専門医って何だろう

専門医制度が、学会の資金集めの為とか,医者の自己満足のためという人がいるが、それは邪推というものだ.専門医とは、自分はこういう患者さんしか診療できません(他の患者さんには無力・無能です)という謙虚な心をもった人々である。そういう謙虚な人たちだから、きっと患者(「患者様」と呼ぶかどうか、専門医試験問題に出てくるだろうか?)のために尽くしたいと考えているに違いない.

専門医制度が患者のために役立っているかどうか,どうやって検証されているのだろうか?不思議なことに、そのような仕組みを持っている専門医制度はどこにもない.そもそも,専門医が,肝心の患者から評価される仕組みがどこにもない.そのような仕組みもなしで,専門医の免許更新もへったくれもないだろう.

では専門医ができあがるまでの仕組みは患者のことを考えているだろうか?たとえば,専門医の試験問題.そのほとんど(全て?)は公開されていないので,例題を見てみよう.

私でも,一度も見たことのない,そしてこれからも一生見ないであろう病気も,また一度も見たことのない所見もたくさん載っている.四半世紀商売やってきて、Lesch-Nyhan症候群も、Lance-Adams症候群、点頭てんかん、Lennox-Gastaut症候群、いずれも一度も診たことがない。Friedreich病は、いまだに日本人には見つかっていないし、脊髄労は一例だけ、亜急性連合性脊髄変性症は2−3例診たかな、家族性ALSも一例だけ。それはお前が真っ当な神経内科診療を一度もやっていないからだろうといわれるかもしれないが、では、その真っ当な神経内科診療とは、蝶のコレクションのように、他人が見ない珍しい病気ばかりを診る商売なのだろうか。

この例題は私が受験した20年前と何ら変わっていないから、実際の試験はもっとむずかしくなっているだろう。だから、現在でもでも、私でも,一度も見たことのない,そしてこれからも一生見ないであろう病気も,また一度も見たことのない所見がもっともっとたくさん出ているだろう。

こう言うと、お前みたいな怠け者の年寄りがいるから、専門医試験の更新制度が必要なのだと主張する御仁が出てくるであろうことは想像に難くない。

しかし、そもそも、専門医を輩出する試験制度そのものが、本来の目的である良質な診療アウトカムと関係ないとしたら、専門医資格を取ったばかりの新進気鋭であろうと、私のような老いぼれであろうと、専門医そのものの存在意義自体が問われることになる。

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