テレビではしょっちゅう,リスク細分型自動車保険(あの40%割引とかいうやつ)の宣伝をしている.この種の自動車保険は,ドライバーや自動車の安全性に細かく等級を付けて,その等級に応じて保険料を定める方式を採用している.これは,98年に自動車損害保険の規制が緩和されて,商品を工夫できるようになったためだ.
自動車損害保険の場合にはこのような規制緩和がすでに行われているが,医師や病院が加入する賠償責任保険は,国の規制でがんじがらめにされている.損害保険会社がオプションのメニューを決めたり,被保険者のリスク別に保険料を設定したりなんてことは夢のまた夢.これは,医療のような”非常に専門性高い”分野では,損害保険会社が”勝手に”商品をデザインしてはならないからだとされている.
日本の医者は何と幸せなのだろう.お前はヤブで事故率が高いから賠償責任保険料もうんと高くなる,あるいは保険に入れない,なんて憂き目には金輪際遭わないというわけだ.
ドライバーは酒酔い運転で免許取り消し.野球選手はストライク三つで打席から退かなくてはならない.そして職業に貴賎はないのに事務職と鳶職では生命保険の保険料がまるきり違う.なのに医者は何回空振りしても同じ保険料で保険に入れる.
”10年間訴訟のないあなたには,医師賠償責任保険料が半額!!”なんて,テレビで宣伝が始まらない限り,医療ビッグバンなんて本物ではないよ.