82歳のTさんは痴呆で入院中である.症状は安定しているが,諸般の事情で在宅は無理である.だから,老人保健施設への入所の可能性を探っているが,軒並み門前払いに近い状態である.同様な地域で同じ様な条件にある患者がどんどん老健施設で受け入れてもらえるのに,Tさんだけがなぜだめなのか?
Tさんには前立腺癌があるからだ.転移もなく,局所の状態も落ち着いているが,前立腺癌のための薬を飲んでいるからだ.
介護保険の”丸め”(マネジドケアで言うところのcapiationキャピテーション!!)の枠の中で,赤字を出さないためには,合併症のない,”健常な”痴呆患者を選別する(マネジドケアで言うところのサクランボ摘みcherry picking=risk adjustment=risk avoidance=婆抜き.新車はいいが,オンボロ車は保険お断り!!)必要があるからだ.
太平洋対岸の火事だと思っていたら,なんと自分の背中がかちかち山というお話でした.
参考文献
三谷一裕.診療報酬定額制と医療保険に関する考察ー”サクランボ摘み”と”婆抜き”.日本医事新報.No.4108
(2003-1-18) p73