胸部CHEST

 

この胸部CHEST)ホ−ムは放射線技師のために、医師が胸部CHEST)写真に対しての見方、診断の方法を述べている。

医師がどのような写真を欲しているかを考えるための一つの方向性を示したものである。参考になれば、幸いである。

 

後前方向撮影postero-anteriorproiection

 

撮影目的:

炎症や腫瘍などによる肺野、縦隔および軟部組織ならびに循環器(心臓)などの病変の有無の観察。

撮影体位:

被検者は立位とする。前胸部を撮影台に付ける。両肩の力を抜き、両上腕を内旋し、肘関節を曲げる。または、手背を腹部にあて肘部を前方に押し出す。

中心線1第6胸椎の高さで正中矢状面に向けてカセッテ面に対し直角に入射する。

 

 

胸部CT、喀痰検査、気管支内視鏡検査、腫瘍マーカーなどの精密検査を行います。

 


 胸部レントゲン

 

96 4 jpg

 

胸の中の構造

 

撮影ポイント:

本撮影法は一般に胸部正面撮影ともよばれている。肺野全体が明瞭に描出され、心臓と肺野の重複部分も肺紋理が追求でき、心臓や脊椎などの縦隔洞が低濃度で描出されていること。

両鎖骨陰影を体幹下方に充分に下げ、肺尖部をできる限り広く描出する目的で肩を下げる姿勢にし、肩甲骨の陰影を肺野より除く目的で上腕を体前面に押し出すのが基本な撮影体位である。

撮影時には最大吸気後に息を止めた状態で撮 影する。これは肺胞に空気を入れ、周辺の血管(肺絞理)との間で被写体コントラストの大きい写真を得る目的で行う。しかし、極度な深呼吸は胸腔内圧の亢進 のため正常な生理的状態を逸脱したり、不安定な姿勢になり胸部画像がぼけたり、カセッテ面より肺野が外側に脱落することもあるので注意を要する。

胸部内の心臓・大血管は常に拍動しているため、動きによるぽけを防止し鮮明な画像を得るには1/20〜1/200秒以下の短時間撮影にする。FFDは心陰影の歪みや拡大を避けるため200cm以上が望ましい。心胸郭比(CTR;cardio thoracic ratio)は50%以下が正常であるが、ポータブル撮影等の仰臥位撮影では60%以下が正常とされている。

CTR Mrは正中線より心右縁にひいた最大径、M1は正中線より心左縁にひいた最大径、Trlは右横隔膜の頂点の高さでの両側胸部の肋骨内縁間の距離である。

肺紋理陰影を鮮鋭度よく描出するために、小焦点X線管球を使用し、肺血管陰影が肋骨陰影などに妨げられることなく肺野末梢まで描出でき、心陰影と肺野陰影の濃度差を少なくするために高圧撮影(120〜140kV)が望ましい。

その他高圧撮影は被曝線量を減少させ、気管 支分岐部、心陰影などの縦隔洞陰影の描出に優れる。X線撮影室に移動が困難な被検者の場合は、ポータブル撮影が行われるがほとんどが前後方向撮影であり、 CTRが大きい値で撮像され、適正な濃度が得られにくいが、緊急時や救命補助器具等の位置確認には有用である。

 

胸部の単純X線解剖

 

 

はじめに

 

胸部単純X線撮影の目的は、肺や心臓の病変だけでなく、胸膜、縦隔、横隔膜、胸郭、胸壁の病変の診断にある。

適切な条件で撮影された写真であることは最 低限必要であるが、読影の際、X線解剖の十分な知識がなければ病変を見落としたり、また逆に正常構造を病変と見誤ったりする場合が生ずる。ここでは単純X 線解剖について解説するが、臨床的に呼吸器症状があって胸部病変の存在を疑う場合、正面・側面2方向の撮影を行うのが一般的であるので、その正常解剖とnorma1variationについて述べる。

 

胸壁の軟部組織

 

正面像では女性の乳房は肺野の透過性を低下させる。乳頭は皮膚面から突出しているため、しばしば肺内の結節影のごとく描出される。また、束ねた頭髪は肺尖部の浸潤性病変と間違えられやすい。男性では、大胸筋の発達した人は中〜下肺野の透過性が低下する。

 

綴胸郭を形成する骨・軟部組織

 

 

正面像において肩甲骨は内側縁を気胸と、下 角を肺内結節影と見誤ることがある。肋骨は左右対称性であり、背部はおおよそ第10肋骨まで肺野と重なってみえる。第1肋軟骨の骨化は左右非対称であった り、膨隆したり、あるいは肺内病変と重なることもあるため、疑わしい場合は肺尖撮影が必要となる。下部肋軟骨(第9〜第11)の石灰化には約96%の確率 で性差が認められる。すなわち、男性は辺縁から石灰化し、凹状になるのに対し、女性は中央から石灰化し、凸状になる。時に肥満者やステロイド長期投与者で は、肋骨の内側縁に沿って、脂肪により胸膜肥厚を思わせる随伴陰影が認められる場合がある。また、胸膜下癩痕や胸膜肥厚による肺尖部陰影(apica1cap)は高齢者に多く、病的意義はない2)。

 

横隔膜

 

横隔膜の高さはおおよそ後方第10肋骨あたりで、肥満者で高く、痩せた人で低い傾向にある。また、右側が左側より約1/2肋間高位にあるのが普通である。正面像では、横隔膜と側胸壁とで肋骨横隔膜角(costophrenicangle:CPang1e)を形成する。側面像では後下方に後部肋骨横隔膜角(posteriorCPang1e)を形成し、ここが胸腔の最下部にあたるため、胸水はこの部分から溜まり始める。したがって、少量の胸水の診断には側面写真が有用である。心臓と横隔膜とのなす角が心横隔膜角(Cardio-phrenicang1e)で、正面像では右側に下大静脈の右縁が認められる。左心横隔膜角は脂肪陰影(apica1fatpad)によって鈍化する場合があり、シルエットサイン陽性となるため肺内病変と誤診されることがある。側面像では下大静脈が心横隔膜角を埋めるように凹状の陰影として認められる。

 

縦隔

 

縦隔を構成するものには、心臓および大血管とその分枝、気管・気管支、リンパ節、食道、脂肪、脊椎などがあり、肺との関係で多数の線状影が認められる。

 

高齢者では、大動脈弓から分岐する腕頭動脈の蛇行が強く、外方へ突出し右上縦隔に腫瘤影を形成することがあるが、腕頭動脈の蛇行は気管透亮像を偏位させない。大動脈弓上外側付近に接して小さな突出像が認められることがあり、これはaorticnippleと呼ばれ、左最上肋間静脈による陰影である。大動脈弓と左肺動脈の間には肺組織があり、大動脈肺動脈窓(A-Pwindow)を形成し、

側面像にて明瞭に認められる。ボタローリン パ節腫大などでこの部分の透亮像は消失する。心横隔膜角については前述のとおりであるが、側面像では右肺の前縁が前胸壁に接するのに対し、左肺は心外膜脂 肪に妨げられて、前胸壁からやや離れて前縁を形成する場合がある。この心臓および心外膜脂肪による左肺の部分的欠損は心切痕(cardiacincisula)と呼ばれているが、これが心陰影より頭側にまで伸びることはない。鎖骨から右上葉気管支上縁の高さまで気管右壁は線状影として描出される(右気管傍線rightparatrachea1stripe;)が、気管傍リンパ節腫大や縦隔腫瘍などにより消失する。右主気管支起始部には奇静脈の上大静脈入口部の正切像が認められ、下方内側の奇静脈食道陥凹の線状影(奇静脈食道線azygoesopagea11ine;へと続く。前接合線(amteriorjunction1ine;は左右の肺が胸骨後方で、後接合線(posteriorjunction1ine)は食道後方で接することによって形成される。下行大動脈の外側縁は全長にわたって認められ、その内側に左側の傍脊椎線(1eftparaspina11ine; が見られる。これは脊椎カリエスや後縦隔腫瘍などの際に限局性に膨隆する。左に比べ右側の傍脊椎線は正常者ではほとんど認められない。側面像では、下行大 動脈は近位部のみが左肺に接するため認められるが、加齢による動脈硬化によって大動脈の延長・蛇行が起こると左肺に接する部分が増え、より下方まで認めら れるようになる。

 

 

 

 

気管・気管支

 

正面像では、喉頭から始まる気管は第5胸椎付近の高さで左右の主気管支に分岐する。分岐角は約60。で、右が約25度、 左が約35回と左がやや開いている。気管分岐下リンパ節腫大や心拡大などでこの角度は開大する。右主気管支は、ほぼ直角に上葉支を分岐し中問気管支幹にな るのが認められる。右主気管支は左に比べて短い。右上葉支口から1〜2cm外側にB3bが正切像とレて認められる。中葉支分岐部は、中間気管支幹下端より 外側に張り出すように認められる。右B6入口部は斜め外側に分岐するので正面像では確認しにくい。一方、左主気管支は前後に大動脈などが重なり、右に比べ て認めにくい。左主気管支下部より上下幹分岐部を追うことができ、左B3bは上葉支口から1〜2cm 外側やや高位に正切像として認められる。舌区の気管支透亮像は認めにくい。左下幹はB6の正切像あたりまで追える。側面像では、気管分岐部は見えないが、 右上葉支口、次いで左上葉支口が上下に円形の透亮像として認められる。その下方で右下葉支と左下葉支の透亮像が前後に認められる。

 

■肺動静脈

 

肺門および肺野の陰影は主に肺動静脈よりな るが、リンパ節の腫大があると肺門影は拡大してくる肺野の血管影を追跡することは各葉の広がりを確認し、病変の局在を推測するために重要である。右肺動脈 は気管分岐部前下方に上幹動脈を出し、中間気管支幹の前方から外側へと回りながらこれに沿って下降し(中間肺動脈幹)、中葉および下葉の各区域支の動脈に 分かれる。肺内では気管支に伴走する。正面像では、A6が正切像として中葉動脈より少し高位に認められる。上葉ではA1が肺尖に向かう血管影として認めら れ、A3bの正切像がB3bの正切像に接して内側に認められる。気管支周囲に炎症性変化が起こると、正切像辺縁の不明瞭化(peribronchia1 Cuffng)や、長軸方向では軌道様陰影(tram1ine)が認められたりする。またA3aが上中葉間毛髪線とほぼ平行して、外側に向かって走行するのが認められる。中葉ではA屯aが毛髪線の下方を外側に走行するので認めやすい。下葉

 

副葉聞裂。

奇静脈葉間裂、上副葉間裂。左上中葉間裂、下副葉問裂

 

は肋骨横隔膜角へ向かうA8とまっすぐ下方へ走行するA10が認めやすい。

左肺動脈は後上方へ走り左第2弓を形成し、左主気管支を乗り越え肺底気管支幹の外側を下降する。正面像では右と比べ、A6の正切像は認めにくい。上葉ではA1+2が上葉気管支内側を上行するのが認められるほか、右同様A3bの正切像がB3bの内側上方に認められる。

下葉肺底区の動脈は心陰影と重なるが、A8,A10のおおよその走行が認められる。肺静脈は亜区域間あるいは区域間を走り、次第に合流し、左右とも上肺,下 肺静脈となって左心房に流入する。肺静脈は縦隔側に集中的に分岐するため、X線上肺動静脈の区別が難しく、肺底区の一部を除いてその同定は困難である。側 面像では、右肺動脈が中間気管支幹の透亮像の前方に卵円形の陰影として認められる。左肺動脈は、左上葉支口の透亮像の後方に接して弧を描くように認められ る。これらに比し肺静脈は、明瞭な輪郭としては同定しにくい。

 

肺葉と葉間

 

右上中葉間裂は小葉間裂(minor fissure)あるいは毛髪線(hairline)とも呼ばれ、正面像では、右肺のほぽ中央に正常者の約56%工)に見られる。

内側縁は右肺動脈幹の外縁で終わる。左右の上下葉間裂は大葉間裂(majorfissure)とも呼ばれ、側面像にて右側のほうが左側より前に認められる。

副葉間裂には、右側に奇静脈葉間裂、上副葉間裂、下副葉間裂、左側に上中葉間裂、上副葉間裂、下副葉間裂などが存在し、気胸やブラと誤診する可能性がある。

奇静脈葉間裂はその特徴的な形態から有名であるが、発生頻度はX線上ではO.4%と少ない。

 

胸部X線写真読影のすすめ方

 

口はじめに

 

胸部単純正面像では、肺の空気が陰性の造影 剤の役目を果たすため、異常陰影の検出に優れている。ただし、肺血管や気管支などの肺の既存構造の偏位のみが病変の局在診断を示唆することもあり、常に正 常解剖を念頭において読影をすすめることが重要である。また、縦隔病変は中央陰影の輸郭や縦隔線の偏位およびシルエットの消失などを目安に局在診断がなさ れる。

 

撮影体位

 

肺野の明るさに左右差が見られたり、胸椎の 側轡が疑われる場合には、胸部単純正面像として正しい体位で撮影されていないことがある。胸椎辣突起と両鎖骨の胸骨端との距離が等間隔であるかどうかを チェックする。右が短い場合は右前斜位で撮影されている場合で、右の肺野が暗く(白く)見える。

正しいX線ビームの入射角であれば、両側の鎖骨胸骨端が後部第4肋骨に重なって認められる。

 

胸膜外脂肪

 

胸膜外脂肪は第4から第8肋骨の外側方に豊富に見られる。胸部正面像でX線ビームに正接になる部分が存在すれば、胸壁に接して陰影を呈する。両側に左右対称に認められるのが特徴である。

上外方(apico1atera1)に見られることもあり、左右対称で辺縁平滑な像や、左右非対称で分葉状、片側あるいは両側性の限局した突出像などと種々の像を示す。

 

横隔膜

 

横隔膜の高さは、通常右の後部肋骨あるいは肋間で示す。第11肋骨の半分以上が肺野に重なって見られれば肺の過膨張が疑われる。横隔膜は右が左より1/2〜1肋間高く描出される。心尖部(左室)のあるほうが低いのが原則とされていて、右胸心の場合は右の横隔膜が低くなる。

1肋骨横隔膜角

肋骨横隔膜角が軽度鈍に認められた場合は、胸水と胸膜肥厚の鑑別が必要になる。側面像があれば後部肋骨横隔膜角(胸腔内で最も低い位置にある)をチェックして、同部も鈍に見られれば胸水が疑われる。確認のためには患側を下にした側臥位正面像が有用である。

2。心臓横隔膜角

高齢になると、両側あるいは片側性に心膜外の前縦隔に脂肪が沈着しやすく、心陰影の輸郭が不明瞭になる。大きくなると腫瘤影を呈し、縦隔腫瘍と間違えられることがある。

3。横隔膜に重なる肺

主に下葉のS10,Sgの一部が重なって認められる。

中央陰影の輸郭および縦隔線

1。上大静脈

右肺と接して右縦隔陰影の上部を形成するが、右腕頭動脈のbuck1ingや縦隔リンパ節の腫大、縦隔腫瘍などで外方に突出する。

2、上行大動脈

通常、上大静脈が右肺と接して描出され、上行大動脈はその陰影に重なって描出されることが多いが、動脈硬化により大動脈が蛇行すると右肺に突出して陰影をつくる。

3。心陰影の輪郭

 

右心陰影とシルエットをつくる肺の区域は右 は中葉のS5,S4が主で、時に上葉のS3、下葉のS7が関与する。左は上葉舌区S4,S5、時に上区S3が関与する。前縦隔腫瘍や縦隔ヘルニアなどでも 心陰影とのシルエットが消失する。中央陰影の拡大が見られた場合に、縦隔腫瘍と心陰影の拡大との鑑別にはhi1umoverlaysiが役に立つ。すなわち、縦隔腫瘍が肺門影に重なって存在する場合は、肺門部の肺血管影は拡大した縦隔影の辺縁よりかなり内側に認められる。

 

4、右傍気管線

 

気管の右外側壁および奇静脈が上大静脈に流入する部分が右上葉に接するために描出される。胸部立位正面像では約82%で検出可能であるという報告があり、その幅が4mmを越えると傍気管リンパ節の腫大などが疑われる。奇静脈レベルでは9mmが正常の上限とされている。

5.奇静脈食道線(右食道傍線)

 

奇静脈食道陥凹は右下葉の内側縁が奇静脈と 食道に接して形成する部分で、その約2/3が胸椎のほぽ正中に位置し、気管分岐部レベルから下方に向かうに従ってやや左寄りの走行を示すことが多い。この 線の偏位やシルエットの消失が認められれば、気管分岐下リンパ節腫大や気管支嚢胞、食道病変などが疑われる。

 

6.大動脈肺動脈窓

Aorticpu1momry window

 

上方を大動脈弓部、下方を左肺動脈で境される領域はA−Pwindowとして知られている。この部位に発生する病変はボタロー管リンパ節(大動脈下リンパ節)腫大が多いが、大動脈弓部の動脈瘤が進展することもある。

 

7.傍大動脈線

 

下行大動脈の左縁と左下葉が接して形成される線で、動脈瘤や神経原性腫瘍でシルエットが消失する。稀に、正常の場合でも下行大動脈と左下肺動脈や心臓との位置関係でシルエットが消失する例もある。

8.傍脊椎線

 

傍脊椎線は、下葉の内側が傍脊椎脂肪織と接するために認められる線で、左側では下行大動脈が存在するために、傍脊椎脂肪織が厚く描出されやすい。右側では一般に描出されにくいとされている。後縦隔腫瘍や脊椎病変などで傍脊椎線は外側に偏位する。

 

 

 

 

右肺

左肺

上葉

肺尖区S/apica1 segment

固有肺尖区     S1a

前(肺尖下)区   S1

 

後上葉区S2 postedor segment

後(肺尖下)区      S2a

水平(上葉)区      S2b

前上葉区S3 mterior segment外側(前上葉)区    S3a

内側(前上葉)区    S3b

 

中葉

外側中区S4 1atera1 segment

外側区              S4a

内側区                S4b

内側中区S5 medial segment

外側区              S5a

内側区              S5b

 

 

下葉

上一下葉区S6 superior segment

上区S6a

外側区S6b

内側区S6c

 

上枝下一下葉区S* subsupedor segmen

内側肺底区S7 medial basa1 segment

後区S7a

前区S7b

 

前肺底区S8 antedor basa1 segment

外側区S8

底区S8b

外側肺底区S9 1ateral basa1segment

外側区S9

底区S9

 

後肺底区S10 posterior basa1 segment

後区S10

外側区S10

内側区S10c

 

上葉

上区supehor division

肺尖後区S1十2a anterior segment

肺尖区S1十2a

後(肺尖下)区S1十2b

水平(上葉)区S1+2c

前(上葉)区S3 antehor segment

外側(前上葉)区S3a

内側(前上葉)区S3b

上(前上葉)区S3c

舌区 1ingu1ar divso

上舌区S4 supedor segment

外側区S4

前区S4b

下舌区S5 inferior segment

上区S5a

下区S5b

 

下葉

上一下葉区  S6 superior segment

上区S6a

外側区S6b

内側区S6c

 

上枝下一下葉区

* subsupedor segment

前肺底区

*antedome dialba salsegment

外側区S8a

底区S8b

外側肺底区S*1atera1 basal segment

外側区S9

底区S9

後肺底区 Smposteriorbasa1segment

後区S10

外側区S10b

恥内側区S10

 

 

 

 

 

 

 

 

 

区域気管支“B”の命名は肺区域“S”に対応する。例えばB’aはS−aである。

図 肺区域S(区域気管支B)の名称

 

 

 

 

 

名称

 

名称

1

2

3

4

5

6

7

8

9

気管

気管分岐部

右主気管支

左主気管支

右上葉支

左上葉支

中間(気管支)幹

右中葉支

左底幹

10

11

12

13

14

15

16

17

左底幹

大動脈弓

下降大動脈

毛髪線

横隔膜

心横隔膜角

肋骨横隔膜角

胃泡

 

 

 

 

 

 

肺野の正常陰影

 

1.肺尖部の鎖骨下動脈

 

正常者の胸部正面像の右13%、左17%で、肺尖部に辺縁不明瞭な淡い陰影が認められる。この陰影は気胸があると描出されることや、動脈硬化の場合は同部位に平行する線状の石灰陰影が見られること、透視下で大動脈と同期して動くこと、辺縁明瞭な鎖骨下動脈のvertica1portionに連続することから、鎖骨下動脈のapica1portionと考えられている。通常、後部第2、第3肋間に見られるが、橋に後部第4肋間と低い位置に認められることもある。胸椎と第1肋骨前部との間に存在し、約8×11mmの大きさを示す。

 

2 第1肋軟骨の化骨

 

第1肋軟骨が化骨すると肺野に突出して、一見肺野の異常陰影様に見えることがある。左右対称で、第1肋骨の前部に連続して認められれば診断は容易であるが、左右非対称の場合には迷うこともあり、その際は骨の条件での腹背像が異常陰影との鑑別に有用である。

 

3.乳頭

 

男性でも乳頭が、通常、前部第4肋間に描出されることがある。稀に第5肋間に描出されるが、片側の場合は肺の結節陰影との鑑別が必要となることもあり、その際、腹背像が有用である。

 

肺野の既存構造の広かり

1.葉間裂

 

胸部単純正面像では、葉間裂として右の上中葉間裂(minor fssure,horizonta1 fissure) のみが認められる。時に奇静脈葉間裂や上副葉間裂、左上中葉間裂などの過剰間裂が認められるが、これらを異常陰影や肺の容積減少と間違えないようにする。 2。肺門部右は肺血管や気管支が2カ所から、左は1カ所から広がる。右肺動脈は縦隔内で上幹動脈(A3,Al)が分岐するため、右肺門を構成するのは上肺 静脈や中間肺動脈幹である。一方、左肺動脈は左主気管支、上行気管支の基部を取り巻くように後下方に向かうので、肺門部で正接像として認められ、肺門の高 さは左のほうが約1/2肋間高い。

 

3.肺区域の広がり

 

肺区域に関して、胸部正面像で正常の広がり を示しているかどうかを見るには、葉間裂や中央陰影の確認とともに、正面像で認めやすい気管支や肺血管の走行を確認する。例えば、正接像として見られるの はB3。、A3。やB6などであり、水平に走行するのは右のA4、、V4、である。また、肋骨横隔膜角に向かう肺血管はA8・であり、下行肺動脈に連続し てほぽ垂直に横隔膜の下方まで認められ5。奇静脈食道線(右食道傍線)

 

奇静脈食道陥凹は右下葉の内側縁が奇静脈と 食道に接して形成する部分で、その約2/3が胸椎のほぽ正中に位置し、気管分岐部レベルから下方に向かうに従ってやや左寄りの走行を示すことが多い。この 線の偏位やシルエットの消失が認められれば、気管分岐下リンパ節腫大や気管支嚢胞、食道病変などが疑われる。

 

6.大動脈肺動脈窓

Aorticpu1momry window

 

上方を大動脈弓部、下方を左肺動脈で境される領域はA−Pwindowとして知られている。この部位に発生する病変はボタロー管リンパ節(大動脈下リンパ節)腫大が多いが、大動脈弓部の動脈瘤が進展することもある。

 

7.傍大動脈線

 

下行大動脈の左縁と左下葉が接して形成される線で、動脈瘤や神経原性腫瘍でシルエットが消失する。稀に、正常の場合でも下行大動脈と左下肺動脈や心臓との位置関係でシルエットが消失する例もある。

8.傍脊椎線

 

傍脊椎線は、下葉の内側が傍脊椎脂肪織と接するために認められる線で、左側では下行大動脈が存在するために、傍脊椎脂肪織が厚く描出されやすい。右側では一般に描出されにくいとされている。後縦隔腫瘍や脊椎病変などで傍脊椎線は外側に偏位する。

 

肺野の正常陰影

 

1.肺尖部の鎖骨下動脈

 

正常者の胸部正面像の右13%、左17%で、肺尖部に辺縁不明瞭な淡い陰影が認められる。この陰影は気胸があると描出されることや、動脈硬化の場合は同部位に平行する線状の石灰陰影が見られること、透視下で大動脈と同期して動くこと、辺縁明瞭な鎖骨下動脈のvertica1portioに連続することから、鎖骨下動脈のapica1portioと考えられている。通常、後部第2、第3肋間に見られるが、橋に後部第4肋間と低い位置に認められることもある。胸椎と第1肋骨前部との間に存在し、約8×11mmの大きさを示す。

 

2 第1肋軟骨の化骨

 

第1肋軟骨が化骨すると肺野に突出して、一見肺野の異常陰影様に見えることがある。左右対称で、第1肋骨の前部に連続して認められれば診断は容易であるが、左右非対称の場合には迷うこともあり、その際は骨の条件での腹背像が異常陰影との鑑別に有用である。

 

3.乳頭

 

男性でも乳頭が、通常、前部第4肋間に描出されることがある。稀に第5肋間に描出されるが、片側の場合は肺の結節陰影との鑑別が必要となることもあり、その際、腹背像が有用である。

 

肺野の既存構造の広かり

1.葉間裂

 

胸部単純正面像では、葉間裂として右の上中葉間裂(minor ffssure,horizonta1 fissure) のみが認められる。時に奇静脈葉間裂や上副葉間裂、左上中葉間裂などの過剰間裂が認められるが、これらを異常陰影や肺の容積減少と間違えないようにする。 2。肺門部右は肺血管や気管支が2カ所から、左は1カ所から広がる。右肺動脈は縦隔内で上幹動脈(A3,Al)が分岐するため、右肺門を構成するのは上肺 静脈や中間肺動脈幹である。一方、左肺動脈は左主気管支、上行気管支の基部を取り巻くように後下方に向かうので、肺門部で正接像として認められ、肺門の高 さは左のほうが約1/2肋間高い。

 

3.肺区域の広がり

 

肺区域に関して、胸部正面像で正常の広がり を示しているかどうかを見るには、葉間裂や中央陰影の確認とともに、正面像で認めやすい気管支や肺血管の走行を確認する。例えば、正接像として見られるの はB3。、A3。やB6などであり、水平に走行するのは右のA4、、V4、である。また、肋骨横隔膜角に向かう肺血管はA8・であり、下行肺動脈に連続し てほぽ垂直に横隔膜の下方まで認められるA10その内側に見られるのはV10Cである。

 

胸部レントゲン

 

 

 

原発性肺癌
肺に発生する腫瘍としては、近年死亡原因のトップに挙げられているのが肺癌です。 肺の組織から発生した癌を原発性肺癌と呼び、主に二つに分類されます。 小細胞肺癌と非小細胞肺癌です。これは腫瘍の性質がこの両者で大きく異なることから分けられて、治療方法も異なっています。 肺癌は喫煙との関係が強い癌であり、日本においては増加傾向にあります。

転移性肺腫瘍
他の部位に発生した悪性腫瘍が肺に転移を起こしたものをさします。 血行性転移の結果として起こる肺腫瘍ですが、切除により治癒する人がいます。

* 血行性転移・・・腫瘍細胞が血流にのって他の臓器に到達しその場で増殖し、転移巣を形成する事を言います。転移しやすい場所は腫瘍により異なります。

縦隔腫瘍
両側の肺と肺との間を縦隔と呼びます。縦隔には心臓、大血管、気管、食道等の器官が存在しています。 われわれが取り扱っている主なものには前縦隔に発生する胸腺腫瘍や胚細胞性腫瘍、中縦隔に発生する気管支原性嚢胞、後縦隔に発生する神経原性腫瘍などがあります。

 

胸膜腫瘍
胸膜とは肺の表面と胸腔の表面を覆っている膜です。 ここから発生する悪性腫瘍としては近年増加傾向にある悪性胸膜中皮腫があります。

治療方法

肺癌の治療はその組織型および病期により異なります。 組織型とは小細胞肺癌か非小細胞肺癌かという区別です。(肺癌の種類の項参照) また病期とは肺癌の進行度でありI期からIV期までに分けられています。(肺癌の病期の項参照)
よって治療方法を決める前に正確な組織診断と病期診断を行う必要があります。

組織診断の方法としては、気管支鏡下の生検、CTガイド下経皮的針生検、術中生検などの方法があります。
病期診断は、胸部CT、腹部CT、骨シンチグラム、脳MRI等を必要に応じて施行し、遠隔転移の有無、リンパ節転移の有無、癌の胸腔内での拡がりなどを調べます。

* 生検・・・癌の診断は最終的には癌の組織の一部を顕微鏡にて観察することによりなされます。そのための組織を採取する事です。
* CT
・・・computed tomographyの略で体の周囲を回りながらX線の検査をおこない、その情報をコンピューターにて処理することにより体の断面を画像にしたものです。
* MRI
・・・磁気を用いた断層画像です。脳を含めてCTに勝る情報が得られる事があります。
*
骨シンチ・・・骨転移を見つけるための検査です。注射を行った後に撮影を行います。
*
リンパ節転移・・・腫瘍細胞がリンパの流れに沿って近傍のリンパ節にたどり着き増殖することをリンパ節転移と言います。

気管支鏡検査

気管支鏡という細長いカメラを口から気管、気管支へと挿入し、気管および中枢気管支の表面の変化を観察し、異常が有れば細長い鉗子にて生検を行います。 また肺末梢病変に対してもX線透視下に鉗子を病変まで進めることにより肺末梢の病変の組織を採取します。

l      肺末梢・中枢・・・末梢は中枢に対する言葉であり、中枢に発生するものには喫煙との関係の強い扁平上皮癌などの肺癌が多く発生します。末梢には腺癌が多く発生します。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

肺癌の種類

原発性肺癌

非小細胞肺癌

*           腺 癌 : 日本では最も頻度の高いタイプの肺癌です。

*           扁平上皮癌 : 喫煙との関係が強い肺癌です。

*           大細胞癌 : 大きくて奇怪な細胞からなる肺癌です。

*           その他 : 腺扁平上皮癌、カルチノイドなどまれな腫瘍。

小細胞肺癌

細胞質が少ない小さな細胞からなることからこの名前が付いています。リンパ節転移や血行性転移を伴いやすい性質を持つ反面、化学療法や放射線療法がよく奏効するという特徴を持っています。

 

 

 

 

 

 

肺癌の病期

潜在癌

癌細胞が痰の中や気管支洗浄液の中に発見されるのですが、画像上あるいは内視鏡上本体がどこにあるのか指摘できない段階です。

0

癌が気管支内腔をおおう細胞層の一部にのみ存在する段階です。上皮内癌と言います。

IA

癌が原発巣にとどまっており、大きさは3cm以下であり、リンパ節や他の臓器に転移を認めない段階です。

IB

癌が原発巣にとどまっており、大きさが3cmを越える大きさで、リンパ節や他の臓器に転移を認めない段階です。

IIA

原発巣の大きさが3cm以下であり、癌が存在する側の肺門のリンパ節に転移を認めますが、縦隔リンパ節や他の臓器に転移を認めない段階です。

IIB

原発巣の大きさが3cmを越える大きさであり、癌が存在する側の肺門のリンパ節に転移を認めますが、縦隔リンパ節や他の臓器に転移を認めない段階あるいは、原発巣の癌が肺をおおっている胸膜・胸壁に直接およんでいますが、リンパ節や他の臓器に転移を認めない段階です。

IIIA

原発巣の癌が直接胸膜・胸壁に広がってさらにリンパ節転移を認めるか、原発巣と同じ側の縦隔のリンパ節に転移を認める段階です。

IIIB

原発巣の癌が縦隔の重要臓器(大血管、食道、気管など)に拡がっていたり、胸腔内に拡がっているか、原発巣と反対側の縦隔、肺門リンパ節や首の付け根のリンパ節に転移しているが、遠隔転移は認めない段階です。

IV

遠隔転移を認める段階です。(脳、肝臓、骨、副腎など)
注:解説図は一部省略してあります。詳しくは医師にお尋ねください。

 

*肺門リンパ節・・・肺が縦隔につながっているところを肺門と言います。肺への通路にあたるところで肺動脈、肺静脈、気管支がそこを通過して肺に入っていきます。その付近にあるリンパ節を肺門リンパ節と言います。縦隔リンパ節よりも腫瘍に近いリンパ節になります。

*縦隔リンパ節・・・縦隔とは両側の肺を隔てる部分をいいます。心臓、大血管、気管、等があります。その中に存在するリンパ節を縦隔リンパ節といいます。肺門リンパ節よりも腫瘍から遠いリンパ節として区別されています。

小細胞肺癌では別の方法でも分類されています。

*           限局型 : 癌が1側の肺と近くのリンパ節(縦隔のリンパ節、癌のある肺と同側の首の付け根にある鎖骨上窩リンパ節も含む)にとどまっている段階です。

*           進展型 : 遠隔転移を認める段階です。

治療選択方法

肺癌の病期(進行度)、組織型、全身状態、患者さんの意思等を考慮し、呼吸器カンファレンスにて呼吸器外科、呼吸器内科、放射線科の協議にて治療方針が議論され、その結果を基に主治医と患者さんおよびご家族との相談の上治療方法を決定しています。

