平成10年10月27日                     通算第299回定例会

脳の疾患について
東京大学医学部神経内科 村山繁雄先生
 臨床?画像(MRI、SPECT)?病理
臨床側としてSPECTの問題点
・絶対値がなかなかわからない点
・再現性の問題
・ 解釈が難しい(同一写真でも放射線科医により読影結果が異なる)
そのため、誰が見てもわかる症例は良いが、そうでない症例は非常に頭を傾げてしまう。
SPECTが明らかに役に立つ症例
・高集積:腫瘍(炎症では低集積となる)
・びまん性集積:局所性であるため、血管障害か炎症である(進行麻痺の症例)
 進行麻痺 梅毒スピロヘータの感染によって中枢神経系が障害を受けて、痴呆が進行している症例であり、最近増加している。思い付かないと病名がわからず、ペニシリンで治療すると治癒するため見逃すと大変なことになる。
・ パターン:前頭葉や側頭葉、後頭葉が有為に低下するなど
東大病院のSPECTの例として、びまん性レビー小体病が剖検で確認できた。(オリジナルの診断はアルツハイマー病である)
 中枢神経系の場合、かなりの症例では死亡後に剖検をしないと確定診断はできない。したがって、放射線科の百瀬先生とはSPECTやPETを実施した症例を追跡し、死亡後に確定診断をして、もう一度戻って検討を行っている。現在10例程度の症例検討ができている。診断が確実について画像所見と一致する場合もあるが、変性疾患といわれている原因がよくわからずに進行する、一般に難病といわれている病気の中では診断の一致率が50%程度である。
 固定した脳のMRI画像を撮っている施設の放射線技師の方は、脳がどのような形でありどうなっているかがわかっていると思うが、ほとんどの方は知らないと思うので簡単に述べる。
脳(解剖)?固定(ホルマリン)?MRIの割面にあわせて切る?肉眼所見?パラフィンにいれる?ほしい切片を染色して組織学的検索を行う
 ホルマリン:強烈な酸化剤(蛋白のS?Sボンドを結合させる。生卵を茹で卵にするようなもの)、防腐作用、殺菌作用がある。
 MRI画像との対比のため、固定した時点でMRI画像を撮ることもある(肉眼所見の時には切断してしまい、三次元の画像が得られなくなるため)。同定したい病変がある場合、生前にあって、固定した後にMRI画像でもあれば確実に病変があることになる。MRIは基本的に生体情報であるため、ものがほんとに変化してそのような画像になっているかを意味するものではない。日本では行っている施設は少ないが、アメリカではかなりの施設で行っているようである。
 SPECTとの関係では、固定前の脳をリガンドを用いて切り出し、解析する方法があるが必ずしも一致するとは限らない。
(真空パックしてある標本を示しながら)生前に撮られたMRI画像になるべく対応するように切断していく。
<症例1>28才男性(死亡例)
主訴:歩行障害、呂律が回らない
現病歴:18才からつまずくようになり、19才頃よりさらにつまずきが多くなる。
24才時に微熱後歩行困難になる。25才時に東大病院入院。
現症:明らかなものはなく、軽い麻痺があるようである。全身の深部反射亢進。両側Babinskyi反射陽性(足の裏を擦ると親指が背屈する現象、正常では出現しない)などの症状はあるが、確定診断できず。
神経心理学的所見:徐々に知的機能が低下する症例の場合には、知能検査にて言語(VIQ)、行動(PIQ)を調べる。
 SPECTにおいて言語野は右利きの場合、左側に95%存在し、左右差を比べる。また、前頭葉、側頭葉との関連も調べる。行動上のものは頭頂葉部分である。
 この症例では、SPECT所見と神経心理学的所見を合わせて、アルツハイマー病となった。年齢的には合わないが、若年性アルツハイマー病という診断で退院となった。
検査所見:髄液に細胞が42個出現している(通常はきれいである)。何らかの炎症性疾患を考えるべきであったかもしれない。
 SPECT画像は機能と形態との相関を見るものであるが、精神科の場合、精神状態つまり感じるや考えるまで扱うが、神経内科の場合、歩くとか喋るとかの行為そのものをみている。要素的な面をみる立場であるのが神経内科である。精神科がコンピュータのソフト的な立場としたら、神経内科はハード的な立場であると言える。
 SPECT画像は機能と形態を見るものであり、機能だけを見るのであれば、脳波が一番有名である。脳波はそれぞれの頭に電極を貼り、波形を得るものであるが、ある部分に徐波が有り、SPECT画像の血流低下部位が一致していれば話は良く合う。脳波は良く汎用されるが、この症例の場合、入院時の脳波には異常はなかった。
 X線CT画像は脳が萎縮しており、病名を直ちには特定できない。
 MRI画像では脳室拡大、脳萎縮、白質にT2画像にて高信号域の病変があるのがわかるが、その後の方針がわからない。その下のスライス面でも同様である。
