日本紅斑熱
Mahara F. Japanese Spotted Fever: Report of 31 Cases and Review of the
Literature. Emerging Infectious Diseases 3(2):105-111, 1997.
日本紅斑熱の発見者,馬原文彦先生の総説である.1984年から1995年まで144例が届けられている.同じリケッチア症であるつつが虫病との比較で臨床症状を考えると,この病気を理解しやすいだろう.つつが虫病と比較すると,
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紅斑はほぼ必発である.特に手掌紅斑が特徴的である.つつが虫病では紅斑が手掌に出現することはまずない.
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刺し口はつつが虫病の場合よりも小さい.中心部の黒色壊死も目立たない.
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リンパ節腫脹はつつが虫病よりも頻度が低い.
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4月から10月にかけて発生する;関東以南ではつつが虫病は10月から12月にかけて(ピークは秋の行楽シーズン)発生するので,診断する上で季節は極めて重要と言える.つまりつつが虫病が起こり得ないような時期につつが虫病のような病気を見たら日本紅斑熱を疑わなくてはならないということだ.
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本症はこれまでに,千葉,神奈川,三重,和歌山,兵庫,島根,徳島,高知,宮崎,鹿児島などで確認されている.つつが虫病が全国区の病気であるのに対して,西南日本に多い印象だが,まだ,認識が低い地域もあり,それ以外の地域でも見逃されている可能性がある.
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診断は免疫ペルオキシダーゼ法あるいは免疫蛍光法で行う点はつつが虫病と同じ.
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テトラサイクリン系が第一選択であることもつつが虫病と同じである.
参考文献
IDWR
(Infectious Diseases Weekly Report)の日本紅班熱総説
馬原先生ご自身が自験例34例についてお書きになった総説
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