医者の悲しい性との別離
「笑うと癌が消える」と聞いて,あなたはどう反応するだろうか?医者でなければ,「知っているよ」とか「そうだろうね」と同意する人が十人のうち最低一人や二人はいるものだ.「そうかもしれないね」と言ってくれる人まで含めると半分以上になるだろう.
ところがそれが医者になると,そのほとんどは,「そんな馬鹿な」と一笑に付すだけ.ごく一部の暇な医者が「対照群をどう設定し,被験者数をどうするか」等と早速試験デザインを考えるのが関の山だ.
「タバコは史上最悪の発がん物質である」というドグマを信奉できるのに,「笑うと癌が消える」という物語を「未検証の仮説」「エビデンスが無い」として棄却する.「笑うと癌が消える」と聞いて,「なるほどそれはうまい話だ.だったら自分も今日からいつも笑顔でいられるようになろう.できた癌が消えるぐらいだから,笑顔は最強の癌予防になるだろう」と思えない.それが医者の悲しい性である.
しかしそんな性とさよならするのは決して難しいことではない.例によって患者さんに助けてもらえばいいのである.患者さんに向かって「笑顔は最強の癌予防策です」とにこにこしながら言えばいいのである.「こいつはできる奴だ」と評価してくれる患者さんが残り,「この医者は信用ならん」と判定を下す患者さんは去って行く.その分あなた診療に余裕ができて,診療料金表に笑顔=無料と書き込む発想も生まれるはずだ.
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