金子 宏 [藤田保健衛生大学医学部内科学(心療内科)]
消化器心身医学研究会は消化器疾患における心身医学的諸問題を検討し、臨床医学の発展・向上に寄与することを目的に、昭和48年(1973年)3月に第1回の学術集会が九州大学(心療内科)名誉教授、中川哲也先生を当番世話人として開催されました。その後、日本消化器病学会の総会・大会の時期に開催され平成20年5月には第70回の学術集会が予定されている歴史ある研究会です。私は平成19年から佐々木大輔前代表幹事(現名誉会長)の後任として代表幹事を拝命しております。 消化器心身医学研究会は日本心身医学会および日本心療内科学会の認定研修研究会となっています。心身医学は心身症、すなわち心理・社会的因子が発症や経過に影響を及ぼす器質的あるいは機能的身体疾患の病態生理、治療法を研究対象とする学問であり、その目標はbio-psycho-socio-ethical (ecological)な存在である心身症患者さんへのよりよき医療の提供といえます。 |
|
感情を表す言葉として「胃が痛む」「断腸の思い」という消化器症状を含むものが多数存在することからも、気分(情動)が胃腸に影響することが古くから分かっていたことが推定できます。2007年は、いわゆるストレス学説、ストレス潰瘍の生みの親であるカナダの生理学者ハンス=セリエ博士生誕100年の年でもありました。セリエ博士はストレスが脳に作用し自律神経系、内分泌系、免疫系を介して消化器臓器を含む全身に様々な異常をきたす「脳から腸」への影響を約70年前に提唱しました。この20年は「腸から脳」、すなわち内臓知覚の研究が盛んとなり、今まさに消化器心身医学のキーワードとして「脳腸相関」が挙げられます。
分子生物学の進歩、PETやfMRIなどの脳イメージ技術の進歩により、とりわけ機能性消化管障害のさらなる病態生理の解明が可能な時代となってきています。これらの技術によって得られたデータを消化器心身症の患者さんの医療に役立たせるためには消化器病学、心身医学をはじめ基礎医学、予防医学など学際的な共同作業・研究が不可欠です。ややもすると「精神論的な心身医学」「臓器偏重の消化器病学」と対立軸としてとらえがちであったわけですが、現在は建設的統合へのパラダイムシフトが必要であり、可能な時代といえます。さまざまな分野の領域の方が参加していただくことで、このことが実現できるのではないでしょうか。多くの皆様のご参加をお待ちしております。 |