この度、第30回日本脳腫瘍病理学会及び同時開催されるThe 4th International Symposium of Brain Tumor Pathology(第4回国際脳腫瘍病理シンポジウム)の会長として、平成24年5月24日(木)~26日(土)に名古屋国際会議場にて開催することになりました。このような歴史ある学会の会長にご指名戴きましたことは大変光栄なことと存じますとともに、その責任の重大さに改めて身の引き締まる思いでございます。
 本会は、1983年に石田陽一会長(当時:群馬大学医学部病理学講座教授)の下、景山直樹先生(当時:名古屋大学医学部脳神経外科講座教授)や𠮷田純先生(当時:名古屋大学医学部脳神経外科講座助手)等の支援の下、名古屋の地にて日本脳腫瘍病理研究会として第1回が開催されました。その後、第15回(田渕和雄会長 当時:佐賀医科大学脳神経外科教授)からは日本脳腫瘍病理学会となり、今日に至っております。会員数は会を重ねる度に増加し、現在では、900余名の会員を擁する程の学会に成長致しました。内容も、国際臨床病理検討会、教育セミナー、ハンズオンセミナー等の新たな企画が次々と編み出され、脳腫瘍病理に特化した内容の豊富さは他の学会には類を見ない構成となっております。今回は、第30回という節目にあたりますので、「記念シンポジウム」としてこの歴史をまず振り返ってみたいと思います。
 一方、国際脳腫瘍病理シンポジウムは、日本脳腫瘍病理学会総会に併せて数年に一度の割合で開催されております。第2回国際脳腫瘍病理シンポジウムは2000年に𠮷田純会長(当時:名古屋大学医学部脳神経外科教授)の下で、第18回日本脳腫瘍病理学会と併設して名古屋で開催され、世界より著名な神経病理医、脳神経外科医等が一堂に会して、日本の脳腫瘍病理学に新たな一歩が踏み出された歴史的学会となりました。その後、WHOの脳腫瘍分類の第4版の発刊による新しい概念の脳腫瘍の報告、更には分子生物学的手法の進歩による遺伝子解析に伴う脳腫瘍分類の変革、或はMGMTやIDH1などに代表される新たな予後関連因子の出現等、脳腫瘍病理学には大きな進展がみられています。このような時期に、再び世界各国から脳腫瘍病理学の権威が集結し、現在の脳腫瘍病理学を直接討論して検証し、今後の展望を検討することは、大変意義深いものと思われます。
 さて、本会は、主題として、「網羅的遺伝子解析データを如何に日常の病理診断に取り入れるか(New trends in brain tumor pathology; application of molecular genetics to routine histopathological diagnosis)」を掲げ、以下のような企画を盛り込みました。まず、第30回日本脳腫瘍病理学会記念シンポジウム特別企画として、本学会の創設者である、石田陽一先生及び景山直樹先生に関わる特別講演会を企画いたしました。御講演は平野朝雄先生を筆頭に、本学会の発展にご尽力戴いた先生方に御
講演を戴きます。
 次に、海外招待者として、以下の15名を招聘し、国際的な討論会ができる精鋭を揃え、講演ばかりでなく、座長やコメンテーターも依頼し、学会中の企画の随所に参加していただくことと致しました。
 Asao Hirano( Montefiore Medical Center, NY, USA), James T Rutka(RS McLaughlin, University of Toronto, Canada), Johan M Kros(Erasmus MC University Medical Center, Rotterdam, Netherland), Kenneth D Aldape(MD Anderson Cancer Center, USA), Michael Taylor(University of Toronto, Canada), Webster K Cavenee(Ludwig Institute for Cancer Research, San Diego, USA), Dilip Panikar(Amrita Institute of Medical Sciences, Chocin, India), Yung-Gu Chung(Korea University, Seoul, Korea), Shiguang Zhao(Harbin