医学,生命科学以外の本の書評.というより,どんな本だったかのメモです.何かの参考になれば.
公安警察の手口,昔,革命的だったお父さんたちへ,「できる人」の話し方,歴史の中の文学・芸術,マンガ日本の古典 太平記,国家の罠,
◎:面白い,△:面白いが金を出して買う本ではない.X:金と時間の無駄&読んではいけない
◎鈴木邦男.公安警察の手口.筑摩書房.¥680.2005/9読了.
警察が,泥棒と人殺を追い掛け回している刑事警察だけと思ったら大間違いである.警察の出世コースは公安である.著者は有名な一水会代表→顧問.公安と渡り合うのが商売である.といっても,極端に偏った見方や政治的見解が書かれているわけではない.公安という,警察の中でも特別に見えない組織が,どうやって組織防衛を図っているのかが非常にわかりやすく書いてある.公安の歴史は左右両翼との暗闘の歴史だから,戦後日本史の非常に良い勉強にもなる.あなたのイデオロギーがどうあろうと,”世間一般常識”として必読の書である.
◎林信吾,葛岡智恭.昔,革命的だったお父さんたちへ.-団塊世代の登場と終焉- 平凡社.¥740.2005/9読了.
1946-48年あるいは,もう少し年代を広げると51年までに生まれた団塊の世代の一番の特徴は、自分達がそう呼ばれることに何のてらいもないことである。翻ってわれわれの年代は、”ポスト団塊世代”と呼ばれると虫唾が走る。→もっと読む
×ケビン・ホーガン.「できる人」の話し方.その見逃せない法則.PHP.¥1300.2005/8読了
この種のハウツー物の本の問題点を解決できていない。この本に書いてあることは本当だ。しかし本当だという事実と、あなたが自分で本当だと証明できることとは全く別問題だ。outcome-based
thinking、Win/Winが大切だと理解できても、実際の仕事や家族との関係で、どう使っていったらいいのかちっともわからない。それはちょうど車の運転教習本を読んだだけでは車が運転できないのと同じ事で、これはおそらく本書に限った欠点ではなく、考え方や行動の指針を示した書物の共通の限界なのだろう。事例検討をふんだんに盛りこむことである程度は回避できるのだろうが、限界がある。
また、もう一つの問題点として、本書で勧める方法が役立たない状況の例示が少なすぎる。
書いてあることは間違ってはいない.特にOutcome-based thinking,言い換えれば,pragmatism,”何を期待してそれをやるのか?成果を得るためには,もっと他にやるべきことがあるのではないか?”という常に自分に問いかけることの大切さを強調している点は評価できる.しかし,セールスマン以外はこの本をよく思わないだろう.Win/Winの関係,Outcome-based
thinkingという概念は,もっと普遍的に使われるべきなのに,どうやって舌先三寸でガラクタを売り込むかという事例ばかりがずらずらと並べてあるだけ.
◎池田浩士.歴史の中の文学・芸術.河合文化教育研究所.¥750.2005/8読了
祭りの時には,大勢が踊り,騒ぐ.家の中に閉じこもっていると,変人,あまのじゃくと謗られる.実際,現場の間近に,観衆として参加するだけでも楽しい.近所の神社のそれだけではない.例えば,サッカーのワールドカップも世界規模の祭りである.楽しいから参加者が増える.楽しいから広がる.
神社の祭りやワールドカップには期限がある.期限を設けるのには,それなりの理由がある.なぜだろうか?祭りの期限がないとどうなるかを考えてみればいい.
楽しいのならば期限を設けなければいいのに.祭りが終わった後の寂しさが嫌だから,何も,無理に止めなくたっていいじゃないか.もっと続けよう.そういう意見が大勢を占めることがある.わかりやすい身近な例はわが国のバブルゲームであろう.しかし著者によれば,その典型がナチズムであるという.
ナチが支配していたドイツでは,誰もが主人公だった.社会の一員として,自分が,新しい時代を切り開いていると思った.決して,圧政下で罪もない人々が苦しめられていたわけではない.ユダヤ人狩りもしかりである.ゲシュタポだけがいくら頑張っても,数十万,数百万人を収容所送りにして虐殺することはできなかった.北朝鮮と名がつくとアサリまでもが迫害されるのと同様に,ユダヤ嫌いが国の隅々まで普及することが是非とも必要だった.ごく一般の人々が,正義感を発揮して隣人を告発しない限り,アウシュビッツを満員にすることはできなかった.
祭りには闘争がつき物である.各町内からの山車を競い合う,体育祭でチームに分かれて得点を競い合う,裸の男が玉を取り合う,ワールドカップへの出場権争い・・・・そして爆弾の投げ合い,殺し合い.
ナチが恐怖政治でドイツを支配していたと誤解すると,我々は次の祭りに対する準備を怠ることになるだろう.祭りは,多数の参加,楽しさ,興奮によってはじめて成り立つ.祭りには,上からの圧政なんか一切無用である.
国民の皆様の多数の支持を得た監視カメラ,自主規制,そして国民の皆様による非国民(かつてはユダヤ人,現在は北朝鮮とその支持者,”反日”と呼ばれる人々)への攻撃・・・祭りはもう始まっている.
◎さいとうたかを マンガ日本の古典 太平記 上中下各590円 中央公論社
太平記入門書としてよくできている.ただし,登場人物が多すぎるので,顔がうまく描き分けていない.後醍醐天皇と足利尊氏と楠木正成がみな同じ顔に見えるのは,私の識別能力が悪いからだろうか.
◎佐藤 優 『国家の罠』 新潮社 ¥1600
2005/4読了
私は,美学と聞くと全て胡散臭いと思っていた.胡散臭くない美学に出会ったことがなかった.日野資朝が佐渡で首を刎ねられて以来,美しく生きることは不可能になってしまった,この本を読むまでは,そう思い込んでいた.→続きはこちら