治療方法としては外科療法、放射線療法、化学療法があり、それぞれ単独かあるいはそれらの組み合わせにて治療が行われます。

外科治療

手術的に癌を切除する方法です。標準的には癌の存在する肺葉の切除 とリンパ節郭清術を行います。 右が上、中、下の三つ、左が上、下の二つの肺葉に分かれています<図参照>。 そのうちの1つの肺葉を切除するのが通常です。癌の拡がりによってはもっと広範囲の切除が必要になることもあります。 最大片側の肺全摘術まで行われます。 また、病変が術前の画像にてかなり早期の肺癌が考えられる場合にはより縮小した手術として、胸腔鏡下の手術や区域切除、楔状切除などを行います。

胸腔鏡下の手術とは胸腔鏡というカメラを用いて小さな創から行う手術方法で、胸壁の損傷が少ないために術後創痛が少なく、早期に回復することが期待できます。

区域切除や楔状切除などは肺の切除量が肺葉切除よりも少なくなり、呼吸機能の損傷が少なくなります。 縮小手術は適切な術前画像診断にて適応を決定しないと再発の危険性を増加させることにもなりかねません。 当科においては高分解能CT所見を基に縮小手術の選択を行っていますが、それらの患者さんには再発を認めていません。 標準的な肺手術の死亡率は約1%です。術後は翌日より食事開始となり、1週間から2週間で退院可能です。硬膜外麻酔により術後の痛みはかなり少なくなっています。

放射線治療

外から照射を行う外照射と気管支内腔から照射を行う腔内照射(小線源治療)に分けられます。 手術と同じ局所療法であり、肺癌がある程度の範囲内に限局しているときに適応となります。 最近は正常の肺組織へのダメージを減らすために三次元照射が多く用いられるようになってきました。 この方法を行うと放射線による副作用がかなり少なくなります。

化学療法

全身に拡がった非小細胞肺癌と小細胞肺癌が対象となります。 新たな抗癌剤の開発やその臨床応用が徐々に進んできており、幾つかの新しい抗癌剤がこれらの肺癌に対して使われるようになってきました。 また新しいタイプの抗癌剤として分子標的治療薬(イレッサ)が使えるようになりました。 この薬は従来の抗癌剤とは作用機序、副作用の点からかなり異なる新しい薬剤です。 間質性肺炎という致死的になりうる副作用がまれに出現しますが、適切な使用方法を行うと著明な効果が得られることがあります。

Best supportive care(対症療法)

根治を目指した治療ではなく、癌による症状を積極的に緩和していくという治療です。 モルヒネを中心とした疼痛管理、悪性胸水に対する胸腔ドレナージ、癒着療法、脳転移、骨転移に対する放射線療法などを行います。

 

0 期
(上皮内癌)

外科的治療 : 可能な限り肺実質を温存した切除
放射線治療 : 気管支腔内照射+外照射

IA

外科治療

*           標準的手術(肺葉切除あるいは肺全摘術+縦隔リンパ節郭清術)

*           縮小手術(胸腔鏡下手術、区域切除、楔状切除)

放射線治療 : 手術が不能な全身状態の場合に行います。

IB

外科治療 : 標準的手術(肺葉切除あるいは肺全摘術+縦隔リンパ節郭清術)
放射線治療 : 手術が不能な全身状態の場合に行います。
化学療法 : 臨床試験として術前化学療法や術後化学療法も行っています。

IIAIIB

外科治療 : 標準的手術(肺葉切除あるいは肺全摘術+縦隔リンパ節郭清術)
放射線治療 : 手術が不能な全身状態の場合に行っています。
化学療法 : 臨床試験として術前化学療法や術後化学療法も行っています。

IIIA

外科治療 : 標準的手術(肺葉切除あるいは肺全摘術+縦隔リンパ節郭清術)
放射線治療 : 手術が不能な全身状態の場合に行います。若く元気な患者さんに対しては、化学療法との併用をおこないます。
縦隔リンパ節転移陽性の場合には術後に放射線治療の追加を行う場合があります。
化学療法 : 臨床試験として術前化学療法や術前放射線化学療法、術後化学療法を行っています。

IIIB

外科治療 : 切除可能なT4(大動脈浸潤、椎体浸潤、気管分岐部浸潤、上大静脈浸潤、胸膜播種)の一部に対して積極的に術前後の補助療法と組み合わせて切除を試みています。
放射線治療 : 手術療法が望ましくない場合に行います。
化学療法 : 放射線照射との併用あるいは単独で行います。

IV

化学療法 : 平均すると数ヶ月の延命効果が大規模比較試験にて証明されています。有効例では生存期間の著明な延長も期待できます。
Best supportive care
: ほとんどのこの病期の方にとって最も重要な治療です。よりよい生活が続けられるように痛みや他の症状を積極的に緩和していきます。
放射線治療 : 対症療法として疼痛の軽減、脳転移による症状の軽減などの目的で行います。

 

 

 

 

小細胞肺癌

臨床病期I期では外科手術後に化学療法を行います。
それ以外の限局型小細胞癌では、化学療法+放射線治療が標準的な治療です。場合により化学療法後に外科手術を行います。

治療が奏効した場合には予防的に脳への放射線治療を行うことがあります。

進展型 : 主として化学療法を行います。

胸腺腫瘍

胸腺から発生する腫瘍です。

胸腺とは前縦隔(心臓大血管の前方)に存在する臓器であり、胎児から幼児にかけては身体の免疫系の発達に重要な役割をはたす器官です。 成人以降は退化してほとんど脂肪に変化し、CT上もほとんど認識されなくなります。 それから発生する腫瘍に胸腺腫と胸腺癌があります。

胸腺腫

顕微鏡で見た細胞像が明らかな悪性を示さない事から胸腺癌と区別されてきましたが、胸腺腫は浸潤も転移能も持った悪性としての振る舞いを示す腫瘍です。

正岡分類

I

完全に皮膜におおわれている

II

皮膜を破って周囲の脂肪組織へ浸潤している段階、あるいは皮膜へ浸潤しているもの

III

隣接臓器へ浸潤するもの

IV

胸腔内や心嚢内の離れた場所に腫瘍細胞が生着(播種)したもの、あるいはリンパ節転移、多臓器への血行性転移を有するもの

 

 

X線所見・サインの説明

 

1.Airbronchogramとは

 

一般に肺内気管支は、その壁の薄さと、また周囲の肺胞内ガスと気管支内ガスとの間にコントラストがないことから、正常の胸部X線写真においては描出されない。これが何らかの原因によって気管支含気像として認められる場合、その所見をairbronchogramという。1927年、F1eischnerが初めて記述し、Fe1sonによって命名されたX線診断学的サインである。F1eischnerの原著に示されているairbroncho.gramの描出原理に関する実験(改変)を図2に示す。これは、空気で満たされた紙ストローを容器の中間部に水平に置き、上方からX線写真を、

 

A水なし

Bストローのすぐ下まで水あり

(ストローと水面は離れている)

Cストローの上まで水あり

 

の3つの条件で撮影したものである。

 

 

 

ここでAとBでは、ストローの壁の薄さと、管内・管外の空気のX線透過度に差がないためにストローは不明瞭に描出されるにすぎないが、Cでは、管の内外で空気と水のX線透過度が大きく異なるために、管内の空気がはっきりと描出されている(Silhouette signの項も参考にされたい)。

ストローを肺内気管支に、また容器を肺胞に置き換えて考えれば、airbronchogramの成因を理解することができる。Airbronchogram胸部X線写真において認められるためには、以下の2つの条件が必要である。

@描出気管支周囲の肺実質内病変、ないしは高度の間質性病変の存在:

気道を囲む肺実質の含気量が著しく減少しているか、完全に無気肺化していること。

A病変部に至る気管支の内腔の開存:

当該気管支の中枢側が完全閉塞をきたしておらず、気道内の含気が保たれていること。

@より、airbronchogramが認められる場合、描出の直接原因となる変化は基本的に肺内病変であって、壁側胸膜などの肺外病変ではないことを読み取ることができる。またAから;たとえ@のような肺実質病変が存在しても、気道系の状態によってはairbronchogramとして描出されない場合もあることを理解する必要がある。

 

 

2.Norma1variationとしては

 

上に述べた理由から、airbronchogramが認められる場合は、原則として異常所見と考えてよい。

 

■読影のすすめ方

 

Airbronchogramを疑う所見を認めたとき、まずそれが真の所見であるかどうかを検討する必要がある。

例えば、炎症性の気管支肥厚(いわゆるtram−line形成)や、また肺門部において気管支に伴走する血管系によって気管支内含気が描出されることがあるが、これらはairbronchogramとは呼ばない。また、末梢肺野において肺血管により仕切られた部分がairbronchogramのように見えることがあるが、これは末梢にたどることによって消失し、気管支含気像ではないことを判別できる。

次にairbronchogramを生ずるに至った原因を検討する。これには大別して、

 

@肺胞腔のconsolidation

肺胞腔が水濃度の物質によって置換された場合

 

A肺胞腔の虚脱:

無気肺状態のうち、中枢性の気道閉塞によらないもの

 

B肺胞壁ないし間質の肥厚:

肺胞腔がこれらのために狭小化した場合

の3つの場合がある。

一般にこれらを胸部X線の所見のみから鑑別することは困難なことが多く、他の所見を念頭におきながら検査をすすめ、鑑別診断を試みることになる。Airbronchogramに伴う胸部X線所見として鑑別の参考となるものとしては、以下のものなどがある。

1)無気肺影を伴うとき・

圧排性無気肺(肺胞性サルコイドーシスなど)

2)びまん性の陰影を伴うとき・

肺炎・肺水腫・肺出血・肺胞上皮癌・間質性リンパ腫・肺胞蛋白症・ARDS(成人呼吸促迫症候群)・肺胞性サルコイドーシス

3)大葉性の陰影を伴うとき・

大葉性肺炎・肺塞桂症に伴う肺出血

4)多源性の辺縁不明瞭な陰影を伴うとき・

肺胞性サルコイドーシス・肺胞上皮癌・間質性リンパ腫

5)胸水を伴うとき・

(心原性)肺水腫

6)胸膜腫瘤影を伴うとき・

肺梗塞・

炎症性偽腫瘍・

肺内肉芽腫(結核性、真菌性)・

原発性肺癌(パンコースト腫瘍を含む)・

転移性肺癌・リウマチ性結節・リンパ腫

7)孤発性陰影を伴うとき・

原発性肺癌

 

 

綴鑑別診断と確定診断のボイント

鑑別診断にあがる疾患

参考となるX線所見

確定診断に必要な検査

確定診断のポイント

1.肺胞腔のonsolidation      

●肺胸性肺炎

      

      

 

       肺水腫(心原性・非心原性)

      

 

●ARDS(成人呼吸促迫症候群)

●肺出血

      

 

●肺胞蛋白症

 

      

〈肺胞内含気を置換する物質>  

 

炎症性湊出液

 

 

 

肺胞内への漏出液

 

 

 

同上

 

 

肺胞内出血

 

 

異常蛋白質液の湊出

 

 

 

 

 

辺縁不明瞭な癒合陰影(区域性のことが多い)

 

Ker1ey-B線、上葉血管影増強、胸水、 心拡大

 

びまん性癒合陰影(多くは両側性)

びまん性癒合影

 

 

両側性のびまん性癒合陰影

 

 

 

 

 

血液検査、培養(喀疾・咽頭)血清反応

 

(基礎疾患の検索)  

 

 

 

(同上)

 

 

喀疲検査(血疲)

 

 

喀疾検査(PAS染色)、BAL

 

 

 

 

 

細菌感染の確認

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

基礎疾患の検索     (肺梗塞など)

脂質に富むPAS陽性蛋白質を確認

2.肺胞腔の虚脱    

●中葉症候群

 

 

 

●気管支拡張症(肺胞虚脱を伴うもの)

●気胸

 

 

〈原因〉

 

慢性炎症に伴う肺胞壁の癩痕化と肺胞無気肺

同上

 

 

無気肺

 

 

 

 

右中葉に限局性の陰影

 

 

tram-line形成など

 

一側肺全体の虚脱

 

 

 

胸部X線(肺尖撮影)

 

 

気管支造影、呼吸機能、喀疲培養

 

胸部X線

 

 

 

 

中葉支周囲リンパ節腫大

 

 

病歴が重要

 

 

突然の胸痛、体型的特徴

 

3.肺胞壁ないし問質の肥厚●重症放射線性肺炎

      

      

      

      

 

●重症間質性肺線維症

 

〈原因〉

急性期には肺胞壁、気管支壁の浮腫化

亜急性期〜慢性期では間質の高度の線維化

進行性の間質の線維化

 

 

照射野に一致した陰影

 

 

 

 

 

蜂窩肺

 

 

 

呼吸機能、血液ガス検査、気管支鏡検査(TBLB、BAL)

 

 

 

同上  

 

 

 

放射線照射の既往

 

 

 

 

 

 

 

4.1と3の合併    

●肺胞上皮癌

      

      

 

●カリニ肺炎

      

 

 

本態性

       肺ヘモジデローシス

      

 

 

 

 

分泌粘液、および癌細胞による肺胞壁肥厚陰影

感染性浸出液、および炎症による肺胞壁肥厚

 

肺胞内出血と炎症性間質肥厚

 

 

 

 

多源性の気管支肺胞陰影

 

 

気管支周囲浸潤影→癒合影

 

 

 

びまん性癒合陰影、蜂窩肺

 

 

 

 

 

気管支鏡検査(TBLB)

 

 

喀痰検査 分離)

 

 

 

 

呼吸機能、気管支鏡検査(TBLB)

 

 

 

 

病理像による診断

 

 

病因も検討

 

 

 

 

肺うっ血に伴う二次性肺ヘモジデロ一シスでも描出されうる

5.2と3の合併    

●肺胸陸サノレコイド一シス

      

 

       IRDS

新生児呼吸促迫症候群

 

 

 

 

 

末梢の問質性肉芽腫、および遠位気道の狭窄による肺胞の虚脱

肺胞サーファクタントの欠乏による肺胞虚脱と、肺胞膜の硝子様膜形成による肥厚

 

 

多源性の癒合陰影両側性肺門部陰影(BHL)

 

 

両側性のびまん性間質陰影

 

 

 

 

 

CT,Gaスキャン、血液検査(ACE↑)

気管支鏡検査(TBLB、BAL)

羊水穿刺

(肺サーファクタントの測定)

 

 

 

 

全身病変の検索が必須

 

 

 

早産児・低出生体重児に多い

 

 

 

 

Extrap1eura1 signとは、

 

病変が肺内か胸膜外かを鑑別するために、 Fe1sonによって提唱された徴候で、病変が胸膜外のものであることを示唆するものである。胸膜外腔とは壁側胸膜と胸郭との間をいい、胸膜外の病変は、 肺との間に壁側および臓側の2枚の胸膜が存在するため、横からみると明瞭な辺縁を持つ内側に凸な陰影として描出される(apencil sharp convex out1ine)。 腫瘤の表面が多少不整でも胸膜に覆われるために、肺内病変に比べるとより辺縁が明瞭で平滑となる。また、壁側胸膜は胸壁の内側に癒着しており剥がれにく い。したがって、胸膜外病変はしばしば病変の厚みが縦径と同じくらいになることがある。また、上下端はなだらかで、わずかに肺に対して凹となって胸壁へ移 行する(tapering margins)。

このSignを示すのは胸膜外病変のみではなく、被包化胸水、胸膜腫瘍、限局性胸膜肥厚などでも見られることがある。

 

■読影のすすめ方

 

胸部X線写真で胸膜外病変の境界の見え方には

大きく分けて2種類ある。

1つは辺縁が不鮮明で、病変の存在そのものがはっきりしないこと、

もう1つは境界が平滑で明瞭に認められることである。

前者は病変を正面からとらえた場合で、病変を囲む肺との境界がX線ビームと平行にならないためである。

後者は病変を真横からみた場合で、病変と肺との境界がX線ビームと平行になるからである。この中間で病変を斜めにとらえると片側(こ机は常に肺の中心部側になる。肺門側とは限らない)は辺縁平滑で明瞭でありをがら、反対側(肺の辺縁側)は不鮮明な境界を呈する。

この現象は比較的よく見られるので、注意し ていれば単純写真1枚でも局在診断が可能となるので有用な所見である。このような場合は透視下で病変の側面を確認し、スポット撮影を行うとはっきりしてく る。胸膜外病変はしばしば肋骨やその近辺から起きるため骨膜炎や骨の破壊が認められることがあるので、骨の変化を確認するために骨条件の撮影も有用であ る。時に皮膚の病変でも胸膜外病変のように見えることがあり、皮膚病変の有無を確認することも必要である。

 

鑑別診断と確定診断のポイント

 

胸膜外病変としては表1に示されたものがある。Extrap1eural signを示す疾患としては胸膜外病変のほかに被包化胸水、胸膜腫瘍などもある。胸膜外病変として最も頻度が高いのは肋骨の転移性腫瘍である。原発性腫瘍としては多発性骨髄腫が多い。陳旧性肋骨骨折も鑑別に挙げられる。小児ではhistiocytosisxEwing肉腫も考えねばならない。肋骨の感染症(結核、真菌症など)もある。その他、脊椎、胸骨の転移性、原発性骨腫瘍、(軟部組織腫瘍、縦隔腫瘍、皮膚病変などが鑑別に挙げられる。

検査としては骨病変の確認のための骨条件で の撮影、肺外疾患であることを確認するため透視下で呼吸に伴う移動の有無の確認も有用であるが、病変の発生部位、骨破壊の有無、腫瘤の周囲への1進展の様 子、性状を知るにはCTが最も有用である。腫瘤内の脂肪や石灰化の有無によって確定診断の可能なこともある。同様にMRIも有用と思われる。組織診断には 生検が必要な場合もある。

 

 

Common

Metastasis to rib or extrap1eura1 soft tissues Rib fracture

Other bone mass(myeloma,fibrousdysp1asiahistiocytosisX,etc)

Mediastina1 mass

Subphrenic mass

 

Rare

Hematoma

Lipoma,neurofibroma,orother soft tissue mass

Postsympathectomy,P1omhage,or other operatio

Chest wa11 infection

Lobar agensis

 

X線所見の説明とnorma1 varition

 

1単純X線写真で構造物の輸郭が認識されるのは、

@そのまわりにX線吸収係数の異なる物質が接しており、

Aその部分がX線の入射方向に十分な長さにわたって接線をつくる場合である。

これらの2つの条件が満たされるとき、X線写真上、構造物の輪郭が見られるわけであるが、正常に見られるはずの輪郭が消失している場合、その輪郭がsi1houette out されている(si1houette Sign陽 性、シルエットが見えなし)場合が陽性であることに注意)と呼び、その輪郭に接して同一のX線吸収係数をもつ病変の存在を疑う手がかりとなる。また、単純 X線写真は透過してきたX線がつくる像であるが故に、その透過してきた経路にあるすべての構造物が重なって画像が形成される。したがって、異常な像を見た 場合、その病変が解剖学的に前後のどの部分に位置するかを判断することが重要であるが、si1houettesignはその手がかりも与えてくれる。すなわち、同一のX線吸収係数をもつ構造物が重なって見られ、それぞれの辺縁が消失しているならば(si1houette out)、その2つの構造物は接していると考えられ、逆にそれぞれの辺縁が認められるならば、それらは離れて存在するといえる。このように、si1houettesignは X線診断学の基本をなす重要なサインで、その応用範囲は非常に広く、胸部のみではなく、全領域で応用可能である。その際、異なるX線吸収係数の物質とは、 通常、軟部組織・脂肪・空気を指すが、胸部X線写真では主に心臓・大血管・横隔膜の輪郭に対して用いる。したがって、前述の2つの条件のいずれかが満たさ れないとき、X線学的に輪郭が描出されないので、noma1 variation(偽陽性)として、@撮影条件が悪くて、X線吸収係数の差がつきにくい場合(underpenetration film)、A 撮影体位が悪かったり、正常構造物が回転・偏位したりして、十分な長さの接線を形成しない場合、などがある。後者の場合では、漏斗胸で心臓の右第2弓や下 行大動脈辺縁が消矢したり、縦隔の過剰な脂肪沈着により心臓の右第2弓や左第4弓が消失したりする例が挙げられる。下行大動脈辺縁が消失するormal Variatioの原因として、肺門上部では下行大動脈周囲の脂肪沈着、肺門上1/2では左肺動脈本幹・下幹起始部の大動脈への近接、肺門下部から心臓後部ではc1ockwise rotationによる心臓の下行大動脈への近接(漏斗胸、側症、straight back syndrome、 心拡大など)、横隔膜上部では食道の走行異常や半奇静脈の拡張などがあり、肺門下1/2での大動脈辺縁の消失は稀であるとしている3〕。」逆に偽陰性を示 す場合としては、病変の長さがX線の入射方向に対して前後に十分な長さをもっていなかったり(右中葉の無気肺がうすく斜めに生じる)、脂肪組織からなる病 変が軟部組織に接していたり(胸腔内の大きな脂肪腫;通常、胸部X線写真の高圧撮影の条件では頸部・胸壁を除いては軟部組織と脂肪のコントラストは良くな し)ので、脂肪からなる病変でも小さな病変は軟部組織とsilhouettesignを形成しない)、病変部が新たな接線を形成する(右中葉の無気肺が心右縁に前後に張り付くように分布する)場合などである。また、前後方向に2つの病変が重なって存在する場合は、si1houettesignを呈する1つの病変と誤診する可能性がある。

 

読影のすすめ方

1したがって、X線写真の読影においては、 正常例で、それぞれの撮影法においてどのような輸郭が描出されるのかを知っておく必要がある。そして、それぞれの輸郭を形成する各構造物が人体のどの位置 に存在するのかを覚えることが重要である。そのためには、CT画像に代表されるような人体の横断解剖に慣れておくとよい。例えば、胸部単純X線写真で心臓 の右第2弓が消失していれば、それが近接する右中葉S5の病変によるものであることが分かり、大動脈弓が消失していれば左のS1+2やS6の病変によるも のであることが容易に分かる。表1にsi1houette signと予想される病変の位置の関係を示す。さらに、胸部X線写真の読影においてはsi1houette signの応用ともいうべきいくつかの有用なサインがある。

 

 

 

 

 

 

胸部x線写真正面像silhouette signを呈する部位と肺内病変の代表的存在部位

silhouette signを呈する部位

肺内病変の代表的存在部位

上大静脈上部

上行大動脈外側縁

上大静脈下部(右第1弓)

右房外側縁(右第2弓)

右横隔膜上縁

大動脈弓(左第1弓)

下行大動脈外側縁

左室外側縁(左第4弓)

左横隔膜上縁

右肺S1

S3

S3

S5

S5,S8

左肺S1+2,S6

6、S10

S5

8

 

 

 

1.cervicothoracic sign

 

胸部単純写真正面像で、上縦隔前方の病変は 鎖骨下縁より上方では頸部の軟部組織と区別されなくなり、その輪郭が消失するが、後方の病変は肺尖が上部まで伸びているため肺に境されて、鎖骨上部でも輪 郭が認められる。上縦隔の病変は側面像でもしばしば同定しにくく、有用なサインである。なお、傍気管部の病変は鎖骨上縁付近まで輸郭が見られる。

 

2.hilum overlay sign

 

胸部単純写真正面像で中央陰影の拡大を見た とき、それが心臓に由来するものか縦隔腫瘤によるものかを鑑別するのに有効なサインである。すなわち、心臓や心膜に由来するものであれば、腫瘤陰影の辺縁 から外側に肺血管陰影が見られ、腫瘤陰影辺縁から1cm内側より中央には肺血管陰影

を認めないが、縦隔腫瘤では腫瘤陰影内に肺血管陰影を認める。

 

3.incon1plete border sign

 

胸部単純写真で胸膜外病変は、正面視された 場合、しばしば肺内病変と似たような像を呈するが、その輪郭が部分的に途絶えている場合、そこが胸壁と接する部分で胸膜外病変の可能性があるというサイン である。実際に胸膜外病変か肺内病変が胸壁に進展したものかの鑑別は、斜位撮影やCTなどにより判断する必要がある。同様の所見は胸壁病変が外側に突出し た場合にも生じる(cutaneoussilhou-etteSign;正常の乳房、胸壁・腹壁ヘルニアなど)。

 

4.round nipp1e shadow sign

 

胸部単純写真正面像で時に乳頭が肺内腫瘤の ように見えることがあるが、正面像の撮影ではカセッテを前胸壁に押し付けて撮影するため、乳頭は多くの場合外側を向き、その外側縁は空気と接して鮮明に、 内側縁は胸壁に連続しているため見えないか、もしくはぽやけて見える。一方、肺内腫瘤は外側のほうが前後方向に肺の厚みが薄いため、通常その逆である(内 側がより鮮明)。

 

5.iceberg(thoracoabdominal)sign

 

胸部単純写真・腹部単純写真の正面像・側面 像で横隔膜後面とつらなって胸腔内に病変が見えた場合、その病変は胸部・腹部にまたがっている可能性があるというサインである。病変の下部輸郭が椎体に向 かっている場合は、病変の主座は胸部にあるといえ、椎体から離れるように見える場合は主座が腹部にあるといえる(icebergconfiguration)。

主な病変として、大動脈(動脈瘤)・食道(アカラジア・食道裂孔ヘルニア・食道静脈瘤)・奇静脈(下大静脈閉塞奇静脈連結)に由来するものがある。

 

鑑別診断と確定診断のポイント

1Si1houette signは 本来、病変の存在診断・局在診断の手がかりとなるものである。確定診断には別の方向から撮影した単純写真(正面像に対して側面像・斜位像・肺尖撮影など) やCTなどが有用である。しかし、質的診断は不能で、例えば正常にあるべき縦隔の輸郭が消失したときには、肺内の軟部組織の濃度をもつすべての病変が鑑別 の対象となる。また、縦隔病変の進展によっても正常の縦隔の輸郭が消失するので、肺内病変との鑑別が必要になる。

 

 

なかなか消失しない肺炎様陰影

 

 

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胸部X線上“肺炎様陰影”を呈する。

慢疾患は数多く存在する。しかし、肺炎は多 数の原因により生じる肺の炎症の総称であり、その画像所見もいわゆる肺胞性陰影を示すものから間質性陰影を示すものまで多彩である。したがって、“肺炎様 陰影”と称される所見も多種にわたり、この言葉のみで全体を総括することは困難である。そこで本稿では、その中からairspace conso1idation(びまん性浸潤陰影)を呈するものをとりあげ、そのX線学的特徴と鑑別診断を中心に解説する。本症例の来院時の胸部単純X線写真正面像では、両側全肺野にびまん性にconso1idationを認め、両側上中肺野末椥こは境界不明瞭で融合傾向の強い斑状陰影も認められる。しかし、心拡大はなく、胸水貯留や縦隔および肺門リンパ節腫大を疑わせる所見は認められない。

 

 

 

 

 

疾患名。

臨床像・臨床検査研見

急性

肺水腫

肺炎

細菌性

ウイルス性マイコプラズマ

真菌性

肺出血

Goodpasture症候群

慢性

肺胞蛋白症

肺胞上皮癌

サルコイドーシス

悪性リンパ腫

肺胞微石症

肺結核

泡沫性血痰、心臓カテーテル(肺動脈襖入圧〕

 

発熱WBC増加CRP陽性、喀疲培養

WBC正常〜減少、咽頭培養

激しい咳、補体結合反応、寒冷凝集価上昇

重篤な基礎疾患、免疫不全、喀疫・血液培養

胸部外傷、喀血、担鉄細胞、CRP陽性

貧血、腎障害、血中抗基底膜抗体

 

 

痰PAS陽性物質、CRP陰性

漿液性痰、CRP陰性、喀疾細胞診、肺生検

眼病変、血清ACE上昇、TBLB

発熱、リンパ節腫脹、リンパ節・肺生検

常染色体単純劣性遺伝、無症状、肺生検

赤沈、ツ反、喀疾中に結核菌の証明

 

 

 

 

 

 

Conso1idationとは、

 

 

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肺胞内の空気が水や組織で置換された状態を指す病理組織学的用語であるが、X線診断学的にも同様の性状の陰影に対して用いられる。このX線像としての特徴は、

肺の容積減少を伴わない点で無気肺とは区別され、一般的には以下にあげる所見を呈する場合が多い1)。

@    境界不明瞭:辺縁部では正常含気肺胞と病変が入り乱れるため境界は不明瞭となる。

A融合傾向が強い:Kohn孔により病変が容易に隣接する肺胞へ広がる。

FelsonB,eta1:GamutsinRadiology)より改変)

B     airbronchogramが認められる:周囲の肺胞に水と同濃度の病変があり、気管支内に含気が残ると、樹枝状の気管支像を透見できるようにをる。C症状発現から陰影出現までの期間が短い。

D陰影の変化が速い。

E区域性または肺葉性分布(疾患によっては非区域性や非肺葉性のことも多々ある)を示す。読影のすすめ方としては、これらの所見に加え胸水、リンパ節腫大、空洞を伴った陰影かどうか、などを判定し、臨床症状や臨床検査所見と照合して鑑別診断を行う。

灘鑑別診断と確定診断のポイント囲囲躍翻1本症例については、胸部X線写真上びまん性のconso1idationを 示す肺疾患を考える必要がある。表1に、本症例と鑑別を要する代表的疾患名と各疾患における検査所見の要点を示した2)。肺水腫は、左心不全などの透過性 非尤進型と成人呼吸促迫症候群などの透過性尤進型に分かれ、心臓カテーテノレ検査などの血行動態的検査が診断や治療に有用である。肺炎は細菌性やウイノレ ス性をはじめ多彩な原因で発症するが、発熱などの臨床症状や基礎疾患の有無、喀痰培養などが診断の決め手になる場合が多い。肺胞蛋白症は水に溶けにくい糖 蛋白質が主として肺胞腔に沈着する疾患であり、喀痰中にPAS(periodicacidSchiff陽陸物質を証明することで診断される。肺胞上皮癌は肺腺癌の亜型の1つで、診断の決定には病理組織学的検査が必要である。サルコイドーシスは多彩な全身性の肉芽腫病変を呈し、血清ACF(angiotensinconverting enzyme)値の上昇が全身への病変の広がりを反映する。またブドウ膜炎などの眼症状を高率に認めるが、確定診断は生検による非乾酪性類上皮細胞性肉芽腫の証明による。

肺胞微石症は常染色体単純劣性遺伝による肺 胞内微石形成をみる疾患で、無症状に経過する場合がほとんどである。特徴的な血液所見はなく、組織診で確定診断される。肺結核は、今日でも呼吸器疾患の中 で最も普通にみられるものの1つである。家族歴、既往歴、臨床症状をはじめ赤沈、ツ反などが診断上参考となるが、確定診馴こは喀痰培養による結核菌の証明 が必要である。

 

細気管支肺胞上皮癌

 

細気管支肺胞上皮癌(以下、肺胞上皮癌) は、その病因や組織発生などについて議論の多い肺腺癌の一種である。頻度は全肺癌の2〜7%を占め、近年増加傾向にある。好発年齢は40〜70歳(平均 54歳)であり、男女別発生頻度は男性がやや多い傾向にあるが、他の肺癌に比較し女性の占める割合が多いといわれる。臨床症状は咳暇、喀疾、呼吸困難、胸 痛などであるが、特異的なものはなく、無症状に経過して胸部X線写真で初めて指摘されることも稀ではない。理学所見や血液所見も本症に特有なものはなく、 異常所見の発現は合併症や病状の悪化による場合がほとんどである。肺胞上皮癌のX線所見は、孤立性結節型、多発性結節型、びまん浸潤型に大別される。孤立 性結節型の陰影は直径2〜4cmの濃厚円形のものが多く、通常は末期に至るまで肺門および縦隔リンパ節の腫大や胸水貯留は認めない。また、X線上での陰影 の変化は、1年以上をかけてゆっくりと進行する。多発性結節型の陰影は粟粒大円形で、粗大で淡く、辺縁不正であり、斑点状に散布される。また、びまん浸潤 型は両側性に広がる場合がほとんどであるが、一葉に限局するものもあり、一定の法則はない。このタイプでは病状の進行が早く、胸水貯留を30%以上の症例 に認める。さらに肺門および縦隔リンパ節の腫大が15〜35%に認められ、比較的大きな気管支への進展による無気肺も約3%に認められる。肺胞上皮癌は病 理組織学的概念に基づいた疾患であり、診断の決定には病理組織学的検査が必要である。しかし、X線像と臨床所見を綿密に検討することで診断はある程度可能 であり、日常診療の場において“なかなか消失しない肺炎様陰影”に遭遇した場合には、常に念頭において診断にあたることが大切である。

 

 

coin1esion

 

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Fraserらによると、coin1esion(銭形陰影)とは以下の条件を満たすものとされている。すなわち、

