医者は薬の添付文書を読まないとの噂は,私が学生になる、はるか以前から広く流布している.しかし,どこまで具体的なデータが提示されているのか,誰も知らない.
○果たしてそれは本当なのか?読むのは?読まないのは?どんな診療科の,何年目の,勤務医・開業医が読むのか?
○なぜ読まないのか?ただ面倒なだけなのか?いつも馬鹿にしている厚生労働大臣が発行した文書だから,どうせろくなものが書いてないだろうという先入観からなのか?ありがたいお上が承認したものだから,有効性も安全性も担保されているから,敢えて自分で文書を読んで確認するまでもないと思うからか?MRからの情報提供などの代替の情報源があるからか?
○医師が添付文書を読まないことで,アウトカムとしてどんな悪いことが起こっているのか?それは検証済みなのか?
添付文書は,PMDAの最も重要なアウトプットである.分厚い審査報告書が医師から全く顧みられないのはやむを得ないとしても,添付文書ぐらいは読んでもらいたいと,審査チームの面々は思っている.しかし,それさえも無視されるとなると,我々は何のために仕事をしているのか?彼らはそう悩んでいるだろう.
今回提示された問題は、審査にとって、根本的な問題です。処方に対する医師のパターナリズムの強さ
ゆえに、以下の一般的な懸念は確かに広く流布しています。
○審査の最も重要なアウトカムである添付文書が、標的集団である医師に読まれていない。
○まれに読まれる場合でも、適切な診療行動変容に結びついていない。
一方で、医師が添付文書を読まない、添付文書は医師の行動に影響を与えないというエビデンスがあるのでしょうか?私は寡聞にして存じません。これは根源的な問題ですから、世界一のコンサル会社の社是のように、やはりfact-basedでないと、これから、我々が何をするにしても、行動するだけのモチベーションにはなりえないでしょう。
添付文書に対する医師の態度、添付文書が医師の行動に与える影響が、わかっていないとしたら、医師の年齢、診療科、労働形態(開業医、勤務医)といった背景要素も知りたいです。
このような研究があれば教えてください。なければ、是非とも必要です。医者に任せていると、自分達のパターナリズムを崩すことになるので、決してやらないでしょう。厚生科研か何かでリードしないといつまでたってもできません。