医者が薬を褒めそやすと
いつもろくなことがない。サリドマイド、スモン、イレッサ、ディオバン、アビガン。いつも製薬会社が悪者にされてきた。だが、肝心の売人達がセールスに励まなければ患者の手元に届くことはなかった。実行犯はいつも医者だった。新コロワクチンだけがなぜ例外たり得ようか。
薬の売り手としての医師
患者さんは、「薬をもらってきた」とは言っても「薬を買ってきた」とは言いません。医師の側にも、通常「薬を売っている」という意識がありませんが、これは、現物支給を原則とする日本の保険制度下では、商品・サービスの購入という構図が見えにくくなっているからであって、医師が市場の末端で「薬の売り手」として機能していることは、だれも否定できません。
しかも、他の小売業と違って、購入者である患者には、自分の意思で薬を選択する余地がほとんどなく、医師が首を縦に振らなければ、薬の種類も購入量も変えられません。他の小売業とは比べものにならないほど、我々医師は商品の販売を強力にコントロールする力を持ち、目の前の患者さんの診療を通して、社会に対して絶大な影響力を日々行使しているのです。
処方箋を書くのは薬剤師でもなければ製薬企業の社員でもありません。ましてや厚生労働省の役人でもありません。アンジオテンシン変換酵素阻害薬(ACE阻害薬)と有効性も安全性も変わらないバルサルタンを、2009年には1400億円、2012年も1000億円を超えるまで売り上げた張本人は、我々医師なのです。医師は薬の売り手であるがゆえに、製薬企業・患者・支払基金といった医療のステークホルダーたちとの間で、常に利益相反問題を抱えています。しかし、バルサルタンや他のアンジオテンシン受容体拮抗薬(ARB)をせっせと処方してきた医師たち、そして今盛んにノバルティスファーマを攻撃している医師たちの一体何割が、薬の売り手としての当事者意識と自らが抱える利益相反問題を自覚しているでしょうか?
(池田正行の「氾濫する思考停止のワナ」 当事者意識で考えるバルサルタン問題~その1~ 日経メディカルオンライン 2013/08/06)
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