再びサルの教育について

患者が医者をどう教育すべきかは前に述べた.今回は製薬会社が医者をどう教育すべきかについて述べる.なあに,そんなにむずかしいことはない.患者による医者の教育の場合と原則は同じである.つまりやたらに無駄な餌はやらないということだ.

新薬の説明会ではロビーにセルフサービスのコーヒーサーバーでも出しておけばよい.会が食事の時間にかかるようだったら,会場に臨時の売店でも出して弁当を売ってくれれば親切だが,間違ってもただで食事なんか出しちゃだめだ.自分の食う物ぐらい自分で用意させればいいんだ.同じ医者の集まりでも,学会なんかみんなそうやっているじゃないか.

そんなところで飯を食わせなくても,いい薬なら医者は必ず使う.逆に料亭で作った幕の内を奮発して配っても,イカサマ薬だったら売り上げは伸びないだろう.サルどもはそんな弁当のことなどすぐ忘れちまう.会が終了したあとの”懇親会”なんてのも同じことだ.懇親会がないと,ぶうぶう言うサルが必ずいるはずだが,そんな乞食根性むき出しのサルに限って物忘れが激しいから,どの会社の懇親会でどんな薬の宣伝をしていたかなんて,次の日にはけろっと忘れちまう.

論文のコピーとか,スライド作りとかも,営業の人間がこそこそ注文とってやらないこと.製薬会社が出資して別会社を作って堂々と金を取ってやればいいんだ.リストラ対象の余った営業マンはそちらで仕事をやってもらうようにすれば人材活用にもなる.

大体,薬なんてものはレコードや車と違って,本当に役に立つか立たないかが勝負の分かれ目で,宣伝で売れ行きが左右されるべき商品ではない.いい薬,どうしても必要な薬は黙っていても売れるもんだ.宣伝しなけりゃ売れないような薬はすなわち費用対効果の悪い商品なのだから,作るのも売るのもやめるべきだ.

そのかわり製薬会社にもっと充実させてもらいたいサービスがある.まず第一にDI活動の充実.副作用情報の公開にはどの製薬会社も本当に消極的だ.そんな会社の作る薬は信用できない.電話をかけても,”そういう副作用の報告は今までにありません”と何も調べもせずにすぐさま電話口で即答して下さる.”あんた調べもしないでよくもそんなに自信を持って答えられるもんだな”と私にどやしつけられるのが落ちなのに.会社の教育が悪いのだ.クレーム産業の代表格の○○ハウスにでも出向させて研修させるのがよろしい.

薬物間相互作用とか,妊娠中に服用を避ける薬とか,自社製品に関係のない一般的な情報提供も積極的にやってもらいたい.メルクマニュアルのような,医者が本当に頼りにするような情報提供してこそ,その会社の評価と信頼度が上がるというものだ.

メディカル二条河原へ