質的研究の戦略

質的研究って、大規模試験なんかと比べたら、はるかに面白そうだし、自分にもできそうだし、これから、22世紀に向けて長期的なトレンドになっていくと感じていても、何をどうやって進めて行ったらいいのかわからないと思っている方のために、以下に効率的なbrain stormingの材料を提供します。一方、ここまで読んで、こいつ何を言っているのかわからないという方は、読むのは時間の無駄です。

第一に質的研究は、決して目新しいものでも、特別なものでもないと気づくことです。質的研究は、実は症例検討そのものです。ただ、従来の症例検討は、生物学的側面だけを扱ってきた。質的研究では、行動科学・心理学・社会学といった、人間に特有な側面に力点を移して人間を研究します。人間の人間たる所以で人間が抱えている問題を研究する。それが質的研究です。

第二に質的研究は、資金ゼロで、種も仕掛けも不要で。今すぐにでも始められるということです。正確に言うと、あなたが重度の発達障害でない限り、あなたはこれまで質的研究をずっとやってきました。そう、あなたは、あなた自身を対象に、当事者による研究をやってきたのです。

第三に質的研究は、誰にでもできるということです。というか、質的研究は医療者だけで独占すべき研究ではない。というより、患者の協力(というよりむしろ主体的な共同研究者としての参加)なしには、質的研究は成り立たないということです。つまり、患者自身による当事者研究をやってもらう必要があるのです。

第四に質的研究は、一般市民のリテラシーを向上させます。医療者の父権主義に頼らず、患者自身で当事者研究を進めれば、当然、リテラシーが向上するのは自然の理です。典型的な例が、べてるの家です。そこで行われている当事者研究は、統合失調症に対する患者自身のリテラシーを、どんな医療者も及ばないほどの水準までに、飛躍的に向上させました。医療者がべてるの家の活動に驚愕するのは、その点にあるのです。

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