心臓ポジトロン核医学の基礎
東京大学医学部放射線科 講師 大嶽 達 先生
心筋血流(血流予備能)、
心筋代謝(糖・脂肪酸・酸素代謝など)、
交感機能、レセプター
血流測定に於いて、ポジトロンCTがSPECTに比べてまさっているのは、吸収補正を正確にしている、画質がよい、心筋血流予備能の定量ができることなどである。
代謝測定の内、脂肪酸代謝についてはSPECTでも評価が可能だが、糖代謝、酸素代謝の評価についてはPETでないとできない。交感神経機能の評価はSPECTでも可能だが定量についてはPETがまさる。
<心筋血流(血流予備能)>
心臓血流測定に用いるPET用核種は、いろいろある。
最も多く用いられているのは、13NーNH3( アンモニア )である。画質が比較的良く、合成も容易である。問題点は、他の薬剤に比べ側壁の集積が少し下がる傾向があることである。定量において、血中代謝産物の影響をうける問題点はあり、extraction fractionはある程度良いが、完全ではない。繰り返し検査をするとき、半減期が約10分というのはやや長く、できれば5分くらいならば理想的である。
15OーH2O(水)はアンモニアについでよく使用されている。extraction fractionは100%と考えて良いが、画質はよくない。拡散物質でありアンモニアのように心筋内に蓄積してこないので、15O-CO(一酸化炭素)でブラッドプールを減算してやる必要がある。半減期が2分と短く繰り返し検査するのには適するが、画質に影響を与えている。
82Rb(ルビジウム)もよく用いられる。血中代謝産物がない点、定量精度は13NH3とH215Oの中間くらい。心筋への集積が均一な点ではアンモニアよりすぐれている。欠点としては、ポジトロンのエネルギーが高いので画像にボケがでることである。半減期が短く複数回検査にむいている。ジェネレータによる供給なのでサイクロトロンがなくともできるが、高価なためコストがたいへんな面がある。日本では現在使用不可。
62Cu-PTSMはジェネレータによる供給核種だが、日本でも用いられる可能性がある。肝集積が高い、extraction fractionは低いなどの欠点がある。
11C-acetate。血流をみることができるといわれる。画質は良好で、各部への集積は均一。定量の研究がなされている。半減期が20分と長いことや合成の問題があり、繰り返しの検査には向かないといわれる。
(臨床画像の紹介とコメント)
13NーNH3によるbull's eyeマップ:82Rbや62Cuに比較して側壁の取り込みが高く表示される傾向がある。側壁と中隔の比率を計算してみると82Rbや62Cuが1程度なのに対し、13NーNH3では1.1-1.2程度を示す。安静時と負荷時でも同じである。
Tlに比較すれば13NーNH3の方が心基部などの画質は良い。82Rbの画質は、ボケなどがあり13NーNH3より劣る。Tlよりはすこしいいようである。62Cu-PTSMの画像では肝臓へのとりこみが強い。
bull's eyeマップで比較すると、82Rbは均一な表示になるが13NーNH3は側壁が低く、62Cu-PTSMでは肝臓の集積の影響を受けている。
H215Oの画質は、ご覧のようにあまり良くない。bull's eyeマップなどに表示してみても、診断に困るような場合がある。
(虚血心疾患の診断率)
SPECTに比較して、PETにおいては吸収補正で各部位の集積が均一であることや高画質であり心基部病変の診断がしやすいことなどから、虚血性心疾患の診断率が上がるといわれている。
いろいろな報告をみると、SPECTではSensivity 86%、spesifisity 54%程度、PETではSensivity 95%、spesifisity 95%程度であるが、これはやや差がありすぎる印象がある。
同一症例で201TLと82Rbを比較した報告によれば、82RbのSensivity 85%程度、201TLは80%弱である。同じく心筋梗塞の既往のある症例で、82RbのSensivity 75%程度、201TLは65%弱である。この程度が実際のところだと思われる。画像による症例を比較してみると、心基部病変の描出やbreastによる前壁の欠損の程度が201TLより82Rb像のほうがまさっている。
