医療分野における画像情報は、モノクローム階調の画像情報に対しての高精細度の要求が放射線画像検査に代表されるような領域で、よく論じられてきた。この結果として高精細度の放射線画像情報の取得や表示の技術は飛躍的に進んだ。一方、内視鏡、眼底検査、病理標本、病理顕微鏡画像、病巣画像などに示される画像には、色情報を含むカラー画像が主体となっている。これらのカラー画像は、フイルムや印画紙といった媒体に記録保管されていた。これらのカラー画像は、撮影時の照明光やフイルム特性、そして各種の補正フィルターの使用により条件を設定していた。また、撮影されたカラー画像の再現には、ポジフィルムにおいては、投影光のランプ特性の規定やフィルター補正により再現が行われ、そして、プリントされる場合には、印画紙の発色特性を考慮して現像され、色再現が行われていた。しかし、デジタル方式による画像保管技術が発達するにしたがい、従来、フイルムや印画紙等に記録保管されていた、カラー画像情報もデジタル的に保管されるようになってきた。デジタルの場合にも色画像情報の記録には、分解能的画質だけでなく色情報の再現性という問題を含んでいることは同様である。しかしながら、デジタル方式による画像の撮影や表示では、従来のフイルムや印画紙に変わり、撮像デバイスや表示デバイスの特性が関与してくる。それは、元の被写体の示す色情報の取得と表示にかかわる撮像デバイス機器の特性と表示デバイス機器の特性を整合させる問題となる。画像取得時の情報と画像表示時の特性の整合性を合わせることは、重要であるが、現実の医療現場においては、きわめて困難な状況が少なくない。画像の伝送が行われるような遠隔医療においては、色再現性が重要となる場合が少なくない。例えば、医療機関と患者宅を考えた場合、観察側ディスプレイに再現された被写体となる患者の顔色や皮膚の色の微妙な変化は、健康状態を把握する診察上、重要な情報となっている。ここで注意しておかなければならないのは、医師が直接、患者を診察する時の色彩と、標準光源下で見える色彩とは異なる。本研究においては、標準光源下での色再現でなく、色画像とともに取得条件を記録することにより、画像を表示するときに撮影された光源条件考慮して、表示装置の補正を行うことに主眼をおいている。すなわち色再現誤差が生じる原因を少なくするために、照明用光源や照明条件の異なりによる被写体の色の見え方の変化を最小限にするための色再現法を報告する。
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