 他施設で実施したSPECT画像を百瀬先生に見直してもらうと、血流がまだらに低下しているのは異常である。したがって、アルツハイマー病の可能性はまずない。若年発症、痴呆が進行、炎症所見あり、長期間にわたり進行している。最近、適当に抗生剤を使用するので梅毒の症状が不明であり、いきなりこの様な症状が出現することがある。精神科領域では気づかれており、神経内科でもその様な症例がありSPECTの情報が非常に重要な意味を持っていた。
 退院後の髄液所見は正常。自室にて泡を吹いた状態で発見され、救急病院にて死亡。監察医務院に搬送。最初と最後のみ発作を起した。
 標本は脳質が拡大し、頭部全体の皮質の幅がやせた状態であった。SPECT所見で血流がまだら状に低下していることは、皮質がまだら状に破壊されている所見であった。皮質の谷がやせていて山が比較的正常の場合は、血液がうまく行かない時のパターンである。
後交連の割面で中心前回も非常に強くやせている。脳梁後大の割面での皮質は非常にやせている箇所とそうでない箇所がある。後頭葉の割面でも同様である。このようなパターンからも病名はアルツハイマー病でないことがわかる。アルツハイマー病はある場所が破壊されて、その領域が全般に破壊されていくもので、その領域の中で破壊されている箇所と破壊されていない箇所が交互に現われることはない。血液が行かない場合もこの様なパターンにはならない。血液は前大脳動脈、中大脳動脈、後大脳動脈を流れ、それぞれ支配領域が決まっており、この症例の様に皮質が破壊されている箇所と破壊されていない箇所が隣接することは大きな血管では絶対に起きない。したがって小さな血管または病変そのものが直接皮質を冒しているものと思われる。小脳に関してはそれほど大きな所見はない。脊髄で炎症部があり癒着していた箇所がある。患者が背部痛を訴えていたことと一致した。痴呆があると頭部のみに気を奪われて、脊髄を注意しないことがある。SPECTでは頭部のみであるが、MRIにて脊髄を見るべきである。
 これで大体の見当は付くが、診断を付けるために組織を作成する必要がある。わかり易くするために大切片を作り、そのまま髄鞘染色した。中で染まっている箇所が白質で周りが灰白質である。髄鞘染色は20世紀の初めにドイツ人ホルツァーが考えた染色法で、病変のある部位が紫色に染まる。白質に病変があり、皮質に破壊されている箇所と破壊されていない箇所があるのがわかる。破壊されている箇所は、MRIでは単に萎縮として表現されていたが、SPECTでは血流低下として表現されていたものと思われる。他の切片も同様の所見である。脊髄の癒着部位は色素で染色するとよくわかり、硬膜と脊髄の間に繊維性癒着がある。これは一般的には外傷でこの部位が破壊されるか炎症性の病態しかない。脳の部分も肉眼所見で予想されたように炎症細胞が存在し、髄膜炎を起こし、脳の表層が破壊されていた。ある場所では、炎症が脳の中に入り込み脳自体を破壊していた。この様になると髄膜脳炎である。この様な場合には最近、免疫組織化学にて染色する。CD68はマクロファージ(増殖細胞)を染める染色であり、炎症部位が染まっているのがわかる。T細胞(細胞性免疫をつかさどる代表格)を染める染色でも染まっているのがわかる。マイクログリア(外部からの病変に反応する)を染めた場合も染まっている。アストログリア(外部からの病変に反応する)も反応しているが、マイクログリアほどではない。種々のリガンドを示したが、それぞれのリガンドがSPECTに使えるかを検討している。現在は、この様な抗体を使用してSPECTを行うのは意味がないかも知れないが、アルツハイマー病で貯まるβ蛋白の抗体でSPECTを行うことが行われている。
 病理所見をまとめると、びまん性かつ不均一な大脳皮質萎縮。頚髄に強い脊髄、軟膜、硬膜の癒着。リンパ球や組織球を主体とし、部位により重みの異なる、髄膜やVirchow?Robin腔の炎症性組織浸潤。部分的なグリア限界膜の破壊。局所的に強い皮質神経細胞脱落、グリオーシス、不均一な白質髄鞘淡明化。Ziehl?Neelsen染色、Gram染色、Grocott染色、Warthin?Starry染色陰性。
 脳表面を破ることは容易ではなく、髄膜炎よりも脳炎の方がより重い。この病原体として最も有名なのがスピロヘータである。しかし、死亡しているため証明はできないが、今後、若い男性で痴呆がある場合に、梅毒を絶対に逃してはいけない。また、SPECTはびまん性に血流低下と読まれていたが、見直してみるとパッチであった。我々はSPECTは非常に重要であると判断している。
<症例2>28才女性(死亡例)
主訴:歩行困難、意識障害
既往歴:24才両側周辺性ぶどう膜炎。シェーグレン症候群(自己免疫疾患)の疑いと言われる。
 種々の症状を出した時に、当初シェーグレン症候群により脳に炎症を起こしたものと判
断した。
神経学的所見:軽度意識障害。種々の所見がある。
入院時所見:髄液ではっきりとした異常所見がある。自己免疫疾患の時に陽性になる検査所見(抗核抗体)がはっきりと陽性であり、補体C4値も低い。
 CTにて病変がわかるが、血管炎によるものか腫瘍によるものかが問題となった。