(PET血流予備能評価の意義)
血流予備能を評価できることにおいて、PET検査は意義がある。
TLのSPECT検査におけるWASH- OUT RATEは同じような意味を持つものの、いわば間接的に見ているものであり、精密にものを言うのは困難である。
PET血流予備能評価の意義は、まず虚血性心疾患の診断率向上に寄与することが期待される。しかし実際のところそれほどは寄与しないと思われる。狭窄の程度にある程度の相関はするが、狭窄度を推定できるほどではない。また多枝病変で全体の予備能が下がるデータが期待されるが、これも難しいようだ。
現在我々が期待しているのは、動脈硬化の早期発見や薬物治療効果の判定などについてである。高脂血症、糖尿病、高齢者など、び漫性動脈硬化をきたしている患者さんの場合、有意の冠状動脈狭窄がなくてもジピリダモ−ルに対する血管拡張反応が低下するためか、血流予備能の値が低く出る。このことは虚血性心疾患の診断には障害になるものである。しかし動脈硬化の診断には寄与できると考えられる。
現在、COLD PRECSSER TEST対する血管拡張反応から血管内皮障害を評価することや、負荷に対する諸問題(ジピリダモ−ル(DP)量、βブロッカー、カフェイン)、HCMでの血流予備能の検討などがを進められている。
(データの紹介)
安静時のアンモニアのダイナミックデータ。10秒ごとにデータをとっている。
TIME-ACTIVITY CURVEをみるとジピリダモ−ル負荷によって心筋血流が増加するのが良くわかる。3コンパートメント解析などで血流量をもとめて何倍の血流増加になるのかを求める。DP負荷で正常の若年者は4倍くらいに増えるといわれている。
血流量の定量をするために以前は動脈採血をしていたが、現在は左室のカウントの変化から入力関数を取る方法によっている。放医研の吉田先生などいろいろな人によって、このような非侵襲的な方法が確立されてきた。
(EFのデータへの影響について)
EFはデータに影響を与える。
微小粒子法の心筋血流量に対する13NーNH3による心筋血流量の相関では、高血流領域で13NーNH3による心筋血流量が低下する傾向がある。
微小粒子法の心筋血流量と15OーH2Oによる心筋血流量の相関では、300[ml100g min]までの 全域でほぼ直線的な相関となるが、画質の問題はある。
3NーNH3による心筋血流量に対する62Cu-PTSMの血流量の相関では、高血流領域で血流量が低下はより顕著である。
(冠状動脈病変診断について)
冠状動脈血流予備能と冠状動脈狭窄にはある程度の相関が得られるが、ばらつきも大きく予備能から狭窄の程度をいうのは難しいと思われる。再分布率などと比較した血流予備能の狭心症、心筋梗塞などの診断への寄与については、感度、特異度、精度ともあまり差がない。
(動脈硬化の診断と血流予備能)
動脈硬化の診断にたいして血流予備能の測定は大きな意義を持つと考えられる。
長い間コレステロールが高い状態が続くような、家族性高脂血症などの患者さんにおいては、75〜90%といった有意の狭窄がない場合でも、血流予備能のあきらかな低下が見られることがわかった。数年に渡ってコレステロールや中性脂肪が高い状態がつづいているような二次性高脂血症の場合においても、少し低下する。また総コレステロールの値およびLDLコレステロールと血流予備能の値が、逆相関している。
これらのことから動脈硬化の早期診断に血流予備能の測定が役立つのではないかと考えている。また血中コレステロールを下げる薬による治療の前後で、血流予備能の値が改善することが分かってきた。
(糖尿病における動脈硬化の診断)
糖尿病においても動脈硬化を伴う。この点に付いても血流予備能の測定によって早期診断ができると考えられる。
インスリン抵抗性とは、インシュリンの効きが悪くなり血中の糖の骨格筋への取込みが悪くなる状態をいう。一般に糖尿病においては、インスリン抵抗性が出てくることによって、動脈硬化を起こすといわれている。
