研究グル-プ

循環内分泌研究室

第1研究室

粟飯原賢一

 当研究室は、松本俊夫教授と循環器内科学講座佐田政隆教授にご指導頂き、研究室技術補佐員の上元さんのサポートのもと循環器グループと共同で研究を行なっています。私たちは、動脈硬化ならびに心血管リモデリングの病態解明および新規治療法の開発をテーマとして、心血管内分泌・代謝という視点から研究を行っています。また基礎研究のみならず、各種臨床研究も関連病院との共同研究にて実施し、”From bench to bedside”すなわち基礎研究で得られた研究成果を臨床に反映させることを最終目標としています。

1)生活習慣病の病態基盤におけるトロンビンおよびヘパリンコファクターIIの意義に関する研究

  1. 心筋リモデリングにおけるヘパリンコファクターIIの意義
     アンジオテンシII (Ang II)を投与したヘパリンコファクターII (HCII)ノックアウトマウスでは、酸化ストレス産生増大を介して、心房・心室心筋間質の線維化が著明となり、形態的には心エコー上、左房拡大および左室求心性リモデリングが促進することを見出しました。これらはヒトHCII補充により改善し、HCIIは酸化ストレス産生抑制作用を有することで、レニン・アンジオテンシン系の活性化による心筋リモデリングを抑制することを見出しました。この成果は米国心臓学会議(AHA)や日本循環器学会総会で発表し、現在論文投稿中です(上田、粟飯原)。また臨床研究においては心エコーを用いた検討により、高齢者の左心房容積と血漿HCII活性が逆相関することを見出し、HCIIが心房リモデリングに深く関与していることが判明しました。この成果も論文投稿中です(伊勢、粟飯原)。
  2. トロンビン受容体シグナルを介したインスリン抵抗性発現機構の解明
     トロンビン受容体は脂肪細胞にも存在し、肥満患者では脂肪細胞でのトロンビン合成能が亢進していることから、トロンビン作用による脂肪細胞での炎症がインスリン抵抗性ならびに糖尿病発症に関与している可能性がありました。糖尿病モデルマウスを用いた検討では、抗トロンビン薬であるアルガトロバンの投与によりインスリン抵抗性が改善し、脂肪細胞サイズの縮小や脂肪組織へのマクロファージ浸潤と炎症性サイトカインの減少を認めました。その機序として脂肪細胞におけるIRS-1やAktのリン酸化が促進されることを見出しました Endocrinology. 2010;151:513-9.(粟飯原、糖尿病研究室 三原)。
  3. 耐糖能異常症およびCKD発症機転におけるHCIIの意義
     臨床研究としてのHCIIのデータのサブ解析により血漿HCII活性の低下した患者では糖尿病発症者が多いことや、病的アルブミン尿の出現にも相関があることが、明らかになって来ました。今後の前向きな疫学的検討や動物モデルを使った解析にて、その機序や臨床的意義を明らかにする予定です(粟飯原)。

2)心血管リモデリング、血管新生および動脈硬化におけるアンドロゲンの意義に関する研究

  1. 心血管リモデリングにおけるアンドロゲン受容体の役割の検討
     共同研究者である東京大学分子生物学研究所の加藤茂明教授より供与いただいたアンドロゲン受容体(AR)ノックアウト(KO)マウスを用いて、アンドロゲン-ARシステムが生理的な心臓成長に関与すること、ならびにアンジオテンシンII負荷に対する代償的心リモデリングや血管リモデリングに重要な役割を担っていることを明らかにしました J Biol Chem.2005;280:29661-6, Endocrinology.2009;150:2857-2864 (池田、粟飯原)。またドキソルビシン負荷心筋障害モデルにおいてアンドロゲン-ARシステムが酸化ストレス制御、ミトコンドリア機能保持ならびに心臓アポトーシス制御を介して心機能維持に作用していることを明らかにしました Mol Endocrinol. 2010 in press(池田、粟飯原)。
  2. 血管新生および虚血におけるアンドロゲン受容体の役割の検討
     これまでの検討により、ARKO雄マウスでは、NO bioavailabilityの低下を来していたことから、アンドロゲン-ARシステムの欠落が治癒的血管新生を抑制するとの仮説を立て、ARKOマウスの下肢虚血モデルを作成しました。ARKOマウスでは下肢虚血後の回復が著しく障害され、それには虚血後の血管新生の障害と、組織アポトーシスの増加が関与していることを見出し、今後国内外の学会発表を行いつつ、論文投稿の準備をしているところです。これらは近年注目されている男性更年期における血管リモデリングや組織修復障害機序の解明につながるものと考えております(吉田、粟飯原)。
  3. 副腎アンドロゲンの抗動脈硬化作用に関する検討
     阿南共栄病院の東先生と共同研究により、副腎アンドロゲンである血清DHEA-S濃度と頸動脈の最大内膜中膜複合体厚(IMT)および総頚動脈の平均血流量には正の相関がある事を見出しました。総頚動脈血流の低下は虚血性脳血管イベントのリスクとなることが知られており、副腎アンドロゲンは臨床的抗動脈硬化作用を有すると考えられます。すでに日本内分泌学会総会や日本動脈硬化学会、日本高血圧学会にて成果を発表し、この度論文発表致しました Atherosclerosis 2010 in press。

