ゼロリスク探求症候群2013
大学同級生から連絡をもらいました。なつかしのキーワードが登場しました。
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池田君
先日のドクターG拝見しました。分かり易くて良かったです。
さて、最近、子宮頚癌ワクチンがたいした副作用でも無いのに、大騒ぎになり、「積極的に勧奨してはいけない」などという馬鹿なお達しを厚生省が出 してきました。この事象に対して貴君はどのような感想をお持ちでしょうか?おそらく、僕と同じような気持ちでいることと思います。これも一種のゼロリスク探求症 候群ではないでしょうか?これを機会にゼロリスク探求症候群の馬鹿馬鹿しさについてもう少し詳しく勉強したいと思います。もちろん、貴君の「食のリスクを問い直す」は読み ました。他にお勧めの書籍、文献、サイトなど有りましたら、教えて下さい。
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○○君
ドクターG見てもらってありがとう。
子宮頚癌ワクチンの件ですが、医療現場のことを知らないお役所のことは放っておきましょう。彼らに関わるのは非常に効率が悪い。だって、彼らに医療現場のことを一々教えている暇なんて誰にもないでしょう。だから彼らに関わるのは暇人に任せておきましょう。
また、世の中で騒ぐことにこだわるのも、効率悪いです。正解が容易に見つからないからこそ、みんな困っているのです。そ こで自分だけがすっきりする答えを見つけようとするなんて、うまい話はありゃしません。あしからず。だから、子宮頚癌ワクチンのことも放っておきましょう。
ただでさえ忙しいのですから、そんな暇つぶしやっている暇はないですよね。厚労省を更正させるだの、ワクチンに対する国民の皆様のリテラシーを向上させる戦略だのという妄想は、「私は対立候補よりもはるかに清く正しく美しい人間 です」と街角でスピーカーで怒鳴り散らすような恥知らずな人間どものおもちゃにさせておくのが上策です。
でも、患者さんが相談してくるって?それは素晴らしいチャンスです。つまり目の前の患者さんに集中するという、君の本務に関わることだからです。
「難しいですねえ。厚労省がふらついているぐらいですから、私のような町医者風情にはどうにもややこしくて、実は私も困っているんですよ。どうしたらいいと思います?」と、正直に患者さんに相談してください。
そこで「なんだ、この医者は、ふざけるな!」とばかりに患者が帰ってしまったら、しめたものです。だって、こちらの立場を包み隠さず正直に説明したのに、その意味も理解せずに、常に「名医の明快なコメント」を期待して思考停止しているような患者は、モンスター化のリスクが高く、危険極まりない疫病神だからです。
一方、「この医者は正直だ。見込みがある。だから一つ助けてやろう」と思ってくれる思いやりのある患者さんは、ワクチンという介入に対する自分の考え、娘の考えを語り、ワクチンについての自分の理解を深めようと対話に乗ってきてくれる でしょう。外来にこういう思いやりのある患者さんの比率が増えていけばいくほど、君の診療上のトラブルやリスクがそれだ け低減して、仕事の効率も上がり、ゴルフに行く時間も編み出せるというものです。
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