第49回東京部会総会研究会発表
形状ファントムを用いたSPECT像の基礎的検討(第2報)
東京核医学技術研究会 ◯小野口昌久  中込 俊雄  飯田 恭人  小田 正記  梅沢 千章
            平瀬 清   寺田 慎一朗  遠藤 健一郎  宍戸 敏彦

[1]はじめに
当研究会では、第48回部会総会で形状ファントムを用いたSPECT像の基礎的検討において、空間分解能の評価法で、正方形および正三角形の形状ファントムを作成し、その形状認識が可能かどうか、また、当ファントムの問題点について検討し、その結果、陽性像、陰性像ともに正方形で10mmまで、正三角形は20mmのみ認識できたが、材料にX線フィルムを用いたので、材料によるゆがみ、ねじれ等の問題点があり、材料を加味した再検討が必要であることを報告した。
今回、ファントムの材料には、すべてアクリル樹脂を用い、種類は正方形、正三角形と他に円柱ファントムも用いて、陽性像、陰性像を撮像、同時評価し、検討した。
今回は材料にアクリル樹脂を使用したので、ファントムの材料による像のゆがみ、ねじれ等の問題は解決でき実際の形状認識の比較とフィルター変化による画像比較がある程度期待できると考え、検討報告する。
[2]方法
1.試作ファントムの形状および材料
陽性像測定用ファントムの材料にはメタクリル樹脂を用い、正方形、正三角形のファントムを作成した。陽性像使用ファントムの種類は正方形が15mm、20mm、正三角形が25mm、30mm、円柱が20mmであり、陰性像使用ファントムの種類は正方形が26mm、31mm、正三角形が44mm、50mm、円柱が23mmの4種類とし、ファントムの全長はすべて200mmとした。それとは別に円柱ファントムも用意した。ファントムの片端にはRIを注入しやすいように、ネジ穴を作りネジで止めれるようにした。陰性像測定用ファントムには、陽性像ファントムをそのまま使用した。
配置は内径200mmの円を5象限に分け、半径の外周側から1/3の位置に正方形、正三角形、円柱ファントムを設置した。
個々のファントムの固定板には発泡スチロールを用い、正方形、正三角形、円柱のそれぞれの大きさに合わせて穴をあけ、片側のみ取り付け固定した。また、外容器にはJISで規格されている内径200cm、全長200mmの円柱ファントムを使用し、上記の内容器を装着した。

2.ファントムの測定手順と測定法
2.1線源の作成
注入用線源として99mTc溶液の濃度30mCi/8l(3.75μCi/ml)を作成する。陽性像用ファントムにそれぞれ上記の濃度のRIを注射器などを用いて注入する。この時ファントム内に空気が入らないよう注意し、また、ファントムを固定板に固定する際にはゆがみが生じないようにする。
次に、この内容器を外容器に挿入し、外容器にできるだけ空気が残らないように水を満たす。
陰性像用ファントム作成はそれぞれのファントム内に水を入れ、外容器に挿入後、陽性像ファントと同様(3.35μCi/ml)のRI溶液を外容器内の気泡を除きながら加える。
2.2使用機器および収集条件
使用機器はSIEMENS社製Multi
SPECT3とICONシステムでコリメータはHRである。収集条件は128x128マトリックスで360度を120度5度ステップで収集した。回転半径は13.2cmとし、 収集時間は2cmのファントムで1pix当り1000カウントをめどとした。
2.3画像処理および評価
データ処理条件は、前処理フィルターには9point smoothing(BWFなど3種類)を、再構成フィルターにはRampフィルターを使用した。また、吸収補正にはchang(0.12cm-1)を用いた。
評価は目視とし、陽性像、陰性像ともに認識できる形状を判定した。
表示法はカラーハードコピーで行ない、カットレベルはUpper 100%、LOWER 0%で表示した。
[3]結果
陽性像ファントムでは正方形、正三角形、円柱ともに認識できた。
陰性像ファントムでも陽性像と同様、正方形、正三角形、円柱とも認識できた。
フィルター変化による画像歪みについては
正方形、正三角形とも周波数を大きくするほどシャープになり、小さくするほどぼけて歪みもでてきたが、円柱ファントムは、あまり差がみられなかった。
[4]考察
SPECT装置の日常的・定期的な性能評価、点検を行うことは非常に重要であり、近年、その日常精度管理を目的としたファントムも規格され、使用されている。
従来から、空間分解能の測定には、直径の異なる円柱ファントムが使用されていた。当研究会では、ファントムの形状を正方形、正三角形にし、フィルターを変えた場合の画像の三角性、四角性から評価するものが1つ位あっても良いという考えから、今回、この実験を行なった。
形状ファントム評価において、カメラ本体の均一性、分解能、回転中心のずれ等の調整がきちんとされておれば、画像はそんなに変化するものではないとも考えられているが、今回の実験では、正方形、正三角形、円柱すべて認識可能であった。しかし、フィルター変化による画像歪みについては正方形、正三角形とも周波数を大きくするほどシャープになり、小さくするほどぼけて歪みもでてきたが、円柱ファントムは、あまり差がみられなかった。このことは、従来の円柱ファントム
では、フィルター強調で画像歪みが生じてもあまり差がでないことから、正確な分解能の評価ができていない可能性を示唆しており、今後、ファントムの形状を見直す必要があると考える。
[5]まとめ
1.空間分解能の評価法において、正方形および正三角形の形状ファントムを作成し検討した。
2.陽性像ファントム、陰性像ファントムともに、正方形、正三角形が認識できた。
3.フィルター変化による画像歪みについては正方形、正三角形とも周波数を大きくするほどシャープになり、小さくするほどぼけて歪みもでてきたが、円柱ファントムは、あまり差がみられなかった。
4.ファントムのPartial volume effect等の問題点が画像歪みの原因の1つと考えられていたが、今回の実験では問題にはならなかった。
5.今後、正確な分解能評価ができるファントムの形状を見直す必要があることが示唆された。



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