 SPECTにて高集積であった。IMP?SPECTにてEARLYとDELAYED両方で集積があった。炎症性疾患ではこのようなことはない。炎症性疾患では低集積になる。FDG?PETにて小脳にも転移病変が発見された。脳室周囲で多発性の場合、まずリンパ腫となる。
 バイオプシーの結果、わずかなかけらの中にしかリンパ腫の細胞が存在せず、マーカー等の染色ができなかったが、形状等からびまん性B細胞性リンパ腫と判断し治療を行ったが、脳原発のリンパ腫は予後不良で7ヶ月後に亡くなった。
 標本は、病変がMRIにて脳梁部が非常に腫れていたのでそれに合わせて、矢状断面の割面を作成した。この割面の病変部より生の材料を採取し、表面マーカーや遺伝子を調べた。拡大すると、脳梁部が破壊されているのが良くわかる。その後、固定を行った。固定後に再度見ると、脳梁の前部がかなり肥厚している。冠状断の割面では、病変部に固まりがあるのがわかる。染色を行い、悪性リンパ腫の細胞が浸潤していた。
 この症例も、SPECTの診断が正確であった。
<症例3>死亡例
 後頭葉有意に血流低下の場合、一般的にクロイツフェルト・ヤコブ病をまず考え、頭頂葉有意に低下の場合には、アルツハイマー病を考える。前頭葉有意に低下の場合は、非常に多くのめずらしい病気がある。非アルツハイマー病前頭葉型痴呆という。
 最近は、アルツハイマー病と診断されている症例の中に、びまん性レビー小体病というめずらしい病気が混じっていて、それはSPECTのパターンで頭頂葉よりもさらに後ろの頭頂後頭葉の連合野も含めて血流が低下すると言われている。
 標本では、前頭葉の萎縮はわかるが、その他の部分はそれほどわからない。動脈硬化はほとんどなく、側頭葉の萎縮も比較的軽い。側面から見ると、前頭葉の萎縮は比較的あり、側頭極も萎縮がある。前面でも萎縮がはっきりしている。割面でみると、皮質の幅が全体的に少し痩せている(症例1とは異なる)。この様なパターンの場合、SPECTでは全般的な血流低下となる。
 この病気の特徴は扁桃核と呼ばれる箇所が比較的破壊されやすく、海馬支脚と呼ばれる海馬と扁桃核を結ぶ箇所が破壊されやすいことであるが、MRIで描出することは困難であり、SPECTも外側の描出は良好であるが、内側の描出は今の状態では難しい。また、視床下窩は種々の免疫で破壊される。SPECTにて血流が低下している頭頂葉において、肉眼所見で萎縮が非常に強い場合はわかるが、この症例の場合はわからない。頭頂後頭葉の前後野の後頭葉に近い部分まで血流低下が生じることが特徴で、この病気では視覚幻覚(物がないのにあるように見えること)に対応すると言われているが、標本およびMRIでは良くわからない。しかし、SPECTではこの部分の血流が低下している。この症例では、形態と機能の解離があるものと思う。一般に、後頭葉は痴呆性疾患でクロイツフェルト・ヤコブ病を除いて保たれる特徴がある。
 一般的に後頭極が萎縮していれば、クロイツフェルト・ヤコブ病と考えてよいが、発生頻度は人口100万人に対して1人である。
 小脳においては、左側を矢状断、右側を水平断にしている。これは、MRI画像が矢状断であったり、横断像であったりするためである。両方の評価ができるため、できるだけ画像と一致した像を得たいためである。白質接点の色がさび色になっている。パーキンソン病の場合は真白になる。びまん性レビー小体病はある意味でパーキンソン病とアルツハイマー病の中間的な病気である。これを正確に評価することは現在、基底核に放射していることを評価することにより行っている。現在治験を行っているドーパミントランスポータSPECTにて評価が可能である。
 白質を染色すると、レビー小体の存在がわかるが、パーキンソン病においても存在が認められる。しかし、大脳皮質にも皮質型レビー小体が多数出現する。このことが診断の根拠となる。
 変性疾患の場合、ある部位が比較的にびまん性に破壊されるため、びまん性な低下を来たす。しかし、大脳皮質の場合、皮質の神経細胞のエネルギー消費よりもそこに投射してきている繊維連絡(いわゆるシナプス)の末梢が消費するエネルギーの方が遥かに多い。SPECTで頭頂後頭葉の血流が低下しているにもかかわらず、皮質が強く破壊されているように見えないのは、繊維連絡が障害されているため、その部分でエネルギーが低下していることがこの方法ではわからないためである。例えば、右前頭葉が破壊されれば左小脳が破壊される(Crossed cerebellar diaschisis)ことは、繊維連絡が非常に多くの血流消費をもたらしていることの大きな証拠である。小脳は、小脳皮質の細胞が消費するエネルギーよりも、そこに投射している繊維のエネルギー消費の方が遥かに大きい。したがって、SPECTでは右大脳の血流が低下すれば、基底核、視床を通じて、反対側の小脳に行く繊維動作が低下するため、小脳の血流が低下する。MRIと違い、SPECTは機能ということを考慮しなければ、病理と正確には対応しない。
 この様な症例の情報を、次の患者に活かす様に対応している。
<文責 目崎高志>

