あなた自身も行き場がないと感じたことは一度ならずあるだろう.それが一時的なものではなく,完全におさらばできない病ゆえとしたら,あなたはどうするだろうか?
やれ社会復帰だの,ノーマライゼーションだの,在宅医療だのといっても,社会的入院にせよ何にせよ,今まで必要があって入院していたのだから,入院ベッドを潰すならそれに代わる受け入れ先を考えなくてはならないが,その受け皿が地域社会から拒否される場合には,入院患者は行き所を失ってしまう.典型的なのが精神障害者だ.この問題は日本に限ったことではない.以下,JPNの記事からの引用.
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【海外】行き場を失う精神疾患患者?フランス精神科医療の現状
2003-09-19 07:22:51
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精神疾患患者の社会復帰を促進することは大事だが、精神疾患への誤解と偏
見が根強くあるなかで地域の住民を説得して社会復帰施設を整備していくこと
は難しい?。フランス精神科医療は大きなジレンマを前に足踏みを続けている
。政府は精神疾患患者の長期入院を解消するとして精神病床の削減を進めてい
るが、それに変わる受け入れ先は用意されず、患者は行き場を失っている。
1960年以降、欧米諸国は、精神障害患者の長期入院是正と社会復帰促進
を旗印に、精神科医療の地域化を勧めていった。フランスは60年に精神科医
療における「医療区域制」を導入。成人用829区、小児・思春期用321区
を設定し、各区域ごとに精神衛生相談所と精神科デイケアセンターを整備して
いった。
フランス保健省は、これを境に精神科病床の削減を強力に推進する。老朽化
した精神科病床は次々と解体され、精神科の長期療養病床は激減した。だが、
こうした病床に入院していた患者の受け入れ先の整備はなかなか進まなかった
。
ストレスを抱える人が増加していることも、精神科医療の供給不足に拍車を
かけた。60年代は家庭・仕事上のストレスからくる神経症やうつ病、90年
代以降は、不安症、適応障害、思春期の拒食症、統合失調症、麻薬中毒症など
が増加。精神科の治療を受けている人はフランス全土で実に400万人に上る
といわれている。
精神科病床がどんどん削減され、在宅で治療を受ける体制も十分でないため
に、患者は病院にも入れない、社会復帰もできない宙ぶらりんの状態になって
いる。医療、そして家族にも見捨てられた患者の一部はホームレスになって町
に溢れる。フランスではホームレスの大半が精神疾患患者だといわれている。
問題はこれだけではない。フランス人の抗うつ剤、精神安定剤の消費量は世
界一。時間と費用のかかる精神科専門療法よりも、投薬中心の治療が主流であ
ることを示している。
精神科医やコメディカルで構成する精神科医療三部会のボコブザ会長は、「
フランスの精神科医療政策は、精神疾患患者を社会不適応者として片付けるか
、薬漬けかのどちらかに導く」と憂えている。
パリ発 奥田七峰子日医総研海外駐在研究員