3)内臓脂肪蓄積制御因子の解明に関する臨床研究

 当教室内分泌・代謝内科(松本教授、藤中講師、粟飯原)が中心となって、メタボリックシンドローム検診を目的としてアンチエイジング医療センターを2008年3月から稼働させています。この検診で得られた検診データをもとに、メタボリックシンドロームの基盤病態と考えられている内臓脂肪蓄積に関わる因子について、糖尿病研究室と共同で研究を進めています。

 これまで挙げました研究成果は米国心臓学会議(AHA)、国際高血圧学会、日本循環器学会総会、日本高血圧学会総会、日本内分泌学会総会、日本動脈硬化学会を中心に毎年精力的に発表し、Atherosclerosis, Endocrinology, Mol Endocrinol, Hypertension, Circ Res, Circulation, J Clin Investなどの国際雑誌に掲載されております。共同研究やディスカッションのできる場を幅広く求めて頑張っていきたいと思います。

 

内分泌・代謝研究室

第2研究室

遠藤逸朗

 現在の第2研究室(内分泌、骨代謝)のメンバーは遠藤(平成4年卒)、木戸(旧姓栗若、平成10年卒)、大西(実験捕手)の3名です。異動としましては、2009年5月に伊藤が阿南共栄病院へ出向いたしました。
 臨床面では、糖尿病対策センターおよび糖尿病臨・研究開発センターとともに内分泌・糖尿病外来を行っており、院内外より多数の紹介をいただいております。また、毎週金曜日には糖尿病グループの藤中講師らとともに入院患者についてのカンファレンスを精力的に執り行っています。この1年間も下垂体、甲状腺、副甲状腺、副腎、性腺、骨代謝など広範囲の領域から先端巨大症、甲状腺クリーゼ、褐色細胞腫、副腎不全、大理石骨病、FGF23過剰症などの貴重な症例を多数経験し、学会発表や症例報告を行いました。研修医の指導については、藤中講師、粟飯原講師とともに遠藤が医師としての基本姿勢や技術などとともに内分泌専門領域の診療、学会発表に至るまで幅広い教育に力を入れています。
 研究面に関しては、松本教授のご指導の下、骨形成促進に関与する骨芽細胞シグナル伝達の解明や、不動性骨粗鬆症およびステロイド骨粗鬆症に代表される骨形成低下病態の分子メカニズム解明といった基礎的検討のほか、各種カルシウムリン代謝異常症の診断・治療についても検討を行っています。

