やれ人が足りない,やれ過労死だ,やれ薄給だ,やれ訴えられる身にもなってみろと,医者が盛んに文句を言う世の中になった.しかし,連中は医者の仕 事を減らすにはどうすればいいのかという対策を全くと言っていいほど提案しない.
医学部の定員を増やせと言うのかと思うと,そうはっきり言うでもないらしい.税金を投入しろと公言して攻撃されるのが怖いのか,競争が激しくなって 自分が落ちこぼれるのが怖いのか,理由ははっきしない.
人が増えないならば,仕事の量を減らすしかあるまい.しかし,彼らの今やっている仕事が不必要だとは誰も言わないだろうから,全体の仕事量は減らせ ない.ならば,今,医者がやっている仕事を,医者以外の職種に明渡すしかないことは自明の理である.しかし,医者はその用意があることさえ表明しない.一 体どうしてもらいたいのだろうか?
人を増やす具体的な方策も示せず,仕事を減らす用意もないのなら,勝手に過労死するがいい.
実は,医者がやる個々の診療行為自体は,習得に何年も必要なものではない.例えば内科で最も高度な技術と信じられている外来での面接,身体診察でさ え,しっかり教育すればナースプラクティショナーNPで十分であり,実際に,米 国ではNPが無医地区で立派に診療活動をしている.
アメリカの真似だといって拒否せず,こういう先例の実行可能性は十分検討すべきである.
何?NPの養成はどうするかって?そのくらい,自分で考えな.いつもできない理由をたくさん考えつく能力をそちらに回せば,簡単だ.
アメリカ人にできるのに,彼らよりもはるかに素晴らしい医療サービスのパフォーマンスを発揮している,しかもそれは自画自賛ではなく,WHOのお墨 付きなんだと,いつも自慢している日本人に,NPの教育と養成ぐらい,できないわけがないじゃないか.
実際に日本にも助産所,接骨院・整骨院の伝統があるし,近年でも,訪問看護ステーションという立派な実例がある.優秀な訪問看護師の観察能力は,医 者顔負けである.実は日本の医者も,それはわかっている.→内 科医の悪夢,
実は内科ばかりではない.私の知っているある高名な呼吸器外科医は,”看護師が麻酔科医を補佐する『看護麻酔士』の資格を新設すべきだ”と公言して いる.
医者が失業する世界.それが悪夢のわけがない.患者にとっても,そしてもちろん医者にとっても甘美な響きを持った夢である.医者がお払い箱になるよ うな夢の世界の実現を目指すのが,医者の本来の仕事である.
それなのに,医者に本来の仕事をさせずに,医者に頼り切った国民の皆様と,ちやほやされていい気になって自分の仕事を増やしていった医者.これら双 方に,医者が過労死する世界を生んだ責任がある.
津久井宏行 日本のバイト医師の仕事は米国のPhysician Assistant並み(2007. 11. 16 日経メディカルオンライン) (下記抜粋)
医師という人材資源の有効活用を
今回の日本滞在中に私が行った業務のほとんどは、米国ではPAが担っている内容だった。日本にはPA制度がないことや法規制などから、これらの業務を医師が担わなければならない。
また、こういった業務は、外科手術などに比較すれば訴訟リスクは格段に低いにもかかわらず、逆に給与が高かったりする。これはどう考えてもおかしい。これでは、医師の負担が多い科(外科、内科、産婦人科、小児科)からの医師離れを防ぐのは無理である。
PA制度の導入をはじめ、医師免許を持った人材資源をもっと有効活用することは、疲弊しきった日本の医療を改善する一助になるのではないだろうか。