"E型肝炎ウイルス,野生動物からヒトへの感染:日本(長崎県)
情報源:毎日新聞。2004年5月13日付け,2004年5月14日掲載)
14ヵ月前に長崎県で丸焼きにした野生イノシシの肉を食べた高齢者11名が,E型肝炎ウイルスに感染していたことが,国立病院機構長崎医療センターの調べで分かった。国内で同一感染源から10人以上がE型肝炎に集団感染したことが確認されたのは今回が初めてである。医師らは感染した11名が生焼けの肉を摂取したか,生肉が触れた箸を使ったことなどが原因ではないかと疑っている。
Emerson SU and Purcell RH. Running Like Water-The Omnipresence of Hepatitis E. NEJM 2004;351;2367-8
5番目の肝炎ウイルスなんて,もう,出番なんかほとんどないだろうとみんな思っていたのだが,そうではなかった.それどころか,表題のように,あちこちにいるありふれた肝炎ウイルスであることがわかった.では,今までどこに隠れていたのか?一番初めに名乗りをあげたA型肝炎ウイルスの影に隠れていた.
水系汚染の媒介,流行性,潜伏期間,比較的良好な予後と,A型とE型は臨床的に非常に区別しにくい.だから,E型がその正体を現すまで,長い間,E型肝炎も,すべてA型の仕業と思われてきた.しかし,熱帯から亜熱帯を中心として,A型肝炎ウイルス抗体価が決して上昇しない謎の流行性肝炎あった.実は十字軍の時代にまでさかのぼれるそうな.
E型肝炎ウイルスが同定され,診断法が普及して,その疫学が明らかになりつつある.流行地は熱帯から亜熱帯だが,最近話題になっているように,日本でも,ブタ,イノシシ,シカといった生焼けの肉が原因と思われる散発的な集団感染が起こっている.日本を含む先進各国では,流行がごく希な割には全年齢平均での抗体価保有率が5%と高いため,不顕性感染があるのではないかと思われている.