重症心身障害者施設間のネットワーク

2002年9月11日に国立療養所下志津病院で開かれた重症心身障害児(者)データベース(略称SMID)研究会,及び2002年11月27?28日に学士会館で行なわれた厚生労働省班会議に出席,勉強したことを紹介する.

1.国立と公法人立の連携の問題
重症心身障害者(児)の入所(入院)施設の経営母体は大きく分けて国立と公法人立で大きく二分されている.この二つの勢力はとくに対立しているというわけではないのだが,縦割りの慣習で,ほとんど連携がとられてこなかった.SMIDは,利用者の個人情報ばかりでなく,病院の評価につながる病院病棟機能(人員配置やサービス内容)をも含む野心的なデータベースである.ネットワークのセキュリティの問題があるとはいえ,今や施設入院の半分以上を占め,国療の入所者数を超えている公法人立施設と国療の間でデータの共有ができないとSMIDの価値が半減してしまう.

重症心身障害児(者)療育を国の政策医療(超重症児,高齢化,強度行動障害,在宅)として位置付けておきながら,一方で国療の重症心身障害児(者)病棟の民間委譲を進めている.そして,民間へ移った施設は国療のネットワークからはずれて,それまで築いたデータがすべて死蔵化されてしまう.今後も委譲が進む中で,重心の診療とそれに基づくSMIDの運命はどうなるのだろうか.SMIDを今後とも有用なデータベースとして生かすためには,公法人立とのネットワーク化が急務である.

2002年11月27日に行なわれた,班会議(厚生労働省 精神・神経疾患研究委託費 14指?7 重症心身障害児(者)の病院解明と治療法開発に関する研究)で,25年前,IBMカードと磁気テープのコンピュータを使って始まった公法人立でのデータベース構築の歴史を,旭川荘の末光先生と,愛知県コロニーの三田先生がお話してくださった.現在は膨大なデータベースができている.現在はこの公法人立と国公立が連携に向けて動き出している.

2.患者さんばかりでなく,病院・病棟機能に関してもデータベースの構築が必要
病院機能・病棟機能に関しては,公法人立の施設は,全国重症心身障害児施設実態調査 (全国重症心身障害児施設長会議資料,重症児福祉協会編)として,毎年,各施設の施設基準をまとめている.家族を含めたサービス利用者側が最も必要とするこのような情報を,国療施設が提供できないということは大きな問題.SMIDを単なる臨床研究の学術データベースに終わらせないために,病院機能・病棟機能のデータベースを整備することが非常に大切である.

3.データベース構築にあたっての問題
一番の問題はデータ入力,更新が進まないということ.この点に関しては,公法人立の方からは,データ入力が細かすぎるのではないかという指摘があった.
データ入力業務の動機付けの不良:メリットをどう具体的に示すか
院内での端末へのアクセスの悪さ
自分の仕事で手一杯→データ入力業務を本来の職務として認めること
しばしば人事異動がありユーザ登録末梢がスムーズにいかない

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