勝者なき戦いと裁判
やや長い前置き:一体「勝利」とは何なのか?「戦い」における不条理
    戦いに勝者がいるとは限りません。いや、そもそも勝者とは誰でしょうか?もし真の意味での栄光を勝ち得た者と定義するのならば。その意味では、第二次大戦でも勝者はいませんでした。なぜならより多くの人間を殺した方が「勝者」と呼ばれたからです。旧ソ連が大祖国戦争と名付けた独ソ戦も例外ではありませんでした。この戦いにおける犠牲者は、ドイツ側が1075万8000人、ソ連側が1470万人でした(Wikipedia)。
    ここで指摘が出てくるかもしれません。「数字の写し間違えだろう。しょっちゅう戦争のことを引用するくせして独ソ戦の勝者も知らないのかと笑われるぞ」。いいえ間違いではありません。私が独ソ戦の勝者を知らないわけがないでしょ。わざわざ断り書きを書く必要もないと思っただけです。「より多くの人間を殺した」の前に「敵味方に関わらず」という語句を付けなかっただけです。
    後退や逃亡を試みて戦闘部隊の後方に控える特殊部隊(ザグラドオリャードイ)の機関銃になぎ倒されたソ連兵の数はスターリングラードだけで数週間で1万人を超えたと言われています。しかし、その数は上記の1470万人には含まれていません。なぜならばこのような赤軍の実態が少しづつ分かってきたのは、独ソ戦終了後40年以上経った80年代末、ゴルバチョフによる「グラスノスチ」(情報公開政策)が始まってから以降だったからです(「スターリングラードの戦い」の噴水は、いまどこにある?)。だからソ連側の犠牲者数を正確に表現すれば「1470万人以上」なのです。

コロナとの戦いにもまた勝者はいなかった
    コロナとの戦いにも勝者はいませんでした。製薬企業もまた勝者になれませんでした。栄光どころか薬害訴訟までに発展して一敗地に塗れたワクチン。そのワクチンを開発した企業が何故勝者たりえましょうや。コロナとの戦いで生まれたのは敗者だけでした。それは既に流行初期の2020年3月の時点で、とんでもないでっち上げが数多く生まれていたことからもわかります(新型コロナ裁判-「スペイン風邪の再来」というでっち上げ-)。かの有名な42万人死亡説(2020年4月15日発表)も、実は既に3月あるいはそれ以前に発生していたデマのn番煎じに過ぎなかった程です(「新型コロナで死亡する日本人は57万人」米著名シンクタンクが掲載する報告書の中身)。それ以後でっち上げの連鎖、嘘を誤魔化すための嘘の上塗りが繰り返されました。でっち上げの数、嘘の上塗りの数だけ敗者が生まれた。それがコロナとの戦いでした。

グローバルダイニング訴訟に見る裁判所の姿勢
どんな戦いにも終わりがあります。世界大戦となったコロナとの戦いの後に待っているのが裁判です。その裁判で誰がどんな役割を果たすのでしょうか?既に始まっている裁判で見てみましょう。2021年3月22日、グローバルダイニングは“104円”の損害賠償求めて東京都を提訴しました(「狙い打ち時短命令は違憲・違法」 グローバルダイニングが“104円”の損害賠償求めて東京都を提訴した理由 ITmedia 2021/3/22)。

下記はこの訴訟で私が気づいた点です。
●都は、弁護士をつけず、松下博之訟務担当部長ら4人の指定代理人が出廷した。(東京地裁、都に時短命令を発した根拠の更なる説明求める 第1回口頭弁論期日 2021/5/21)→「特定任期付職員(総務局法務担当課長)の募集 東京都総務局 令和3年6月30日」←明らかに泥縄。法曹資格を持った法務担当者無しで期日に臨んだことになります。都は最初から白旗を掲げていたことがわかります。
グローバルダイニング訴訟、小池都知事や尾身会長の証人採用認めず 東京地裁 第5回口頭弁論 2021年12月13日 タイトルだけ見ると原告不利のように見えますが実は全くの逆でした「原告の言うことはよくわかったから被告側の証人をわざわざ呼んで話を聴く必要はない。これ以上余計な手間暇かけずにさっさと裁判を終わらせましょう」そういう裁判所の姿勢が明らかです。下記がこの記事からの抜粋です。
東京地裁はこの日、原告側の証人として、長谷川耕造グローバルダイニング社長、時短命令で抑止できた新規感染は「4日間で約0.081人」と算出した京大・藤井聡教授(都市社会工学)の採用を決定したが、被告側の証人は採用しないとの判断を示した。

原告は前回の期日で、小池百合子東京都知事や政府コロナ対策分科会の尾身茂会長、東京都コロナ対策審議会の猪口正孝会長などの証人申請をおこない、その後さらに西村康稔前コロナ対策担当大臣も追加で申請。都側は、証人全員について採用は不要との意見書を出していた。

裁判所は、被告側の証人を採用しない理由について、国家賠償請求が認められるか否かを大きく左右する東京都の注意義務違反などは評価の問題であり、客観的事実に関してはすでに出ているもので足りると判断したことを挙げた。

長谷川社長は、期日後に開かれた会見で、「どのような過程で(時短命令等の)判断がされたのかとても興味ありますが、そこに関してはすでに明白であるので、(小池都知事などを証人採用せず)立ち入る必要がないという裁判所の説明は、聞けば納得はできました」と話した。

原告側の弁護団によれば、次回期日の2月7日に長谷川社長と藤井教授の証人尋問がおこなわれ、3月14日には結審する予定だという。同社代理人の倉持麟太郎弁護士は、「この類の行政裁判としては、極めて速いペースで進行しています。当事者・裁判所双方が協力すればこれだけ速く進行できるというのは、法曹界としてもいい前例を作れるのではないかと思っています」と語った。

こうして見ると、主張の根拠となるfactと良質なデータを準備して、裁判所と傍聴人の双方に「コロナとの戦い」の異常さ、不条理をわかりやすく説明する=聞く人の良識に訴えるという基本中の基本が、新型コロナ関連の他の訴訟の場合でも最も重要になってくることがわかります。戦いには勝者はいなくても、裁判には勝者がいるのです。

新コロバブルの物語
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