しかし我々の研究によれば、インスリン抵抗性よりも血糖値が高い状態が続くことの方が以下に示すデータから動脈硬化や血流予備能の低下に関係しているのではないかと考えられる。
・血糖値が高い状態が続くことと血流予備能が逆相関している。
・averege FBSと血流予備能においても逆相関している。
・インスリン抵抗性をしめす(患者の)インシュリンクランプ時のブドウ糖消費量と血流はあまり相関しない。
・食事療法にもかかわらず血糖値があまり下がらない人や、経口糖尿病薬を使っているようなひとにおいては、血流予備能が下がっている。
・中性脂肪の高い状態、糖尿病で、インスリン抵抗性のある場合とない場合において、共に血流予備能が下がっている。
・インスリン抵抗性で中性脂肪の高い場合、あるいはインスリン抵抗性がなく中性脂肪の高い場合で、血流予備能が下がっている。
・家族性高脂血症、二次性高脂血症、中性脂肪の高い状態において、血流予備能が下がっている。
・年齢による動脈硬化の進行で、血流予備能が下がっている。
負荷によって血流予備能に差がでるかどうかについて、ジピリダモール0.56mg(通常量)と量を増やした0.8mgで差がなかったという報告がある。しかし私の印象では、薬剤負荷だけでは負荷としては不十分ではないかということと、この報告はは若い人のデータでもあり、実際の臨床すなわち高齢者や動脈硬化のあるひとでは又違うように思われる。
ジピリダモール負荷を行う時はカフェインの摂取は24時間禁忌とされているわけだが、コーヒーなどを摂取してしまうと血流が増えなくなってしまう。カフェインの血中濃度と血流予備能の関係は、逆相関になっている。検査時にカフェインの禁忌は非常に重要だと思われる。
心移植時の直後の拒絶反応のあるときと回復期における血流予備能は、回復期の方が有意に高い。拒絶反応のあるときは心血管内皮障害がおきて予備能が低下するといわれている。
βブロッカーは、ジピリダモール負荷に対してはあまり問題がない。運動負荷に対しては影響がある。
<心筋代謝(糖・脂肪酸・酸素)>
(糖代謝 18F-FDG)
糖代謝は心筋Viabirityの診断によく用いられている。ただ検査条件や糖尿病などの影響など問題はある。我々はそれが糖尿病のインシュリン抵抗性の測定に役立つと考え、用いている。
糖尿病患者は、糖負荷時はインシュリンがあまりでないために、血糖値が上がり18F-FDGの取り込みは低下する。空腹時は正常者よりもFDGの取り込みはさらに低下する。インスリンクランプ時はインスリン抵抗性によりやや低下する。インシュリンクランプとは、点滴によってブドウ糖とインシュリンを入れながら、血糖値を一定の値に平衡させつつ検査するものである。
正常な場合はインシュリンが効いてブドウ糖が骨格筋に取り込まれ、必要以上のブドウ糖が骨格筋に取り込まれる。糖尿病のひとでインシュリン抵抗性がある場合、骨格筋の中のグルコーストランスポーターがうまく働かず取り込みが悪くなる。すなわちglucose disposal rate が低下する。PETを使って骨格筋のFDGを測ると、glucose disposal rateと骨格筋糖消費量よく相関するのがわかった。
(Viable心筋検出原理)
Viable心筋とは単位心筋あたりの安静血流が低下していて、壁運動をさぼってしまうような心筋をいう。いわゆるHibernating myocardiumというViable心筋である。一般的にViabirityの測定には、現在TLの再静注が最もよく用いられている。Viable心筋は一般的には血流予備能が落ちていることが多いので、201TLの再静注で検出できる。しかし血流予備能が落ちているからといって、そのすべてがViable心筋ではないことに注意する必要がある。一方、201TLの再静注でfill inがないところにViable心筋が存在しないということはある程度いえるとおもわれる。
Viable心筋においては酸素が不足して酸素節約のために代謝が脂肪酸よりもグルコースに傾くという代謝シフトがおこる。このことを利用して、FDGなどによる検出がおこなわれる。ただ、臨床的には201TLの再静注で十分と思われる。