@直径6cm以下の孤立性の陰影である。

A明瞭な辺縁をもっている場合もあるが、必ずしもはっきりとした境界をもたなくてもよい。

B辺縁は、平滑、分葉状、あるいは瞭状陥凹でもよく、また形はどのようなものでもよい。

C石灰陰影や空洞があってもよい。

D随伴陰影があってもよい。

E病変は空気を含んだ肺に囲まれている。あるいは、臓側胸膜に接している場合でも、病変の周囲2/3が空気を含む肺に接している。

F症状の有無は問わない。

なお、coin 1esionのmrma1variationとして鑑別が必要な所見には以下のようなものがある。

すなわち、 @乳頭陰影、A右肺動脈幹に重なるA6が比較的大きいとき、円形に見える、B亀背で、肺が前方に倒れたようになり、右肺動脈幹自体がX線にtangent になるほど水平に偏位している場合、肺動脈幹自体が円形に見える、Cboneisland(肋骨や鎖骨の限局性硬化像)、D肋骨先端の化骨(特に第1肋 骨)、E脊椎横突起などがあり、それらの陰影がCoinleson様に見えることがあるので、胸部正面写真を読影する際に注意が必要である。また逆に、coinlesonが実際に存在しているのに、そのようなnormal variation だろうと誤診してしまう恐れもあるので、AP(腹背)撮影や斜位撮影、場合によっては断層撮影を追加し、確定診断をつけるようにしておくことが望ましい。 このような場合、精査をどこまですすめるか。以前に撮影されたX線写真と比較検討することにより、余分な検査を省略できることがあるので、極力、過去のX 線写真を入手する努カをすべきである。また、実際のところ、2cmを越えるcoin1esionが実際に存在していても、胸部正面写真にて指摘するのが困 難な場合があることも頭に入れておかねばならない。すなわち、胸部正面写真の解剖学的死角にcoinlesionが存在している場合である。胸部正面写真 の解剖学的死角(肺門、心臓や横隔膜に重なる肺)の容積は全体の肺の約30%である。心臓や横隔膜に重なる肺にcoin1esionが存在する場合、いわゆる「肺野」(すなわち、上肺野、中肺野、下肺野)にcoin1esonが存在している場合と比較すれば発見は困難か、不可能なことがある。しかし、心臓や横隔膜に重なる肺の血管陰影を読むように習慣づけていると見落とすことは減る。

 

読影のすすめ方

 

Coin1esionがX線写真上認められたとき、以下のような分析を行う。すなわち、coin1esionの辺縁の性状(鮮明か)、不鮮明か、平滑か、不規則か、分葉状か、気管支血管が陰影に入る部分で切れ込み(notching) があるか)、内部構造(濃度が均一か不均一か、淡いか)濃いか、airbronchogramの有無、空洞の有無、ある場合は、空洞の壁が不整形か平滑 か、また空洞の位置が偏在性か中心性か、石灰化の有無)、周囲構造(血管気管支陰影の末梢性収東の有無、中枢性収束の有無)、胸膜陥入の有無(ある場合、 鋭いか)軽度か)、satellitelesionの有無などを分析す る。正面や側面の単純写真で一通り所見の見当をつけた後、肺門を含めて1cm間隔で断層撮影を行い、上記の所見を確認する。最近では、胸部CT検査で、 1.5〜2mmスライス厚のthins1iceCTにより、上記の所見を通常断層撮影や通常胸部CT検査以上に精密に読影できるようになってきている。主 断層撮影や胸部CT検査では、肺血管や気管支の既存構造の分析として、Coin1esionに肺静脈が関与しているかどうかも重要であり、肺静脈の関与が考えられるときはcoinlesionは2つの区域にまたがっており、悪性を強く疑う所見とされている。

胸部CT検査は、時に胸部正面写真で認められたcoin1esionや異常陰影の位置の付近の肺のみを撮影している例を見受けることがある。撮影範囲以外にも病変があることがあるので、原則として全肺を撮影すべきである。

 

■別診断と確定診断のポイント

 

Coin1esionを 呈する疾患は施設により内訳は異なる。Swensenによると、様々な原因の頻度は以下のようである。良性は60%であり、疾患の内訳は肉芽腫が54%、 過誤腫が4%、その他(動静脈瘻や気管支原性嚢胞など)2%である。悪性は40%であり、疾患の内訳は肺癌が33%、気管支カルチノイド3%、肺転移4% である。年齢によるおおまかな頻度としては、35歳以下ではcoin1esionの90%が肉芽腫である。逆に70歳以上では70%が悪性である。

 

鐙別すべき疾患

必要な検査

確定診断のポイント

肺癌

 

 

 

@断層、CT、MRI

A喀痰細胞診

B気管支鏡

C経皮的針生検)

血管の末梢性収束、胸膜陥入像、腺癌が多い

 

 

結核腫

 

 

 

 

@断層、CT、MRI

thin s1ice CT

A喀痰培養、ツ反応

B気管支鏡

C経皮的針生検

上葉(右>左)石灰化、satenite1esion

 

 

 

過誤腫

 

@断層、CT、MRI

A気管支鏡

B経皮的針生検

石灰化(popcorn

 

 

気管支原性嚢胞

      

      

@断層、CT 

AMRI B気管支鏡

C経皮的針生検

T1強調1ow

T2強調high

 

肺動静脈痩

       

@断層、CT。MRI

A胸部聴診  

B肺動脈造影

 

流入血管、流出血管               uller試験で陰影増大

Valsalva試験で陰影縮小      

転移性肺癌

 

 

@断層、CT

A気管支鏡

B経皮的針生検

原発巣の確認

 

 

真菌症

 

 

@断層、CT

A気管支鏡

B経皮的針生検

 

カルチノイド

 

       

@断層、CTMRI

A気管支鏡

B経皮的針生検

 

 硬化性血管腫

 

 

@漸層、CT

A気管支鏡

B経皮的針生検

 

 

 

空洞性病変

 

空洞性病変とは、X線写真上、厚さ1mm以上の壁に取り囲まれた肺実質内の含気を有するスペースをさす。壁の厚さが1mm以下の場合は嚢胞またはブラ(cystまたはbu1la) と称する。これらの病変は正常ではみられない。空洞性病変は病変内の肺実質内に何らかの原因で壊死が起こり、壊死物質が気管支より喀出されるか、気管支嚢 胞にみられるごとく、嚢胞の破裂、感染などにより水溶性の内容物を喀出する場合にみられる。空洞性病変は単純X線写真では判明しにくいことが多いため、そ の存在を疑う場合は、断層写真、胸部CT検査で確認することが肝要である。

 

読影のすすめ方

 

多発性空洞病変がX線写真上みられた場合には、以下の点を考慮する。

1)病変の分布が上肺野に優位か、下肺野に優位かを検討する。上肺野が優位であれば経気道性の病変(肺結核、塵肺症など)が考えられる。下肺野が優位であれば、血行性病変(転移性肺腫瘍、septicembo1ismなど)が考えられる。

2)空洞壁の厚さを検討する。空洞壁が厚ければ、転移性腫瘍、急性肺化膿症、Wegener肉芽腫などが考えられる。空洞内壁に凹凸不整がみられれば、悪性腫瘍を考える。

3)肺門、縦隔リンパ節腫大の有無を検討する。悪性腫瘍、塵肺症、悪性リンパ腫、サルコイドーシスなどの場合は肺門、縦隔リンパ節腫脹がみられることがある。

 

鑑別診断と確定診断のボイント

 

多発性空洞影を呈する疾患は、感染症、悪性腫瘍、有機物質の吸入、原因不明の肉芽腫などが挙げられるが、ここでは頻度が高いと考えられる順に解説する。

 

1。肺結核

咳嗽、喀痰時に血疾、微熱などの症状が比較的緩徐に進行する。好発部位はS1、S2、S6であり、多くの場合は単発性空洞であるが、多発性のこともある。空洞病変周囲に散布巣がみられることが多い。喀痰または胃液にて結核菌が証明されれば確定診断となる。喀痰、胃液で結核菌が証明さ机ない場合には、気管支鏡下の擦過診、洗浄診、経気管支肺生検が必要となる。

2。転移樹市腫瘍無症状のことが多い。既往 歴に悪性腫瘍があれば本症をまず疑う。転移性肺腫瘍のうち多発性空洞影を呈する頻度は、決して多くはない。原発巣としては頭頸部、食道、子宮頸部の扁平上 皮癌が多いが、消化器系、特に大腸癌では多発性の空洞形成を伴う転移を生じることがある。空洞壁は原発性肺癌に比して薄く、内壁の不整も目立たない。多発 性結節影のうち空洞を形成するものは一部であることが多い。確定診断は喀痰細胞診、気管支鏡下の細胞診や経気管支肺生検で癌細胞証明することである。原発 性肺癌に比し、診断率は不良である。腫瘍マーカーの上昇は補助診断になり得る。原発巣の検索も重要である。

 

3。細菌感染症

 

細菌性肺炎で空洞形成を生じやすいものは、 肺炎桿菌(クレブシエラ桿菌)、黄色ブドウ球菌である。多発性の浸潤影、結節影を呈するものは黄色ブドウ球菌性肺炎とsepticembo1ismであ る。septicembolismの原因菌は黄色ブドウ球菌が多い。発熱、咳漱、喀痰、胸痛などの急激な炎症所見で発症する。長期の静脈内留置カテーテ ル、褥瘡部、心臓弁膜症に伴う心内膜炎などから血行散布として発症することが多い。診断は喀痰、血液培養で起因菌を同定することである。

 

4。嚢胞状気管支拡張症

 

長期間にわたる朝方に多い喀痰、咳漱を訴える。血痰、喀血もみられる。胸部X線写真上は多発性のcysticspaceとして認められる場合が多い。感染時には壁が肥厚し、空洞様になり、内部にair fluid 1evelがみられるようになる。また病変肺葉は容積の減少が認められる。確定診断は気管支造影で嚢胞状に拡張した気管支を証明することである。しかし、気管支造影は侵襲が多いため、胸部CT検査で代用されることが多い。

 

 

 

 

 

 

 

 

鑑別すべき疾患

X線写真の特徴

確定診断に必要な検査

確定診断のポイント

肺結核

 

 

 

上肺野、特にS1S2S6に多い

空洞、周囲に散布巣を認める

喀痰、胃液の結核菌検査、

塗抹陰性ならば気管支鏡検査

結核菌の証明

結核性肉芽の証明

転雛肺腫瘍

 

 

 

多発性結節影の一部が空洞形成

空洞形成は上肺野に多い傾向証明空洞内壁は必ずしも不整ではない

腫瘍マーカー

喀痰細胞診

気管支鏡検査

原発巣の検索

腫瘍マーカーの上昇

癌細胞の証明

 

細菌感染症

 

 

      

黄色ブドウ球菌肺炎では空洞形成を伴う多発性浸潤影

septicembolismでは下肺野に優位

喀疲細菌検査、血液培養

 

 

 

 

起因菌の同定

 

 

 

 

嚢胞状気管支拡張症

 

多発性のcystic space肺容積の縮小を伴うことが多い

気管支造影、胸部CT検査

 

嚢胞状に拡張した気管支の証明

 

真菌感染症

 

多発性陰影の一部が空洞化

喀痰菌検査真、気管支鏡検査

真菌の証明

 

塵肺症

 

 

 

上肺野に優位

肺門リンバ節腫大

石灰化がみられる

 

有機物質吸入の既往歴

 

 

 

経気管支肺生検

有機物質の肺内沈着の証明

 

egener肉芽腫

 

空洞内壁は不整

両肺病変が多い

 

ANCA陽性

肺生検または腎生検

 

血管炎を伴う壊死性肉芽腫の証明

サルコイドーシス

 

 

 

 

 

 

 

空洞形成は稀

肺門、縦隔リンバ節の腫大を伴うこともある

 

 

 

 

 

 

眼病変の有無

ACE

気管支肺胞洗浄(BAL)

67Gaシンチ

経気管支肺生検

 

 

 

ACE高値

BAL中のリンパ球増加

(CD4/CD8の上昇)

67Gaシンチ集積

類上皮細胞肉芽腫の証明

悪性リンパ腫

 

 

 

肺門縦隔リンパ節腫大

 

 

 

リンパ節腫大の有無

67Gaシンチ

リンパ節または肺生検

 

67Gaシンチ高度集積

悪性リンパ腫細胞の証明

好酸球性肉芽腫症

上肺野に優位

気胸を合併しやすい

 

肺生検

 

 

 

angerhans細胞の増殖浸潤を伴う肉芽腫の証明

 

 

 

 

5。真菌感染症

 

肺クリプトコッカス症は健康成人にも感染するが、多くは無症状である。単発性の場合と、多発性の場合があり、空洞形成は15〜20% でみられる。単発性の場合は原発性肺癌との鑑別が間題となる。喀痰培養で陽性となることはほとんどなく、確定診断には経気管支肺生検または経胸壁肺生検が 必要である。この際、H−E染色では菌体がみえにくいので、PAS染色かグルコット染色が必要である。クリプトコッカスに対する抗原検査は補助診断として の意昧がある。

肺アスペルギルス症は、結核の浄化空洞や肺 野型サルコイドーシスの嚢胞内に生じる場合は単発性であるが、免疫不全状態では空洞を伴う多発性陰影を生じることがある。この場合は咳漱、しばしば血痰を 伴う喀痰がみられ、一般抗生剤に反応しない高熱が続く。喀痰から培養される確率は低い。気管支鏡検査も全身状態が不良で、施行できない場合が多い。アスペ ルギルスに対する抗原検査の有用性はまだ確立されていない。

 

6。塵肺症(特に珪肺症)

 

有機物質の吸入歴の有無が重要である。上肺 野に優位な粒状網状影を背景に結節影がみられる。その一部が空洞化することがある。多くは肺門リンパ節腫大を伴い、リンパ節の卵殻状石灰化がしばしばみら れる。珪肺結節それ自体の壊死による空洞化も起こるが、肺結核、肺癌の合併がしばしばみられるので注意が必要である。

 

7.Wegener肉芽腫

 

気道の進行性壊死性肉芽腫、全身性の血管炎、壊死性糸球体腎炎を主徴とする疾患であり、鼻症

状、咳漱、発熱、体重減少、蛋白尿などの症 状を伴う。血沈の高度尤進、CRPの高値などの強い炎症所見がみられる。胸部X線写真上、空洞形成を伴う多発性陰影がみられる。診断は肺生検(経気管支肺 生検でも診断可能な場合もあるが、多くは開胸肺生検が必要か、腎生検による。またANCA(antineutrophiccytoplasmantibodies、好中球細胞質抗体)が本症の診断に感度、特異性ともに高いことが知られている。

 

8。サルコイドーシス

 

サルコイドーシスの病理所見は壌死を伴わな い類上皮細胞肉芽腫であるため、空洞形成は稀である。しかし、時に肺野に結節陰影を呈し、その一部が空洞化する場合がある。血清ACE高値、眼病変などの 他臓器病変、気管支肺胞洗浄中のリンパ球増加があれば、サルコイドーシスを疑う。確定診断は経気管支肺生検で可能であるが、necrotizing sarcoid granulomatosisとの鑑別には開胸肺生検が必要である。

 

9。悪性リンパ腫

 

発熱、LDH高値、全身リンパ節腫脹を伴い 胸部X線写真上、肺門、縦隔リンパ節がみられる場合が多い。稀に肺実質から発症し、空洞化を伴い、多発性病変としてみられる場合もある。確定診断には、リ ンパ節生検または肺生検が必要である。67Gaシンチグラムは集積が高度であり、病変の拡がりの把握には有用である。

 

10。好酸球性肉芽腫症

 

上肺野に優位な粒状、輸状影を主体とするが、進行すると多発性の嚢胞形成を伴う。断層写真や胸部CTでは嚢胞壁が肥厚し、空洞状にみえる場合もある。気胸を合併しやすく、30%前後の症例では気胸が初発症状となる。確定診断は肺生検でBerbeck穎粒を有するLangerhans細胞の浸潤増殖を証明することである。

 

 

単発性空洞性病変

 

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空洞は肺実質が炎症、乏血、アレルギーなど の機序で壊死になり、その一部ないし全部が崩壊、気管支腔などへ排除され、ガス(空気)で置換された状態を指す。稀には細菌感染により膿とガスが産生され た際にも形成されうる。嚢胞は径1cm以上で均等な薄壁(4mm末満)を有し、初めから気体や液体を含むものである。ブラは肺胞腔の破壌で生じた肺内の限 局性気腫で、ブレブは肺外の臓側胸膜内の含気腔でブラとの鑑別が困難なことがあり、ブラ・ブレブと称され、X線像上嚢胞との鑑別が困難なことがある。 ニューマトセルは肺炎などに続発してみられる一過性の薄壁の含気腔である。空洞は嚢胞、ブラ・ブレブとともに胸部X線像上、透亮像として描出され、レかも 液体貯留性嚢胞の破壊(気腔との交通)や感染性のブラ・嚢胞でも空洞と同様の状態を示し、鑑別困難な場合もあって、空洞・嚢胞状陰影として一括される場合 も多い。しかし、両者は発生機序、病態および治療方針が異なり、鑑別しなければならない。また、続発性肺化膿症や菌球空洞における既存の空洞・嚢胞と原発 性空洞も病態、治療方針が異なり、鑑別が重要である。空洞の診断はその全周にわたり壁を確認することであり、通常、単純X線像で診断されるが、これで不明 瞭ないし紛らわしい場合には断層写真やX線CTが必要である。すなわち、肺炎や肺結核のごとく、濃度の不均一なconso1idationや 複数の陰影が近接・重畳する場合、胸膜肥厚の合併、肺気腫やブラ・ブレブを有する例に肺炎などが合併した場合、肺紋理の走行の関係など、コントラスト上空 洞様陰影を呈する場合、また胸水、胸膜肥厚、不透明肺、荒蕪肺などで判読できない場合には断層像が利用される。通常の断層写真ではボケ像などにより不鮮明 のことがあるが、X線CT像では鮮明に描出され、小空洞の診断も可能で、早期、すなわち壊死、膿瘍形成の段階で検出しうるなど、検出能が良好であり積極的 に利用すべきである。単発性空洞病変は広義には本来単発性陰影の多い病変のほか、多発性陰影が多いが、病期・病型として単発性陰影の場合、さらに同意義の ものとして、多発性陰影を呈するが、空洞は単発の場合(原発性肺癌の原発巣と肺内転移など)を含み、単純に単発性空洞性病変と断定できない疾患が多いの で、本稿ではこれらを含めて記載する。

 

空洞を形成する疾患は多種多様であり、その 鑑別には空洞の有無のみでは鑑別診断的意義は少なく、空洞を含む異常影および周辺肺野を中心に、胸部全体像から情報を得なければならない。すなわち、読影 の要点として、異常陰影全体の読影(数、部位、広がり、性状)、空洞陰影の読影(数、位置、大きさ、空洞壁・内壁の状態、単房か多房か、空洞内容)、周辺 肺野の状態(随伴陰影、血管影や気管支影の状態)、肺門・縦隔の状態(リンパ節腫大など)、胸膜の状態(胸膜炎など)などを総合的に読影することが重要で ある。以下、空洞影を中心に各項目につき疾患との関係で記載する。

 

1。病変部位

 

好発部位は肺結核では肺尖(S1,S2)、 S6、肺葉内肺分画症は下肺野(特に左後下肺野)で横隔膜に接する部位、気管支性嚢胞は下葉内側、原発性肺癌は上葉、肺化膿症では、クレブシエラによるも のは上葉、嫌気性菌、緑膿菌および職下性肺炎によるものは下葉、アメーバ赤痢によるものは右下肺野、塵肺、カリニ肺炎では上葉、リウマトイド結節は下葉の 胸膜直下、肺梗塞は下葉(特に後部)、クリプトコッカス、放線菌、ノカノレジアによるものは下葉、アスペルギルス(菌球型)は上葉、肺包虫症、嚢状気管支 拡張症は下葉、ブラ・ブレブは肺尖や肺底に、外傷性嚢胞は胸膜直下に多い。

 

2。大きさ

 

ブラは大小さまざまであるが、チェックバルブ機序でかなり大きくなりうる。肺結核も大小さまざまで、小葉内の空洞や被包性乾酪巣の比較的小さい空洞から浸出性病変に伴う巨大空洞まである

が、一側肺野の1/3を超えるものは稀とされる。・原発性肺癌でも陰影の大きさや発生機序などにより大小さまざまで、小空洞から巨大空洞まである。

 

3。空洞数

 

転移性肺腫瘍、Wegener肉 芽腫症、悪性リンパ腫、肺吸虫症、ブドウ球菌による肺膿瘍、肺結核、敗血性塞栓・榎塞症、ブラ・ブレブ、ニューマトセル、リウマトイド結節などはしばしば 多発性であり、原発性肺癌、気管支嚢胞、肺分画症、クレブシエラによる肺膿瘍、肺放線菌症、肺アスペルギルス症などは原則として単発性である。しかし、以 上の点は絶対的なものではなく、同一疾患でも両型があり、また経過、病期での相違にすぎない場合がある。

 

4。壁厚

 

肺化膿症、肺放線菌症、塵肺結節、Wegener肉 芽腫症、肺クリプトコッカス症、肺梗塞症、原発性肺癌などは厚く、肺結核、転移性肺腫瘍(一般に頭頸部癌は薄く、婦人科領域の癌は厚い)、悪性リンパ腫な どは薄壁から厚壁に分布し、非定型抗酸菌症は肺結核に比し薄いといわれる。薄壁には気管支性嚢胞、ブラ・ブレブ、気管支拡張症、敗血性梗塞、ニューマトセ ノレ、外傷性嚢胞、肺吸虫症、肺包虫症などが含まれ、特に炎症を有さないブラ・ブレブ、気管支嚢胞は均等で線状の壁を示す。肺アスペルギノレス症(菌球 型)は基礎疾患、病期にもよるが比較的薄いことカミ多い。肺化膿症では最初浸潤巣を打ち抜いたような像を示し、また肺結核でも浸潤巣中の空洞や胸膜病変と 接する空洞では壁厚が判定しにくく、一方、肺化膿症の回復期や肺結核の浄化空洞では薄壁であり、またリウマトイド結節でも原病が軽快すると厚壁から薄壁に なるか消失するなど、病期によって変化する。すなわち、肺結核、非定型抗酸菌症、肺アスペルギルス症など多くの疾患で、壁厚の増減は疾患の病勢と関係し、 さらに他病変(癌、アスペルギルスの感染など)の合併で厚壁になることもあるなど、壁厚の評価は重要である。なお、感染性ブラなどのごとく周辺組織の圧迫 性無気肺が壁厚の増大に関与する場合もある。空洞の位置に関し、原発性肺癌では偏在性が特徴(癌性空洞)といわれるが中心性も少なくない。

 

5。内壁の性状

 

原発性肺癌は凹凸不整でmura1nodu1eを 認めることがあり、また肺化膿症、肺梗塞症、塵肺症、Wegener肉芽腫症なども不整である。肺アスペルギルス症(菌球型)は基礎疾患の空洞、嚢胞の性 状に左右され、一般的には平滑であるがしばしば凹凸を示す。気管支性嚢胞、肺吸虫症、リウマトイド結節、ブラ・ブレブなどは平滑である。肺結核では一般に 平滑であるが、乾酪物質の付着で不整のこともあり、また薄壁で平滑な浄化空洞として残存することがある。一般に空洞壁が厚く不整な場合は悪性が多く、薄く 平滑な場合は良性が多いとされるが、例外も少なくない。

6。空洞内容

 

液体の貯留、すなわち鏡面像を形成しやすいものとして、肺化膿症、気管支性嚢胞、肺葉内肺分画症、肺包虫症、外矧生嚢胞、感染性ブラ・ブレブ(液体量は少ない)などがある。原発性肺癌、肺結核では稀であるが、一般細菌の感染で生ずることがある。敗血性肺梗塞、Wegener肉 芽腫症、肺アスペノレギルス症などでは稀であるが、後者では時期により認められることがある。空洞内の結節・塊状影は真菌塊(特にアスペルギルス)が多 い。その他、肺癌などの壊死物質、壊死した肺組織(肺化膿症、壊死性肺炎、特にクレブシエラ肺炎、肺梗塞)、凝血塊(肺結核、血腫、肺梗塞)、フィブリン 塊、線・索状物(血管、隔壁)などが認められることがある。真菌塊の診断にはairmeniSCuS(CreSCent)Signが有名であり、体位変換による陰影の位置移動を認め、肺癌のmuralnod1eとの鑑別に利用されるが、凝血塊や壁より遊離した物質(壊死化肺組織や肺癌)でも移動しうる。

 

7。月辺肺野・異常陰影の辺縁部の状態

 

肺結核は周囲に新旧の散布巣(斑状、線・索 状、星芒状、石灰化巣)、巣門結合、灌注気管支などを有する。原発性肺癌では周辺に浸潤像、スピクラ、ノッチ、無気肺、限局性気腫、閉塞性肺臓炎、胸膜・ 血管陥入像、周辺の容積変化など肺癌の特徴や肺門・縦隔リンパ節腫大に注意する。なお、散布巣を認めない点は肺結核との鑑別に利用されるが、周囲に結核病 巣や線維化病巣を合併していることがしばしばある。悪性リンパ腫、特に続発性では肺門・縦隔リンパ節の腫大やairbronchogramに、 肺アスペルギルス症では基礎疾患の所見(肺結核、気管支拡張症など)とともに胸膜肥厚に、また肺放線菌症では胸膜(胸膜炎、膿胸の合併が多い)、胸壁、肋 骨などの変化に注意する。赤痢アメーバによる肺膿瘍では右胸水貯留像が多い。塵肺では粒・小結節状影、線状影、肺門・縦隔リンパ節腫大(eggshe11ca1cilcation) のほか、大陰影、ブラ、肺気腫像、結核病巣などの合併がみられる。ブラ・ブレブは肺気腫像や他の部位のブラの存在、また原因となった結核・肺炎の病巣や線 維化巣を認めることがある。非定型抗酸菌症はほぽ肺結核と同様であるが、散布巣はより少ないといわれる。肺化膿症では散布巣を通常認めないが、胸水をしば しば伴い、時に膿気胸像(気管支・肺一胸膜痩)を示す。クレブシエラ肺炎では容積増大の所見を伴うことが多い。気管支性嚢胞では散布巣を認めない。肺葉内 肺分画症では感染の合併で修飾され、複雑な陰影を呈することがあるが、断層気管支・肺採取物検査:気管支鏡下、経気管、経皮などによる塗抹、擦過、吸引、 洗浄などの各材料の検査。DNA診断:PCR法、DNAプローべ(喀疲、気管支・肺採取物)

像、特にCT像で索状影など異常血管の存在を推定(造影CTで確認)できることがある。転移性肺腫瘍ではfeedingvesse1si馴を認めること(特にCT像で)がある。肺梗塞では胸水の合併、横隔膜

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

鑑別すぺき疾患

検査法

確定診断のがイント

肺化膿症

 

塗抹・培養、喀疾、血液、胸水、気管支・肺採取物

有意な起炎菌の検出

 

肺結核

 

 

 

塗抹・培養、喀療、冑液、気管支・肺採取物

DNA診断、生検(経気管支)

 

結核菌の検出、DNA検出

乾酪壊死(十)の結核性肉芽腫

非定型抗酸菌症

 

塗抹・培養:喀疾、胃液、気管支・肺採取物、

DNA診断、生検(経気管支)

有意な非定型抗酸菌の検出、DNA検出

 

原発性肺癌

 

 

1)喀疾細胞診、2)気管支鏡検査(細胞診、生検)、3)経皮生検、4)生検(リンパ節、皮膚など)、5)手術診断

癌細胞・組織の検出

 

 

肺アスペルギールス症

菌球型

1)塗抹・培養:C喀疾、D気管支・肺採取物、(菌球型)2)生検(経気管支、経皮)、3)抗体、4)手術診断

アスペルギールスの検出

抗体検出

肺クリプトコッカス症

 

 

1)塗抹・培養:C喀疲、D気管支・肺採取物、2)生検(経気管支、経皮)、3)開胸生検、

4)クリプトコッカス抗原(血液)

クリプトコッカスの検出

抗原検出

 

肺真菌症(ムコール、カンジダ、アスペル、ギールス)

1)塗抹・培養:C喀疾、D気管支・肺採取物、2)生検(経気管支、経皮)、3)カンジダ抗原(血液)、4)開胸生検

真菌の検出

(特に病巣局所での検出)

 

 

肺ノカルジア症

 

1)塗抹・培養:C喀疾、D気管支・肺採取物、

2)生検(経気管支、経皮)、

ノカルジアの検出

肺放線菌症

 

 

 

塗抹・培養:E気管支・肺採取物、D胸水2)生検(経気管支、経皮)、3)開胸生検

 

放線菌の検出

 

ブラ・ブレブ

 

X線CT,2)手術診断(感染、巨大嚢胞)

組織像、(臨床診断)

気管支性嚢胞

1)X線CT,2)手術診断

 

組織像、(臨床診断)

 

肺葉内肺分画症

1)X線CT(造影、dynamic)、2)大動脈造影、3)手術診断

異常動脈の検出

肺包虫症

 

1)喀疾・胸水検査、2)抗体、Cansonitest

虫体、抗体の証

アメーバ肺膿瘍

1)喀疾・糞便検査、2)抗体

赤痢アメーバ・抗体の検出

塵肺

 

1)粉塵吸入歴、2)X線像、3)経気管支肺生検

珪肺結節の検出、(臨床診断)

肺梗塞症

 

 

 

1)肺換気・血流シンチグラフィ、2)肺動脈造影

 

換気・血流ミスマッチ、

肺動脈の充盈欠損、閉塞・中断

外傷性嚢胞

1)胸部外傷の既往、2)X線像

組織像、(臨床診断)

サルコイドーシス

1経気管支生検(肺、気管支)、2)生検(リンパ節など)

非乾酪性類上皮肉芽腫の証明

カリニ肺炎

 

 

1)喀疾検査、2)気管支・肺採取物検査、3)生検(経気管支、経皮)、4)DNA診断、5)開胸生検

カリニ原虫の検出

DNAの検出

 

転移性肺腫瘍

 

1)細胞診(喀疾、気管支・肺採取物)、2)生検(経気管支、経皮)、3)原発巣の確認

癌細胞・組織の検出

 

wegener肉芽腫症

1)経気管支生検、2)抗好中球細胞質抗体(ANCA)

壊死性肉芽腫炎・血管炎、ANCA検出

悪性リンパ腫

1)生検(経気管支、経皮)、2)リンパ節生検、3)開胸生検

細胞・組織像

肺吸虫症

 

1)喀疲・糞便・胸水検査、2)気管支・肺採取物、3)抗体、皮内反応

虫卵、抗体の検出

リウマトイド結節

1)生検(経気管支、経皮)、2)開胸生検

リウマチ組織の証明

 

気管支拡張症

1)X線像、2)気管支造影

気管支拡張像(嚢状、中心性拡張)

 

 

 

 

の高位、板状無気肺、quck1esi則 などに注意する。カリニ肺炎では両肺の間質性・肺胞性陰影が基本陰影である。サノレコイドーシスは稀に空洞を形成するが、両側性肺門リンパ節腫大像、肺野 の粒状影に注意する。なお、肺外の病変で鑑別すべきものとして、横隔膜ヘルニア、結核治療のために用いられた胸腔内充填物、鏡面形成を伴う被包性胸膜炎 (膿胸、図3)がある。

 

■別診断と確定診断のボイント

 

(表1)診断は胸部X線像の読影を主体に、 画像診断を含む各種臨床検査を適宜選択し、診断をすすめるが、現実的には疾患の出現頻度も考慮する必要がある。すなわち、比較的高頻度の疾患としては肺結 核、肺化膿症、非定型抗酸菌症、肺癌などがあり、比較的少ないものとして転移性肺腫瘍、肺アスペルギールス症、稀なものとしてクリプトコッカス症、ノカル ジア症、肺吸虫症、Wegener肉芽腫症、リウマトイド結節、悪性リンパ腫などがある。一部の疾患は特異的な所見によりX線像でほぽ確定診断できる場合 もあるが、多くの疾患では確定診断のために組織・細胞学的証明や起炎菌の検出(特に気管支・肺分泌物・採取物、胸水、組織中)が必要である。この目的で経 気管支法を主とした種々のアプローチによる生検、擦過、洗浄、吸引、塗抹などが利用されるが、侵襲的で反復検査法としては適切ではない。現実にはX線診断 を主体に臨床診断をせざるを得ない症例も少なくなく、また抗生剤、抗結核剤、疾患特異的な治療薬剤などの投与による治療的診断で、経過をみなければならな い場合もある。例えば、急性肺化膿症の診断は実地的にはX線像(空洞を伴う浸潤影なし)し腫瘤状影で、特に鏡面形成を有する場合)に始まり、炎症所見の確 認と起炎菌の同定を行い、最終的には治療的診断(適切な抗生剤投与で治癒)で確定診断される5)。いずれに一しても有空洞性で、頻度の多い疾患では喀疲 (気管支・肺採取物)の検査で一般細菌、結核菌、腫瘍細胞などが検出される可能性が高く、繰り返し塗抹、培養、細胞診をすべきである。一方、空洞を形成し た腫瘍と慢性炎症、真菌症、Wegener肉芽腫症、リウマトイド結節などは同様な性状を示し鑑別 が困難であるように、悪性腫瘍の可能性が除外できない場合には治療を兼ねた開胸肺生検も必要である。以上、日常臨床剛こは空洞性疾患の鑑別は前述したごと くX線像を中心に特徴的な所見の把握に努め、これに疾患の出現頻度も考慮して、画像診断を含む各種検査法を適宜選択し、検査をすすめる。