教育講演
 「脳の構造と機能」
                    東京大学医学部神経内科 櫻井正樹先生
1.神経系とは
 ?末梢神経??体性神経(運動神経、感覚神経)
       ?自律神経
 ?中枢神経?脳、脊髄

2.脳の発生
 脊椎動物の中枢神経の基本デザイン
胚の正中背側部に位置する神経管(外胚葉の正中背側領域の細胞が肥厚して神経板と 
なり左右の縁が合して管状となったもの)から発生したもの。
      ↓
 神経管は脊髄では中心管となり、脳では脳室となる。

3.中枢神経系の概観
 脳:?前脳?大脳?大脳皮質‥新皮質、旧皮質、古皮質
          線状体?新線状体(被殻、尾状体)、淡蒼球、扁桃体
      ?間脳(視床、視床下部)
   ?中脳
   ?後脳:菱脳、橋、
       小脳
       髄脳、延髄
 脊髄

 機能的な脳の概念
 大脳基底核:被殻、尾状核、淡蒼球、視床下核(間脳)、黒質(中脳)
       運動の制御?この部分のダメージがパーキンソン病の原因となる。
 大脳辺縁系:海馬、扁桃体、帯状回など

4.中枢神経細胞の構成
 細胞構成
 ?ニューロン
  神経細胞体(核、タンパク合成)→軸索→神経終末(他のニューロンの神経細胞の    ↓                       樹状突起とシナプスを作り接続)
  樹状突起
  スパインと呼ばれる棘を出し、他のニューロンの神経終末部と信号伝達を行う。
 ?グリア
 ?星状膠細胞(astroglia, astrocyte)神経細胞の支持、栄養補給、脳血液関門への関与
 ?乏突起細胞(oligodendroglia)髄鞘を作る
 ?ミログリア(miroglia)他のグリアとは異なる、組織球に相同(掃除役)

5.神経細胞の電気活動
 ニューロン内での興奮の伝達(conduction):電気的伝達(細胞体→軸索への伝導)
ニューロン間の伝達(transmission):神経伝達物質による化学的伝達(シナプスでの 
伝達)

 興奮性細胞:内側陰性、外側陽性に荷電している。
興奮性細胞興奮→ナトリムチャンネル脱分極→細胞外のナトリムが細胞内に入り、内
側が陽性に荷電→ナトリウムチャンネルが近隣のナトリウムチャンネルを開いて活動
電位が発生する。
活動電位を発生した細胞は、ナトリウムチャンネルがイナプチベイトされ、カリウム
チャンネルが再分極する事により、興奮直後は再び興奮しなくなる。
活動電位が、神経終末に伝わりシナプスに達すると、シナプス近傍のカルシウムチャ
ンネルの脱分極を起こす。この脱分極が起こると、シナプス内にカルシウムが入り、
伝達物質をシナプス後受容体に向けて放出して化学的な伝達を行う。
 
