CAF110による細胞内カルシウム測定法(高野・和泉)

(1996/02/23 TT, TS versionを改訂)


第二生化マニュアル目次
1 使用前の状態
1)レコーダー Pen1 5V; Pen2 5V; Pen3 1V. Pen up,zero
2)BC-03のCH1-3のスイッチは逆時計方向一杯に回す。
3)本体端子 3-CH1-Pen 1 (excitation340/emission 500)
4-CH2-Pen 2 (excitation380/emission 500)
5-CH3-Pen 3 (Ration of 340/380)
の接続を確認する。
4)本体 Sens 1-5 x 1O; Time const. 0.25; Display. Temp or Stir
PM volt. high; Mode III
5)サブパネル内 Temp auto (37℃); stirrer 1,000 rpm; shutter auto open 00,  close 00

2 細胞へのFura-2のloading (Fura-2は光により分解しやすいのでできるだけ遮光する)
1) 目的とする細胞を適当な培養液またはHepes-Tyrode等のバッファーに懸濁する。懸濁の濃度は適当でよいが、1-5 x 106/ml位にする事が多い。細胞の濃度によってFura-2/AMの取り込みが異なる事が考えられるので、一連の測定ではできるだけ細胞濃度をそろえる事が望ましい。この時、凝集しやすい細胞ではバッファー中のカルシウムはfreeにしておく。
2) 1mM Fura-2/AM (Dojin, DIMSO溶液)を終濃度3μMになるように加え(1mlに対して3μl)、37℃で1時間または室温で90分以上インキュベートする。ホイルなどで遮光する
3) 1,500回転, 5分室温で遠心、上清をaspirationで除く。細胞を適当なバッファー(Tyrode, Hanks, PBS, -Ca:特に凝集しやすい細胞で無ければカルシウムは入っていても良い)に1-5 x 106/mlの濃度で懸濁する。測定まで遮光して室温で保存する。

3 測定
1)3カ所のPower on(安定化の為に10分)
2)Zero の状態でレコーダーのペンを左端10%にあわせる。
3)Measureに変え、サブパネル内のshutter off でゼロあわせ。shutterは再びautoにする。
4)Fura-2/AMを取り込ませた細胞の懸濁液0.5mlをキュベットにとり、スターラーバーとともに装着する。(血小板では108 cells/ml; 培養細胞では3 x 106/ml程度)
5)Mode III(380nm) でintensityをみて、sense dialで400以上に調節する。この際、senseは1-5 x 10の範囲である。これ以上のsenseを必要とするときはloadingが不十分で正確な値がでない事が多い。
6)Mode IIに移す。Mode IVはAqueolin 用であり、蛍光ランプが消えるので決して回さない。Mode IVにしたときは再びPower onにしないとランプが点灯しないから注意。以後デジタル表示はratioを示す。
7)レコーダーのチャートスピードを 600mm/hに合わせて、スタートさせる。
8)100mM CaCl2 5μlを加える。(元々カルシウムが入っている場合は必要ない)。基線が安定化したところで、薬剤をマイクロシリンジを使って注入する。(100倍濃度のものを5μl)。表示をみながら刺激直前の値と、ピーク時の値(F)を記録する。
*マイクロシリンジや注入部のコンタミによるpseudopositiveが多いので十分な注意が必要である。エタノールがシリンジに残っているとartifactをおこすので、最後は必ず水で洗うようにする。
例:エタノール1、2、50%エタノール1、2、水1、2 計6本でシリンジを洗う。
9)10% Triton X-100を10μl加える。細胞が溶解し、Fura-2が1mMのカルシウムイオンと結合した時のMode IIの値をFmax, Mode IIIの値をaとする。
10)500mM EGTA (pH 8.0)を10μl加える。Fura-2が完全に解離した状態のModeIIの値をFmin, ModeIIIの値をbとする。
11)細胞内カルシウム濃度は次の式で計算する。
細胞内カルシウム濃度=224 x b/a x (F-Fmin/Fmax-F)
但しFは、読みとったModeII の値。

Fura-2は時間がたつと次第に細胞外に漏れでてきて、細胞外のカルシウムイオンと結合し、このためbase lineは時間と共に高くなっていく傾向にある。従って、細胞外カルシウム存在下で測定を行うときにはできるだけ手早く行うのが望ましい。

参考文献 実験医学臨時増刊号 細胞内カルシウム実験法 1989

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