 

多発性陰影

 

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多発性陰影は、

@びまん性小結節性陰影(結節の直径が1〜4mm)、

A多発結節性陰影(結節の直径が4mm以上)、B多発浸潤性陰影(個々の陰影が肺胞充満性陰影)とに分けることができる。

このうち本稿ではAの多発結節性陰影に限って述べる、

Bは固質化(conso1idation)

 

多発結節性陰影とは

輪郭が比較的明瞭な類円形の病変であり、病理学剛こは腫瘍、肉芽腫、血管病変などを主とする。多発性陰影が正常例で見られることはまずない。

 

読影のすすめ方

 

多発性陰影を呈する胸部X線写真の読影で注意すべきことは、

@陰影の数、A陰影の分布、B陰影の境界や 辺縁の性状、C空洞や石灰化の有無、D胸水や肺門、縦隔リンパ節腫脹など、他の異常所見の有無である。原則的に結節は境界が明瞭であることが多い。しか し、病変が周囲の肺実質などに波及すれば、境界がぽやけ、浸潤病巣のように見えることも多い。胸部単純X線で陰影と識別されるには直径4mm以上あること が必要とされる。しかし、転移性腫瘍のように境界鮮明を陰影は若干小さくとも識別でき、また浸潤性病変は直径が10mm以上でも識別されないことがある。 空洞の形成は中心部が壊死に陥るか、または内部に貯留していた液体が気道を介して排出されることにより起こる。したがって、腫瘍でも感染症でも空洞は形成 されうる。空洞を形成する腫瘍の組織型は扁平上皮癌が大多数を占め、腺癌がこれに次ぐ。また石灰化は一般に炎症病巣が癩痕治癒する過程で生じるとされてお り、良性疾患の所見と考えられる。肺門・縦隔リンパ節腫脹はサルコイドーシス、悪性腫瘍、悪性リンパ腫などで多い。また胸水の性状は診断の手がかりとなる ため、試験穿刺は可能な限り行うべきである。CTスキャンはこれらの所見をより明瞭に描出することが可能である。病変の数や分布、空洞や石灰化の有無、リ ンパ節腫脹などの所見を確実に把握する際にはCTを施行するべきと思われる。

鐡鑑別診断と確定診断のポイント(表1)1 鰯騒多発性陰影を認めた場合、まず考える疾患は転移性肺腫瘍である。理論的にはあらゆる悪性腫瘍が肺転移を起こし得るが、多発性陰影として頻度が高いもの は大腸癌、腎泌尿器癌、生殖器腫瘍、乳癌、頭頸部腫瘍、黒色腫、各種肉腫などである。いずれも境界明瞭なことが多いが、絨毛癌や悪性血管腫などでは境界不 明瞭な場合もある。空洞を伴うものは全体の5%前後とされているが、頭頸部腫瘍からの転移で頻度が高い。石灰化は転移性腫瘍では稀であるが、骨肉腫や軟骨 肉腫のみは例外であるとされている。肺門や縦隔のリンパ節腫脹、胸水、心嚢液を伴うことは稀でない。確定診断のためには腫瘍細胞を証明する必要がある。気 管支鏡や経皮針生検を行うとともに、全身検索を行って原発巣の特定に努める。原発性肺癌でも肺胞上皮癌のように経気道的に広がるものは多発性陰影を示す。 確定診断には、やはり喀疾や生検材料から腫瘍細胞を証明することが必要である。また稀な疾患であるが、intra-vascu1arbronchioIoa1veoIartumor(IVBAT)は 多発性の小結節性陰影を呈する。診断には肺生検が必要である。リンパ腫も多発性陰影を呈することがある。腫瘍性病変にしては境界が不明瞭のことがある。表 在、肺門、縦隔などリンパ節腫脹や脾腫などの所見を伴う。また本症の患者では真菌症などの日和見感染を合併することも多く、鑑別が困難な場合もある。肺結 核症も経気道的に病変が広がった場合多発性陰影を呈する。病巣は通常1cm以下の散布性陰影であるが、このような陰影には悪化(シュープ)の原因となった 陰影を伴うことが多い。肺結核症では高率に石灰化や胸膜肥厚が見られる。診断には結核菌の証明で十分だが、腫瘍と紛らわしい病変では生検も考慮すべきであ る。結核菌の証明も従来の抗酸菌塗抹、培養に加えて、近年PCR(polymerasechainreaction)法 が徐々に普及してきた。また結核菌が証明できなくとも、ツベノレクリン反応などで結核が強く疑われる場合には抗結核薬による治療的診断を行うことがある。 塵肺症の陰影は一般に上肺野優位であり、多発性小円形陰影のほかに不整形陰影を伴うことが多い。また特徴的な卵殻状石灰化を伴う大陰影やリンパ節腫大を呈 することもある。診断には粉塵曝露歴の間診が不可欠であるが、多発性陰影を呈する他の疾患に比べて換気機能障害が顕著なことが多い。鑑別が難しい場合には 生検により珪肺結節を証明する。慢性関節リウマチは胸膜炎や間質性肺炎などの肺病変を合併するが、リウマチ性壊死性結節が肺実質や胸膜に生じ、多発性陰影 を呈することがある。また慢性関節リウマチを有する炭鉱夫のX線上で円形の散布陰影を認めたものをCaplan症候群と呼ぶ。これは炭鉱夫だけでなく、珪 肺や石綿肺症例でも同様の陰影を示したとの報告がある。一方、筆者らは炭鉱での作業歴のある全身性硬化症例で小円形の散布陰影を認めた経験がある。いずれ も関節病変などから診断するが、関節病変を伴わない場合には肺生検が必要である。Wegener肉芽腫症は全身の血管に肉芽腫性血管炎をきたす疾患であ る。典型例では特徴的な上気道病変や腎病変を有し、X線にて壁の厚い空洞を伴う比較的大きな多発結節影を示すことから本症を疑うことは容易である。また肺 病変のみを呈する限局型も10%以上あるとされる。Wegener肉芽腫症では抗好中球細胞質抗体(ANCA)が陽性であることが多く、診断には参考にな る。しかし、限局型や臨床的活動度が低い症例での陽性率は必ずしも高くない。本症を放置したときは予後不良であり、さらに治療の副作用を考慮すると、組織 学的な診断を得ることが必須である。好酸球性肉芽腫症は原因不明の炎症性肉芽腫であり、X線上びまん性の網粒状陰影、多発性嚢胞、蜂窩肺を呈するとされる が、初期または急性期には多発結節影を呈し、しばしば壁の薄い空洞を伴うとされる。細菌が他の臓器の病巣から血行性に肺に到達する転移性肺膿瘍では比較的 境界不明瞭な多発性陰影を呈する。しぼしば空洞を形成し、niveau(水平像)を示す。免疫能の 低下した悪性腫瘍患者、糖尿病、高齢者、HIV感染者などに見られる。原発感染巣は腹腔や骨盤腔にあることが多いが、細菌性心内膜炎でも起こすことがあ る。起因菌はブドウ球菌が多く、嫌気性菌や緑膿菌も散見される。気道内吸引物の培養のほか、血液培養でも比較的高率に起因菌が同定される。肺動静脈痩は時 に多発性で境界明瞭であることから、転移性腫瘍と紛らわしいことがある。透視で拍動が見られたり、息こらえにより陰影が小さくなるなどの特徴がある。多く は断層写真で輸出入血管が確認でき、ダイナミックCTか血管造影により診断可能である。寄生虫疾患は比較的稀であるが、診断に苦慮することが多い。生活歴 の慎重な聴取と血清学的診断が有用である。以上述べたように、多発性陰影を呈する疾患は実に多様である。多くは経過や他の検査所見などをもとに診断する が、診断の困難な場合には生検も積極的に行うべきである。

 

 

 

 

 

鑑別すぺき疾患

陰影の特徴

確建診断に泌要な検査と確窟診断のポイント

悪性新生物

1。転移性腫瘍

 

 

 

 

2。原発性肺癌

(肺胞上皮癌、

IVBAT)

 

 

 

 

多くは球形で境界明瞭

空洞形成は頭頸部などの扁平

皮癌。石灰化は骨肉腫、軟骨肉腫。

 

 

境界は不明瞭のことが多く、気

管支透亮像を伴う(acinarpat-trem)。気管支壁の肥厚像。

 

 

 

1。喀疲細胞診、ただし異型細胞の検出は30%以下。

上2。気管支鏡下生検や経皮針生検は有効。

。3。症状や身体所見に応じて全身臓器の検索。

喀疾細胞診、経気管支鏡的肺生検、気管支肺胞洗浄、

IVBAT(intravascu1arbronchio1oalveolartumor)では開胸(または胸腔鏡的)肺生検。

肺結核症

 

散布性病変は境界不明瞭で浸潤影を伴う。石灰化、胸膜肥厚、線維綾痕を伴う.

 

1。喀疲、胃液、気管支洗浄液をどの抗酸菌染色および培

養、またはPCR法。

2、ツベルクリン反応。

3、抗結核薬による治療的診断。

塵肺症

1。珪肺2。炭鉱夫肺

 

上肺野優位で境界鮮明な小結節性陰影。卵殻状石灰化を伴う大陰影やリンパ節腫大。

1。粉塵曝露の病歴。

2、呼吸機能検査で拘東性、進行すれば混合性換気機能障害。

3。肺生検で珪肺結節を証明。

リウマトイド結節

 

 

 

 

境界は明瞭で、時に空洞を形成。

1。関節炎やリウマトイド皮下結節に注意。陰影とある

程度平行。

2。経皮的針生検でフィブリノイド壊死、周囲に結合組

織を伴ったリウマトイド結節を証明。

Cap1an症候群

均等な小円形の散布陰影。

慢性関節リウマチと粉塵吸入歴。

 

Wegener肉芽腫症

 

 

 

 

 

境界は明瞭のことが多く、円形または楕円形で時に空洞形成。

1。副鼻腔炎症状、蛋白尿、発熱、関節痛、筋肉痛などの臨床所見。

2、抗好中球細胞質抗体(ANCA)陽性。

3。肺生検で非特異的肉芽腫像および肉芽腫性血管炎を

証明。

好酸球性

 

 

 

初期は境界不明瞭な結節で、しばしば空洞形成、進行すると網状影や蜂窩肺に。

肉芽腫経気管支的肺生検や開胸肺生検で組織球や好酸球、リンパ球などの浸潤が見られ、時にLangerhans巨細胞も認める。

転移性肺膿瘍

 

 

 

 

 

境界不明瞭で大小不同。円形または樫状のことが多い。空洞を形成し、niveauを伴うことあり。

1。血液培養。S.aureusαが多く、Bacteroides,Pseudomonasも起因菌となる。2。白血球増多、血清炎症反応の充進。DICにも注意。

3。免疫低下例、細菌性心内膜炎などに合併。

肺動静脈痩

 

 

 

 

 

境界明瞭な円形(時に分葉)陰影。断層撮影で輸出入血管を認める。

1。遣伝性出血性末梢血管拡張症(Os1er病)の一分症であることがある。2。古典的3主徴:チアノーゼ、多血症、鼻出血

3。肺血管造影やダイナミックCTで輸出入血管を証明。

アミロイドーシス

 

 

境界は不明瞭のことが多く、時に空洞形成や石灰化を伴う。稀に肺門リンパ節腫大。

経気管支鏡的肺生検や経皮的針生検でアミロイド物質(コンゴレッドで橦赤色に染色)を証明。

 

サルコイドーシス

 

 

 

 

境界は比較的不明瞭。肺門や縦隔リンパ節の腫脹を伴う、本疾患の陰影としては稀。

1。表在リンパ節腫脹、皮膚病変、眼病変に注意。2。血清ACE高値。3。経気管支鏡的肺生検で非乾酪性類上皮細胞肉芽腫を証明。4。気管支肺胞洗浄で洗浄液中のリンパ球数の増加。

CD4+/CD8+比の上昇。

肺吸虫症

ウエステルマン肺吸虫

宮崎肺吸虫

多くは球形で境界明瞭。辺縁は不整のことが多い。

1。サワガニの食歴や流行地での居住歴。2。末梢血中の好酸球の増多を認めないこともある。3。血清抗体価の上昇または虫卵の検出にて診断。

水痘肺炎

 

境界不明瞭で、中下肺野にスリガラス様陰影を伴うことが多い。

血清ウイノレス抗体価の上昇、

粟粒陰影

 

粟粒陰影(mi1iary opacities)のmi1iarymilium、すなわちmil1et“きび”より生じた言葉である。Mi1letseed様陰影が粟粒陰影であり、径3mmまで、多くは径1mm前後の小結節性(粒状)陰影が肺野にびまん性に見られるものをさす。石灰沈着などがないかぎり、径3mmまでの小結節単独ではX線上ほとんど陰影を呈さないことから、無数の小結節性病変のsuperimpositionないしSummationが 粟粒陰影を形成するものと考えられている。最近の高分解能CTにより、各々の小結節の識別および病変の解剖学的存在部位を知ることが可能となった1)。粟 粒陰影の多くは肺間質の病変により生ずるが、肺実質の病変にても生じうる。実質性病変のほうが粒子が大きく、辺縁不鮮明とされているが、判別困難なことも ある。なお、正常者に粟粒陰影は見られない。

 

各 々の粟粒陰影の濃度や辺縁の鮮明度、大小不同、融合像の有無を見る。分布が均等か否か、全肺野に及ぶか、上肺野主体か、下肺野主体かを見る。また、胸膜直 下にも分布するのか、それよりも内側の分布かをみる。肺の容積減少や膨張を見る。粟粒陰影にカバーされてわかりにくくなった他の異常陰影(肺門や縦隔リン パ節腫大、結節性病変や空洞性病変、胸水など)の有無に注意する。診断に結びつく重要所見のことが多い。画像のみによる診断は困難であり、病歴、理学所 見、一般検査所見などの臨床データを参考にして、読影所見を診断に結びつけるように努力する。

 

1。血行転移性肺癌

 

X線やCT上、粟粒結核とほとんど見分けのつかないこともあり、注意を要する。経気管支鏡的肺生検(TBLB)にて診断されることが多い。原発巣は、甲状腺、膵臓、大腸、肺が頻度的に多い。

 

2。塵肺(特に珪肺)

 

X線像に比べ症状に乏しく、珪酸吸入歴があれば、診断に組織学的検査を必要としない。

 

3.DPB(びまん性汎細気管支炎)

 

特徴的な病歴や臨床所見から、診断に特に組織学的検査を必要としない。

 

 

 

 

4。サルコイドーシス

 

X線病期分類U期、V期の肺野病変として粒状陰影が見られることがある。TBLBにてサルコイド結節を証明するのが一般的な診断法である。気管支肺胞洗浄液(BALF)分析も有用な補助診断法である。

 

5。過敏性肺臓炎

 

X線像の多くはスリガラス様陰影であるが、辺縁不鮮明な粒状陰影が見られることもある。診断には、組織学的検査も有用であるが、特徴的な病歴、誘発試験陽性のほうがより重要である。

 

6。特発性間質性肺炎

 

多くは網状陰影ないし網粒状陰影を呈すが、粟粒陰影として見えることもある。頻度的に多い疾患なので画像上、鑑別の対象となる。7。肺胞微石症稀を、常染色体劣性の遺伝性疾患である。初期は画像上特徴的な所見に乏しく、粟粒陰影として窪別の対象となる。

 

8。肺好酸球性肉芽腫症

 

稀な疾患で、結節は上肺優位の分布を示し、空洞化しやすい。

 

9。肺アミロイドーシス

 

さまざまなタイプがあるが、びまん性粒状陰影を呈すものは粟粒結核と画像上鑑別困難である。

 

10。肺胞蛋白症

 

いわゆる肺胞性(実質性)の浸潤性陰影を呈しやすいが、辺縁不鮮明な粒状陰影や網状陰影として見えることがある。中下部縦隔周囲優位の特異な分布を示す。

 

胸 部X線写真(図1)は、仰臥位ポータブル撮影なので条件はあまり良くないが、全肺野ほぽ均等だ擾めて密に分布する粟粒陰影が見られる。各々の陰影の辺縁は やや不鮮明で、融合像もあるようである。肺野の血管影はほとんど見えず、肺門縦隔リンパ節腫大や胸水貯留も見られない。X線学的には、陰影の性状と分布か ら、粟粒結核、血行転移性肺癌、アミロイドーシスなどが鑑別にあがる。若年であることや、亜急性炎症性疾患を思わせる病歴、髄膜炎所見などから、粟粒結核 が最も強く疑われる。他疾患は長期高熱持続や髄膜炎合併をきたしにくく、否定的と考えられる。診断確定のための検査を施行レた(表2)。胸部CT検査で は、粒の小さい細粒状影が均等に分布

1)胸部CT検査径ヱ〜2mmほどの微細粒状陰影が、

肺の内層から外層にわたりほぽ均等

に分布。小葉中心性分布はせず、胸

膜や静脈と接するものもある。明ら

かな肺門、縦隔リンパ節踵大はない。

2)ツベルクリン反応弱陽性

3)骨髄穿刺病理組織学的に類上皮細胞性肉芽腫

を認める。

之)脳髄液検査圧上昇(初圧38cmH.O)

細胞数増多(180/3)および単核球優

位(L/N152/28)

蛋白上昇(90mg/ω

糖低下(24mg/d〜)

抗酸菌塗抹陽性

5)抗駿薗塘養胃液、骨髄穿刺液、髄液いずれも陽性

ナイアシン試験陽性

しており、胸部X線写真と同様、典型的な粟粒結核の画像所見を示した。本症例は骨髄穿刺標本で類上皮細胞性肉芽腫(十)、髄液での抗酸菌塗抹陽性から、粟粒結核および結核性髄膜炎と診断された。TBLBを施行する必要はなかった。

 

 

鑑別診断にあがる疾患

確定診断に必要な検査

 

確定診断のポイント

1。血行転移性肺癌

 

@    胸部X線写真

A    胸部CT検査

B    喀疾細胞診

C    TBLBなどの肺生検

D原発巣の検索

辺縁明瞭、大小不同傾向。胸膜近傍にも存在下肺野優位に分布。大小不同傾向。気管支血管系と無関係な分布、胸膜や肺静脈に接す

るものあり。陽性率は低い。

多くはこれにて確定診断される。

原発巣不明な場合は、頻度的に多い甲状腺、膵臓、大腸、肺などに

つき検索をすすめる。

2、塵肺(特に珪肺)

@    胸部X線写真

A    胸部CT検査

BTBLBなどの肺生検

辺縁明瞭、高い濃度。上中肺野主体に分布、胸膜より内側に分布。両側肺門リンパ節腫大、進行例では上葉中心性に塊状影を伴いやすい。

小葉中心性に存在、肺の内側に分布する傾向。

珪酸含有物質の吸入歴があれば、特に必要とせず。

3。びまん性汎細気管支炎

に必要とせず。

@    胸部X線写真

A    胸部CT検査

BTBLBなどの肺生検

辺 縁不鮮明。申下肺野優位、胸膜より内側に分布。過膨張肺。気管(DPB)支拡張所見、中葉舌区の浸潤像や無気肺像を伴いやすい。小葉中心性の細気管支レベ ルに分布。連なってY字やV字の形態をとりやすい。未梢気管支壁肥厚や拡張、中枢気管支壁肥厚を伴いやすい。特徴的な臨床像があれば、特に必要とせず。

4、サルコイドーシス

 

@    胸部X線写真

A    胸部CT検査

B    TBLBなどの肺生検

CBALFの分析

辺縁不鮮明。上中肺野主体に分布、縦隔や両側肺門のリンパ節腫大。辺縁不鮮明、胞隔よりも気道、血管周囲、小葉問隔壁に分布。サルコイド結節。総細胞数、リンパ球数の増多。CD4/CD8比の上昇。

5。過敏性肺臓炎

 

 

 

 

 

@    胸部X線写真

A    胸部CT検査

B    TBLBなどの肺生検

C    BALFの分析

Dその他

辺縁不鮮明。胸膜より内側に分布。小葉中心性に小結節が存在。周囲肺野のびまん性濃度上昇。

浸出性変化を伴う小円形細胞浸潤性胞隔炎、型の類上皮細胞性肉芽腫。総細胞数、リンパ球数の著増。CD4/CD8比の著しい低下。特徴的な臨床像、誘発試験膨生、免疫学的な抗原の確定が診断に重要。

6。特発性問質性肺炎

 

 

@    胸部X線写真

A    胸部CT検査

BTBLBなどの肺生検

辺縁不鮮明、網状影を混在、肺底部に始まり野外側を上方に進展。下肺野容積縮小。下肺野、背側、胸膜直下の肺野濃度上昇。比較的壁の厚い小嚢胞の集合、UIP所見。

7、肺胞微石症

 

 

 

 

 

 

 

@    胸部X線写真

A    胸部CT検査

B    骨シンチ

C    TBLBをどの肺生検

DBALFの分析

辺縁明瞭、高濃度。下肺野優位で、特に心臓周囲に密に分布し、心臓や横隔膜との境界が不明瞭となりやすい。進行例では肺外側や横隔膜、縦隔に沿って線状影が見られる。特に気管支血管系、小葉問隔壁に強いびまん性肺野濃度上昇。

進行例では胸膜直下に微小嚢胞多発。肺塚に著明な取り込み。肺胞内微石形成。特徴的なものはないが、時に微石を認める。

8。肺好酸球性肉芽腫症

 

 

@    胸部X線写真

A    胸部CT検査

BTBLBなどの肺生検

両上肺野優位の分布。やや大きな結節は空洞化。

辺縁やや不鮮明。小葉中心1生分布。空洞化しやすい。細気管支レベノレに存在するHX細胞よりなる肉芽圃生病変。

9。アミロイドーシス

 

 

@    胸部X線写真

A    胸部CT検査

BTBLBなどの肺生検

比較的辺縁明瞭。全肺野に均等分布。小葉内での分布に特別な傾向はない。時にカルシウムの沈着。Congored染色馴生の無構造物質の沈着。

10。肺胞蛋白症

 

 

 

 

@    胸部X線写真

A    胸部CT検査

B    TBLBなどの肺生検

CBALFの分析

辺縁やや不明瞭、下肺野優位で、特に縦隔周囲に密に分布する傾向。縦隔側肺を主体とするびまん性肺野濃度上昇。正常肺との境界は比較的明瞭。肺胞内PAS陽性物質充満。BALFは白濁。放置して得られた沈殿物はリン脂質に富み、サーフアクタントに類似。

 

 

 

肺の間質性陰影とは

 

1〕、 肺胞性陰影と対比すべき所見で、肺の間質(肺胞上皮下の結合織)の炎症性肥厚、浮腫などのために肺の透過性が低下する状態である。胸部X線上ではびまん性 小結節性(または粒状)陰影、網状陰影、スリガラス状陰影、あるいは線状陰影の出現により広範囲にX線透過度が低下するが、気腔自体は保たれているために 透過度低下自体は軽度で、このため肺血管や気管支など既存の構造物の輪郭は比較的保たれる。一般に純粋な間質性陰影が出現することは稀で、病変の強い部分 では局所的に肺胞性病変を呈することが多い。老人では正常肺でも肺底部に軽度の間質性陰影が見られることがあるが、中年までに認めることはない。撮影電圧 が低い場合や、胸壁の疾患で胸壁の厚みが増加した場合は間質性陰影と紛らわしい場合がある。

 

間質性陰影は低圧撮影では強調され、高圧撮影では減弱するので、経過観察写真などでは撮影条件は特に慎重に検討する必要がある。間質性陰影が存在すると判断した場合の読影の要点を以下に示す。

 

1。間質性陰影のパターン

 

間質性陰影を呈する疾患は、小結節状、網状、スリガラス状、線状のいずれの陰影をもとり得るが、ある程度の傾向は存在し、小結節状陰影はサルコイドーシスや過敏性肺臓炎などに多く、網状陰影は特発性間質性肺炎、膠原病肺、過誤腫性肺脈管筋症などに多い。

 

2。陰影の分布と広がり

 

陰影の分布は疾患によって特徴があり、上肺野優位のものは珪肺、サルコイドーシス、肺好酸球性肉芽腫症などであり、下肺野優位は特発性間質性肺炎、膠原病肺、薬剤性肺炎などに多く、肺門中心ではカリニ肺炎、肺水腫などをまず疑う。

 

 

3。肺容積の縮小または拡大の有無

 

間質性肺炎では一般に肺容積は縮小し、容積の拡大は好酸球性肉芽腫症、サルコイドーシス、過誤腫性肺脈管筋症などの終末像に多い。

 

4。随伴所見の有無

 

肺 門縦隔リンパ節腫脹(サルコイドーシス、悪性リンパ腫、癌性リンパ管症などに認める)、食道の含気(PSSに特徴的)、胸膜病変(SLE)、心肥大(心不 全、SLE)の有無などを検討する。本症例の胸部X線写真(図1)ではリスリガラス状の陰影が左右全肺野に広がっているが、陰影の分布は下肺野にやや強 い。肺容積に変化はなく、胸水貯留や心肥大も認めない。両側肺門リンパ節は腫脹し、気管分岐角が開大している。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

鑑別診断にあがる疾愚

確定診断に必要な検査

確定診断の球イント類

サルコイドーシス

癌性リンパ管症

膠原病肺

特発性間質性肺炎

 

 

過敏性肺臓炎

 

薬斉雌肺炎

 

急性好酸球性肺炎

 

びまん性過誤腫性肺脈管筋腫症

Churg-Strauss症候群

 

マイコプラズマ肺炎

好酸球性肉芽腫症

 

神経原性肺水腫

経気管支肺生検

経気管支肺生検

血清検査、身体所見

他疾患の除外

経気管支肺生検

気管支肺胞洗浄

経気管支肺生検

誘発試験

誘発試験

リンパ球刺激試験

気管支肺胞洗浄

経気管支肺生検

(開脚)肺生検

 

末梢血検査

臨床症状

皮膚・筋生検

血清抗体価

 

(開胸)肺生検

気管支肺胞洗浄

病歴

上皮細胞肉芽腫

悪性細胞の検出

原疾患の確定

 

線維化像

好中球増加

中心壊死を伴わない類上皮細胞肉芽腫

 

 

該当薬に陽性

好酸球増加

間質/実質へ好酸球浸潤

気管支、肺血管周囲の平滑筋細胞増生

 

好酸球増加

先行する気管支喘息

血管炎(多発性神経炎)

ペアで4倍以上の上昇

 

組織球と好酸球による肉芽腫

Birbeck顎粒の存在

最近の頭部外傷歴など

 

 

 

 

 

       鑑別診断と確定診断のポイント

       間 質性陰影を呈する疾患は多岐にわたり(表1)、全身疾患の一病変として出現するものも多いので、病歴や他臓器病変の有無は重要である。さらに、肺の線維化 では聴診上の小水泡性ラ音は診断の感度が高く、バチ状指などを含めて身体所見は重要である。間質性陰影の分布やパターンの評価には、胸部CT像、特にハイ レゾリューション法によるCT(HRCT)2)像が役立つ。また、気管支鏡によるTBLB(経気管支肺生検)および気管支肺胞洗浄(BAL)は今や間質性 陰影の診断には不可欠といっても過言ではない。癌性リンパ管症の原発巣は胃癌、肺癌、乳癌が多く、網状・線状の陰影に加えて、気管支壁の肥厚や肺門リンパ 節腫脹を伴うことが多い。創生好酸球性肺炎は比較的新しい概念で、X線像は間質性、実質性いずれもとり得るが、問質性陰影を呈

す ることが多い。急性呼吸不全でBAL液中の好酸球増加があれば本症と呼び得るが、確定診断にはTBLBで問質への好酸球浸潤を確認すべきである。特発性間 質性肺炎は二次性の間質性肺炎を除外することによって診断され、厚生省の診断指針などが診断の役に立つ。薬剤性肺炎は発症頻度の高い薬剤(抗癌剤、免疫抑 制剤、金製剤、抗生剤など)との因果関係が診断に重要であり、リンパ球刺激試験などが参考になる。本症では胸水を伴う例が多く、BAL液では全回収細胞数 の増加とリンパ球比率の増加、CD4/CD8の低下が得られる。過敏性肺臓炎は発症後の時期によって画像も多様であるが、亜急性の相では中下肺野に強いス リガラス状、小粒状陰影の散布が認められる。マイコプラズマ肺炎、オウム病は臨床症状と白血球数微増などが参考になり、X線像は間質性肺炎像を呈さないこ ともしばしばある。膠原病における間質性肺炎の合併頻度は、全身性強皮症(PSS)60〜90%、多発性筋炎/皮膚筋炎(PM/DM)40〜80%、混合 性結合織炎(MCTD)45〜85%、慢性関節リウマチ(RA)20〜40%、全身性エリテマトーデスSLE0.910%でPSSが最も頻度が高くSLEが低い。PSSの間質性肺炎は下肺野に多くPM/DMの間質性肺炎は重篤化しにくいなどの特徴がある。

 

蜂巣肺

 

蜂 巣肺は、特発性肺線維症に見られ、膠原病、薬剤誘起性など多岐にわたる原因が考えられるが、その多くは原因不明の問質性肺炎に起因する。特発性肺線維症は 原因不明の炎症が肺胞隔壁を中心に起こり、結合織の増殖によって肺胞隔壁(狭義の間質)が肥厚し、さらに線維化し、不可逆状態である蜂巣肺となったもので ある。蜂巣肺は呼吸細気管支レベルで数個の肺胞道とそれに付随する肺胞が虚脱、線維化し、折り畳まれた壁からなる嚢胞の集族であり、通常、細気管支と連続 性を持つのが基本である。X線写真では蜂巣肺は比較的壁の厚い1cm以下のほぽ均一な小輪状陰影がびまん性に集籏している陰影(honey combing appearance)を指すが、この小輪状影は粒状・網状影(reticulonodu1arpattem)としても見られ、X線上、両者の所見の区別が難しいことが多い。

 

X線所見で中・下肺野末梢に蜂巣肺を疑う多発

性 輪状影や小・中粒状・網状影をびまん性に認めた場合、その大きさ、分布、付随所見に留意する。X線写真上、多発性小輸状影は、微細(3mm以下)または中 型(3〜10mm)の粒状・網状影との区別が難しいが、CTにて両者の識別が可能となる。これらの陰影の分布は両側の下葉胸膜下と横隔膜面に最も著しく、 肺門に向かって弱くなる。胸膜下の不整凹凸像や横隔膜の不鮮明化、横隔膜の挙上、葉問偏位が見られ、特に下葉の容積の減少が著しいのが特徴である2)。蜂 巣肺の付随所見として、びまん性間質性病変による多彩な所見が混在することがあるので注意が必要である。病変の軽い部位では虚脱した肺胞領域と拡張した肺 胞道が均等に分布してSummationとして見られるため、中・下肺野がスリガラス状(groundg1assappearance)を呈することがある。特に肺野濃度の強い部位には小透亮像(airbronchiologram)が見られ、これは小嚢胞自体の細気管支様拡張を示している。1cm以上の粗大な輪状・網状影は気腫性嚢胞(cystformation)を示唆し、これは多数の円形・多角形の透亮像として認められる。これは肺胞壁が破れ融合したもの、あるいは嚢胞状に拡張した肺胞道・細気管支であり、線維化した隔壁に囲まれている。

 

 

鑑別診断と確定診断に必要な検査、ならびにそのポイントを表1に示す。X線写真にて蜂巣肺を見た場合、慢性経過をとる特発性間質性肺炎(idiopathicinterstitialpneumonia:IIP)の終末像を考える必要がある。これは急性の経過を示すIIPと区別しなければならない。急性型では広汎に虚脱(disea1veolardamage:DAD)した肺胞領域と拡張した肺胞道や細気管支がびまん性に分布するため、X線写真にてスリガラス状を呈する。小嚢胞が小透亮像として見える場合、CTでは小葉中心性の気腫性嚢胞を示し、終末像の蜂巣肺と異なる。強皮症(または進行性全身性硬化症progressive systemic sc1erosis:PSS)、皮膚筋炎/多発性

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

鑑別診断にあがる疾患

確定診断に必要な検査

確定診断のポイント

 

急性型特発性間質肺炎

DiffuseaIveo1ardamage(DAD)

