令和3年10月より「染色体ゲノムDNA のコピー数変化及びヘテロ接合性の喪失」をマイクロアレイ染色体検査によって検査する手法が保険収載されました。この検査の適用疾患においては英国サンガーセンターが運用するDECIPHERデータベースに掲載されたDECIPHER症候群が参考にされており、本邦においてはLOHによって発症する4疾患を加えた計59疾患が対象となっています。この中には指定難病に登録されている1p36欠失症候群、4p欠失症候群、5p欠失症候群、スミス・マギニス症候群等が含まれていますが、それ以外は指定難病や小児慢性特定疾病にも含まれていません。今後は保険診療によるマイクロアレイ染色体検査によってゲノムファーストで診断されるようになってきますが、疾患の臨床的な理解が進んでいないため診療場面で混乱が生じることも考えられます。そこでマイクロアレイ染色体検査によってはじめて染色体微細構造異常が診断された患者さんとそのご家族が、スムーズに適切な医療や福祉のサポートが受けられるようにするため、これらの疾患の「疾患概要」と「診断の手引き」を作成し、診断基準や診療ガイドライン等の策定につながるエビデンスを収集する必要があると考えました。そこで本研究においてはマイクロアレイ染色体検査の対象となる疾患となるにも関わらず、指定難病となっていない染色体微細構造異常症候群と診断された患者の実態調査を行い、疫学調査も加えてこれまで明らかになっていない実態を明らかにします。その成果を生かして希少疾患患者さんの当事者団体の立ち上げサポートや小児期から成年期まで切れ目のない移行医療体制の構築のための検討を行います。

研究代表者 東京女子医科大学ゲノム診療科・教授 山本俊至