看護師不足の実態は?
では日本は看護師の過不足状況はどうか?というと,施設,地域によって大きな違いがあることも手伝ってから,信頼度の高い網羅的調査はなかなか見あたらない.辛うじて参考になるのは,日本看護協会が毎年実施している,病院看護実態調査だろうか.この中で「2025 年に向けた役割を果たすための看護管理上の課題」と題した表の中に「看護職員の不足」というキーワードがあり,施設カテゴリーごとの数字が出ている.
一方,介護職員については,介護労働安定センターによる介護労働実態調査が詳細なデータを出しており,外国人労働者の受け入れ状況も,この調査結果に載っている.
『介護の仕事をしている外国人労働者について、「いない」は 91.4%、「いる」は 5.4%であった。また、「いる」5.4%のうち、外国人労働者を受け入れた経緯は、「日系人」が 17.5%で最も高く、次いで「留学生、就学生」、「EPAによる受け入れ」の順であった。外国人がいる事業所のうち、「その他」58.6%には、日本人の配偶者が含まれている可能性が高い』(5ページ 3 外国人労働者について)
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英国で看護師不足が深刻に EU離脱の余波で 日経新聞 2019年5月28日
【ロンドン=今出川リアノン】英国で看護師など社会保障を支える人材が不足している。これまで欧州大陸からの移民が働き手だったが、欧州連合(EU)離脱を機に英国を離れていることが一因だ。代替として英語圏のインドやフィリピンでの採用を増やす動きが相次ぐ。両国の看護師の英国流出が加速すれば、アジアでの医療人材の取り込みを目指す日本の医療機関の戦略にも影響が出る可能性がある。英イングランド南東部にあるオックスフォード大学病院では高齢者をケアする看護師の姿が目立つ。准主任看護師アンドリュー・カーターさんは「看護師を確保するのが難しくなっている」と語る。日本と同じく高齢化が進む英国では、看護師不足が深刻だ。英医療シンクタンクのキングスファンドなどによると、現在イングランドだけでも3万人以上の看護師が不足しており、5年後には7万人が足りなくなる。
背景にあるのがEU離脱だ。これまで看護師の主な担い手はポルトガル、イタリア、スペインなどEU域内からの移民だったが、2016年の国民投票で英国がEU離脱を決めたことを境に、新たに入国する人が激減した。離脱すれば居住権を持ち続けられるかどうかや、これまでのようにビザなしで働けるかが不透明になったためだ。
規制機関である看護・助産師評議会によると、EU各国から新たに英国に入国した看護師と助産師の数は19年3月末までの1年間に約1千人と離脱決定前の9分の1の水準に落ち込んでいる。こうした中、人手不足を補うために注目されているのがアジアからの人材だ。
オックスフォード大病院は17年秋からインドやフィリピンに出向いて採用をし、これまで90人を採用した。主任看護師のサム・フォスターさんは「手術担当看護師など、英国で人材育成が足りていない専門分野で戦力になっている」と説明する。複数の英国の病院が同じように採用目的でインドやフィリピンを訪れているという。
フィリピン人看護師ザイラ・パズさんが働く別の英病院でも、毎月新たに3~4人、母国から看護師が採用されてきている。パズさんにとって海外に働きに行くうえで英語圏であることが重要だった。「言語の壁があっては看護師として納得のいくケアができない」と話す。
医療分野での人手不足は先進国で共通の課題だ。世界保健機関は30年までに経済協力開発機構のなかの31カ国で110万人の看護師が不足すると推定する。ドイツもフィリピンから看護師を呼び寄せている。日本では今年4月に新たな在留資格「特定技能」が設けられ、介護など人材不足が深刻な分野での外国人に就労機会を拡大する方針を示した。ただ、英語が堪能なアジア人にとって日本語で働くハードルはなお高い。
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