膠原病肺臓炎

PSS,DM/PM,RA

肺好酸球性肉芽腫症

 

びまん性過誤腫性肺脈管筋腫症

 

嚢胞性気管支拡張症

 

塵肺

 

肺サルコイドーシス

 

過敏性肺臓炎

 

CT

MRI

 

 

CT

MRI

 

CT

MRI

CT

MRI

 

CT

MRI

CT

MRI

CT

MRI

CT

MRI

 

広汎な高濃度域内に分布する小嚢胞を小葉中心性の細‘気管支拡張像として認める。

 

 

IIPとの鑑別は困難な場合が多い。広義の問質の変化が強い傾向にある。

 

血管・気管支に隣接する多発性の壁厚の空洞を有する結節が上肺野に強く分布する。

呼吸細気管支のびまん性の小嚢胞性拡張。中・下肺野に分布し、気腫性嚢胞を伴う。

 

壁の厚い多房性の嚢胞が気管支の走行に一致して配列。内部に液面形成が見られる。

異常分岐索状影を小・細気管支の拡張として認める。

小葉中心性分布を有する境界明瞭な小結節が主体で、周囲に気腫性変化が加わる。

また、結節は胸膜下にも及び、胸膜肥厚を伴う。さらに融合し粗大な結節・塊状影となる。リンパ節の腫大・石灰化を伴うこともある。

上・中肺野中心に分布する。血管・気管支束の不整な肥厚および中心性集束を認め、周囲に気腫性嚢胞を伴う。大小の不整な結節影、塊状影を伴う。汎小葉・小葉中心性小結節と肺野全体の濃度昇を示し、病変の軽い部位は輪状に抜けて見える。

 

 

 

 

 

 

 

筋炎(dermatomyositis/po1ymyositis:DM/PM)、慢性関節リウマチ(rheumatoidarthritis:RA)な どの膠原病肺臓炎の終末像は、慢性の経過をとるIIPと同様にX線所見にて蜂巣肺を伴い、両者を鑑別することは難しい。IIPでは狭義の問質(肺胞壁)の 変化であるが、膠原病肺臓炎では広義の間質(気管支・血管周囲、臓側胸膜、小葉間隔壁)に肥厚や線維化が及ぶことが多い。その他、ブレオマイシン、ペプレ オマイシンなどの抗癌剤や免疫抑制剤などによる薬剤誘起性肺臓炎も終末像は同様な所見であり、過去の薬剤の使用歴に留意する必要がある。日本では稀である が、アメリカでは肺好酸球性肉芽腫症(histiocytosisX)、びまん性過誤腫性肺脈管筋 腫症に蜂巣肺の合併が多いと報告されている。肺好酸球性肉芽腫症は非特異的な粒・網状影を示し、上肺野に強く分布する。CTでは多発性結節性病変が気管 支・血管に沿って分布し、壁の肥厚した空洞を認め、周囲の胞隔や小葉間隔壁の線維化、気腫性嚢胞を伴う。20〜40歳の男性に多く、喫煙との関係が注目さ れている。びまん性過誤腫性肺脈管筋腫症では小網状陰影が中・下肺野末梢に分布する。CTでは呼吸細気管支の拡張をびまん性に壁の薄い小嚢胞として認め、 胸膜下の不整像も伴う。ほとんどが若い女性患者である。嚢胞性気管支拡張症では中・下肺野に気管支拡張を示す多発性の輸状影や小粒状影が見られる。CTで は壁の厚い多房性の嚢胞を気管支の走行に一致して認め、しばしば内部に液体が貯留している。また、浸出物で充満した拡張した小・細気管支を異常分岐影とし て認め、これより末梢は気腫性嚢胞を伴っていたり、肺胞性肺炎の合併が見られることがある。珪肺や炭肺などの塵肺ではびまん性の小粒状・網状影が見られ、 背側胸膜下に蜂巣肺を輪状影として認め、特に珪肺では上・中肺野に強い分布を示す。粒状影の石灰化や肺門リンパ節の腫大・石灰化、1cm以上の大陰影や塊 状影の存在に留意する必要がある。CTでは高吸収を示す粒状影が肺外層に密に分布し、内・中層では気腫性変化が強い。また、広義の問質は線維化しており、 胸膜下、小葉問隔壁、気管支・血管周囲の肥厚像を認める。いずれにしても、患者から粉塵作業歴の有無をよく聴く必要がある。

 

肺サルコイドーシスの肺線維症を伴うStageVBはびまん性小粒・網状影に加え、不整な1cm以上の大結節・塊状影(cottoncandy,a1veolarsar-ooid)が 認められ、上・中肺野に強く分布する。広義の間質に肉芽形成が強く、CTでは上葉の気管支壁肥厚像および血管壁の不規則な腫大を示す。また、上葉では気管 支・血管の中心性集東による収縮と周囲に気腫性嚢胞を伴い、壁の薄い輪状影を呈する。肺門リンパ節の腫大の有無に留意する必要がある。びまん性の線維化で は、著明な気管支・血管束全体の不整・腫大と肺野全体の広範な粒状・スリガラス状陰影を呈し、肺容積が縮小するが、特発性間質性肺炎で見られる蜂巣肺の形 を1とるものは稀である。また、これらの所見は癌性≡リンパ管症にも類似することがあるので注意を要する。過敏性肺臓炎の急性型は汎小葉・小葉中心性の辺 縁不鮮明な粒状影、淡い肺野全体の濃度上昇、二次小葉単位の不均一な濃度陰影を特徴とし、特発性間質性肺炎と区別することができるが、慢性型では小葉辺縁 分布、気管支・血管壁不整像、および下肺野に蜂巣肺を示す輪状・網状影を認めることがある。また、肺容積も減少しており、特発性肺線維症と類似の所見を示 す。農夫肺は肺線維症をきたす過敏性肺臓炎であるが、上肺野優位の分布を示し、肋骨・横隔膜角は保たれている。

 

固質化(conso1idation

 

固質化(conso1idation)とは、元来、含気腔(airspace)が液体や組織で置換された状態を示す病理組織学的用語であるが、X線学的にも同様な状態の陰影に対してよく使われている1,。一般的に肺の体積を減少させることなく、肺に均一な陰影を呈するもので、しばしばairbronchogramを伴う。norma1variationとして正常例で見られることはない。

 

Conso1idationalveo1ardensity(肺胞性陰影)あるいはairspacedisease(気腔病変)とほぽ同じに使われる。したがって、ここでは肺胞性病変の成り立ちとそのX線学的特徴について述べる。

1。細葉陰影(acinarshadow)

 

肺胞性陰影の基本型は細葉陰影である。細葉は解剖学的に終末細気管支から肺胞までの肺の末梢部分で、X線学的に重要な構造単位である。細葉が液体や組織で置換され、X線像として投影されたものが細葉陰影である。大きさは直径5〜7mmである。

 

2、融合傾向が強い

 

細葉結節は時間の経過とともに、湊出液が肺胞間に存在するKohn孔や肺胞と細気管支問にあるLambert経 路、あるいは末梢気道を介して隣接する肺胞壁へと広がり、融合して小葉、区域、肺葉の大きさになる。しかし、末梢では肺胞から肺胞へと広がることがあるの で、必ずしも区域性の分布をとるとは限らない。また、小葉の大きさの融合陰影となっても、その間に正常の含気のある肺が介在すれば、斑状陰影(patchyshadow)として認められることもある。

 

3.Airbronchogram

 

気管支内の空気は、水濃度の陰影に囲まれるとコントラストされて描出される。したがって、肺胞腔が液体ないし組織で置換される病態では、通常融合陰影内にairbronchogramが透見される。気管支は末梢にいくに従って次第に細くなり、肺胞に至るので、肺門付近のconsolidationairbronchogramはよく観察され、末梢のそれでは通常認めがたい。しかし、末梢ではairbronchogramと同じ機序で、空気の入っている細気管支や、取り残された空気の入っている肺胞が周囲のconso1idationによりコントラストされ、aira1veo1ogramとして認められることがある。

 

胸部X線写真上consolidationを呈し得る疾患と、その画像上の鑑別のポイントを列記した。

 

1.感染性疾患

 

細 菌性肺炎の場合、起炎微生物の正確な推定を画像所見より行うことは難しい。したがって、喀疾検査(グラム染色、抗酸菌染色、一般培養、嫌気性培養)が必須 である。喀痰標本は好中球が多く、口腔内扁平上皮数が少ないものが理想的である。口腔内常在菌の混入を避ける目的や、喀痰の自然喀出困難な症例では経気管 吸引法(transtrachea1aspiration:TTA)、気管支鏡下吸引法による検体採取を行う場合がある。胸水や血液からの培養細菌は起炎菌としての意義が大きいため可能な限りルーチンに行うべきである。近年、免疫不全を伴うcompromisedhostに 遭遇する機会が増えているため、常にウイルス性肺炎や肺真菌症も鑑別診断のなかに入れておかなければならない。サイトメガロウイルスによる肺炎は重症な呼 吸不全をきたすが、同ウイルスが属するヘルペス群に対して有効な薬剤が開発され、早期治療が予後の改善をもたらし得るため臨床上重要である。胸部X線は多 くがびまん性間質性肺炎像であるが、進行すると肺胞実質の変化も加わりacinarpattemを 呈する。肺生検所見で核内封入体を有する巨細胞が証明できれば診断に寄与する。起因ウイルスの同定としては、遺伝子解析法の応用によりウイルスの核酸を証 明しようという早期診断法が開発されており、有用性が高いとの報告がある。また血清学的診断方法では、急性期と回復期とのペア血清で4倍以上の上昇がある か否か、急性期血清のIgM抗体の上昇があるか否かが診断の決め手となる。ウイルス性肺炎と同様の理由で、深在性真菌症の増加は著しい、特に肺真菌症は診 断も治療もいまだに困難である。臨床症状は発熱と胸部異常陰影以外は不定で、喀痰の塗抹標本に菌糸が見っかれば疑いが強いが、確定診断は肺生検による。

肺アスペルギルス症には、

@肺血管や肺実鄭こ侵入して肺壊死をきたし、血疾を生じる侵襲性肺アスペルギルス症、

A浸潤影と空洞を認め、しばしば菌球を二次的に形成する慢性壊死性肺アスペルギルス症、

B既存の空洞、嚢胞などの申にアスペルギノレスが二次的に侵入して菌球をつくる肺アスペルギロ−ム、

C気管支喘息歴をもち、反復する浸潤陰影と中心性気管支拡張像を認めるアレルギー性気管支肺アスペルギノレス症、がある。

肺カンジダ症、肺クリプトコッカス症はどちらも散布性多発結節を認めるが、空洞形成や肺炎像を呈することもある。

喀痰中のカンジダは診断的意義に乏しいが、Cryptococcus neoformansは外来性真菌であるため本症を疑う重要な所見である。

肺 ムコール症は稀ではあるが、その病態は興味深い。吸入された胞子が気管支壁を穿通して肺実質に入り、血管内腔で発育し、血栓とともに広範な肺梗塞を起こ し、櫻状陰影をきたし得る。健康な若年齢層の肺炎を見た場合、まずマイコプラズマ感染症を考えるべきである。発症は通常緩徐で、感冒様症状が先行する。咳 漱が長期に続き、喀痰の訴えは少なく、あっても膿性ではない。白加球数は正常か軽度上昇にとどまる。寒冷凝集反応陽性(32倍以上)は診断的意義が高い。

 

2。腫巧性疾患

 

肺野末梢型肺癌は孤立性陰影を呈するが、肺門部肺癌や悪性リンパ腫は末梢側に区域性の広がりを示す閉塞性肺炎や無気肺を起こすことがある。通常volumelossを 示すが、肺胞上皮癌の場合、肺の容積が減少しないため、いわゆる肺炎との鑑別が難しいことがある。胸部断層写真や胸部CTスキャンによる画像診断をすす め、肺門、縦隔リンパ節腫大の有無を確認することが重要である。喀痰細胞診をチェックし、経気管支鏡的に組織学的診断を下さなければならない。3。その他 の疾患突然発症する咳漱、胸痛、発熱、血疾などの諸症状とともに肺野に陰影があり、同側に胸水貯留や横隔膜の挙上があれば肺梗塞を疑わなければならない。 確定診断は肺換気血流スキャンを行い、換気欠損のない血流欠損であり、肺血管造影による肺動脈内腔閉塞の証明である。肺門を中心に広がるいわゆるbutterfly shadowを認めた場合は、まず心原性肺水腫を考えなければならない。通常、肺静脈圧が30〜35mmHgを越えると高率に出現する急性左心不全の像である。原因疾患の究明が急務であり、心電図ならびに心エコーを可及的速やかに施行すべきである。Wegener肉 芽腫症は、上・下気道の壊死性肉芽腫、全身臓器の血管炎、巣状壊死性糸球体腎炎を主病変とする疾患である。多くの場合、空洞を伴う多発結節陰影であるが、 浸潤陰影を呈することもある。耳鼻咽喉科的精査、腎病変の有無を調べなければならない。肺胞蛋白症では、肺胞に均一なPAS陽性物質が充満する。しかし、 肺胞構造は破壊されないことが多いので、両側びまん性の淡い細葉陰影を呈して、air bronchogramが 認められる。診断はTBLBでなされる。肺好酸球増多症は臨床的に5群に分類される。そのうちの遷延性肺好酸球増多症は肺末梢部に進仔性で、濃厚な陰影を 呈する。病変の局在様式、分布を知るには胸部CTスキャンが有用である。肺組織での好酸球浸潤とBAL液の好酸球増多が診断の決め手となる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〈感染性疾患〉

X線所見の特徴と確定診断のポイント

1。細菌性肺炎

肺炎球菌

 

 

黄色ブドウ球菌

 

 

グラム陰性桿菌

 

 

 

 

 

 

 

嫌気性菌

 

 

結核菌

 

 

下葉に多い。通常airbronchogramを認める。空洞形成は稀。病初期は区域性の広がりを示さないことがある。

肺膿瘍形成(25%)、胸水貯留(25%/、膿胸を併発することあり。成人の場合60%が両側に肺病変を形成する。

イ ンフルエンザ桿菌は下葉に多く、気管支肺炎像や散布性小結節影を呈することが多い。肺炎桿菌は右上葉に多く、区域性の均等陰影をとる。緑膿菌性肺炎は中下 葉に多く、膿瘍形成や膿胸を併発することあり。大腸菌は気管支肺炎像を呈し、胸膜炎を合併することあり。セラチアは大葉性に広がる浸潤影が特徴的とされ る。レジオネラ症は急速に進行し、X線所見に比して低酸素血症が高度。

gravitydependencyあり、ほとんどの症例が肺膿瘍を形成し、膿胸を併発する。多くの例に誤嚥の病歴があり、口腔内感染巣を有する。

右肺上葉に多い。空洞形成や石灰化を伴う。傍気管リンパ節や肺門リンパ節の腫大を認めることあり。

2。ウイルス性肺炎

 

 

多くは免疫不全状態にある患者に発生する日和見感染である。ウイルスにより気管支肺炎、間質性肺炎、胸水、肺門リンパ節腫大など多彩な所見あり。

3。肺真菌症

ほとんどが日和見感染である。X線像は多発性結節、空洞形成、大葉性肺炎像、肺梗塞様の襖状陰影など多彩である。

マイコプラズマ肺炎

若年齢層では圧倒的に多い、下肺野に広がる淡いスリガラス様陰影が特徴的とされるが、区域性の均一な肺炎像をきたすこともある。膿性疲は稀。寒冷凝集反応陽性

く腫瘍性疾患〉

肺癌

 

 

 

悪性リンパ腫

肺野孤立性陰影を呈することが圧倒的に多い。左肺に比し右肺に、下葉に比し上葉に若干多い。

閉塞性肺炎をきたした場合Volumelossが著明となる。肺門、縦隔のリンパ節腫大を伴うこと

が多く、15%に胸水貯留を見る。

肺門、縦隔リンパ節腫大を伴う様々な広がりを示す陰影。Hodgkin病の場合、気管支内腔に腫瘤を形成し、無気肺を呈することあり。Non-Hodgkin病は20%に肺野病変を、18%に胸膜病変を伴う

〈その他〉

1。肺血栓塞栓症

 

2。心原性肺水腫

 

3,Wegener肉芽腫症

4。肺胞蛋白症

 

5。肺好酸球増多症

 

肺梗塞下葉に多い。横隔膜挙上と肺動脈の拡張を伴う。

典型例では陰影は肺門部に強く、末梢では程度が軽い。辺縁部では細葉陰影を示す。

多発性の腫瘤影でしばしば空洞を伴う。

気管支内腔病変により無気肺を呈することあり。

両側びまん性の浸潤陰影で、胸水貯留やリンパ節腫大を認めない。

肺野の外側領域に辺縁不整な斑紋状陰影を呈する。上肺野に多く、出現と消退を繰り返すこと

 

 

 

 

両側肺血管陰影減少像

 

 

 

一 見して肺野が全体に明るく、肺血管陰影に乏しい。はっきりした血管陰影が認められるのは肺野の内側1/3の部分のみで、中央1/3の部分では一部に線状の 血管陰影が認められるだけである。内側1/3に認められる血管陰影も隣接する気管支に比べ細く、両側肺血管陰影が減少している所見である。

 

■ 左右肺動脈の主幹部の太さを右肺動脈は正面写真で、左肺動脈は側面写真で気管の太さと比較し、肺動脈のほうが明らかに細い場合は肺血管陰影が減少している と判断できる。それよりも末梢の肺動脈は隣接する気管支の太さと比較し、肺動脈のほうが細ければ、やはり肺血管陰影は減少していると判定する。正常の小児 では肺野の外側1/3では血管陰影が全く認められないか、あるいは線状に認められるにすぎない。これよりも内側で同様の所見を認める場合は肺血管陰影が減 少していると判断できる。ただし、立位で撮影した写真では正常でも上肺野の血流量は減少しており、この部分の肺血管陰影から肺血管陰影が減少しているか否 かを判断することは適切ではない。肺血管陰影を読影する際には、減少、増加のほかに肺血管陰影の左右差の有無、主肺動脈の有無と、その位置などにも注意を 払う必要がある。X線線量が多い写真では、肺野全体が明るく見え、肺血管陰影が実際よりも減少して見えるので注意が必要である。肺血管陰影の減少は肺血流 量の減少を意味するので、肺血管陰影の減少を認めた場合は肺血流量の減少をきたす先天性心疾患を念頭において読影をすすめることになる。しかし、肺血流量 の減少をきたす先天性心疾患は、いずれも同一の疾患であっても症例によりその血行動態はさまざまであるため、同一疾患であっても単純写真の所見は著しい多 様性を示す。したがって、大切なことは肺血管陰影と心陰影(心拡大の有無、心拡大がある場合は心腔のどの部分が拡大してレ)るのか)から血行動態を読みと ることであり、1枚の単純写真が直ちに特定の疾患の診断に結びつくことはむしろ橋であると考えるべきである。右大動脈弓は必ずしも先天性心疾患に合併する ものではなく、単独で認められることもあるが、先天性心疾患に合併した場合は鑑別診断の参考となる。右大動脈弓の場合は正常では左側に認められる大動脈頭 (aorticknob)が右側に認められ、また気管が大動脈により右側から左側へ圧迫されている所見を認めることもある。

 

肺血管陰影の減少をきたす先天性心疾患は、いずれも断層心エコー図により確定診断が可能である。各疾患の心エコー図所見は成書にゆずり、本稿では肺血管陰影の減少をきたし得る先天性心疾患の胸部単純写真の所見について述べる。

 

1。ファロー四徴症

 

肺 血管陰影の減少をきたす先天性心疾患の中では最も発生頻度が高い。肺血管陰影は正常のものから極度に減少しているものまで千差万別である。肺血管陰影に左 右差を認めることがあり、この場合は右肺に比べ左肺の血管陰影がより減少しているのが普通である。心拡大はないか、あってもごく軽度である。成書に記載さ れている「木靴型」の心陰影は年長児では多く認められるが、乳児期には「木靴型」の心陰影はむしろ少なく、非特異的な心陰影を呈することが多い。上行大動 脈は太く、25〜30%に右大動脈弓を伴う(総動脈幹遺残も約30%に右大動脈弓を伴うが、肺血管陰影は増加する。

 

2。三尖弁閉鎖

 

三尖弁閉鎖の80%は明らかな肺血管陰影の減少を示す。この場合、右房拡大による軽度の心拡大を認めることが多いが、全く心拡大を認めない症例もある。約5%の症例で著明な心拡大と肺血管陰影の増加を認める。’8〜10%に右大動脈弓を伴う。

 

3。単心室

 

単心室は約70%に肺動脈狭窄または肺動脈閉鎖を合併する。これらの場合、心拡大は認められず、肺血管陰影は肺動脈狭窄の程度により、正常のものから著明に減少しているものまでさまざまである。肺動脈狭窄を伴わない単心室では著明な心拡大と肺血管陰影の増加を認める。

 

4。純型肺動脈閉鎖

 

純型肺動脈閉鎖は心室中隔欠損を伴わない肺動脈閉鎖で、肺血管陰影はほぽ正常に保たれている■ものから著明に減少しているものまでさまざまである。

右室が小さく三尖弁の逆流が軽度のものは心拡大がなく、非特異的な心陰影を呈することが多い。正常または拡大した右室で高度の三尖弁の逆流を伴う場合は心拡大を認め、後述するEbstein奇形に似た心陰影を呈する。

 

5.Ebstein奇形

 

三尖弁閉鎖不全が軽度のものは心拡大を認めず、肺血管陰影も正常である。三尖弁閉鎖不全が高度になればなるほど右房と右室の拡大が著明となり、肺血管陰影は減少する。心拡大が高度な場合は胸腔の大部分を心陰影が占め、肺血管陰影の読影が困難となる。

 

6。その他

 

先天性心疾患以外で肺血管陰影の減少をきたすものとしてhypovo1emia(高度の脱水のときなどに見られる)と肺気腫(喘息発作の場合が典型的)がある。いずれの場合も心臓への静脈還流が減少し、肺血管陰影が減少する。心陰影も縮小することが多い。

 

 

一側肺門陰影縮小

 

 

肺 門陰影を構成する最も重要な構造物は肺血管(肺動脈、肺静脈)である(表2)が、気管支壁、リンパ節、脂肪組織なども肺門陰影の構成に寄与する。肺動脈の うち左肺動脈本幹は肺門陰影(左上肺門部)の構成物となるが、右肺動脈本幹は縦隔部に存在し、正常では肺門陰影を構成しないことに注意する必要がある。気 道壁ならびに気道内腔の透亮像は通常肺門部高密度陰影には関与しないが、中枢気道閉塞が発生すると、肺門陰影が縮小・不明瞭化する。中枢気道の不完全閉塞 はそれより末梢部の換気不全を惹起し、低酸素性肺血管撃縮のために罹患部位の肺血管抵抗が上昇し肺血流は正常肺へ再分布する。その結果、罹患部の肺門陰影 が縮小する。中枢気道の完全閉塞は無気肺を発生させるので、肺血管の走行が偏位し、肺門陰影縮小の原因となる。肺門部にリンパ節腫脹や悪性腫瘍が存在する と、肺血管が圧排され肺門部血管陰影が縮小する。これも肺門陰影縮小の1つであるが、リンパ節、悪性腫瘍の腫脹のために一見したところ肺門部血管陰影の縮 小に見えないことに注意する。以上のような諸点を基本知識として、一側肺門陰影の縮小を認めた場合の基本的画像診断アプローチにっいて考えていきたい。 1)まず初めに、それがnorma1variationではなく真の病的異常を表すものであるかどうかを鑑別する。上述したように、左側肺門部陰影の縮小はnormalvariationの頻度が高いことに注意する。noma1variationと 病的肺門陰影縮小の鑑別はそれより末梢の肺血管陰影に注目して行う。病的肺門陰影縮小では、それより末梢の肺血管陰影が減弱していることが重要な所見であ る。2)次に、肺門陰影の縮小が肺血管の一次的異常によるものか、あるいは気道の内腔閉塞による二次的なものであるかどうかを鑑別する。このためには、肺 門陰影の縮小を認めた側の肺野に過膨張所見が局所的あるいは全体に存在するか否かを検討する。この検討のためには呼気位における単純X線写真が効力を発揮 する。気道内腔閉塞では、呼気時のairtrappingのために閉塞が存在する側の肺野の容積が 低下せず、その部位の透過性が吸気位のX線写真と同様に維持されたり、縦隔の正常側への偏位などが認められる。気道内腔閉塞による無気肺の場創こは、無気 肺による種女の間接所見に注目する。3)肺門部のリンバ節腫脹や腫瘍による肺門部肺血管の圧排も一側肺門部肺血管陰影の縮小をもたらすが、リンパ節腫脹や 腫瘍のために肺門陰影は全体としてむしろ拡大する。以上が一側肺門陰影の縮小を認めた場合の臨床的にまずたどらなけれぼならない診断順序であるが、これを 引き起こす具体的疾患に関しては後述する。

鰹 鑑別診断と確定診断のボイント醐畷囎贈騒胸部X線写真上、一側肺門陰影の縮小を認めた場合に鑑別すべき主な疾患を表3に示す。これらの疾患にあって、内科 的に最も重要で典型的な一側肺門陰影の縮小をきたすものは、腫瘍あるいは異物による中枢気道内腔の不完全閉塞である。こ

れと画像上ほぽ同じ所見を呈するものに一側透過性肺(Swyer-James症候群)がある。肺門部位の肺動脈に発生した肺血桂・塞桂症の場合、塞桧存在部位より中枢側の肺動脈は拡張し、肺門陰影は一部縮小(塞栓部位より末梢側)、一部拡大(塞栓存在部位より中枢側)を示す場合が多いことに注意

する。この画像所見はquck1esignと呼称される。小児科領域では気道系、肺血管系における種々の先天異常に起因する一側肺門陰影の縮小を鑑別

しなければならない。その他、画像上一側肺門陰影の縮小を呈するも伽こは側轡症などによる肺門偏位があげられる。

また、X線写真撮影が不適当な条件で施行されたときも一側肺門陰影が縮小して見える場合がある。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

鑑別すぺき疾患

確定診断に必要な検査

確定診断のポイント

気道病変(内腔閉塞)

肺癌

 

 

異物

肉芽腫(結核、サルコイドーシス)

良性腫瘍(カルチノイド、気管支腺腫など)

SwyerJames症候群

肺アミロイドーシス

再発性多気管支軟骨炎

肉腫(軟骨、骨、脂肪、線維など)

先天性気管支閉鎖症

先天性気管・気管支狭窄症

先天性大葉性肺気腫

 

 

喀痰細胞診、気管支鏡(生検)

気管支鏡

喀痰培養、気管支鏡(BAL、生検)気管支鏡(生検)

気管支造影(SABを含む)、CT

気管支鏡(生検)抗軟骨抗体、耳、鼻、気管支生検

気管支鏡(生検)気管支造影、CT

気管支鏡(生検)

気管支鏡(生検)、CT

 

 

 

 

 

一側肺門陰影縮小、末梢肺血管陰影の減少、airtrapping(十)悪性細胞の存在異物の存在結核菌の証明、サルコイド肉芽腫病理所見

小 児期におけるウイルス感染、閉塞性細気管支炎、一側肺気腫化アミロイドの沈着(コンゴレッド染色)抗軟骨抗体陽性、耳、鼻、気管支軟骨炎の証明各肉腫組織 の証明左上葉に多い、粘液栓による陰影の存在気管・気管支軟骨の異常、左肺動脈異常の合併葉気管支軟骨欠損、左上葉に多い。心奇形の合併

 

肺血管病変

1、中枢部肺動脈血栓・塞栓症

2、先天性肺動脈欠損症

3、左肺動脈走行異常

4.Scimitar症候群

 

 

 

 

 

 

換気・血流シンチ、肺動脈造影

肺動脈造影、大動脈造影

肺動脈造影

肺動脈造影、下大静脈造影、CT

 

 

 

一側肺門陰影縮小、未梢肺血管陰影の減少、airtrapPing(一)換気・血流シンチのmismatch、造影剤充満欠損像全身血管からの肺への血流、心奇形の合併左肺動脈カ塙側肺門を通り左肺門に至る右肺低形成、右肺動脈低形成、右肺静脈の下大静脈への還流

肺血管圧排

1.             肺門リンパ節腫脹(肺癌、結核、真菌、ホジキン、悪性リンパ腫、塵肺、アミロイドーシスなど)

2、肺嚢胞

2.             ブドウ球菌肺炎後の気嚢

その他

脊柱側讐症

縦隔拡大(縦隔腫瘍、縦隔炎など)

気胸

 

 

CT、胸腔鏡

 

 

 

 

CT、

CT

 

 

胸部単純X線写真CT,MRI胸部単純X線写真

肺血管を圧排する肺門リンパ節の証明、原因検索は胸腔鏡による肺門リンパ節生検

肺血管を圧排するブラの存在ブドウ球菌肺炎の既往、気嚢の証明、小児に多い

 

 

側轡の証明

縦隔の拡大を証明

気胸の証明

 

 

 

 

 

線状帯状陰影

 

線状・帯状陰影を認めた場合

 

線状陰影(1inearshadow)は太さが1〜2mmまでのもの、帯状陰影(band-1ikeshadow)は3mmから2cmくらいまでの幅の広いものとされている。また線状陰影が2本平行に走り、その内側にX線透過度の高い部分のあるものを管状陰影(band-1ikeshadow) としている。正常でも肺血管や気管支により構成される肺門陰影および肺紋理が、線状、帯状あるいは管状陰影として観察される。また、正常な胸膜の線状陰影 として葉間陰影があげられる。最もよく認められるのは、背腹写真の右中肺野外側から肺門に向かう水平な線状陰影で右上中葉間陰影である。側面写真では、右 上中葉間、右下中葉間、左上下葉間の葉間陰影を認めることがある。

 

胸 部X線写真にて線状・帯状陰影を認めた場合、それが正常では見られない異常な線状・帯状陰影であるかどうかが間題となる。それには、正常の肺動静脈・気管 支の走行および葉間陰影の同定ができなければならない。異常な線状・帯状陰影であれば、その位置、走行、太さ・長さ、他の随伴異常陰影から、解剖学的にど の部位のどのような異常であるかを検討することが必要となる。X線写到こは肺だけでなく、胸壁や体外にあるものも写るので心得ておく必要がある。余分なも のはできるだけ除いて写真を撮るのが原則であるが、時に種々のカテーテルや人工呼吸器のチューブ、衣類などの写ることがある。これらは読影に困ることは少 ないが、長い髪が束ねてあると、時に上肺野に淡い線状・帯状陰影として認められることがあり注意を要する。陰影が肺野の外まで続いていれば確定できるが、 理解できない線状・帯状陰影が認められたら、これらを念頭において、患者をもう一度診察することも重要となる。胸膜の異常陰影としては、正常の位置にある 葉間陰影の肥厚があり、胸水貯留、心拡大など他のうっ血所見を伴うことが多い。正常では認められない部位では、分葉異常に伴う葉間陰影、胸膜の肥厚癒着、 胸膜陥入などに伴う線状・帯状陰影があり、側面あるいは斜位写真を撮ることにより診断のつくことがある。肺実質および間質の線状・帯状陰影は、日常診療に おいて最もよく見かける陰影の1つで、Kerleyslineが有名である。Kerleys1ineはリンパ管内のリンパ液のうっ滞や肺小葉間の間質の浮腫により生ずる。

 

1.KerleysA1ine

 

太さ1mm以下で、長さ2〜6cmのほぽ直線の線状陰影で、気管支および肺動静脈の走行とは全く無関係であることが特徴である。肺門と胸膜のほぽ中間部に位置し、肺静脈周囲と気管支周囲をつなぐリンバ管の拡大もしくはリンパ管周囲組織の浮腫を意昧している。

 

2.KerleysBline

 

太 さ1mm以下で、長さ2cm以下の線状陰影で、末梢肺野に認められ、胸膜にほぽ垂直に走る。末梢の血管陰影と異なり分岐することはない。肺小葉間結合組 織、特にリンパ管周囲組織の浮腫を意味する。胸部X線読影の肺の単位として、多形性で直径1.O〜2.5cm大のMi11erの二次肺小葉の考え方がある が、この二次肺小葉は、下葉の前面から側面の胸膜直下において、規則正しく結合組織により境されている。この結合組織の浮腫がKerley’sB1ine として認められるので、背腹写真では下肺野外側に2cmくらいの長さで出現することが多い。

 

.KerleysCline

 

細 い線状陰影が錯綜し、網目状陰影を呈したものであるが、臨床的意義は少ない。リンパ管拡大やリンパ管周囲の浮腫だけではなく、著しい肺小葉間の浮腫を意味 している。肺葉あるいは肺区域の無気肺は、幅の太い帯状陰影として認められる。肺門から末梢へ向かい、末梢側がやや広い陰影を呈するのが特徴である。肺実 質の線維化・癩痕化も線状・帯状陰影を呈するが、陰影の幅は傷害された肺実質の大きさにより異なり、また周囲肺組織は代償性に過膨張所見を呈することがあ る。ブラもしくはブレブに伴う線状陰影はカーブしているのが特徴である。