研究内容の紹介

  1. FGF23異常症の全国調査
    FGF23は生理的リン調節因子として同定されましたが、その異常症の有病率や詳細についてはほとんど明らかになっていません。松本教授が班長を務める厚生労働省難治疾患克服研究事業の一環として、昨年策定した診断指針をもとにFGF23異常症である腫瘍性骨軟化症、X連鎖性低リン血症性くる病などの全国調査を行っています。この結果をもとにFGF23抗体を用いた治療方針などについても検討を行ってゆきたいと考えています。
  2. CaSR変異による常染色体優性低Ca血症(ADH)におけるcalcilyticsの治療応用
    ADHは比較的稀な病態であり、その治療法は確立されておりません。われわれはCaSRのアロステリックモジュレーターであるcalcilyticsに注目しin vitroの系では治療に有望であるとの結果をすでに得ています。今後は、遺伝子改変マウスを用いてin vivoの系での検討を行い、臨床応用を目指してゆきます。
  3. 力学的負荷における骨形成機序の解析、骨形成低下症病態解析
    我々はすでに力学的負荷は骨においてAP-1ファミリーの構成要素であるΔFosBの誘導を介してIL-11の発現をAP-1依存的に促進することを見出しています。とくにIL-11は、骨における力学的負荷の応答としてkey moleculeであると考えています。また、骨髄細胞におけるIL-11産生低下は老人性骨粗鬆症の主たる原因であり、ステロイド骨粗鬆症の際にもIL-11誘導低下が病態のひとつであることも明らかにしてきました。現在IL-11 KO, Tgマウスの骨について解析を進めており、これまで治療が困難であった不動性骨粗鬆症、老人性骨粗鬆症、ステロイド骨粗鬆症などの病態解明がすすむと期待しています。

今後も、当研究室は他の研究室と協力しながら臨床、研究、教育でいっそう努力していく所存ですので、どうかこれからもご指導、ご鞭撻のほどよろしくおねがい申し上げます。


図1. 力学的負荷による骨芽細胞分化の促進シグナル経路と加齢、グルココルチコイドによるその障害

 

糖尿病・代謝研究室

第3研究室

藤中雄一

 徳島県は糖尿病関連死亡者数全国ワースト記録を更新し続けており、糖尿病診療は依然として命題の1つとされています。私共も糖尿病・代謝グループとして診療・研究活動を行い、糖尿病学の進歩に対応できるよう努力致しております。

 現在のスタッフは、藤中(講師、平成3年卒)、木内(医員・大学院生、平成14年卒)、倉橋(医員・大学院生、平成18年卒)の計3名です。三原(大学院生、平成11年卒)が大学院での研究を終えて、昨年4月より東京医科歯科大学大学院分子内分泌内科学に転出いたしました。また、昨年度より外来診療に協力頂いておりました片岡(平成11年卒)は、所属が生体情報内科学の診療助教となり、糖尿病対策センターの業務とともに外来診療を行っております。
臨床では内分泌・代謝内科として外来・病棟診療を行っておりますが、昨年10月から外来診療の専門性をより明確に掲示する目的で内分泌外来と糖尿病外来に分けられました。私共は糖尿病外来 [月曜日(片岡)、水曜日(藤中)、金曜日(木内)]を担当しており、院内外より多くの患者を御紹介頂いております。糖尿病外来については、糖尿病対策センターの船木教授[火曜日隔週]、また今年1月より就任されました糖尿病臨床・研究開発センターの松久教授[木曜日]にもご協力頂いております。入院患者については、内分泌グループとともにさまざまな内分泌・代謝疾患の診療に従事し、毎週金曜日(17:30-19:00)に合同カンファレンスを行っております。糖尿病の教育入院や血糖コントロール、他科入院患者の共診も多く、虚血性心疾患など心疾患の合併患者については循環器・脈管研究グループおよび循環器内科と連携し、診断・治療を行っております。大血管障害の予防を目指した「アンチエイジング医療センター」での「メタボリックシンドローム検診コース」も継続しております。教育面では臨床研修必修化に伴い、特に病棟での研修医・医学部学生への臨床教育を充実させております。後期研修や日本糖尿病学会認定教育施設としての糖尿病専門医の研修も行っております。

 研究としては糖尿病の成因であるインスリン抵抗性やインスリン分泌不全の機序を解明すべく研究を行っております。インスリン抵抗性については肥満者由来ヒト脂肪細胞から産生され、インスリン抵抗性を惹起する新規タンパク質の探索を進めておりましたが、現在までに脂肪細胞の分化に関与する分泌蛋白を同定しました。現在、遺伝子改変モデルマウスを作製し、解析を行っております。その他の脂肪細胞由来分泌蛋白についても機能解析を行っております。また、今年度病棟業務を担っておりました倉橋は、本年4月より当大学疾患ゲノム研究センター生体機能分野の親泊教授の下で研究に従事することとなりました。

 大学病院においても医師不足は深刻な問題であり、諸先輩方には御迷惑をお掛けすることも多々あるかと存じますが、今後とも御指導、御鞭撻の程を宜しくお願い申し上げます。

 