PETによる心筋病態の判断は三つに分類される。
PET normal:血流(NH3,Rb,H2O)、糖代謝(FDG)ともに正常
マnormal。ここで壁運動が悪くなればViable心筋ともいわれる
PET ischemia:血流低下し、糖代謝は相対的上昇
マViable心筋
PET scar:血流、糖代謝ともに低下している場合
マNon Viable心筋
FDG PETの検査条件は非常に難しい。
空腹時:正常心筋の代謝が主に脂肪酸となり虚血部の糖の集積が検出しやすいが、画像は悪く正常部への集積もありうる。
糖負荷時:画質は良好で残存心筋量は検出しやすい。正常心筋の代謝が主に糖代謝となり虚血部への集積を検出しにくい。糖尿病では画質不良となる。
insulin clamp時:糖尿病でも画質良好定常状態となり定量しやすい。それ以外は糖負荷時と同じ。
low dose insulin clamp時:糖尿病でも画質良好定常状態。正常心筋代謝は糖・脂肪酸の両方を利用。虚血部の糖代謝利用も検出しやすい。
インスリンの濃度に対する心筋における糖代謝の度合は、正常心筋に対しViable心筋は全体として左方にシフトしていると考えられ、この差によって画像上検出できるが、糖負荷をかけすぎるとどちらもプラトー領域となってしまい、区別がつかなくなってしまう。また糖負荷が少なすぎても同様である。
(同一症例における各検査条件による比較画像)
この症例では、NH3安静時に領域で50%程度の集積低下を示す領域が見られるが、同じところが、NH3・DP負荷時ではより集積が低下し、Flow reserveでは領域が広くなる。また空腹時FDGでは集積を示すが、糖負荷時FDGでは逆に欠損となり、low dose insulin clamp 時FDGでは集積を示す。このように検査条件は、かなり難しい。
糖尿病の場合はさらに問題になる。対策としては、十分なインシュリンの皮下注射、インシュリンクランプ法、通常の糖尿病治療と場合によるインシュリン皮下注射で血糖値を下げておくこと、などになる。
(糖尿病の画像例)
NH3・FDGの像にで経口糖負荷においては血糖値が上昇し、FDGの集積が悪く画像がよくないが、low dose insulin clamp 時FDGではミスマッチがよく描出されている。
正常例と糖尿病例の骨格筋と心筋へのFDGの集積を比較すると、正常にくらべ糖尿病の骨格筋へのとりこみのほうが落ちているのが分かる、心筋の方は骨格筋に較べるとそれほど落ち方ははっきりしない。
NIDDMのFDG画像では、正常例にくらべ、経口糖負荷の画像は心筋への取り込みが非常に悪い。インシュリンクランプの画像はある程度よくはなるが、正常例よりは悪い。これに対し、IDDMのFDG画像では、正常例とくらべ経口糖負荷、インシュリンクランプの画像ともにあまりかわらない。
心筋における糖消費量MGU(Myocadial glucose uillization)をみると、インシュリン抵抗性のある糖尿病は、他の高脂血症/非インシュリン抵抗性糖尿病/コントロールとくらべて落ちている。
骨格筋の糖消費量SKGU(Skeletal muscle glucose uillization)をみると、高脂血症、インシュリン抵抗性糖尿病ともにおちている。骨格筋の糖消費量はインシュリン抵抗性に比例するのではないかと考えられる。
病態ごとの心、骨格筋糖代謝と動脈硬化(血流予備能、CFR)の変化は下記の通りまとめられる。
骨格筋糖代謝 心筋糖代謝 CFR
NIDDM メメ メ メ
NIDDM HT(-) メメ メ メメ
NIDDM HT(+) メメ マ メメ
NIDDM SU HT(-) メ マメ メメ
NIDDM SU HT(+) メ マ メメ
IDDM マメ マ メメ
軽症高血圧 メメ ム -
高HG メメ マメ メ
(脂肪酸代謝 11C-Palmitate)
脂肪酸代謝も心筋Viabilityの診断にすこし使われてはいるが、BMIPPが臨床で使われるようにもなった頃からPETのパルミチン酸はあまり使われなくなってきている。その理由の一つが糖に比べ定量が正確にはできないことF標識の脂肪酸ができてきたことなどである。