 

胸部単純X線写真でも、ある程度線状・帯状陰影を呈している部位がわかるが、胸部CTを撮れば胸郭、胸膜病変、および嚢胞性病変は確定できる。また肺病変についても、末梢性病変なのか中枢性病変なのかなど、病変の詳しい部位および性状を理解する上で有用である。Ker1eys1ineを認めた場合、まずうっ血性心不全であるか否かが間題となる。現病歴、既往歴、理学的所見、および胸部X線写真の随伴所見(心陰影の拡大、上縦隔影の拡大、胸水など)から診断の容易な場合が多いが、Swan-Ganzカ テーテル倹査が必要となる場合もある。癌性リンパ管症、サルコイドーシスなど肺実質もしくは間質に病変が疑われる場合、確定診断には気管支鏡検査による経 気管支肺生検(TBLB)が必要となる。無気肺および癩痕性病変の確定診断にも気管支鏡検査(擦過細胞診、生検、細菌培養、気管支肺胞洗浄など)が必要で ある

 

 

 

 

鑑別すべき疾患

確定診断に泌要な検査

確定診断のポイント

1。うっ血性心不全

 

@病歴、理学的所見、胸部単純X線写真A心臓超音波検査

病歴、理学的所見、単純X線写真の随伴所見

弁膜症、左室駆出率の低下

2。気管支喘息

@病歴・理学的所見

wheezeの聴取

3気管麦拡張症

慢性気管支炎

@病歴・理学的所見

長期の咳嚇・喀疲

4、ブラ・ブレプ

@胸部CT

ブラ・ブレブの確

5。胸膜病変(胸膜の癒着・肥厚、気胸、縦隔気腫、縦隔ヘルニア)

@胸部CT

 

胸膜病変の確認

 

6。無気肺

@気管支鏡検査

気管支の閉塞

7。肺実質の線維性癩痕

@X線の経過

経時的変化に乏しい陰影

8。肺癌の胸膜陥入

@気管支鏡検査

癌細胞の確認

9。成人呼吸窮迫症候群

 

 

 

 

@    病歴、理学的所見、胸部単純X線写真

ASwan-Ganzカテーテノレ検査

肺動脈圧は上昇するが、襖入圧は正常

10。癌性リンパ管症

@気管支鏡検査

癌細胞のリンパ管内浸潤

11分葉異常

 

@胸部CT

胸膜の確認

12。肺動静脈痩

@肺動脈造影

肺動静脈痩の確認

 

 

 

 

 

透過性亢進

 

肺気腫の胸部X線写真上の特徴的所見としては、

@肺の過膨張(1ungoverinnation)と滴状心(dropletheart)、

A肺門部肺血管陰影の増強と肺野末梢肺血管陰影の減少(oligemia)、

B肺嚢胞(bul1ae)、 の3つが挙げられる。胸部単純写真上の肺気腫に特徴的なこれら3つの所見により、X線の肺野の透過性が、結果的には尤進することになる。なかでも、肺気腫 の重症度と肺の過膨張の程度の間には強い相関関係があり、肺気腫の診断上、肺の過膨張所見は非常に重要である。肺気腫に伴う肺の過膨張所見には、胸部単純 正面写真上、両側横隔膜の低下(尾側への移動)と肋間腔の開大所見、それに側面写真上の後胸骨腔と胸郭前後径の増大と、横隔膜の平低下所見が挙げられる。 横隔膜平低下は特に重要な所見で、肺気腫の重症度を最も正確に反映する。通常、健常人の横隔膜は頭側に凸であるが、肺気腫患者では平坦化し、重症例では頭 側に凹状となることもある。このほか、胸部写真上の滴状心も、肺気腫における肺の過膨張所見の一部と考えられている。滴状心は、胸部正面写真での心臓の横 径が、正常よりも肺気腫患者で著しく縮小する結果、心陰影があたかも水滴状を呈するものである。しかし、滴状心は肺気腫以外にも、しばしば痩身の健常人に 観察されるため、滴状心だけでは肺気腫を疑うに十分な所見とはならない。肺門部肺血管陰影の増強や、肺野末梢肺血管陰影の減少などの肺気腫に特徴的な肺血 管陰影所見の存在は、肺の過膨張所見に比べ、より重症な肺気腫の存在を示唆することが多い。肺門部肺血管陰影の増強は、二次性肺高血圧症の合併を意味する ため、病勢が進み肺気腫が末期となった患者でしばしば観察される。一方、肺野末梢肺血管陰影(肺紋理)の減少は、肺門部の肺血管陰影増強と異なり、比較的 軽症な肺気腫患者でも観察できる。肺気腫に伴う肺嚢胞は、その径が1cm前後から一側胸郭を占めるほどの巨大なものまでさまざまであり、多発することが多 い。

 

 

1)横隔膜の位置(正面写真)

 

:横隔膜が背側で第11肋骨以下、または横隔膜と鎖骨中線の交点が腹側肋骨で7番目以下(健常人では背側の横隔膜は第10肋間前後、腹側では第6肋間前後)。

 

2)横隔膜の脇犬(正・側双方)

 

:横隔膜が平坦化、または頭側に凹状(健常人では、頭側に凸の形状)。

 

3)後胸骨腔(側面写真)

 

:後胸骨面と上行大動脈前壁までの距離が2.5cm以上を開大。

 

4)心陰影(正面写真)

 

:心横径が11.5cm以下で、他の肺過膨張所見を伴う場合(心臓の横径の正常値は11.5〜15.5cm)。

 

5)肺の血管陰影

 

: 右中間肺動脈幹径の増大(16mm以上)や肺紋理の減弱(肺の外側1/3以上の範囲で、肺の末梢血管陰影が観察できなし)状態である。健常人では、肺紋理 は特に肺底部の縦隔側でよく見られるが、肺野の外1/3では径が1〜2mm以下と非常に細く、肺紋理を追うことが困難)。

 

6)肺野における肺嚢胞の有無

 

:嚢胞壁の厚さは非常に薄く、胸部単純写真で描出されることは稀。たとえ大きな嚢胞が存在しても、単純写真での指摘は困難だが、嚢胞の刺こは血管陰影がないこと、外側に圧排され、嚢胞周囲の血管が弓なりに走行する所見より、嚢胞の存在を推測することは可能。

肺気腫の診断に、1)〜4)の肺の過膨張所見は必須である。5)の肺血管陰影所見と、6)の肺嚢胞所見のみでは不十分で、これらに肺の過膨張所見が加われば、肺気腫として間違いない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

1。気管支喘息

@    間診

Adi1utortest

症状の増悪・寛解(十)。

気管支拡張剤吸入後、1秒量・1秒率の増加あり。

2。先天性心疾患

@    胸部単純写真

A心面管造影法

 

時に心肥大(十)。肺の過膨張所見(一)。

右→左シャント(十)。

3。原発性肺高血圧症

 

@胸部単純写真

A右心カテーテル法

 

肺門部肺血管陰影の増強(十)と肺の過膨張所見(一)。

肺動脈圧の著明な上昇(十)と肺毛細管喫入圧の上昇(一)。

4。肺血栓・塞栓症

 

 

@    胸部単純写真

A    肺加流スキャン

B    心血管造影法

心陰影の拡大(十)と肺の過膨張所見(一)。

肺の解剖学的区域に一致した血流の存在(十)肺動脈の十欠損像(+

 

 

肺門リンパ節の腫大

 

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1、肺門陰影が肺門リンパ節の腫大かどうか1)肺門リンパ節の腫大はX線で“potato-like”の外観を呈する。軽度の腫大では肺門陰影の辺縁が分葉状を示す。

2)これらの特徴的な所見がない場合は、肺門リンパ節腫大と突出した肺動脈との鑑別が必要。

3)同時に縦隔リンパ節の腫大を伴うときには、肺門リンパ節の腫大ということができる。

4)右肺動脈下行枝が拡張していれば肺動脈の1拡張である(正面像での最大幅が男性で16mm,1女性で15mmを越える場合)。1

5)末梢の動脈をその起始部に向かってたどり、肺門陰影が肺動脈かどうかを見る(Fe1sonにより、hi1umconvergencesigあるいはbifurca-tionSigと呼ばれる)。

6)側面像も有用で、正常では左上葉気管支入口の直下には何の陰影も見られないが、左肺門リンパ節腫大ではこの部が陰影で満たされる。

2。どのような原疾患が考えられるか

1)リンパ節腫大が唯一のX線所見のこともある:例えば、サルコイドーシス、悪性リンパ腫、悪性腫瘍のリンパ行性転移などである。

2)左右肺門の腫大したリンパ節の対称性を見る:サノレコイドーシス、白血病、珪肺は対称性で、悪性リンパ腫は非対称性に腫大している。

3)腫大リンパ節の融合性を見る:サルコイドーシスでは個々のリンパ節は周囲の炎症が少ないために融合せず、“potato-1ike”に腫大し、悪性リンパ腫では数個のリンパ節が融合して見える。

4)リンパ節の石灰化の百無を見る:珪肺では約5%の症例に卵殻状の石灰沈着を認める。

5)胸水貯留の有無を見るlHodgkin病では約30%の症例に、また白血病でも胸水貯留を認めることがある。

6)KerleysB1ineの有無を見る:癌性リンパ管症ではしばしばKerleysB1ineを認める。

7)胸膜肥厚の有無を見る:珪肺の進展例では胸膜肥厚が見られる。

8)腫大リンパ節の経時的変化を見る:悪性疾患では急速にリンパ節の大きさが増し、良性疾患では経過が長い。サルコイドーシスでは肺野病変の出現とともにリンパ節の大きさが縮小することがある。

 

BHL から鑑別すべき代表的疾患と確定診断のポイントを表1に示す。表1以外の疾患としては、マイコプラズマ肺炎(特に小児例)、麻疹、Echo、水痘、EBウ イノレス感染、オウム病、マッシュルーム作業者肺、慢性ベリリウム肺などでBHLを認めることがある。また、日本では稀なヒストプラズマ症、コクシディオ イデス症でもBHLをきたすことがある。

 

 

■ 肺門と重なる肺野に病変があると、肺門陰影と同一部位に投影されるため、肺門陰影が拡大して見える。そのため、肺門リンパ節腫大の読影にあたっては、まず 正面単純像で認められる陰影が真に肺門部であるかどうかを、側面撮影で確かめる必要がある。次に、肺血管陰影との鑑別が必要であるが、肺塞栓や肺うっ血な どの病態では、肺動脈が拡張し肺門が拡大して見える。肺血管との蓮続性があるかどうか、辺縁が不規則であるかどうかなどを検討し、肺動脈ではないことを確 認する。正面あるいは側面の断層撮影を行えば、鑑別はより容易となる。CTも有用であり、造影CT像がよりとらえやすい。

一 般に、左肺門部は心陰影と一部重なるため、右肺門部のほうがリンパ節腫大所見の把握は容易である。なお、軽度の肺門リンパ節腫大は肺血管陰影に重なり診断 は困難であるので、以前のX線写真と比較することも重要である。合併所見としては、各種の肺野病変に注意することがもっとも肝要である。

 

■ 鑑別疾患としては、原発性肺癌、リンパ節結核、悪性リンパ腫、サルコイドーシス、塵肺、転移性肺腫瘍などがあげられる。鑑別に際しては、肺門リンパ節腫大 が一側性か両側性かがまず問題となるが、一側性の腫大は原発性肺癌、リンパ節緒核、両側性の腫大は悪性リンパ腫、サルコイドーシス、塵肺、転移性肺腫瘍な どで多く見られる。また、一側肺門リンパ節腫大の鑑別をすすめていく際には、肺野の異常陰影の有無をとらえることは非常に大切である。

1。原発性肺癌

大 部分が肺門部に発生する扁平上皮癌、小細胞癌では、腫瘍とリンパ節が一塊となって見えることが多い。肺癌では肺野の変化の有無が重要であり、扁平上皮癌、 小細胞癌では無気肺像、閉塞性肺炎像などに注意する。小細胞癌では初期からリンパ節転移を起こすことが多く、リンパ節の腫大の程度もより強い。腺癌はほと んどが末梢に発生するが、進行するとリンパ節腫大を起こす。

 

2。リンパ節結核

 

結核で肺門リンパ節が腫大するのは初感染のときで、一側性が多く、両側のリンパ節腫大は少ない。癒合傾向が強く、時に石灰化を伴う。

 

3。悪性リンパ腫

 

悪性リンパ腫では、リンパ節の腫大の程度は強く、両側性の腫大を呈することが多い。表在リンパ節を含めた他部位のリンパ節腫大にも注意が必要である。肺野の陰影や胸水を伴うことも多い。

 

4。サルコイドーシス

 

サルコイドーシスでは、肺門リンパ節は両側性に腫大することが圧倒的に多く、一側のみの腫大は稀である。サルコイドーシスのリンパ節は癒合傾向は少なく、個々のリンパ節はよく区別され、丸くクリクリした、いわゆるpotato−likeの腫脹を示すことが特徴である2)。

 

5。塵肺

 

塵肺では肺門リンパ節腫大は両側性のことが多く、肺野に粒状陰影や結節陰影を伴う。職歴をよく聞くことが大切である。珪肺では、時に卵殻状のeg9-she11ca1cicationを認める。

 

6。転移性肺腫瘍

 

リンパ節腫大とともに、肺野に結節陰影などの転移巣を伴うことが多い。肺野全体に癌性リンパ管症の形でくることもある。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

鑑別すぺき疾患

確定診断に幽要な検査

確定診断のポイント

1。原発性肺癌

 

 

 

2。リンパ節結核

 

 

3。悪性リンパ腫

 

 

4。サルコイドーシス

 

 

5。塵肺

 

6。転移性肺腫瘍

@喀疲細胞診

A経気管支肺生検

B経皮肺生検、穿刺細胞診

@頸部リンパ節生検

A喀疲結核菌

 

@経気管支肺生検

A他部位のリンパ節生検

@経気管支肺生検

A前斜角筋リンパ節生検

B気管支肺胞洗浄

@経気管支肺生検

A喀疲細胞診

癌細胞陽性

癌組織、癌細胞の証明

同上

乾酪壊死を伴う類上皮細胞肉芽腫

Ziehl-Neelsen染色による結核菌の証明結核菌陽性

悪性リンパ腫組織、細胞の証明

同上

類上皮細胞肉芽腫

同上

リンパ球増加、OKT4/OKT8比増加

珪肺結節、石綿小体など

悪性組織、悪性細胞の証明

悪性細胞陽性

 

 

一側肺野濃度の上昇

 

「一側肺野濃度の上昇」とは、左右のいずれかの胸郭全体が暗陰影で占められるもので、胸部X線写真上で本所見を認識するのは容易である。

 

1胸部X線写真上で、このような一側肺野濃度の上昇が認められた場合は、まず病側の胸郭容積の増減の有無をチェックしなければならない。すなわち、病側の胸郭容積が対側と比較して減少しているか、増加しているか、あるいは等しいかを確認することが読影のrststepと なる(表。一側の胸郭の容積減少は、胸部X線写真上は縦隔構造の患側への偏位、横隔膜の挙上、対側肺の代償性過膨張などとして認識することができる。横隔 膜の高さを判断することは、一側肺が均一な暗陰影で占められている場合は必ずしも容易ではないが、左側では胃泡、右側は肝下縁の位置から推定することが可 能である。また、患側の肋問腔が対側と比較して狭小化することも胸郭の容積減少を判定するための参考になる。X線写真上で、以上のような一側胸郭の容積の 減少を認めた場合は、一側肺全体の無気肺を考えなければならない。原因としては、肺癌、粘液などによる主気管支の閉塞、結核などによる一側肺全体の完全荒 廃があげられる。主気管支の閉塞の場合は、単純X線写真を詳細に観察すると、時に閉塞部位を確認できることがある。一側胸郭の容積減少は肺低形成、肺切除 後でも認められる。一側胸郭の容積の増加は、胸部単純X線上、縦隔の正常側への偏位、肋問腔の開大、横隔膜の下方への圧排により知ることができる。一側胸 郭の容積の増大は、大量の胸水、胸膜腫瘍、一側肺全体を占めるような巨大な腫瘍の際に認められる。一側全体にわたる肺野濃度の上昇が認められるにもかかわ らず、胸郭容積の増減がない場合は、まず一側肺全体に広がる肺炎を考えなければならない。単純X線上では陰影の内部にairronchgramaira1Veo1ogramを 認めることができる。本症の診断はその臨床症状、経過から比較的容易と思われるが、抗生剤が発達した今日では、このように肺全体に広がるような肺炎を見か けることは稀である。この他、一側肺全部の無気肺と大量の胸水貯留が同時に存在するときには、病変側の胸郭の容積変化をきたさないこともあるので注意を要 する(図3)。上記の所見が胸部X線写真で見られた場合、次に行うべき非侵襲的検査はX線CTあるいは超音波検査(US:u1trasonography) であろう。X線CTは単純写真よりもはるかに濃度分解能が優れているため、一側肺野濃度の上昇の原困が無気肺であるか、胸水貯留であるか、あるいは肺炎で あるかなどを容易に鑑別することができる。肺癌による無気肺の場合は、腫瘍部分と二次変化の境界がはっきりしない場合があるが、dynamicCTにより ある程度鑑別が可能である。USでも、腫瘍部分と無気肺部分の鑑別が必ずしも容易ではないが、腫瘍部分はやや低エコーに、無気肺部分はやや高エコーに描出 されることが多い。また、USにより無気肺内部の肺動脈や粘液の充満した気管支が認められることもある。胸水は無エコーとして描出される。一側肺野濃度の 上昇の原因が無気肺である場合は、気管支閉塞の原因を調べるために気管支鏡を施行しなければならない。また大量の胸水が存在する場合は、胸腔穿刺により胸 水の細菌学的検査および細胞診をしなければならない。胸水に無気肺を合併している場合も気管支鏡の適応となる。

 

胸部X線上の胸部容積変化

 

鑑別診断にあがる疾患

確定診断の方法

減少

閉塞性無気肺(肺癌、粘液、異物などによる)

肺荒廃による無気肺結核放射線肺炎後

一側肺切除後

肺低形成

気管支鏡

既往歴のチェック

既往歴のチェック

CT、気管支造影、肺動脈造影

増大

大量の胸水貯留

胸膜腫瘍

巨大な肺腫瘍

胸腔穿刺

胸膜生検

肺生検(経気管支鏡的、経皮的)

不変

肺炎

無気肺十胸水貯留

 

 

喀疾、気管支肺胞洗浄液などの細菌学的検査

気管支鏡、胸腔穿刺

 

 

肺内石灰化像

 

胸 部X線写真で示される石灰化像は、その石灰の存在する部位により4つに大別される。胸壁の石灰化については、正面像のみならず側面像も利用して診断する。 場合によっては、CTや断層撮影が必要となる。縦隔・胸膜の石灰化については別稿にゆずり、ここでは肺内石灰化について説明する。

 

1。血管性石灰化

 

肺内石灰化であると考えられた場合、血管性のものはその石灰化の形状から鑑別は比較的容易である。肺門側の血管性石灰化の場合にはリンパ節石灰化に似ることもある。

 

2、結節内石灰化

 

肺 野で、結節内に存在する場合、その結節が孤立性か多発性か、結節における石灰化の位置(中心性か偏心性か)を見る。孤立性結節の中心部に石灰化を認めた場 合、病変が良性であることを示す所見として信頼性が高い。この場合、ほとんど肉芽腫または過誤腫である。辺縁部に石灰化が見られるとき、もともとあった石 灰を腫瘍がとりこんでしまったものである場合がある。したがって、肺癌を含めた悪性腫瘍の可能性も考える必要がある。腫瘍自体が石灰化を伴うものもあり、 石灰化の形状で結節性腫瘤の良・悪性を鑑別することは難しい。結節の形状、周囲構造との関連など総合的に読影する必要がある。多発性結節の場合、まず結 核、真菌症を考える。そのほかに、頻度剛こは低いものの種々の疾患が含まれる。転移性腫瘍もその1つで、石灰化(あるいは骨化)をきたしやすい腫瘍は知っ ておかなければならない。骨肉腫・軟骨肉腫(原発性も含む)、甲状腺・卵巣・乳房・消化管などの癌転移である。時に僧帽弁狭窄症で肺内に骨性結節を認め る。稀な疾患として、アミロイドーシスがあり、結節は孤立性のこともある。

 

3。散在性石灰化

 

散 在性に肺実質に石灰化を認める場合には、病歴・家族歴・職歴といった臨床情報が重要となってくる。塵肺症の可能性があれば、珪肺を疑う。この際、リンパ節 の卵殻様石灰化を常に伴うわけではない。結核・真菌症の既往があれば、これが原因となって肺内に広範な石灰化が生じることがある。水痘などの一部のウイル ス肺炎後にもこのような石灰化をきたすことが知られている。そのほかは頻度が低いものが多いが、肺胞微石症、特発性肺骨化、副甲状腺機能尤進症(特に透析 患者)などに代表される代謝性石灰化、寄生虫(肺吸虫、住血吸虫など)、さらに石灰化よりやや濃い濃度は示すが、バリウムなどの塵肺症も含まれる。これら も、石灰化の分布や個々の形状からだけでは鑑別は困難であり、そのほかの特徴的な所見(珪肺におけるリンパ節の卵殻様石灰化など)を見つけることも重要と 思われる。

 

■ 結節内に石灰化を認める場合、その位置は重要であり、しばしばこれだけで良・悪性の鑑別が可能となる。鑑別の難しいものの場合には、肺生検(一般的には経 気管支肺生検:TBLB)が必要となる。しかし、(孤立性)結節内に石灰化を認めたとき、このような侵襲的検査の前に、胸部X線写真で経過を観察するのが よいと思われる。

 

鐙別診断

確定診断に必要な検査

確定診断のポイント

血管性

 

CT

胸部X線写真のみでほとんど診断がつくが、肺門側の石灰化はリンパ節の石灰化に似ることがあり、この場合にはCTが有効

孤立結節内

(結核性)肉芽腫

過誤腫、肺癌

CT

結節内における石灰化の位置を見る。

多発結節内

結核

真菌

転移陸肺癌

 

 

CT

両者は画像所見が似ることがあるが、結核では気管支病変、経気管支散布病変などを随伴している場合が多い。

CTを必要とするのは単純X線写真で転移の有無や程度が不明瞭なときで、必ずしも確定診断にはつながるわけではない。

散在性

結核

真菌

ウイルス肺炎、(水痘など)

珪肺

肺胞微石症

代謝性石灰化

特発性肺骨化

寄生虫

 

 

単純X線写真、場合によってCT

単純X線写真

 

 

痰または糞便中に虫卵を証明

 

いずれも病歴が重要

 

 

 

典型的所見が見られれば、職歴を参考にして単純X線写真のみで診断はつく。

血液透析の有無、僧帽弁狭窄症の病歴など臨床情報も重要

皮内反応や補体結合反応も有効

 

 

 

 

 

 

 

リンパ節の卵殻状石灰化

 

珪 肺では肺野に粒状影が見られず、肺門部に卵殻状石灰化影が存在するもの、また粒状影は見られるが、肺門部に変化を認めないか、単に肺門リンパ節腫大が存在 するものと、その所見はさまざまである。一般に珪肺症といえども卵殻状石灰化の頻度は高くない。珪肺症のリンパ節の石灰化は肺門部および縦隔部に存在する と考えられているが、大動脈周囲および腹膜リンパ節にも見られることが、comput-edradiography(CR)systemのダイナミックレンジが広いことから、これらの存在が容易に表現されるようになった。この粒状影には石灰沈着を伴っているため鮮明に表現されている。両側肺門部リンパ節に卵殻状石灰化および上縦隔部のリンパ節にも石灰沈着が見られ、珪肺症としては典型的な所見である。

 

珪肺は粉塵作業歴、ヒストプラスモーシスは鳥類飼育の有無と免疫学的検査、検疾による虫卵の発見および肺生検、サルコイドーシスは頸部リンパ節または経気管支肺生検による。肺結核においては、通常このような卵殻状石灰化を見ることは稀である。

 

胸膜腫瘤像

 

 

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胸 膜腫瘤陰影とは、肺の外縁部の胸膜面に沿った腫瘤性病変である。辺縁は平滑、不整、半球状、円形、楕円形などさまざまな形態を呈することがある。胸郭に接 する部位のほかに、縦隔、横隔膜に接する面、さらに葉間胸膜面にも腫瘤陰影を呈するものがこの範醇に入ってくる。胸部単純X線では肺内の円形像を呈するこ とや、縦隔腫瘤陰影と鑑別が困難な例もある。

 

■正面像と側面像での腫瘤の位置が重要である。つまり、胸膜面に沿ってあることが確認できるかどうかを検討する。葉間胸膜に病変がある場合には、majorもしくはminor fissure(毛 髪線)に沿った位置にあるかを見る。縦隔面の病変は単純X線では縦隔由来の腫瘤性病変との鑑別は困難であるが、胸膜腫瘤は他の胸膜面にも病変があることが 多い。次に、既存の肺や胸壁の構造との関係を見る。肺内病変なら肺血管の収束像や胸膜陥凹所見のあることがある。肋骨由来のものなら肋骨の破壊像や軟部組 織の変化が強く認められる。

さ らに、腫瘤陰影の形態を検討する。胸膜外病変や嚢腫、限局性胸水ではたいてい辺縁は平滑である。胸膜面に接する面積が少ない腫瘤陰影は肺内病変のことが多 い。胸膜腫瘤と胸水貯留や嚢胞性病変との違いは、側臥位のX線写真との比較で液体成分があるならば腫瘤陰影の変化が見られることで推測することが可能であ る。

鍵灘胸水ならふつう辺縁は滑らかな曲線状になる(meniscussign)。 側臥位の胸部X線写真での胸水の移動をみる。超音波エコー検査なら、被包化された限局性胸水や嚢腫でも内部がエコーフリーになることで、簡単に確実に腫瘤 と鑑別できる。CTスキャンでのCTナンバーから内容物が液体であることが鑑別できる場合も多い。肺内病変や胸膜腫瘤と胸膜外病変の違いは、壁側胸膜より 病変が外側にある、つまり肋骨や肋間筋などの胸壁由来の病変では、壁側胸膜のために病変が肺内に浸潤しにくいために、肺内に向かって上に凸の、底面が広 く、高さが底辺より小さい広基性陰影を呈する傾向がある。このような特徴を示す病変をextrapleura1signが陽性と呼んでいる。

 

鑑別にあがる疾患

確定診断に必要な検査

確定診断のボイント

 

1。胸膜、胸腔病変

1)             限局性胸水貯留

(被包化)

2)葉間胸水の貯留(vanishingtumor

3)胸膜プラーク

 

4)びまん性の胸膜

肥厚(胸膜腓腫)

5)悪性胸膜中皮腫

 

6)良性腫瘍

良性限局性中皮腫

 

@超音波エコー、胸部CT

A胸水穿刺

@間診、理学所見

A単純X線

@問診

A単純X線

@問診

A胸部CT

@問診

A胸部CT

 

@問診

A胸部CT

液体成分の証明

 

細菌、結核菌の証明

心不全の治療で消失

 

アスベスト被曝歴

両側性、石灰化を伴う

結核の既往歴

 

アスベスト被曝歴

肺辺縁部の不規則な

結節性陰影。胸水

アスベスト被曝歴が

単発性。辺縁明瞭

2。胸膜外疾患(Extrapleuralsign陽性)1)腫瘍、転移性肋骨腫瘍、軟部組織腫瘍、骨髄腫

2)胸壁感染症

 

 

@    胸部CT

A    経皮生検

 

 

@    胸部CT

A細菌検査

 

骨破壊像

肺癌、乳癌

 

 

放線菌症

3。縦隔疾患

1)縦隔腫瘍、

胸腺腫、リンパ腫

2)嚢腫、心膜、気管支原性

 

 

@胸部CT

A    経皮生検

@    単純X線

A胸部CT

 

病理組織診

 

辺縁が明瞭

内部が液体

4。横隔膜疾患

1)横隔膜ヘルニア

2)横隔膜下膿瘍

@    胸部CT

A    消化管造影

@    胸部CT

A腹部超音波

ヘルニア内容物が消化管

 

膿瘍の証明

5。肺内病変

肺癌

@    胸部CT

A気管支ファイバ−

気管支や血管収刺象

擦過細胞診

 

胸膜石灰化像

 

胸 膜の肥厚には2種類がある。限局性(プラ−グ)とびまん性である。胸膜の石灰化は胸膜の肥厚区伴って生じる。石灰化像は胸膜のどこにでもできる可能性があ るが、石綿肺の場合、横隔膜の下に認められることが多く、プラーグは胸膜跣砥や葦日腔内へ涜状の突出像と見られ、特徴的な所見で土ある。胸部単純X線写真 で肺辺縁部の高度な線維、性変化、無気肺、肥満のある場合に胸膜に肥厚が’あるように見える。また、Serratus anterior muscleとの鑑別にも注意する必要がある。

       1)石綿肺

       2)結核性胸膜炎

       3)結核以外の原因による膿胸

       4)石綿肺以外の塵肺

鑑 別診断に際しては次の点に注意する必要がある、胸膜の肥厚は胸水があるために胸部X線写真でわからないことが多い。石綿肺の胸膜変化は壁1側胸膜に起きる ことが多い。臨床の場では結枚性胸膜炎によるものが多く認められる。また、胸膜1石灰化は胸壁内面に曲線状の石灰化が見られ、石世灰化した胸膜と肋骨の間 に胸膜下脂肪層が認められる。胸部X線写真は必ず正面だけでなく斜位の写真が必要である。X線CTは胸膜プラーグ、胸水、胸膜肥厚石灰化を見つけるうえで 最も良い方法である。

 

 

肋骨切痕(ribnotching

 

肋骨切痕(ribnotching) は、かつては大動脈縮窄症に特徴的とされ、大動脈狭窄部の側副血行路として、鎖骨下動脈から内胸動脈・甲状頸動脈・肋頸動脈などを経て、肋間動脈から下行 大動脈へ流机る際、肋間動脈の拡張、蛇行、拍動増強をきたし、隣接する肋骨下縁が次第に侵食を受けて生ずるものとされた。今や肋問動脈以外にも、肋間静 脈、神経など肋間の構成物の拡大に起因するもののほか、肋骨自体や胸壁の異常などにも見られることが知られている。

 

       若 年女子で肋骨下面に切痕が見られたなら、まずその分布を確認する。病的意義のある肋骨侵食は傍脊椎部に限局することはほとんどなく、しばしば後部肋骨の中 央1/3の部分に限られる1)。大動脈縮窄や大動脈炎症候群に見られる異型大動脈縮窄の場合、通常4〜5歳以上で両側の第4〜8肋骨下縁に多数の圧痕が見 られることが多く、通常第1,2肋骨には見られない。また狭窄が左鎖骨下動脈より近位部の場合には右側のみに見られ、右鎖骨下動脈分岐異常があり、狭窄部 より末梢部で分岐している場合には、左側のみに見られるユ〕。大動脈血栓症では、通常下部肋骨に両側性に、Blabck手術後や大動脈炎症候群に伴う鎖骨 下動脈閉塞では手術側あるいは患側の上部第3〜4肋骨に見られることが多い。神経線維腫に見られる肋骨切痕は、いわゆるリボン状肋骨を呈する2)。慢性関 節リウマチ(RA)、全身性エリテマトーデス(SLE)、進行性全身性硬化症(PSS)、Sjむgren症候群などの膠原病や、副甲状腺機能尤進症などの 代謝性疾患、神経線維腫、拘束性肺疾患、多発性筋炎、Marfan症候群、骨形成不全症、早発老化症などでは、肋骨上面に切痕を認めることが多い2)。次 に大動脈を注意深く観察する。年齢のわりには、大動脈弓部の拡大や石灰化と、下行大動脈の蛇行・外縁の波状不整像(sca11oping) が見られることが多い。大動脈の石灰化は大動脈炎症候群の20.6%に見られるが、特に若い女性で大動脈の石灰化が認められれば、ほぽ大動脈炎症候群と診 断してよい。また、動脈硬化による石灰化像は半月状のものが多いが、大動脈炎症候群では線状に走っており、その外側に厚さに不整のある大動脈像が認められ る点も鑑別のポイントとなる3)。合併所見としては、まず大動脈炎症候群の50〜75%に見られる肺動脈病変にも注意する。すなわち、肺区域動脈、時に肺 葉動脈に狭窄や閉塞が見られ、肺野は明るく、肺血管陰影が不整・狭小化する。肺動脈主幹も拡大することがある。肺動脈閉塞が長く続いた例では、肺に線状・ 索状陰影が増強して認められることがある4)。また腎血管性高血圧や上行大動脈拡大に続発する大動脈弁閉鎖不全などによる心拡大(40.2%)にも注意す る。