血液研究室

第4研究室

安倍 正博

 第4研究室のスタッフは、安倍(准教授 1984年卒)、尾崎(輸血部講師 1988年卒)、竹内(助教 1997年卒)、賀川(特任助教・大学院生 1998年卒)、中野(診療支援医師 1999年卒)、三木(大学院生 2001年卒)、中村(大学院生 2002年卒)、藤井(特任助教・大学院生 2004年卒)、原田(医員・大学院生 2007年卒)、神野(医員2008年卒)、天羽(実験助手)、小田(実験助手)です。藤井は当科での後期研修の後北楡会札幌北楡病院で同種造血幹細胞移植療法などの血液内科の研修を2年間行い、2010年4月より当科の診療に復帰しました。歯学部口腔顎顔面矯正学教室から大学院生の渡邊佳一郎先生が、また当院臨床検査部の池亀彰茂先生が当教室で社会人大学院生として研究を続けております。当教室で学位の研究を行った歯学部生体材料工学分野助教の日浅雅博先生は、現在も引き続き当教室でも研究を継続しています。さらに、2009年3月から中国人留学生の崔衢先生(大学院生 吉林大学基礎医学院免疫学専攻2007年卒)が当教室に加わりました。
 臨床面では、血液内科専門外来【月: 安倍、水:竹内、木:尾崎、金:賀川】を行っており、院内外より数多くの患者様を御紹介頂いています。当科では、治療抵抗例となった多発性骨髄腫に対する新規治療薬の導入や、白血病・悪性リンパ腫に対する造血幹細胞移植などに積極的に取り組んでいます。2009年10月に西病棟10階に全病室が無菌管理の可能な細胞治療センターが完成し、造血幹細胞移植のより専門的診療が可能になりました。細胞治療センターは血液内科と小児血液患者を集約し無菌管理に特化した治療病棟です。同センターでは看護師、輸血部技師、薬剤師、MEが診療に協力的であり、緻密な移植医療が遂行されています。しかしながら、非血縁同種骨髄移植は徳島県内では当院のみ施行可能であるため、移植適応患者の当院への紹介が最近急増しております。このような地域の診療ニーズにこたえるために、地域における当センターの役割を明確にし、病病、病診連携を密にした患者診療体制を確立し、限られた病床を効率的に運用することがこれまで以上に必要になっております。また、個々の症例については、毎週火曜日回診前のpre-meetingと病棟回診、木曜日午後の血液カンファレンスなどで検討し、移植症例に関しては、木曜日夕方に血液内科・小児科医師、輸血部技師、看護師が一堂に会し移植カンファレンスを行っています。当科では日々高度かつ専門的になる血液内科の診療を実践するとともに、患者背景に応じた全人的な診療を提供できる内科医としての姿勢を持ち各医師が診療を行っております。多忙な日々の臨床の合間にも症例毎に疑問点を探求し、学術的に意義のある症例については積極的に学会発表・誌上発表を行っております。
 研究面では、これまでと同様に難治性疾患である造血器腫瘍に対する新規治療法の開発および多発性骨髄腫の腫瘍増殖ならびに骨髄微小環境内での細胞相互作用の病態解明をテーマとし、大学院生を中心に活発に研究を行っています。また、本学薬学部創薬生命工学(環境生物工学)分野とも腫瘍幹細胞、iPS細胞関係の共同研究を開始しております。これらの研究内容は、日本血液学会総会、日本骨髄腫研究会総会、日本骨代謝学会、米国血液学会などで報告しています。最近の研究成果として竹内先生と日浅先生の研究を下記に紹介させて頂きます。これらの一部はそれぞれPLoS ONE(2010)、Blood誌(2009)に発表されたものです。

