などの培養法による研究成果や、Patient-Derived Xenograftを介した研究法についても紹介がなされました。 また、これらの培養系を基盤として、iPSの応用、様々な共培養系やイメージング法等の新たな展開による知見が紹介されました。 特にこれらのモデルの解析を通じて、がん不均一性を理解する試みが何人かの演者から報告されており、これからの方向性であると思われました。 これらの発表内容に関して、基礎研究及び臨床研究の側面から活発な質疑応答が行われました。


3. ポスター

アカデミアの研究者による22演題のポスターセッションが行われました。学会発表の間に、質疑応答の時間を設けましたが大変な盛況でした。


4. 企業展示

7社(SCREENホールディングス、株式会社マトリクソーム、株式会社ベリタス、日本バイリーン株式会社、ベックマン・コールター株式会社、プロメガ株式会社、株式会社シムスバイオ)による企業展示が、ポスター会場と同じセミナールームで行われました。 各社による製品紹介が行われました。

5. 学会総括

第3回研究会では、第2回と同様に200名近い研究者にご来訪頂き、盛況のうちに無事終了いたしました。 又、研究会後の情報交換会にも約40名の方にご参加頂き、有益な意見交換ができたと考えております。 本研究会は、基礎研究と臨床研究のアカデミアの研究者、及び企業の方々が集い、様々な革新的な三次元培養法をさらに深化、拡張させるとともに、様々ながん腫に応用する事で、がん研究の新たな研究基盤確立につながる事を願っております。


6.発表演題一覧

 井上 正宏 先生(京都大学大学院 医学研究科)
   「転移浸潤におけるがん細胞集団の役割」

 梨本 裕司先生(東北大学学際科学フロンティア研究所)
   「灌流可能な組織培養系の構築に向けたスフェロイドモデルでの初期検討」

 高里 実先生(理化学研究所生命機能科学研究センター)
   「自己組織化を利用したiPS細胞由来腎臓オルガノイド作製」

 田中 知明先生(千葉大学病院大学院医学研究院)
   「乳がん悪性化形質に対する変異p53とSREBP依存的コレステロール合成経路
    の3次元培養における協調的作用機構」

 池田 和博先生(埼玉医科大学ゲノム医学研究センター)
   「生殖器がん患者由来スフェロイド培養・移植モデルの確立とその応用」

 後藤 典子先生(金沢大学がん進展制御研究所)
   「乳がん三次元培養を用いたがんの微小環境、不均一性の解明」

 清川 悦子先生(金沢医科大学病理学I)
   「オルガノイドのライブイメージング」

 土屋 輝一郎先生(東京医科歯科大学医学部消化器内科)
   「炎症性腸疾患モデル構築から癌化モデルへの試み」

 岡本 康司先生(国立がん研究センター研究所)
   「難治がん三次元培養系の解析を通じた細胞多様性及び治療抵抗性の理解」