シナプスに伝達された興奮電位は、あるいき値を超えた場合のみ細胞体から軸索へ向
けて発生する。
 
 興奮シナプス後電位(EPSP):あるいき値を超えた場合に発生する活動電位
 抑制シナプス後電位(IPSP):興奮を抑制させる。EPSPと逆の電位

 神経系では情報をパルス密度に変換して伝達している。

6.神経伝達物質
 ?アセチルコリン、アミノ酸(グルタミン酸、GABA)
 ?モノアミン(ドーパミン、セレトニン、ノルアドレナリン)
 ?ペプチド(サブスタンスP、エンケファリン、VIP etc)
 
 ドーパミン:パーキンソン病、精神分裂病等に関与している。

7.伝達物質受容体
 ?イオノトロピック受容体:早い伝達?ナトリウム、カルシウムによる電位変化
  (ionotrpic)        数10?100msecの早いスピードの伝達を行う。
?メタボトロピック受容体:遅い伝達?イオンチャンネルを介さず、Gタンパクなど  
  (metabotropic)            のホルモン受容体を介した伝達

8.シナプス伝達の可塑性
  機能的変化:刺激を繰り返し与えると情報の伝達効率が向上する。
        単調な刺激を与えると抑圧が起こる。
  構造的変化:発芽現象
     シナプスの形態変化?シナプスの数を増す事により伝達効率の向上を高める。 

9.中枢神経系の機能の一般原則
  階層性
  並列分散処理系
  可塑性を持つ

10.大脳の機能地図
 大脳機能は分業化されている。Uモ各領野に機能が分けられている。
 大脳深皮質は6層の構造を持ち、各領野において層構造が異なる。
深皮質は様々に分化しているが、マスタープランは1つであると考えられ、1つのマス タープランが解明されれば、全体の解明が容易になる。(情報処理の様式)
その研究が進んでいる領域が、後頭葉の視覚野である。

11.視覚
 大脳皮質の中でも視覚皮質及びその関連領野は最も理解が進んだ部位である。

視覚野に入る前の網膜細胞は、視細胞UモバイポラセルUモエピネラガングリオセル(出 
力細胞)の順 
 の層を経て情報処理を行なっている。
 ↓
 視床の外側膝状体(6層からなり、左右各3層で神経繊維を受ける) 
 ↓
 後頭葉の視覚野
 ↓
 視覚野Uモ側頭葉(形) ventral strem
    Uモ頭頂葉(位置、運動) dorsal strem
 側頭葉、頭頂葉にて高度な情報処理が行われる。 (並列分散処理)
 ↓
並列的に処理された情報が、最終的に脳のどの部分で統合され、統一的な主観体験が生 じるかは解明されていない。

 視覚野における可塑性
 ?眼優位シフト
  長期間、片眼を閉じていると、そちら側の細胞の数が少なくなる。
 
 ?方位選択性シフト
  猫に縦縞だけを見せて育てると、縦縞に反応する細胞はあるが、その他の方位につ
  いての細胞が無くなってしまう。

12.学習以外の可塑性
 ?発達期の可塑性
  盲人の点字の読み方
   @先天性、あるいは12歳位までに盲人なった場合
     ↓
    使われないはずの視覚皮質で点字を読む。
   A成人になってからの盲人
     ↓
    体性感覚皮質で点字を読む。

 ?末梢感覚神経損傷時の体性感覚皮質の部位再現の変化
   末梢で感覚神経が切断されても、別の部分の神経がカバーするようになる。
 ?末梢運動神経のつなぎを変えても徐々に、つなぎ変えた筋肉を動かせる様になる。
   
 13.大脳の側性化(lateraization)
 高次機能を担う連合野に行くほど側性化が強まる。
 ?言語 
  利き手、利き脳?右利きの圧倒的多数は左脳が言語野
          左利きの1/4は、右大脳半球に言語野がある。
 ?脳梁離断患者とタキストスコープ実験
  脳梁離断(左右の大脳の交通遮断)患者で、左脳に言語野がある場合に、左眼のみ 
  に物体を見せる(情報は右脳に入力される)
  脳梁が離断されているため、その情報は言語野のある左脳に送られないために、言
  葉では表現できない(左脳では物体を見ていないと認識してしまう)しかし左手で
  その物体を触ることによって認識できる(右脳の感覚皮質に右眼で見た物体の情報
  が伝わっているため)

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