特別講演Ⅰ
「DPC(包括医療)が核医学にどんな影響を与えるか」          
  東京医科歯科大学大学院
   歯科学総合研究科医療経済学教室教授  川渕孝一 先生


 平成15年4月1日より「日本版DRG(Diagnosis Related Group)」であるDPCがわが国の特定機能病院の支払い方式に導入されるという。DPCとは、Diagnosis Procedure Combinationの略で、厚生労働省が作成した新しい診断群分類をいう。問題はこの「日本版DRG」の導入によって何が変わるかである。本発表では、DPCに基づく支払方式を導入した場合の論点とこれが核医学に及ぼす影響について述べることにする。
 DPCに基づく包括評価のポイントは次の3点である。

まず第一は、米国のDRG/PPS(Prospective Payment System) と異なり、一件当たり定額払いではなく、患者一人一日当たりの定額払いとしている点である。実際、国立大学附属病院(医科)の患者一人一日当たりの入院単価を調査してみると、平均値は39,332円で最大値は44,474円、最小値は35,764円であった。一言で大学附属病院と言ってもバラツキが大きいことがわかる。しかし、これが患者の属性を反映しているかどうかは疑問が残る。そこで、厚生労働省は日本版DRGを使って予算配分を行おうと考えたのである。

第二は、良質な医療を適切に評価する観点から、
①重症患者・紹介患者・救急患者の受け入れ実績、
②医療従事者の指導実績、
③新規技術の導入実績、
④医療安全対策の実績等を考慮するという点である。
これは、米国のDRG/PPSの調整係数に該当する。米国では病床数に占める研修医の数や低所得者数の割合によって、一定の割増制度が設けられているが、この考え方をわが国に導入しようとするものである。

第三は当該医療機関に入院した患者については、選定療養として特別の料金を徴収することが認められるということである。これは特定機能病院については、"合法的な混合診療"である「特定療養費」制度を認めるというものである。言うなれば、医療機関別包括評価に手を挙げた「見返り」として、自費請求を認めようというのである。これまで特定機能病院の収入源は概ね保険収入に限定されていたが、これに風穴を開けようというのである。  
それでは医療機関別包括評価はわが国の核医学にどんな影響を与えるだろうか。ここでポイントになるのが、包括範囲である。当局の資料によれば、包括範囲は1998年11月から試行中の国立病院等と同様に
①入院基本料、
②検査、
③画像診断、
④投薬、
⑤注射、
⑥処置、
⑦手術・麻酔にかかる薬剤・特定保険医療材料―で、手術料などの技術料と1,000点を超えた処置は除外されるという。
 核医学を画像診断と捉えると包括対象となっているわけで、場合によっては相当なコストの削減が求められるだろう。

【参考文献】
1)川渕孝一:DRG/PPSの全貌と問題点―日本版診断群別包括支払方式の開発は可能か,㈱時報,1997.
2)川渕孝一:DRG/PPS導入の条件と環境 
求められる日本版診断群別包括支払方式のインフラ整備,㈱時報,1998.
3)川渕孝一:医療改革の工程表~DRG&ICDは急性期病院の常識,医学書院,2001.
4)川渕孝一:医療改革~痛みを伴わない制度設計を,東洋経済新報社,2002.