 

 

表1に肋骨切痕をきたす疾患を原因別に掲げた。表1の疾患のうち、大部分を占める血管性の疾患についての確定診断は、その性格上、原則として血管造影によるが、後述のようにUS,CT、

MRI,DSAなど侵襲の少ない検査から施行するとよい。その他の疾患では、副甲状腺機能尤進症は内分泌学的検索が、また腫瘍性病変についてはCT,MRIなどの画像診断に続く生検・手術が、またB1alock-Taussing手術などは間診がそのポイントとなる。

 

Fib notchをきたす疾患

T動脈性

A大動脈狭窄または閉塞

1、大動脈縮窄

2、腹部大動脈血栓症

B鎖骨下動脈閉塞

1,B1alock-Taussig手術

2。“脈なし病”

C,widened arterial pulse pressure(PD、肺面流減少をきたす疾患

1、Fallot四徴

2、肺動脈閉鎖(pseudotruncus

3、Ebstein奇形

4、肺動脈弁狭窄

5、一側肺動脈欠損

6、肺気腫

U。静脈性

A。上大静脈閉塞皿。

V、動静脈性

A。肺動静脈痩

B、肋間動静脈慶

V、骨性

A、副甲状腺機能亢進症

 

Y特発性

Z正常

(BooneML,SwensonBE,FelsonB:AmerJRoentgeno191:075.1964より)

 

 

 

大動脈炎症候群診断の手引き

 

1。症状

1)頭部乏血症状:めまい(特に上を向くとき)、失神発作、視力障害(特に直射日光下)

2)上肢乏血症状:指の冷感、上肢易疲労感

3)大動脈あるいは腎動脈狭窄症状1頭痛、めまい、息切れなどの高血圧症状

4)全身症状1初期に微熱の出ることがある。

 

2、診断上重要な所見

1)上肢の脈拍異常(榛骨動脈の拍動減弱、消失なし)し著明な左右差)

2)下肢脈拍異常(大腿動脈の拍動尤進あるいは減弱)

3)頸部、背部、腹部などの血管雑音

4)眼科的変化。

 

3,診断上参考になる検査所見

1)血沈促進

2)CRP反応陽性

3)血清グロブリン(γ一グロブリン)の増加

 

4。診断上のポイント

1)若年女性に好発する。

2)確定診断は大動脈造影による。

5。鑑別診断上注意を要する疾患

Buerger病、動脈硬化、膠原病、先天性血管異常

(厚生省大動脈炎症候群調査研究班による)

 

 

前縦隔腫瘤像

 

■X線所見とnormal variation

縦隔は解剖学的には上、前、中、後の4区分に分割される。胸骨柄と第4胸椎椎体下縁を結んだ線より上方を上縦隔とし、その下部で心嚢前縁と胸骨の間を前縦隔とする。

一方、X線学的には胸部単純写真側面像において決められ、気管前面から心臓の後縁を通り、横隔膜に接する線の前方を前縦隔と呼ぶ。この場合の前縦隔には解剖学的な上縦隔の前部も含まれる。

 

前 縦隔腫瘤像を疑うには、胸部単純写真正面像で、縦隔の拡大もしくは縦隔に腫瘤影を認めることが必要である。しかし、前縦隔正中部の小さな腫瘍では拡大が見 られない。条件の良い正常正面像では、左右の肺が正中で接する線、前接合線が認められる。前縦隔腫瘤ではこの線が消失するので注意する必要がある。ただ し、この線は常に見えるものではなく、側面像で後胸骨腔の濃度上昇が唯一の所見のことがある。したがって、胸部単純写真は正側2方向の撮影が不可欠であ る。前縦隔のうち中部では縦隔の拡大と心陰影との鑑別が難しいことがあるが、前縦隔腫瘤では陰影に重なって肺門血管影が透視されるので鑑別ができることが 多い。下部でも心陰影拡大との鑑別が困難なことがあるが、通常の心拡大とは辺縁の形態で鑑別する。縦隔の拡大や腫瘤影は正常でも認識されることがある。上 部では無名動脈の拡張、蛇行によって縦隔の拡大が生じるが、側面像では無名動脈後縁の蛇行が見えるので腫瘤との鑑別が容易である。胸骨柄も側轡がある場 合、縦隔の腫瘤影の原因となり得る。肥満者では、上部から下部にかけて縦隔の脂肪沈着によって拡大が生じる。また、仰臥位呼気の撮影では縦隔影全体の拡大 が生じる。中部では小児を含め若年者で正常胸腺が腫瘤影を呈し、特に乳幼児では胸腺は大きい。この大きな正常胸腺が船の帆のように見える場合、sai1signと呼ばれる。また、胸腺の辺縁が波打って見えることをthymicwavesignというが、これは胸腺が肋骨によって圧迫されることで生じる陰影である。これらの所見は正常胸腺の腫大を意味する。下部では正常心外膜の脂肪が腫瘤影を呈する。

 

読影のすすめ方

1。 腫瘤影の部位縦隔の拡大や腫瘤影が認められたとき、多くの場合その部位によって鑑別診断を絞ることができるので、まずその陰影が縦隔のどの区分にあるかを 決めることが肝要である。正面像で上部縦隔に拡大が認められたときには、次のサインが重要である。前縦隔の腫瘤影は、正面像で腫瘤の上縁が不鮮明となる。 これをCervicothoracic signと呼ぶ。肺尖では肺が高い位置まで存在するため、 後縦隔に腫瘤があれば腫瘤の上縁は鮮明になるが、前縦隔にあれば頸部軟部組織と連続するため、上縁が不鮮明になることを意味する。中部縦隔の拡大が認めら れたときには、心陰影との鑑別が必要になる。このときにも正面像が有用である。前縦隔の腫瘤であれば、その陰影内部に正常に走行する肺門血管影が認められ る。これをhi1umover1aysignと呼ぶ。下部縦隔の拡大では、正面像で明らかに辺縁を突出する腫瘤影が存在すれば心陰影との鑑別は容易であるが、滑らかな陰影のときは心拡大との鑑別は困難なことが多い。

2。腫瘤影の濃度

腫瘤影の鑑別には腫瘤影の濃度も重要である。

1)脂肪を含む場合はやや明るい陰影を呈するが、断層やCTでないとその確定は容易ではない一・・例:奇形腫、心外膜脂肪、胸腺

2)脂肪腫。

空気を含む場合は消化管が考えられる…・・例:モルガニー裂孔ヘルニア。

3)石灰化の有無点状の石灰化……例:奇形腫、胸腺腫、膵腔内甲状腺腫、甲状腺癌。リング状の石灰化……{列:胸腺嚢胞。線弧状の石灰化一・例:動脈瘤。

3。腫瘤影の形状

辺縁の形が平滑か不整か、また形状が特徴的ヵも鑑別に重要である。

 

鑑別診断と確定診断のポイント

 

1腫瘤の鑑別に最も有用な検査はCTである。童た、腫瘤が小さい場合にはCTでなければ腫瘤C存在を指摘できないことが多く、ほかの疾患の杉索のために行われた胸部CTで偶然縦隔腫瘤が勇見されることも少なくない。前述のnorma1Variationと腫瘤との鑑別もCTでは容易である。そのほか、腫瘤によっては消化管造影やMRIが有片なことがある。臨床症状や臨床検査が鑑別のポイントとなることも多い。主要な点を表1に示した、胸腔内甲状腺腫とリンパ管腫(cystichygroma)は、上部前縦隔に多く認められる腫瘍でまる。胸腔内甲状腺腫は上部前縦隔で最も頻度が干く、縦隔腫瘍の10%を占める。甲状腺峡部は着右に広く、胸腔内甲状腺腫と連続している。胸音単純正面写真では頸部との連続性があるため、cervicothoracicsignが 陽性となり、腫瘤の上彩は不鮮明となる。胸部単純側面写真では胸腔内て気管の後方への圧排、偏位が認められる。胸部1面像でも気管の側方への偏位が認めら れる。た六し、胸腔内甲状腺腫の25%は後縦隔に認めらホることがある点に注意が必要である。CTでは弓状腺との連続性の確認が容易である。腫瘤の吸叩値 は甲状腺に含まれるヨードのためやや高吸収老呈し、造影CTでは造影効果が強く認められる。また、嚢胞成分や点状の石灰化が認められることがある。甲状腺 シンチも有効であるが、胸腔内弓状腺腫のなかには集積のないものも認められる。

 

 

リ ンパ管腫は小児に多く認められる腫瘍である。胸部単純写真上で頸部への連続性、気管の偏位が認められる。CTでは低吸収値を示す。MRIでは、T2強調画 像で高信号の壁の薄い多房性の嚢胞として認められる。異所性副甲状腺腫は上部前縦隔に多いが、その腫瘤は小さく、胸部単純写真では描出されないことが多 い。CTでは3cm以下の円形の腫瘤が前縦隔内に認められる。ほかの前縦隔腫瘤との鑑別は困難であるが、その臨床症状である高カノレシウム血症は特徴的で ある。また、血中ホノレモン値の上昇も重要である。前縦隔中部の胸脚こは様女な腫瘍が発生する。そのうち胸腺腫は代表的な腫瘍であり、全縦隔腫瘍で最もよ く見られる腫瘍である。胸腺腫は、線維性被膜をもつ胸腺腫と、細胞学的には良性であるが浸潤性に増殖し胸腺や肺に播種し得る悪性胸腺腫に分けられる。その ほか、細胞学上に悪性所見をもつ胸腺癌ある。臨床剛こは胸腺腫の50%は臨床症状を呈さないが、25〜30%では周囲臓器への圧迫や浸潤のため咳、胸痛、 嚥下困難、呼吸困難が認められる。25〜50%では重症筋無力症の症状を呈する。ほかに赤芽球虜、低ガンマグロブリン血症が認められることがある。一方、 重症筋無力症の10〜15%には胸腺腫が認められる。また、重症筋無力症のうち、胸腺腫のないものの60〜80%に過形成が認められる。胸部単純写真では 前縦隔の中部に腫瘤が認められることが多い。胸部単純写真上では胸腺腫は境界明瞭な腫瘤を呈することが多い。しかし、小さな胸腺腫瘍は胸部単純写真では検 出できないことが多く、CTやMRIのほうがその描出にすぐれる。CTでは正常胸腺は矢頭状を呈するが、腫瘍では前縦隔に円形ないし楕円形の軟部組織陰影 として認められる。しかし、40歳以下では、正常でも比較的大きな胸腺が認められることがあり、過形成や腫瘍との鑑別が困難である。局所的に周囲組織に対 レて凸状を示す形態や、多数の分葉状の形態は腫瘍と考えられる。過形成では通常左右対称でびまん性の胸腺腫大のことが多い。悪性胸腺腫は胸腺腫のうち 30%程度

に 認められる。腫瘍と周囲組織との間に全く脂織が認められないときは浸潤と考えられ、悪腺腫が考えられる。また、部分的に脂肪織がな’場合でも約半数は悪性 と考えられる。胸膜や心への播種は悪性胸腺腫の確定的所見である。造影CTでは良性胸腺腫は均一に造影される1とが多いが、悪性胸腺腫は不均一に造影さ れ、部に低吸収域が認められる。石灰化は悪性胸腺’のほうに多い。胸蜘こはほかに、頻度は少ないが胸腺脂肪腫、コ胸腺嚢胞、カルチノイドが発生する。胸腺 脂肪腫は胸部単純写真でやや明るい陰影の…腫瘤像を呈するが、CTで容易にその脂肪成分が1描出される。MRIのT1強調画像にても脂肪成分三の描出は容 易である。胸腺嚢胞は円形から楕円形の壁の薄い嚢胞で、内部は低吸収である。リング状の石灰化が認められることがある。カルチノイドは小さな腫瘤のことが 多く、胸部単純写真では検出されにくい。CTでは胸腺腫と鑑別できないが、臨床症状から診断可能である。胚細胞腫は中部前縦隔に発生し、縦隔腫瘍の20% を占める。そのうち75%は成熟奇形腫である。胸部単純写真では胸腺腫と鑑別できない。CTでは嚢胞部分が多く認められ、脂肪成分や低吸収域の混在が認め られる。石灰化は認められるが、骨盤内の奇形腫と異なり、骨成分や歯牙は認められにくい。MRIではその脂肪成分や嚢胞成分の描出にすぐれる。悪性胚細胞 腫は若い男性に多く見られる。このうち約半数がセミノーマであり、辺縁平滑で石灰化は見られず、内部は均一に造影され、嚢胞成分はほとんどない。セミノー マ以外の悪性胚細胞腫は予後不良である。胎児性癌、卵黄嚢腫瘍、絨毛癌などがあげられる。画像上ではそれぞれの特徴的所見はなく、CTでは辺縁不整、境界 不明瞭で、内部に嚢胞、壊死、隔壁形成が認められる。しかし、胎児性癌、卵黄嚢腫瘍では腫瘍マーカーのうちAFPが上昇し、絨毛癌ではHCGの上昇するこ とが鑑別診断上重要である。悪性リンパ腫も中部前縦隔に発生する腫瘍である。

発部位

腫瘍

頻度

 

単純X線所見

CT所見

形状 濃度 石灰化 内部構造

MR所見

上部

 

 

 

 

 

 

 

 

胸腔内甲状腺腫

 

リンパ管腫

異所性

 

副甲状腺腫

多い

 

 

 

多い

 

 

 

cervicothoracic.sign

cervicothoracic.sign

描出されない

頸部甲状腺との高吸収ある均一。強く造影連続、平滑明瞭     造影効果が続く

 

 

円形、多房性液体     均一

嚢胞状 

 

 

 

3cm以下の腫瘤軟部濃度稀不均一

T2高信号

壁の薄い多房性嚢胞T2高信号

T1筋と同程度

 

中部

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

胸腺腫

良性

悪性

胸腺過形成

胸腺癌

胸腺嚢胞

胸腺脂肪腫

中部胸腺カルチノイド

胚細胞腫群奇形腫

良性

悪性胚細胞腫セミノーマ

胎児性癌卵黄嚢腫瘍稀絨毛癌

リンバ腫

最多

多い

多い

 

少ない

 

 

 

 

 

多い

 

少ない

 

 

 

多い

中部前縦隔腫瘤

同上

正常のことが多い

 

 

低吸収

 

大きな腫瘤正常のことが多い

 

 

中部前縦隔腫瘤

同上

 

同上

同上

円形一楕円、平滑軟部濃度ありうる 均一

 

不整形、境界不明瞭同上ある   不均一

胸膜播種、周囲へ浸潤

正常の形状、胸 同上       均一

腺腫との鑑別困難

不整形、境界不 同上ありうる  不均一明瞭、胸膜播種、

周囲へ浸潤、転移

円形一楕円、平滑液体 リング状 均一

大きな分葉の腫瘤 脂肪濃度   均一

小さな腫瘤が多く  軟部濃度

胸腺腫と鑑別つかない、

 

良性では辺縁平滑、脂肪濃度ありうる不均嚢胞性                       or均一                                             悪性では辺縁 脂肪濃度ありうる不均一o                            不整、浸潤性   低吸収          r均一                         

辺縁平滑、大き 軟部濃度 なし    均一

い嚢胞成分は少ない

 

壊死、嚢胞    同上    ありうる 不均一

隔壁構造が腫瘍の半分以上をしめる

辺縁不整    同上    なし       比較的縦隔リンパ節                     均一腫大

 

T1低信号T2高信号

T1高信号

 

 

 

脂肪や嚢胞成分の検出に優れる

 

 

 

下部

心外膜嚢胞

下部心外膜脂肪

モルガニー裂孔

ヘルニア

 

少ない

 

 

多い

 

 

 

卵状の形態葉間では滴状心横隔膜角に三角形の陰影内部に空気

辺縁平滑、明瞭  液体  なし  均一嚢胞

辺縁平滑、明瞭  脂肪濃度なし  均一

辺縁平滑、明瞭  脂肪濃度なし 不均一

空気濃度

T1:T1強調画像、T2:T2強調画像

 

 

 

 

脂肪の検出に優れる

 

胸 部単純写真では、ほかの前縦隔腫瘤との鑑別は困難である。CTでは辺縁不整な腫瘤像を呈葦し、石灰化は認められず、造影後は比較的均一に一一造影される。 悪性胸腺腫との鑑別が問題となるが、鑑別点としては悪性リンパ腫では石灰化が認めら犯ず、ほかの縦隔リンパ節の腫大の合併が認めら札ることが多いことがあ げられる。しかし、その鑑別は困難なことが多く、細胞診によって初めて鑑別がつくことがある。ただし、悪性リンパ腫でも治療後には石灰化が認められること がある。心外膜脂肪と心外膜嚢胞は下部前縦隔に好発する。心外膜脂肪は腫瘍ではなくnormalvariationにも含まれるが、右心横隔膜角に好発し腫瘤影を呈することが多い。肥満やステロイドの内服で生じることがある。CTで脂肪の吸収値を呈するので鑑別は容易である。心外膜嚢胞は心膜に接する

腫瘤で、卵状の形を呈し、側面像では葉間に滴状影を呈する。CTではその内部は低吸収を呈する。ほかに、モノレガニー裂孔ヘルニアが下部前縦隔で腫瘤様の陰影を示す。単純写真上でairfluid1evel

を 示し、また消化管造影で胸腔内に消化管が認められることでその鑑別は容易である。CTでは、消化管がヘルニア内容であれば空気が、大網であれば脂肪が認め られる。大動脈瘤も上行大動脈に生じれば前縦隔の腫瘤影となる。胸部単純写真では上部前縦隔の拡大を呈するが、壁の石灰化が認められれば鑑別は容易であ る。CTでは大動脈との連続性と造影で他の血管と同程度に強く造影される。また、縦隔の炎症や血腫や膿瘍も同様に縦隔の拡大を呈するが、臨床的に鑑別可能 である。縦隔の炎症、膿瘍、血腫は稀であり、食道穿孔、気管支痩、外傷などが原因となる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

発部位

 

腫瘍

 

頻度

 

 

単純X線所見

 

CT所見

形状 濃度 石灰化 内部構造

 

MR所見

上部

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

胸腔内甲状腺腫

 

リンパ管腫

異所性

 

副甲状腺腫

多い

 

 

 

多い

 

 

 

cervicothoracic.sign

cervicothoracic.sign

描出されない

頸部甲状腺との高吸収ある均一。強く造影連続、平滑明瞭     造影効果が続く

 

 

円形、多房性液体     均一

嚢胞状 

 

 

 

3cm以下の腫瘤軟部濃度稀不均一

T2高信号

壁の薄い多房性嚢胞T2高信号

T1筋と同程度

 

 

 

中部

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

胸腺腫

良性

悪性

胸腺過形成

胸腺癌

胸腺嚢胞

胸腺脂肪腫

中部胸腺カルチノイド

胚細胞腫群奇形腫

良性

悪性胚細胞腫セミノーマ

胎児性癌卵黄嚢腫瘍稀絨毛癌

リンバ腫

最多

多い

多い

 

少ない

 

 

 

 

 

多い

 

少ない

 

 

 

多い

中部前縦隔腫瘤

同上

正常のことが多い

 

 

低吸収

 

大きな腫瘤正常のことが多い

 

 

中部前縦隔腫瘤

同上

 

同上

同上

円形一楕円、平滑軟部濃度ありうる 均一

 

不整形、境界不明瞭同上ある   不均一

胸膜播種、周囲へ浸潤

正常の形状、胸 同上       均一

腺腫との鑑別困難

不整形、境界不 同上ありうる  不均一明瞭、胸膜播種、

周囲へ浸潤、転移

円形一楕円、平滑液体 リング状 均一

大きな分葉の腫瘤 脂肪濃度   均一

小さな腫瘤が多く  軟部濃度

胸腺腫と鑑別つかない、

 

良性では辺縁平滑、脂肪濃度ありうる不均嚢胞性                       or均一                                             悪性では辺縁 脂肪濃度ありうる不均一o                            不整、浸潤性   低吸収          r均一                         

辺縁平滑、大き 軟部濃度 なし    均一

い嚢胞成分は少ない

 

壊死、嚢胞    同上    ありうる 不均一

隔壁構造が腫瘍の半分以上をしめる

辺縁不整    同上    なし       比較的縦隔リンパ節                     均一腫大

 

T1低信号T2高信号

T1高信号

 

 

 

脂肪や嚢胞成分の検出に優れる

 

 

 

下部

心外膜嚢胞

下部心外膜脂肪

モルガニー裂孔

ヘルニア

 

少ない

 

 

多い

 

 

 

卵状の形態葉間では滴状心横隔膜角に三角形の陰影内部に空気

辺縁平滑、明瞭  液体  なし  均一嚢胞

辺縁平滑、明瞭  脂肪濃度なし  均一

辺縁平滑、明瞭  脂肪濃度なし 不均一

空気濃度

T1:T1強調画像、T2:T2強調画像

 

 

 

 

脂肪の検出に優れる

 

 

 

 

 

前縦隔腫瘤像

 

 

前・中・後縦隔という分類は簡単で、便利な区分法であり広く使われているが、区分法には幾つかの種類がありまちまちである。解剖学的には、次のように分類されている。上縦隔と下縦隔が胸骨柄下端と第4胸椎を結ぶ線で分けられ、下縦隔はさらに3部分に分けられる。

前縦隔;胸骨の後面から、心膜、大動脈、腕頭動脈の前縁まで。

中縦隔;心膜、上行大動脈、大動脈弓を含み、後面は心膜後壁、気管後面まで。

後縦隔;心膜後壁から椎体まで。今回は、この分類に従って中縦隔を定義する。

中 縦隔の主な構造は、リンパ節、気管一気管支、肺動静脈、上行大動脈一大動脈弓、上下大静脈、心臓、’腕頭動静脈、横隔膜下神経一迷走神経の上部からなって いる。この部位から発生する腫瘤を中縦隔腫瘤といい、縦隔から肺野に突出する陰影、または縦隔の拡張として認められる。

 

■読影のすすめ方

一般的に胸部X線写真を読むように、腫瘤陰影に対してsi1houettesignextrap1eural signを縦隔構造および各種縦隔線に応用し、その部位を判定する。また、石灰化、三脂肪などの濃度にも注目し診断の一助とする。中。准隔腫瘤では、中央陰影に対しては原則的にsilhouettesiが陽性になり、傍気管線、傍静脈線などでsilhouettesign陽性またはextrap1euralSi即陽性となる。中縦隔では主な構造は気管一気管支、心血管、リンパ節、その他に分かれ、それによって検査をすすめるべきである。また単純写真では、側面像が重要な役割を果たすことも多い。

鐡 鑑別診断と確定診断のボイント(表1)聰螂気管一気管支およびリンパ節に関しては、CTが有効である。CTによって表現されるcysticな腫瘤と solidな腫瘤の画像は、鑑別の重要な要素になる。リンパ節は、十分な造影剤を使用した造影CTを行うことにより、血管系の疾患とは明らかに鑑別するこ とができるが、最終的にバイオプシーが必要となるものが多い。心・血管系の疾患の診断に関しては、血管造影が最終診断になる。MRI検査は、撮像時間が長 いためにこれまでなかなか良い画像が得られなかったが、最近の機器の性能改善により画像の改善が著しく、血管造影と十分に対等な画像が得られるようになっ てきている。鑑別診断をすすめるには、まずリンパ節腫大、心血管系の腫瘤性変化、その他、に分けるべきである。間違っても血管系の疾患にバイオプシーなど 試みてはならないからである。リンパ節腫大をきたす疾患はまず最初に結核、および癌のリンパ節転移が考えられなければならない。癌のリンパ節転移は臨床の 場では日常的に見られる疾患であるが、明らかな原発巣を示した状態で検査していることが多く、診断に迷うことは少ない。しかし、原発巣が不明でリンパ節腫 大のみが所見である場合には診断が困難である。結核性のリンパ節腫大は石灰化を伴うことが多く、そのため、CTではCT値が高いことや、肺内に結核の病巣 があることが診断の大きな助けになる。同様に、肺に所見があるリンパ節腫大としては真菌症や塵肺が考えられる。また、non-specificな炎症性のリンパ節腫大も考慮に入れられるべきである。

稀な疾患としては、伝染性単核症やWegener肉 芽腫症も考えに入れるべきである。リンパ節腫大のみで肺野病変が認められないリンパ節腫瘤としては悪性リンパ腫、白血病、サルコイドーシスが挙げられる。 今回のテーマである中縦隔腫瘤とレては、肺野病変より縦隔病変が中心の疾患群を対象にすべきであり、鑑別診断の表1には結核ならびにリンパ節転移は省いて ある。悪性リンパ腫は確定診断をするうえにも、ステージを決定するという治療上の理由からも、積極的にバイオプシーが試みられるべきである。白血病はbonemarrowaspirationが 最終診断になるが、肺野に浸潤影を合併することも橋ではない。サルコイドーシスは多彩な症状で知られているが、肺門リンパ節腫大のみが所見である場合があ る。通常、肺癌のリンパ節転移などが片側肺門に所見として現れることが多いのに対し、サルコイドーシスでは両側肺門にリンパ節腫大が見られることが多い。 この場合にもリンパ節のバイオプシーが確定診断になる。心・血管系の腫瘤性病変としては大動脈瘤、腕頭動脈瘤、右側大動脈弓、血管輪などが一般的である。 血管造影が確定診断には大きな役割を果たすが、右側大動脈弓、血管輸では補助診断として食道造影も忘れられないものである。心膜の疾患もここに入れられる べきであろう。心膜嚢胞は右の心横隔膜角が好発部位であり、CTで嚢胞性を示すことが診断根拠になる。また、腫瘤ではないが、心陰影下部をぽかすように存 在する腫瘤様陰影があり、pericardia1fatpadとして知られている正常所見である。これは見慣れることにより問違うことはない。また、CTによってその部位が脂肪であることが証明できる。縦脚こは迷走神経、横隔神経が走行しており、稀な腫瘍として、これらの神経を発生母地とするneurinoma,chemodectomaが知られている。Chemodectomahypervascu1arな腫瘍として知られており、造影CTや血管造影のよい適応と考えられる。bronchus起源の腫瘤としてはbronchogeniccystが有名である。CT上cysticなパターンを示す。通常、bronchusと交通がないが、感染を合併した場合には気道と交通ができてCyst内に空気が認められる場合がある。右中間気管支幹後面が好発部位である。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

分類

診断名

確定診断に必要な検査

確定診断のポイント

Cbmmon

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

Lymph node en1argement

 

 

Ma1ignantlymphoma

Leukemia

Sarcoidosis

CT,biopsy

 

CT,bon emarrow aspiration

CT,biopsy

リンバ節の腫大

 

 

 

Vascu1ar lesion

 

Aneurysmofaorta Rightaorticarch,

vascularring

Angiography

Angiography

 

病変を描出

 

Heart

 

Pericardia1 fat pad

Pericardial   cyst

CT 

 

 

CT

部位、

fatの検出

部位

Bronchus

Bronchogeniccyst

CT

部位

Uncooon

Bronchus

Trachea1tumor

CT

部位

Neurogenic

Neurinoma,vagusorphrenic

Chemodectoma

 

CT,angiography

Solid,hypovascular

Hypervascular mass

 

 

 

 

 

後縦隔腫瘤像

 

neuro1 jpg

 

X線所見の説明と読影のすすめ方

 

鍵胸部X線写真正面像において、中央陰影に重なる腫瘤陰影を認めた場合、まず第1に肺由来の病変なのか、縦隔由来の病変なのかの鑑別が必要である。縦隔病変を示唆する所見としては、以下のものがあげられる。

1)辺縁平滑

2)上下端の先細り像(extrap1euralsign

3)脊椎、肋骨、胸骨の侵食像

4)Airbronchogramが見られない。

5)縦隔線の偏位、消失これらの所見が見られた場合、縦隔由来の病変を疑うが、

次 に病変が縦隔区分のどこに存在するか、すなわち前・中・後縦隔のいずれに存在するかを判定することは鑑別診断の一助になる。縦隔の区分については種々の区 分が提案されているが、誌面の都合上、ここでは一般的な解剖学的区分についてのみ簡単に述べる。解剖学的には縦隔は4つに区分される。第4胸椎下縁と胸骨 柄下縁を結ぶ線より上方を上縦隔とし、これより下方を前・中・後縦隔の3つに分ける。前縦隔は心外膜より前方、中縦隔は心臓、縦隔大血管、気管下部、主気 管支を含んで気管の後縁まで、後縦隔は気管や心臓より後方で脊椎周辺部を含む範囲としている。それぞれの縦隔区分に好発する病変を表1に示す。胸部CT写 真を見れば、病変がどの縦隔区分に存在するかは一目瞭然であるが、胸部X線写真正面像だけでも病変の局在診断は可能である。後縦隔腫瘤の場合、心陰影と重 なっていてもその辺縁は明瞭である(si1houettesign陰性)が、病変が左側にある場合、大動脈弓や下行大動脈の左側縁は不明瞭化する(si1houettesi陽性)。縦隔線の中で後縦隔病変の診断に役立っのは傍脊柱線の外側偏位である。傍脊柱線とは、椎骨周囲の正常の軟部組織と肺との境界面によって形成される線で、右傍脊柱線(rightparaspina11ine)は、胸郭入口部から横隔膜まで胸椎の右側1〜2mmのところに認められる。左傍脊往線(1eftpar-aspina11ine) は、胸椎の左側1〜2mmのところに見られるが、右側に比べできにくく、大動脈弓より上方ではほとんど見られない。胸部X線写真の撮影条件によっては、傍 脊柱線は描出されないが、傍脊柱線が外側に向かって突出して見える場合、すなわち外側変位が認められる場合は、後縦隔病変の存在を示す有用な所見である。

 

鑑別診断と確定診断のボイント

 

後 縦隔腫瘍が疑われた場合、鑑別にあがる疾患は表2のとおりである。この中では神経原性腫瘍の頻度が高く、神経鞘腫、神経線維腫、神経節細胞腫などが見られ る。交感神経節由来とされる神経節細胞腫は椎体に沿った紡錘形の発育を示すのに対し、末梢神経由来の神経鞘腫は類円形の形体を呈する。このため、腫瘤の立 ち上がりは前者では比較的緩やか(extrap1eura1sign陽性)なのに対して、後者では 比較的急とされ、胸部X線写真でも両者の鑑別は可能であるといわれている。病理組織学的には神経鞘腫は被包化された腫瘍で、内部変性を伴いやすく、出血や 嚢胞形成がしばしば認められる。内部変性像は、CTやMRIでは腫瘤内部不均一像として捉えられることがある。気管支嚢胞は中縦隔病変に分類されるが、し ばしば後縦隔腫瘍の鑑別にあげられる。気管分岐部に好発し、円形あるいは楕円形の形態を呈する。内容物は液体であるが、CTでは水より高いden-Sityを呈することがあり、充実性腫瘍との鑑別に注意を要する。造影CTで内部densityの変化が見られないことが診断に有用である。腸管嚢胞および神経腸管嚢胞も中・後縦隔に見られる嚢胞性病変であるが、気管支嚢胞と異なり、単純CTでhigdensityを呈するものは少ない。縦隔病変ではないが、食道裂孔ヘルニアや横隔摸ヘルニアが後縦隔病変と間違われることがある。腫瘤内の空気像が診断の助けになる。

 

 

■胸部X線写真正面像で、右心影に重なり腫瘤陰影を認める(矢印)。腫瘤陰影の辺縁は平滑、心陰一影右第2弓との境界は明瞭であり、si1houetteSignは陰性。腫瘤の立ち上がりは比較的急であるが、腫瘤陰影の内側に立ち上がりの緩やかな弧状の線状影が認められる(矢頭)。この線状影は右傍脊柱線(rightparaspina11ine) と考えられ、弧状に外側に向かって突出している(外側変位)。以上の所見から後縦隔腫瘤が疑われる。若年で自覚症状なく、職場検診で初めて発見された腫瘤 陰影であることを考え合わせると、神経原性腫瘍がまず第1に考えられる。腫瘤陰影の立ち上がりが急なことは、神経原性腫瘍の中では神経鞘腫を疑わせる所見 である。胸部造影CTでは、腫瘤は椎体右側に類円形の軟部腫瘤として認められ、内部は均一に造影される。腫瘤の背側では周囲の軟部組織が持ち上げられて、 肺との境界面が前後方向に認められる(矢印)。この境界面が、胸部X線写真正面像で腫瘤の内側に見られる弧状の線状影、すなわち右傍脊柱線(rightparaspinal1ine) を形成していると思われる。単純MRIのT1強調像(図3a)では腫瘤は均一な信号強度を呈しているが、T2強調(RARE)像(図3b)では内部に高信 号強度域が混在しており、腫瘤内の一部に変性を伴うものと考えられた。この内部変性像も神経鞘腫を疑わせる所見である。

 

 

前縦隔

Thymoma(胸腺腫)(良性、悪性)

Intrathoracic goiter(胸郭内甲状腺腫)

