人類滅亡教:パニック研究が難しい理由
アメリカ合衆国で1万2000人が死亡した新型インフルエンザ2009が流行していた時のことだ.「スペイン風邪をも凌ぐ新型インフルエンザで人類は滅亡する.信じる者だけが私の秘密の箱船(クルーズ船とも)で悪疫とは一切無縁のシャングリラへ脱出できる」と謳って浄財を集めていた教祖様のところに,ドラッグストア経営で巨万の富を築き,今や知らぬ者のない大富豪,ドナルド・ハダフナがやってきた.
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教祖:いらっしゃいませ.ご高名はかねがね.
ハダフナ:教祖様,私もお願いしようかと思いまして.あっ,よだれが垂れてますよ。
教祖:こりゃ,どうも,失礼しました。毎度(じゃないけど),ありがとうございます.早速ですが,あのう・・・
ハダフナ:ええ,箱舟の予約に来ました。部屋のクラスは最上をお願いします.
教祖:もちろん,1億ドルの特別室をハダフナ様専用に御用意申し上げております.早速ですが,あのう・・・
ハダフナ:それはありがたい。料理はどうなっていますか?
教祖:和洋中華それぞれ一流のシェフを確保してあります.彼らも新型インフルエンザを恐れて私の御利益を目当てに逃げて参っております。彼らもハダフナ様にお仕え申し上げることを楽しみにしております.早速ですが,あのう・・・
ハダフナ:そこまで御用意いたただいているとは,感銘いたしました。では,契約書を見せてください.
教祖:はっ?
ハダフナ:契約書ですよ。1ドル払うんだってレシートが出るでしょ。ましてやルームチャージだけで1億ドル払うんだから.
教祖:そのようなものは・・・・皆様私を信じてくださって.
ハダフナ:もちろん,あなたの話は信じています.だからこそ契約書が必要なのです.
教祖:おっしゃることがよくわかりませんが・・・・
ハダフナ:だって人類が滅亡するんでしょ.だったら教祖様,あたなもいつ死ぬかわからないでしょ.だから契約書を遺しておかなくちゃ.
教祖:その点については,ご心配には及びません.私は決して死にません.
ハダフナ:えっ,どうして?
教祖:私は現人神だからです。神は死にません。人類が滅亡しても私と信仰篤い者だけが生き残るのです。さらに,神との契約には契約書など不要なのです。必要なのは信心だけです。
ハダフナ:へえーっ,じゃあ,なんでマスクしてるの?神様だから,マスクなんか要らないんじゃないの?さっきもよだれを隠せなかったし。
教祖:これは,その・・・,寄進です!!。信心篤い信者からの!!
ハダフナ:あっ,そっか。神様だから,何でももらえるんだ。マスクもトイレットペーパーも買う必要もないってわけだ。だったら,お金も要らないよね。
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上記で事実なのは,新型インフルエンザ2009でアメリカ合衆国でだけでも1万2000人が死亡したという点だけで,あとは全て虚構である。その1万2000人死亡という数字にしても,決して驚くような数字ではない。米国ではインフルエンザが原因で毎年少なくとも1万2千人以上が死亡する。とりわけ感染が深刻だった17〜18年のシーズンには患者数は4500万人に上り、6万1千人が死亡したのである(米国でインフルエンザ猛威 死者 1万2000人 産経新聞 2020年2月8日)
2020年4月6日現在米国における新型コロナによる死者数は10798名である。ついこの間まで、1万2000人が死んでもびくともしなかった米国はNYとその周辺州では,『医療崩壊』の現実に直面している(TBC NEWS “医療崩壊”NY、集中治療病棟の実態)。なぜこんなことになったのか?
今はおそらく世界中の誰も明確な答えは持っていないだろう。もちろん私も持っていない。ただ、誰でも知っている確かなことがある。第一に、原因は決して一つではなく必ず複数であること。第二に、その複数ある原因の中で主要なものは、(星の王子さまも言っているように)目に見えないこと。第三に、決して特定の個人、集団に帰せられるものではないこと。全てこの3つの原則を全て否定して思考停止を感染させていくのがデマという名のウイルスである。そう考えれば、コロナパニックが引き起こした医療崩壊の機序も見えてくるというものだ。
パニック研究を難しくしているのは、もちろん再生医療よりも研究費取得が困難であるのも理由の一つだが、もっと本質的な問題がある。肝心の研究対象である、パニックそのものとパニックの当事者達が消えてしまうとことである。パニックそのものは消えるのが本質だから、やむを得ない。一方、当事者達はどこかへ逃亡するわけではない。消えるのは当事者達の記憶である。パニックに特徴的な後遺症として、恥や外聞どころか、パニック行動そのものが記憶からきれいに消失する。上はCOVID-19で最低10万人最高24万人のアメリカ人が死ぬと断言したホワイトハウスの住人から、トイレットペーパーやマスクを買い占めた庶民に至るまで、
大統領選挙までには自分の言ったこともやったことも、きれいさっぱり忘れているだろう。記銘力障害には悲劇を喜劇に変換する力がある。
『1941』の興行成績が散々だった理由
クローズアップで見れば悲劇だが、ロングショットで見れば喜劇なのは,個人の人生だけではない。組織・国家においても悲劇と喜劇は表裏一体である。この事実は地球上の全ての国で共通である。ただし,あくまでロングショットである。ロングショットを拒絶する,悲劇と喜劇の表裏一体性を認めたくない構成員が存命しているうちは喜劇として上演できない。最高裁が古畑種基を喜劇王冤罪創作王と認定したのも彼の蓋棺後だったし,スピルバーグが監督した1941が公開されたのも,真珠湾攻撃から40年近くも経ってからだったが,それでも興行成績は散々だった。あのスピルバーグでも、アメリカ人が決して触れられたくない日米開戦時のパニックをネタにしたら、市民が背を向ける。ましてや況んや研究をや。
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