Medical University, Harbin, China), Eka J Wahjoepramono(Siloam Hospital, Indonesia), Ming-Jen Lee(National Taiwan University, Taipei, Taiwan), Shin Jung(Chonnam National University, Hwasun, Korea), Zhong-ping Chen(Sum Yatsen University Cancer Center, China), Keita Terashima(Baylor Medical Center, USA), Hideho Okada(University of Pittsburg, USA)
 また、国内からも、脳腫瘍病理研究領域で世界的な業績を上げている日本の誇る科学者を招聘し、座長、特別講演、シンポジウム等、要所に参画していただきます。
 市村幸一先生(国立がん研究センター研究所脳腫瘍連携研究分野)、佐谷秀行先生(慶應義塾大学医学部先端医科学研究所)、北中千史先生(山形大学医学部腫瘍分子医科学講座)、鈴木正昭先生(独立行政法人理化学研究所分子イメージング科学研究センター)、柳澤隆昭先生(埼玉医科大学国際医療センター包括的がんセンター脳脊髄腫瘍科小児脳脊髄腫瘍部門)、中山樹一郎先生(福岡大学医学部皮膚科学講座)、宮武伸一先生(大阪医科大学脳神経外科)
 シンポジウムとワークショップは、現在脳腫瘍病理領域でトピックスとなる様々なテーマ別に組み、国際色豊かに折り上げました。なお、アジアンセッションとして、アジア各国の精鋭にその国の脳腫瘍病理の取り組みと脳神経外科手術手技について纏めていただくプログラムを設けました。
 なお、サテライトワークショップとして小森隆司先生のご尽力で、前日の5月23日に、“Controversiesover diagnosis of oligodendroglioma: How do you resolve them? ”と題して、欧米の脳腫瘍研究の大家のProf. Johan M Kors, Prof. Kenneth D Aldapeと共に、日本の脳腫瘍研究の第一人者が、膝を交えて乏突起膠腫の診断のポイントを討論する場を設けました。
 さらに、JCOG脳腫瘍グループとの合同シンポジウムは『Grade 3 Glioma の病理診断は如何に有るべきか』を争点として、村垣善浩先生、渋井壮一郎先生、夏目敦至先生とJCOG脳腫瘍グループ共同作業で、Glioma Grade 3の診断のポイントを検証することと致しました。
 また、日本脳神経外科学会脳腫瘍関連4学会合同生涯教育セミナーとして、嘉山孝正先生の監修の下、小森隆司先生 “脳腫瘍のpathology;今後のWHO脳腫瘍分類の変化の動向を探る”、北中千史先生 “脳腫瘍のCell biology ~グリオーマ幹細胞~”、鈴木正昭先生 “疾患対応PETプローブの革新的合成法と標的分子イメージング”、宮武伸一先生“アミノ酸トレーサーによる脳腫瘍の病態解析と治療へ
の応用”を企画し、新たな知見の知識吸収を図りました。
 国際臨床病理検討会では、参加者全員に会場内でiPadを配布し、無線LANより、各演題のバーチャルスライドを各自の手元に配信し、カンファランス材料とします。討論言語は日本語ですが、日本脳神経外科学会同時通訳団の支援により、外国からの招待者にも討論に参加していただきます。また、これを契機にInternational Brain Tumor Pathology Membershipを創設し、今回より国際学会員の登録を開始し、本学会の国際化を推進したいと考えております。
 さらには、若手の教育セミナー企画は、今回より脳腫瘍病理診断医育成委員会にて企画立案していただくようにし、脳腫瘍病理の最新データを遍く網羅出来るように演題及び演者を厳選しました。脳腫瘍病理診断力を上げたい病理医、専門医取得を目指す脳神経外科専攻医に、1日でほぼ脳腫瘍病理の全体像が理解出来るように組み立てられています。
 このようなたくさんの試みも、会員の皆様のご支援があって始めて実を結ぶものです。本会の趣旨にご理解を戴き、会員の皆様による本会への積極的御参加を賜りますようお願い申し上げる次第であります。どうかよろしくお願いいたします。

謹白

2012年5月吉日