Teratoma(奇形腫)

Malignant lymphoma(悪性リンバ腫)

Mediastinal germinoma

Thymic cyst(胸腺嚢胞)

Pericardial cyst(心外膜嚢胞)

Pericardial fat pad(心外膜脂肪)

リンパ節腫大

Aortic aneurysm(大動脈瘤)

Hernia(ヘルニア)

 

中縦隔

Bronchogenic cyst(気管支嚢胞)

Enteric cyst(腸管嚢胞)

Esophagea1 tumor(食道腫瘍)

リンパ節腫大(サルコイドーシスほか)

Aorticaneurysm(大動脈瘤)

 

後縦隔

Neurogenic tumor(神経原性腫瘍)

Neuroenteric cyst(神経腸管嚢胞)

Meningoce1e(髄膜瘤)

Esophageal tumor(食道腫瘍)

Aortic aneurysm(大動脈瘤)

Hemia(ヘルニア)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

鑑別診断にあがる疾患

確定診断に必要な検査

確定診断のポイント

神経原性腫瘍

神経鞘腫

神経線維腫

神経節細胞腫

気管支嚢胞

神経腸管嚢胞

大動脈瘤

食道腫瘍

ヘルニア

髄膜瘤

CT,MRI

 

 

 

CT,MRI

CT,MRI

CT,MRI、血管造影

CT、消化管造影

CT、消化管造影

CT,MRI,

Mye1ography

腫瘤内部造影効果あり神経鞘腫では内部不均一なものが多い

 

単純CTでhighdensity腫瘤内部造影効果なレ腫瘤内部造影効果なし

腫瘤内部造影効果なし

 

 

 

腫瘤内部造影効果なし

 

 

 

 

 

 

 

全体的な心拡大

 

 

X線所見の説明

 

全体的な心拡大所見とは、胸部単純X線写真正面像で、中央陰影の上のほうが大血管の陰影で、下のほうが心臓の陰影である。主に、この心臓陰影が拡大した場合に、全体的な心拡大所見としてとらえられる。すなわち、

@左第4弓の突出・延長(左方移動)、

A左第3弓の突出、

B左第2弓の突出、

C右第2弓の突出・延長(右方移動)、の順番で、徐々に心拡大が出現することが多い。

CTRは50%以上となる。

Norma1variationとしては、次の3つが考えられる。

1)乳児:小児ではCTRの拡大が見られ、特に乳児では最大を示す。5歳以上で成人の値に近づく。

2)肥満1心臓の周囲、特に前縦隔の胸骨下に脂肪が沈着し、左第2,3弓が突出して見える。横隔膜の上昇により、第4弓が拡大して見える。

3)ボータブル撮影(前・後方向):患者を動かすことができない場合に、臥位で撮影するが、フィルムは背側となるために、正常撮影(後・前方向〕よりもCTRは大きくなる。

 

読影のすすめ方

 

■■1)X線写真上、

 

胸郭の形を想像する。すなわち、胸部の軟部陰影より、肥満の人であるか、細身の人であるか。あるいは漏斗胸(funne1chest)などの胸郭変形などはないかなど。

 

2)肺野より肺疾患の合併の有無に注意する。

すなわち、肺気腫を合併すると心陰影は小さめとなる。

3)全体的な心拡大が見られる場合、心陰影のどこの部分が拡大しているのかを判別する。

す なわち、前述したように、一般的な心拡大は、@左4弓→A左3弓→B左2弓→C右2弓の順で拡大して見られるようになることが多いため、患者の状態がこの 4段階のどの段階にあるのかを想像する。〔例〕左心不全@左室機能不全により、左室拡大をきたし、左4弓が突出する。A左室圧の上昇は左房圧の上昇をもた らし、左房拡大をきたし、左3弓が突出する。左房圧の上昇は、肺静脈圧の上昇をもたらし、肺野にうっ血の所見が出現する(肺血流の再分布が見られる)。B 肺静脈圧の上昇が、肺動脈圧の上昇をもたらし、左2弓が突出する。〔例〕右心不全C肺動脈圧の上昇は、右室負荷となり、右房拡大をもたらし、右2弓が突出 する。

【注意】a)左室拡大を伴わない右室拡大は、左4弓の凸の突出として認められるが(心尖部がもち上がる所見)日常多く認められるものは・左心不全に右心不全を合併したものであり、左室拡大が、X線写真上、前面に出る。

b)左室肥大は求心性肥大のため、左4弓の軽度突出のみを示す。X線上、左室拡大ほど著明な変化は示さない。左室肥大では後方に突出するので側面写真が参考になる。

C)左房拡大は、左室拡大が存在する場合には、目立たない。著明な左房拡大では、左3弓の突出ばかりでなく、右2弓にdoublecontrastが見られる。左右主気管支角は開大する。d)左心不全に右心不全を合併すると、右心拍出量低下のために、肺野のうっ血が減少し、肺野が明るくなる。

e)右1弓の突出は、上行大動脈の蛇行によって見られることが多い。著明な中心静脈圧の上昇をきたす場合に上大静脈の拡張が見られ、右1弓が拡大する。

f)左1弓に石灰化が見られる場合、動脈硬化性疾患の合併が考えられる…

列:虚血性心疾患など。

 

鑑別診断にあがる疾患と、確定診断に必要な検査およびそのポイントを示した。

■本症例の診断

臨床的には両心不全を呈している。X線写真からは、左房が拡大し、肺野のうっ血が著明でないことより、慢陛心不全が心房細動の頻脈により増

悪したと考えた。

 

心臓超音波検査

右室径2.5cm

左室拡張末期径7.8cm

左室収縮末期径6.9cm

左房径5.Ocm

左室内径短縮率12%

左室駆出率25%

そこで心エコーを施行した。

左室壁は全周性に壁運動低下を認めた。

心エコー上、左室・左房の著明拡大、左室の壁運動低下・駆出率低下を認め、うっ血性心筋症と考えられた。そこで、CMCADを除外するために

心臓カテーテル検査を施行した。

心臓カテーテル検査(心拍数69毎分)

右 房圧平均3mmHg右室圧23/2mmHg肺動脈圧23/18mmHg平均13mmHg肺動脈撰入圧平均10mmHg左心室100/10mmHg大動脈 98/70mmHg平均81mmHg心係数2,21/分/m2冠動脈造影:有意狭窄なし左室造影:僧帽弁逆流I度左室拡張末期容積係数147m〜/m2左 室駆出率18%心臓カテーテル検査上、著明な左室拡大と壁運動低下を認め、正常冠動脈所見よりうっ血性心筋症と診断した。

 

疾患

検査

ポイント

高血圧性心疾患

 

うっ血性心筋症

 

 

虚血性心筋症

(CMCAD)

 

心室瘤

 

先天性心疾患(心房中隔欠損、心室中隔欠損、動脈管開存等)

弁膜症(僧帽弁狭窄、閉鎖不全、大動脈弁狭窄、閉鎖不全、連合弁膜症)

心膜炎(急性

慢性)

甲状腺疾患(機能尤進症、機能低下症)

大動脈瘤

 

 

漏斗胸

 

心電図、心エコ−

 

心エコ−、心カテ

 

 

心筋シンチ、心カテ

CT

 

心筋シンチ、心カテ

CT、MRI

心エコ−、心カテ

CT、MRI

 

心エコ−、心カテ

CT、MRI

 

 

心エコ−、心嚢穿刺

CT、MRI

甲状腺機能検査

 

CT、MRI、血管造影

 

側面写真

 

左室肥大及びST-T変化

左室肥大及び左室拡大

左室壁運動低下、左室拡大、左房拡大、正常冠動脈造影、左室壁運動低下、左室駆動率低下

タリウム分布異常、冠動脈狭窄あるいは閉塞所見、左室局所壁運動異常

心室瘤部にT1の欠損像

左室造影

圧波型、シャントの有無

 

 

罹患弁膜の状態、ドップラーで逆流量、流速測定、測定圧波型測定、逆流量測定

 

心嚢液の有無、心嚢液の性状

 

 

 

解雛の状態(偽腔、真腔)

壁在血栓の状態など

CMCAD:cardiomyopathicsyndromeduetocoronaryarterydisease

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

右心室肥大

 

 

 

■X線所見の説明とmo1variation

 

右 心室肥大においては、左心室が外側上方へ圧排されることにより心尖が挙上し、左心縁上部が張り出すことがあるが、右心室肥大単独では心陰!影は大きくなら ず、輪郭も正常範囲内にとどまることが多い。しかしながら、右心室肥大を起こすような状態では、多かれ少なかれ右心室の拡大を伴っている。右心室は拡大す るとまず前方に張り童出し、さらに拡大すると、心臓を尾側方向から見て時計方向に回転させる。左心室は後上方に押し上げられる。そのため正面像では左4弓 は円弧状に張り出し、心尖部は挙上する。側面像では胸骨と右心室の問のスペースが狭くなる。軽度の右心室拡大は1okume面像のほうが判定しやすい。必ずしもnorma1Variationではないが、右心室の拡大がなくとも胸骨と椎体との距離が狭くなれば、同様のX線所見を呈し得る。Fume1chest,straightbacksyndromeなど胸郭前後径が狭くなる状態では、胸部X線写真の正面像で右心室拡大とよく似た所見を呈するので、鑑別が必要である。

綴 診断のすすめ方醜鰯閣聰幽鵬昭囲聰o聰右心室の肥大は右心室に圧負荷がかかる場合に起こる。最も頻度が高いのは、僧幅弁膜症により二次的に右心系に圧負荷 がかかるものである。左右シャントや左心系の原因が除外できた場合、走心系の原因を考えなければならない。右心系で右室圧上昇の原剛こは、肺動脈自体の病 変と肺動脈弁の狭窄が挙げられる。前割こは肺動脈塞桂症、原発性肺高血圧症があり、後者には肺動脈弁狭窄を伴う様々な疾患がある。両者の鑑別には肺動脈の 太さ、性状をよく観察する必要カミある。前者では肺動脈中枢側は拡大し、末梢側は狭小化する。一方、後者では弁狭窄のpost-stenoticdilatationのため左2弓が拡大することがあるが、末梢肺動脈は正常ないし軽度細くなる。以上のように、右心室肥大が認められた場合、肺動脈の評価が最も重要である。

灘鑑別診断と確定診断のボイント

睡 心疾患の診断をすすめるうえでは、聴診所見や心電図である程度の診断が可能であり、胸部X線写真の役割は、その確認と肺血管の評価ならびに呼吸器疾患の除 外だと思われる。本稿では、鑑別診断として、表1に示す3疾患を挙げる。原発性肺高血圧症は肺高血圧の原因が除外された場合における診断である。

騒 本症例の診断麗鰯鰯騒鰯獺騒鰯翻騒園園畷本症例では、心拡大ならびに心尖部の挙上で右心室の拡大を、左第2弓および肺動脈中枢側の拡大と末梢肺動脈の狭小 化から肺高血圧が疑われた。胸部X線写真、呼吸機能検査より肺疾患による可能性は低いと考えられた。臨床経過より心房中隔欠損や心室中隔欠損のような先天 性心疾患の存在は否定的である。以上より、慢1生化した肺動脈塞栓症、あるいは原発性肺高血圧症を疑い、両者の鑑別ならびに確定診断の目的で、肺換気血流 シンチ、心臓カテーテル検査、肺動脈造影を施行した。肺換気シンチは正常で、血流シンチでは多発性のperfusionde fectがあり、V/Qmismatchを認めた。心臓カテーテル検査の圧データでは著明な肺高血圧を示した(表2)。選択的肺動脈造影上、肺動脈中枢側の拡大と末梢肺動脈の急速なtaperingとともに、多矧生のsegmenta1branchの閉塞、壁不整、狭窄像を認め、慢性的に経過した肺動脈塞栓症と確診された(図3)。

 

肺動脈塞栓症

 

結果と解説

 

■■ 本症例は慢性的に経過した肺動脈塞栓症である。臨床経過から見て数回の肺塞栓のエピソードがあったものと考えられる。慢性反復性肺血栓・塞栓症に起因する 肺高血圧の症例の報告が最近増加しているので、成人で明らかな肺疾患がなく、右心室肥大が疑われる症例は本疾患を念頭におく必要があると考えられる。臨床 症状は肺高血圧症に共通するもので、呼吸困難、起座呼吸、右室の拡大、頸静脈怒張、胸水貯留、浮腫、腹水、先行する静脈炎や肺塞栓のエピソードなどが見ら れる。胸部X線写真では、典型的には左4弓の丸みを帯びた張り出しと心尖挙上、左2弓の突出、肺野では肺動脈中枢側の拡大と末梢の狭小化が見られる。閉塞 している肺動脈の領域が胸部X線写真で明るく見えることもあると思うが、通常その指摘は困難と考えられる。

 

 

 

1.慢性肺動脈塞桂症

肺血流・換気シンチ、肺動脈造影、V/Qmismatch

肺動脈内血栓、肺動脈分枝の狭窄や途絶

2。原発性肺高血圧症 除外診断

3。肺動脈弁狭窄   心臓カテーテル検査、右心室造影

肺動脈と右心室の圧較差、肺動脈弁の肥厚、運動制限、ドーム形成

 

 

 

左心房拡大

 

 

■読影のすすめ方

 

左心房拡大(左第3弓の突出、右第2弓のdoub1eshadow) がX線写真上見られたとき、右第1,2弓、左第1,2,4弓の拡大はあるかどうか、CTRはいくらか、肺血管陰影の増強があるか、異常陰影や気管分岐角は どうかチェックする。一般に理学所見より心臓弁膜症はすぐ診断可能である。左心房の拡大程度、CTRの大小と肺血管病変の重症度は関係がないので、肺血管 陰影も注意深く観察するようにする。肺静脈圧持続的尤進所見である上肺野の血管拡張、下肺野の血管の狭小化(肺血管の再分布redistribution)はないかどうか、また肺静脈圧尤進→肺毛細血管圧尤進により血漿膠質浸透圧(25mmHg)を慢性的に越えるとKer1eyB線 が見られることがある。これは肺小葉間隔壁(正常では見えない)に浮腫液の貯留や線維組織の増生が起こり、両側肋骨横隔膜角付近に横に走る線状陰影が見ら れるものをいう。さらに進行例では肺動脈圧高値による主肺動脈の拡張はないかどうか、肺血管陰影が全体にぽやけていないか、もっと進行した例では末梢肺血 管陰影の狭小化所見はないかどうかチェックする。大動脈弁疾患や高血圧症の合併がなければ、通常、大動脈は細く、左第1引ま小さい。初診で心陰影、肺陰 影、縦隔陰影に異常が疑われるときは必ず胸部X線写真側面像も撮影する。病歴と理学所見、X線写真、心電図、超音波検査で左心房拡大の原因疾患はほとんど 診断可能であり、診断に迷うことはあまりないが、次項で述べるような疾患で左心房が拡大することがある。

 

診断と確定診断のボイント

疾患が重要であるが、病歴、理学所見、心電図所見、胸部X線写真で大半は診断可能である。

 

本症例の診断

心超音波で左心房の拡大、僧帽弁の狭窄、弁下組織の肥厚を認めた(図3)。心不全をコントロール後、心臓カテーテル検査を施行した(1991年10月11日)。右房圧11mmHg

右室圧 73/EDP12mmHg

肺動脈圧 73/28(47)mmHg

肺動脈襖入圧  37mmHg

左室圧  110/EDP13mmHg

大動脈圧  104/68(85)mmHg

心拍出量  3,54 l/min

心拍出係数   2.58l/min/2

左室拡張末期容量係数  59cm3/m2

左室収縮末期容量係数   43cm3/m2

左室駆出率        O.27

肺動脈抵抗(PAR) 226dyne’sec.cm−5(正常67±23)

僧帽弁口面積0,5cm2

僧帽弁圧較差24mmHg

腹部大動脈造影で右総腸骨動脈起始部に完全閉塞、左総腸骨動脈と左外腸骨動脈に95%狭窄を認めた。

 

僧帽弁狭窄症

 

検査後外泊時に重症心不全にMRSA肺炎を併発し、人工呼吸器により管理をしたが、肺炎は悪化し、全肺野に及び、心不全も全く改善せず、このため11月8日、緊急で経皮的経静脈的僧帽弁交連裂開術(PTMC)を井上バルーン20mmで施行1〕。

PTMC前’左心房圧46/27(35)mmHg

PTMC後左心房圧33/20(23)mmHg

しかし、MRSA肺炎は改善せず、多臓器不全となり、12月2日死亡した。心超音波、剖検で明らかなように、比較的柔らかであった前交連がきれいに裂開されており、後交連は裂開されていない。腱索は肥厚癒合短縮し、一塊となっている。

結果と解説

       正 常成人の僧帽弁口面積(MVA)は4〜6cm2であり、M立Aが2.5cm2以上あれば臨床症状はないが、今回提示した症例はO.5cm2とMSの最重症 例であった。通常、MSと診断された症例の左心房容積は正常例の約3倍に増加しており2)、左心房拡大が軽度で、左心耳の緊満拡張も軽度の場合は胸部X線 写真正面像では左心房の拡大がわからない場合もある。左心房が拡大してくると右側左心房の辺縁が右第2弓に沿い内側、あるいは外側に弓状の陰影として見ら れることがあり、

       これをdoubleshadow(doub1edensity,doub1esi1houette) と呼ぶ。正常でも右上肺静脈が左房に入るところで右第2弓が二重に見えることがあるが、この場合は正面から見ると上肺静脈は心臓へ向かって逆三角形の形で 直線的に入るため、右第2弓全体にわたる弓状の二重陰影となることはない。胸部写真の右前斜位、左前斜位で食道造影をすると、左心房拡大例では食道の背側 への圧排が目立つようになる。肺動脈主幹部の拡大と左心房拡大が合併すると、正常ではくびれている左第2,3弓が突出してくる。また病悩期問の長いMSで は僧帽弁や左心房壁に石灰化が見られることがあり、左心房壁の石灰化の場合は左心房内血栓が存在することが多い。正常では気管分岐角は70度以下である が、MSで左心房が上方へ拡大すると左主気管支を押し上げ、70度以上に開大することがある。気管分

岐角はあまり開大せず、左主気管支の遠位側のみ上方へ偏位し左気管支が圧迫される場合もある。また、左心房の右方への拡大のために右肺中下葉カ雪圧迫されるものもあり、これらはいずれも無気肺や肺炎の原因となる。現在はMSについてはPTMCの弁口拡大効果は0MC(openmitralcommissurotomy; 開心術による交連切開術)施行例と同等であり3)、その安全性も確立されており、連合弁膜症例、中等度以上のMR合併例、左心房内血栓例、僧帽弁の高度石 灰化例など以外では外科治療の前段階でまず試みられてよいと考えられている。また僧帽弁膜症の外科手術死亡率は1〜2%前後である。

 

 

1後天性心臓弁膜症(MS,MR,MSR+ASAR,ASR+TS,TR,TSR)

Annulo-aorticectasiaに合併するMR

2各種疾患に合併する心不全による両心房、、両心室の拡大および心嚢液貯留重症虚血陸心疾患、拡張型心筋症、高血圧性心不全、粘液水腫、甲状腺機能尤進症、急性心膜炎

3収縮性心膜炎

 

 

 

4心房細動例

5左房粘液腫

6三心房心

7心室、大血管レベルでの左右短絡疾患動脈、管開存症、心室中隔欠損症、大動脈肺動脈中隔欠損、総動脈幹残遺

 

 

 

 

先天性僧帽弁狭窄

 

 

心超音波

 

 

 

 

心電図、心超音波

甲状腺機能

 

 

胸部X線

心臓カテーテル検査

心超晋波

心超音波

心超音波

理学所見、心超音波

心臓カテーテル検査

 

 

心臓カテーテル検査

弁、弁下組織の病的変化の程度、心機能、心容積など

 

 

 

虚血性心電図変化、心機能、心容積、心嚢液貯留の有無

低下、尤進

 

 

 

心拡大、肺うっ血。心膜(特に右心房、右心室、房室問溝)に一致した石灰化を約半数に見る。心内圧、静脈圧の上昇

dipandplateau

心膜の肥厚、石灰化

心室中隔、左室後壁の拡張早期異常運動、右心房・左心房の拡張

右心房・左心房の拡大、心室の拡大は心筋障害の程度の違いにより正常〜拡大

左心房内腫瘤

左心房内異常隔壁の存在

心室、大血管レベルにおける短絡

 

大動脈狭窄、大動脈縮窄など他の心奇形合併

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

左心室拡大

 

X線所見の説明

       ■左心室拡大の胸部X線所見には、

@    正面像で心胸郭比(cardio-thoracicratio=CTR)が50%以上に増大する、A側面像で下大静脈と心後縁の交点が下方にずれる、

A    左前斜位像で心陰影が脊椎より後方へ突出する、

B    左第4弓が丸みを帯びる突出をする、がある。

の所見の中で、左心室拡大に対する所見@の診断精度は70%であったが、所見Aは信頼性に乏しかったという報告がある。また、心胸郭比が50%以下であっても、無力体質などで左心室拡大がありうる。すなわち、左心室拡大に対する胸部X線所見の感度もまた高くはない。

読影のすすめ方

■■ 正面像および側面像が与えられていることが望ましい。正面像では、PA像かAP像か、真に正面か斜位かなどの撮影の条件を確認した後、心胸郭比を計測す る。心胸郭比が50%以上であれば異常と考えて、原因を検索する。正面像で左第4弓の拡大があり、側面像で後下方への拡大が認められる場合には、左心室の 拡大と考えられる。合併する所見として注意すべき点には、@他の心腔の拡大の有無、A肺高血圧の有無、B肺血流量増加の有無がある。

翻鑑別診断と確定診断のボイント

■ 表1に鑑別すべき疾患と確定診断に必要な検査を示す。左第4弓に限局した心陰影の拡大を示す場合には、左心室の拡大を生じる大動脈弁閉鎖不全症または著明 な左心室壁の肥大を呈する大動脈弁狭窄症や心筋症がある。拡大した左第4弓が右室により形成される可能性は、側面像で除外される。

別 診断に最も重要な検査は、ドプラー法を含む心エコー図法である。心内腔の大きさ、心室壁の厚さ、弁逆流の程度、弁狭窄程度などが簡便かつ正確に診断され る。疾患の特異的な診断には、冠動脈造影術や心筋生検を要する。左第4弓を含む心陰影の拡大を示す場合には、心膜疾患、僧帽弁閉鎖不全症、心室中隔欠損症 や動脈管開存症などがある。さらに前項であげた疾患で心不全を呈した状態がある。例えば、感染性心内膜炎による急性の大動脈弁閉鎖不全症の場合である。こ れらの診断にも、ドプラー法を含む心エコー図法が最も有用である。解剖学的な診断には、さらにCTスキャンやMRIが有用である。

       本症例の診断

       症 例は自覚症状に乏しく、心不全の既往はない。心雑音、脈圧の増大(138mmHg)、図1の正面像での心胸郭比の増大(55%)から大動脈弁閉鎖不全症が 疑われ、心エコー図法にて診断が確定された。Mモード法による左室計測では、左室拡張終期径63mm、カラードプラー表示では大動脈弁から僧帽弁尖に向か うII度のモザイク状の逆流シグナルを認めた(図2)。左心房、右心室の内腔拡大は認められない。

1大動脈弁閉鎖不全症

結果と解説

や や明るい下肺野、肋間腔の開大、横隔膜の位置の降下などから肺気腫性変化が考えられる。このような場合、心は反時計方向回転をする傾向があり、極端な例で は滴状心を呈し、心胸郭比は減少する。胸部X線正面像での左心室拡大の診断感度は高くないが、本例のような条件下ではさらに感度が低下すると考えられる。 疾患を疑う場合には必ず側面像を追加することが重要である。大動脈弁疾患では、大動脈弁狭窄症のpoSt-stenoticdilatationなど右第1弓が拡大する傾向がある。本症例では逆流量が少なく軽度である。

 

 

 

 

1大動脈弁閉鎖不全症

大動脈弁狭窄症

2心筋疾患

拡張型心筋症

肥大型心筋症

心アミロイドーシス

心ヘモクロマトーシス

3心膜疾患

4僧帽弁閉鎖不全症

心室中隔欠損症

動脈幹開存症

 

 

心エコー図法(ドプラー法)

心エコー図法(ドプラー法)心筋生検法冠動脈造影法

心エコー図法

X線CT法、MRI法

生検法

心エコー図法(ドプラー法)冠動脈造影法

 

弁逆流の検出。

弁狭窄度および血流の評価

病理学的診断

虚血性心疾患の否定

 

 

 

病理学的診断

弁逆流、シャント流の検出

 

 

 

虚血性心疾患の有無

 

 

 

 

 

心臓の石灰化

 

 

X線所見の説明

一心膜を含めた心臓内の石灰沈着は、

@動脈硬化、退行変性によるもの、

Aリウマチ熱などの炎症の結果生じるもの、

B副甲状腺機能尤進による異所性石灰化によるもの、などがある。

し かしそのほとんどが@の加齢の変化によるもので、主冠動脈や弁尖、あるいは弁輸部に石灰化を生じる。これらはX線透視で心臓の拍動とともに動くとして観察 され、その判別は容易である。石化が強度になると、単純X線写真上でも石灰化の観察が可能となるが、小さな石灰化陰影で^心陰影との重なりから識別困難な ものや、注意く観察しないと見逃してしまう場合もある。

例 えば、大動脈弁や僧帽弁は解剖学的に脊椎のほぽ前面に位置し、これらに生じた石灰化の観劉こは脊椎との陰影から分離させた斜位像あるいは側面像がその観察 には適している。一般に、正常の胸部X線写真では心臓の石灰化を認めることはない。しかし、石灰化を認めた場合でも、発生部位や広がり、年齢、臨床症状の 有無などにより、石灰化のもつ意昧合いは異なるため、臨床的に有意な石灰化であるか否かの判定が必要となる。

読影のすすめ方

心 臓の石灰化は、その発生部位により特徴的所見を示すことが多く、石灰化が心臓のどの部位に相当するか、解剖学的な位置関係よりアプローチすることが望まし い。それには、心陰影における各腔の占める全体的な位置、大動脈弁や僧帽弁の位置、冠動脈の走行などの解剖学的関係を、正面像のみならず斜位、側面像の上 で正しく理解することが重要である。同時に、心陰影の拡大、肺野の所見(うっ血像や胸水貯留の有無)も見逃してはならない。

鑑別診断と確定診断のボイント

表 1に心臓の石灰化をきたす疾患を部位別に示す。収縮性心膜炎では、特徴的な心膜の石灰化所見を示し、その場合はX線写真のみでも診断可能である。本症の 50〜70%に心膜の石灰化が認められるが、無症状で心膜の石灰化を示すものもある。本症の石灰化は、心臓の下方や横隔膜面の心膜、房室間溝に生じやす く、特に右心系(右房の前面、右室の前面、側面)の心拍動の弱い部分に多く認められ、左心系では軽度なことが多い。このことは、後述する心筋の石灰化とは 対照的で、両者の鑑別点として参考となる。収縮性心膜炎の確定診断にはCT検査が最も有用で、通常のX線写真では確認できない軽度の石灰化も観察可能であ る。さらに、CTでは石灰化の広がりや厚さを知る上で有カな情報が得られる。断層心エコー法では、エコー輝度の増強した幅広い心膜の観察やMモード法によ る心室中隔の奇異性運動(特に拡張早期の前方運動)により特徴づけられる。また、パノレスドプラー法で左室あるいは右室流入波形における急速流入波(E 波)の尖鋭化と心房収縮波(A波)の減高は、心室の拡張障害を示す重要な所見である。心臓カテーテル検査では、右房圧、右室圧、肺動脈圧はいずれも上昇 し、右房圧曲線はW型、心室圧曲線はdipandplateau型を呈し、しばしば右室の拡張期圧は収縮期圧の1/3以上に達する。心筋の石灰化はそのほ とんどが左室に生じ、広範囲の陳旧性心筋梗塞(療痕壊死)に伴う石灰化に代表される。X線写真では、梗塞巣の辺縁に沿った曲線上の石灰化陰影として観察さ れるが、頻度的には稀である。左室心尖部の石灰化は、心室瘤や器質化した血栓の存在が疑われる。これらの確定診断には、断層心エコーや心カテーテル(冠動 脈造影、左室造影)が有用である。

断局心エコー傍胸骨左縁長軸断履図(a)では、左房拡大、左室と左爵後壁側に心膜肥厚およびエコー輝度増強が観察さ’れる.。む尖郵四腔断層図(b)では右房側にも同様の所見を認める。Ao:大動脈、LA:左房、LV:左室、RA:右房、RV:右室

弁 に強度の石灰化を生じた場合、血行動態的11有意な弁狭窄の存在が示唆される。僧帽弁狭窄去では、リウマチ性の変化による僧帽弁の石灰化カ主な原因である が、大動脈弁狭窄症は、リウマチ性のほかに、加齢に伴う動脈硬化性の石灰化にJっても生じる場合がある。また、若年者の大動用弁の石灰化は、先天性大動脈 二尖弁を疑う所見1して重要である。いずれもこれらの確定診断は、心エコー検査によってなされ、さらに連続波ドップラー法や心カテーテル検査によりその重 症度評佃が可能である。肺動脈弁の石灰化は重症の肺動用弁狭窄症に、三尖弁の石灰化はリウマチ性変化して生じるが、いずれも稀な所見である。弁輸部の石灰 化は、加齢による退行性変化(老化現象)として、そのほとんどは僧帽弁輪部に生じる。X線写真上、典型例では、弁輸に沿って0型、J型、あるいはC型の陰 影として観察される。通常、僧帽弁輪部に石灰化を認めても、臨床的こはほとんど問題はないが、石灰化が強度な場合には、

僧 帽弁閉鎖不全、あるいは僧帽弁狭窄を生じる。高齢女性の心エコー図検査の際、僧帽弁輪部の石灰化(特に後方弁輸部)をしばしば観察するが、実際にX線写真 上で明らかな石灰化所見を示す症例は稀である。一方、大動脈弁輸部の石灰化は、そのほとんどは弁尖部の石灰化が弁輪部にも波及することにより生じる。これ ら弁輸部の石灰化が心室中隔上部の刺激伝導系にまで及んだ場合は、房室ブロックを生じる可能性がある。左房の石灰化は、左房の心筋内、あるいは心内膜に生 じ、X線写真上、曲線の陰影として左房に沿った分布を示し、その観察には側面像が適している。左房の石灰化は、主に僧帽弁狭窄症で生じ、

左 心耳の石灰化は器質化した血栓の合併が強くわれる。左心耳血栓の確定診断には、経食道’ひ止コー法が非常に有用な検査法である。冠動脈の石灰化は、高度の 動脈硬化性病変の在を意昧する。また、冠動脈の拡張性病変や川病などによる冠動脈瘤にも石灰化を生じることある。心カテーテノレ検査の際、X線透視で冠動 の石灰化所見をしばしば経験するが、実際、通のX線写真でこれらを認めることは少なく、また石灰化があっても注意深く観察しなければ見逃てしまう場合もあ る。X線写真では、冠動脈の走行に沿った小さな石灰化陰影の点在から塊状障影、さらにレール状あるいは帯状のものまで、石灰化の程度により様々な所見を示 す。

1 通常の胸部X線写真でも、注意深く観察すると同様の石灰化所見を示している。新しい検査、法では、撮像時問の短い超高速CTが冠動脈石灰一化の検出に優れ ている。心臓の原発性腫瘍として一般的な粘液腫は、その多くは左房内に生じ、X線写真で約10%に石灰化を認める。また、その他の腫瘍(横紋筋腫、線維 腫、骨肉腫など)でも石灰化を示すことがある。その他、動脈管(主に動脈管開存)の石灰化(凹面、弧形の陰影)、またVa1sa1va洞動脈瘤の石灰化 (鶏卿犬の陰影)などがあるが、いずれも稀な所見である。

 

 

 

部位疾患確建診断に必要な検査

 

 

 

 

 

心膜

左室

 

 

弁膜

 

 

 

 

 

弁輪部

左房

 

 

冠動脈

 

 

 

Va1sa1va洞

収縮性心膜炎

陳旧性心筋梗塞

心室瘤

器質化血栓

リウマチ性

僧帽弁狭窄

大動脈弁狭窄

先天性大動脈二尖弁

老化現象(主に大動脈弁)

老化現象(主に僧幅弁)

僧帽弁狭窄

器質化血栓(左心耳)

粘液腫などの腫瘍

虚血性心疾患

川崎病

動脈管動脈管開存症

 

Valsa1va洞動脈瘤

胸部CT、心エコー、心カテーテル

心エコー、心筋シンチグラフィー、冠動脈造影、

心エコー、左室造影

心音図、心エコー

 

 

 

 

 

心エコー

心エコー

(経食道心エコー)

 

冠動脈造影

 

心エコー

心カテーテル

心エコー

大動脈造影

 

 

 

 

参考文献

 

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