骨髄腫骨髄微小環境による骨芽細胞、破骨細胞分化の制御機構

【背景・目的】

多発性骨髄腫は、骨髄内に限局して増殖・進展し、広範な骨破壊性病変を来たす。これまでに我々は、骨吸収の亢進により骨から動員されるTGF-βにより骨芽細胞分化が抑制されていること、またTGF-β受容体(AKL5)阻害薬により骨髄腫における骨芽細胞分化の抑制が回復するとともに、このようにして誘導した成熟骨芽細胞は骨髄腫細胞にアポトーシスを誘導することを見出した。加齢に伴い骨髄は脂肪髄化するが、骨髄腫が好発する高齢患者の骨髄腫骨病変部では骨髄内に骨髄腫細胞とともに間質細胞が多数出現し脂肪組織が減少していることから、骨髄腫骨病変部では間質細胞/間葉系幹細胞からの脂肪細胞分化が抑制され骨芽細胞への分化の抑制と相まって、間質細胞が豊富になっていると考えられる。また、骨髄腫では破骨細胞形成が亢進している一方で、同じ前駆細胞である単球に由来する樹状細胞の数、活性が低下している。骨髄間質細胞は破骨細胞形成を促進するが、間質細胞の単球からの破骨細胞と樹状細胞への分化の決定に及ぼす影響は明らかでない。そこで、TGF-βが間質細胞からの脂肪細胞および骨芽細胞への初期分化に及ぼす影響、および間質細胞が単球からの破骨細胞と樹状細胞への分化に及ぼす影響を明らかにするため以下の検討を行った。

【方法・結果】

  1. 間質細胞株(10T1/2、ST2)を骨芽細胞誘導培地で培養すると、骨芽細胞とともにOil red陽性の脂肪細胞が形成された。また、脂肪分化誘導促進薬であるciglitazoneは10T1/2、ST2細胞に脂肪細胞分化マーカーのPPARγ、aP2の発現と脂肪細胞分化を誘導したが、これらの作用はTGF-βの添加でほぼ完全に抑制された。
  2. TGF-β添加により10T1/2において骨芽細胞分化の初期マーカーであるⅠ型コラーゲンmRNA発現は増加したが、中期マーカーのALP mRNAの発現は抑制された。
  3. 骨片上で骨髄腫細胞と破骨細胞を共培養し骨吸収を促進させると、ciglitazoneによる脂肪細胞分化誘導が抑制されたが、TGF-β受容体阻害薬SB431542の添加により脂肪細胞分化が回復した。
  4. 単球に樹状細胞分化誘導促進因子であるGM-CSFとIL-4を添加すると、切断酵素であるTNF-α converting enzyme (TACE)の活性が上昇し、細胞表面上のM-CSF受容体がほぼ完全に切断された。しかし、単離骨髄間質細胞と共培養すると、単球表面M-CSF受容体の発現量は増強しGM-CSFとIL-4による単球からの樹状細胞分化は抑制された。
  5. 骨髄間質細胞はIL-6と共にTACEの内因性阻害因子であるTIMP-3を多量に産生していた。間質細胞のTIMP-3の産生量はTGF-βの添加によりさらに増加した。IL-6は単球のM-CSF受容体 mRNA発現を増強した。また、TIMP-3siRNAにより間質細胞のTIMP-3の発現を抑制すると、共培養した単球の細胞表面M-CSF受容体の切断が増加し、樹状細胞分化の抑制が部分的に解除された。

【まとめ・考察】

TGF-βは間質細胞からの骨芽細胞の終末分化の抑制に加え、間質細胞からの脂肪細胞分化も抑制し、間質細胞を未熟な分化段階に留めることが示唆された。また、間質細胞が産生するIL-6とTIMP-3はそれぞれ単球のM-CSF受容体の産生とそのTACEによる切断の抑制し、単球表面M-CSF受容体の発現を増強する。これらの結果、単球からの分化が破骨細胞側に偏り樹状細胞分化が抑制され、骨破壊と同時に免疫抑制がもたらされると考えられた。骨髄腫骨病変部では間葉系幹細胞の分化が病的に制御され、骨髄腫進展と骨病変形成にとって好適な間質細胞の豊富な細胞環境を形成していると思われる。

   

 

骨病変と腫瘍増殖をもたらす骨髄腫ニッチ

 骨髄腫細胞は、Macrophage inflammatory protein (MIP)-1α、βを産生し骨吸収を促進する(Blood., 2002, 100, 2195-2202)と同時にsFRP-2を産生しWnt-βカテニン経路を阻害することにより骨形成を抑制する (Blood., 2005, 106, 3160-3165)。これらの因子により骨髄内に誘導される破骨細胞や未分化骨芽細胞/間質細胞は、骨髄腫細胞の生存・増殖に好適な微小環境(骨髄腫ニッチ)を形成し、骨破壊性病変が進行しつつ腫瘍も進展するという悪循環をもたらす(Blood., 2004, 104:2484-2491)。