宇宙飛行士にならなくても

(油井さんは、航空自衛官出身。限られた操縦士しかなれないテストパイロットをつとめ、ありとあらゆる飛行機に搭乗してきたスゴ腕パイロットとして知られています。との紹介文の後に)
(宇宙飛行士は)自分の死を含め、直視するのが不快な現実を見つめ、対応を準備するのが仕事です。交通事故や自分の死などは、考えたくない事態こそ事前に想定しておくことが重要なのです。油井亀美也 緊急事態に備える

人 は必ず死ぬ.だから患者もいつかは必ず死ぬ.ただ,今回の入院で絶対に死んでもらっちゃ困る.患者の死というババを絶対に抜きたくない.そして,ここから 一日も早く笑顔で出て行ってもらいたいから,あなたは必死で働くわけだ.(ちなみに,ホテルみたいに居心地いいとか,患者のことをお客様扱いする病院っ て,治療なんかそっちのけで,「患者様」から金を取ることしか考えていない病院じゃないのかな?もしあなたがそう考えたことがないとしたら,自分の仕事の 意義が全然わかっていないことになる)

自分は必ず死ぬからそれに備える.備えるのが今日で早すぎるわけがない.自分が死ぬことに対して今 日から備えるのならば,自分が業務上過失致死で身柄を確保され,刑事や検察官に恫喝され,取調室のカメラで見えないように机の下で足を蹴られながら調書を 取られる状況に,今日から備えなくていい理由なんてどこにあろうか.塀の中に入る自分を想像するのは,棺桶の中に入る自分を想像するより,はるかに簡単な ことだろうに.

近き火などに逃ぐる人は、「しばし」とや言ふ。身を 助けんとすれば、恥(ハヂ)をも顧みず、財(タカラ)をも捨てて遁(ノガ)れ去るぞかし。命は人を待つものかは。無常の来る事は、水火(スヰクワ)の攻む るよりも速(スミヤ)かに、遁れ難きものを、その時、老いたる親、いときなき子、君の恩、人の情(ナサケ)、捨て難しとて捨てざらんや。(徒然草 第五十九段)

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