(画像による症例)
FDGが集積しない部分に脂肪酸が集積している。
時間放射能曲線でを描くと、下降曲線が急な傾きの部分からゆるやかな傾きの部分へと二相性を示す。この一相部分の量と傾きがβ酸化による代謝を示している。これらは半定量というくらいのものであったが、最近きちんとした定量をする報告も出てきた。この報告によればPETによって実測された脂肪酸代謝量と理論計算値とがよく相関している。
F標識の脂肪酸による報告では、運動時、安静時、DP負荷時の時間放射能曲線をとり、パトラック法で定量すると脂肪酸の理論値にちかい値が出ている。
(画像による症例)正常心筋において、空腹時は脂肪酸は代謝されて時間とともにACTIVITYが落ちていくが、糖負荷時はあまり変わらない。これに対して拡張型心筋症においては脂肪酸代謝がわるく、空腹時も画像上あまり変わらない。また、糖負荷時は逆に低下する傾向がでている。
(酸素代謝ACETETE)
アセテートを用いて測定される酸素代謝が、心筋Viabilityの診断に有用だという報告がある。また血流の定量に有用との報告もあるが、これは酸素代謝を見るときに他の薬剤をつかわずとも血流をも見ることができる、という程度のこととおもわれる。このほか他の心筋代謝との関連、関心領域をとり有効に酸素か使われているかをみる心仕事量(efficiency)、いろいろな病態での酸素代謝、などがある。
心筋に取り込まれたアセテートの減り方の時間放射能曲線では、安静時にくらべ、ドプタミン負荷をすると酸素代謝が亢進してカーブの傾きが強くなる。この時、心筋酸素消費量とアセテートの減り方の指標(Turnover rate constant) が比例すると云われている。
ワシントン大学では酸素代謝がなされているところをバイアブルとして比較するとFDGより良い診断すると心筋Viabilityの診断が得られたとしている。ただ、ミスマッチが有るところとないところで両方同じくらい酸素消費が落ちているということからワシントン大学の報告に疑問も出されている。別の報告でも、心筋Viabilityをみるのには酸素代謝やFDGよりも血流のほうがむしろよいというものがある。このように、酸素代謝で心筋Viabilityの診断ができるのかは若干の疑問が出されている。
このほか、アセテートを用いて血流を定量できるという報告、甲状腺機能亢進症で心筋酸素代謝が上がり、治療で下がる報告、肥大型心筋症の肥大部では血流はかわらないが酸素とブドウ糖代謝が落ちるという報告などがある。
<交感神経末端、レセプター>
SPECTでMIBGをつかってなされている。
PETでは11C-HED、18F-FMRなどがMIBGとほぼ同様の画像が得られ、一応定量ができる。11C-epinephrine、11C-phenylephrineというのもある。HEDはMAOで分解されないのに対し、これらは分解される。
このほか、アセチルコリンレセプターとして11C-QMB、アドレナリンレセプターとして11C-CG12177というのがある。
心不全においては、MIBGでよく診断されているのと同様に、11C-HEDの集積低下がみられ、定量で心不全の程度と相関する。また11C-CG12177の減少をみる。
虚血、梗塞などにおいては、MIBGと同じようにHEDなどのとりこみが低下あるいは欠損する。
心移植では、神経再生に1ー3年かかるといわれるが、11C-CG12177は変化しない。
(心移植症例のデータ紹介)
MIBGのBULL'S EYE表示上、交感神経末端が落ちている領域がある。この領域においてアデノシン負荷による画像では他の領域と変わらず血流が増えるが、交感神経刺激(コールドプレッシャーテスト)による画像では血流が増えないことがわかる。
(動物実験データの紹介)
動物で交感神経末端を障害した場合場合、アセチルコリンレセプターではあまり変化がなく、アドレナリンのほうが上がっている。
(心移植症例の画像データ紹介)
移植前に較べ移植後は11C-HEDの集積はほとんど見られず、移植後1ー2年立ったところではLAD領域はすこしでているが、その他はほとんど見えていない。 (終)