COVID-19の脅威:未だ季節性インフルエンザを超えず
パンデミックを起こす疾患間でその脅威の大きさ比べる時、最も頑健なのは全死亡である。その意味で季節性インフルエンザよる,世界での死亡数を考えてみると,33カ国(世界人口の57%)における1999-2015年のデータから、インフルエンザに関連する死亡を調査した。結果、季節性インフルエンザに伴う呼吸器疾患死は世界で年間29万人-65万人10万人当たり4.0-8.8人=100万人あたり40-88人)と推定されている(Lancet. 2018 Mar 31; 391(10127): 1285–1300)。

一方、COVID-19による地球全体の全死亡は、2020年5月18日現在,季節性インフルエンザの下限に近い316,732人である。また100万人当たり死亡では、世界一頑健な疫学的データが得られるであろうと思われるアイスランドで29である。どちらの数字も季節性インフルエンザを下回っている。さらに、季節性インフルエンザの場合にはワクチン、治療薬がある状況下でのデータである点も考慮すると、現在のCOVID-19の脅威が過去の季節性インフルエンザを大幅に上回るとは結論できない。

もっとも,西浦博教授が2020年4月15日の記者会見でおっしゃったように日本だけで42万人の死者が出るとなったら話は別だが。あれから1か月,昨日(2020年5月18日)の時点での日本でのCOVID-19による死亡数累計は774名。4月15日の170名から,604名。一日平均で18.3名。この増加ペースが続くと仮定すると(*)42万人の死者が出るまでに63年かかることになる。その時は残念ながら私は死んでいるから,西浦説の真偽のほどを確認することはできない。1977年生まれの西浦教授も生きていたとしても106歳だから,63年前の記者会見のことを思い出せるかどうかも怪しいが,誰か若い人に私の代わりに西浦名誉教授にインタビューしてもらうことにしようか。いや,私はそれほど気が長いほうではないので,適当な時に中間解析結果を解説してもらうことにしようか。たとえば1000人を超えた時に,これからの見通しを,彼の大好きな記者会見で語ってもらうとか。

*新規重症者数も死亡者数も既に減少傾向にあり,増加ペースは今後鈍ることはあっても加速することはない。これに対し,「いや第二波,第三波が来て,それで42万人が死ぬんだ」という向きは,西浦教授と一緒に記者会見で説明いただくことにしよう。

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