1996年度”商品研究大賞”入選作(論文要旨のみ掲載)

(本論文の著作権は商品科学研究所にあります.この要旨は商品科学研究所の許可を得て掲載しました)

商品としての旅館の魅力を取り戻すには

ー生活の場としての快適さをめざしてー

私たちのふだんの生活では,日本的な良さがどんどん失われていく.だから旅館はますます貴重な存在になっていくはずである.しかし旅館の数は減り続けている.なぜだろうか? それは旅館に生活の場としての魅力が欠けているからである.これまで旅館の経営者の多くは,”伝統”という言葉を誤解し,旅館を改革する努力を怠ってきた.旅とは,場所を変えてより快適な生活を求める行為である.だから旅の拠点となる旅館は,家庭よりも快適な生活の場でなくてはならない.

そのために,この論文で私は次のことを提案した.
1) 食事の自由:素泊まり,あるいは朝食のみの食事提供として,夕食を宿泊客の自由にする.また,旅館の中で宿泊客が自炊できるようにする.
2) 長期滞在に適した環境づくり:コンビニエンスストアやコインランドリーの併設,トイレ,洗面所の改善.
3) 地域社会との結びつきを強める:宿泊客に地域の行政サービスを提供したり,地域社会での楽しみを知ってもらう.
4) 新たな客層の開拓:特に増え続ける高齢者や障害者向けの設備とサービスを充実させる.
5) 個人,家族の宿泊客を大切にする:1人旅の受け入れ,個室での食事の対応.
6) インターネットの多面的な活用:宣伝,フロント業務を合理化するばかりでなく,宿泊客が自宅や勤務先とインターネットで自由に連絡がとれるようにして,長期休暇を支援する.

旅館は,庭園,温泉,畳の部屋と床の間といった,他の宿にはない独自の資産を持っている.その資産に憧れる人はこれからも増え続けるはずである.以上のような改革により,旅館を生活の場として整備すれば,その人気は必ず取り戻せる.

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