私の住んでいる新潟県は東北電力の縄張りです.そして,新潟県には原発があります.しかし,なんとそれは東京電力の原発です.東京電力の原発は首都圏に電力を送るためだけのものであって,新潟県は原発のお世話にはなっていません.東電の一連のへまで原発が止まっても,新潟県はちっとも困らないのです.
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東電のおかげさんで,新潟や福島の原発が動かんくなったもんだすけ,都庁で節電始めたんだってねや?.新潟じゃー,ざい
ご(田舎)に道路を造るのは無駄だってせった石原の奴いっきび(いい気味)だと思ってるわね.原発が安全なら,大手町の
旧都庁跡地に作ればいかったんだわね.
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でも,これは私が標準語で作った文章を新潟訛りに訳したものです.新潟県人は温厚なので,こんな嫌味は,言いたくても言えません.それだから,原発作られちゃうんだけれど.
原発立地では貧乏な田舎が割を食うという事情は,日本固有のものではありません.スコットランドのメーリングリストで,スコットランドに原発が多く,イングランドに少ないとよく言われますが,それは本当でしょうか?UKの四国別の原発数のデータを尋ねたら,すぐ答えが返ってきました.まりこ@富山さんと,スターリングの優さんのおかげです.
まりこさんが教えてくれたデータを,優さんが解説してくれたました.
リストに載っている45基の原発(うち7基は「閉」となっている)のうち、スコットランドにあるのは12基(うち2基閉鎖)、ウェールズは4基(うち2基閉鎖)です。北アイルランドはありません、(海の向こうだから当然か)45基中12基、あるいは閉鎖されていない38基のうち10基.
優さんは,イングランドにある原発の多くはイングランド北部(特に北西部)に集中していることにリストを見て気がつきました.。「北に設置すれば(ロンドンから遠いから)安心」という発想が見え見えというわけです。
45基中12基、あるいは閉鎖されていない38基のうち10基という数が多いかどうか,何を基準にするかにより,多少異なってくるとは思いますが,電力を消費する側の要因である人口(スコットランドは全UKの8.1%)と,outcomeの目安である国内総生産GDP(スコットランドは全UKの8.8%)のどちらを基準にしても,本来の割り当て分の3倍(12/45=26.7%,10/38=26.3%)を引き受けさせられている勘定になります.
スコットランドはUK全体の人口の8.8%しかないのに,財政支出は10.2%だとかいちゃもんをつける人がいますが,その財政支出の正体が,この原発3倍負担なのです.新潟県人ならずとも,”お金なんかいらねえすけ,故障した原発の一つもウエストミンスターに持ってってくんない”,言いたくなると思うのだが,現実はそうではない.新潟県人は,原発そのものの存在には不満を抱いていても,電力の供給先が新潟ではなく東京であることには,ほとんど不満を漏らさない.東京に対して,おまえらば新潟県のおかげで生活できるんだ,それを忘れるなと大声で主張してもいいはずなのに.なにせ,首都圏の電気の約4割が新潟と福島の原発に依存しているのだ(平成13年度東電データ).
私は,そこに,東京への憧れを見る.どんなに雪が降ってもびくともしない上越新幹線,片側二車線で,やはり常に除雪が行き届いた関越自動車道.田中角栄という希代の政治家によって東京からの光が差すようになった新潟県.その光と引き換えにできた原子力発電所.上越新幹線の開通が83年.関越自動車道の開通が85年,柏崎刈羽原子力発電所1号機の運転再開が85年である.そして,これらのお膳立てにすべて関わった田中角栄が脳梗塞で倒れたのが85年.
新潟県人にとっての永田町と,スコットランド人にとってのウェストミンスターとは,意味合いが違う.”永田町”には,揶揄と憧れと侮蔑が入り混じった感情があるが,”ウェストミンスター”の背景には抑えた敵対感情しかない.
新幹線や高速道路の誘致活動の背景には,東京への憧れがある.しかし,スコットランド人にとってのロンドンは日本人にとっての東京ではない.だから,スコットランドでは,ロンドンへ新幹線をなんて誘致活動は金輪際起こらない.まあ,飛行機と無料の高速道路があるのだが,新潟市と東京の間と,グラスゴーとロンドンの間の交通の頻度は前者の方がけた違いに多い.
江戸に幕府が置かれてから400年.この間,東京は常にあらゆる点で圧倒的な力を持って日本を支配してきた.江戸幕府が崩壊した時も,朝廷が1000年以上も住み慣れた京都から東京へ移ったことからもわかるように,東京の影響力は衰えるどころか更に巨大となった.東京が日本の代表である.東京なくして日本はありえない.
しかし,スコットランド人にとってのロンドンは違う.あそこからは金が流れてくる,あそこに行けば仕事がある.だから付き合っているだけだ.金と仕事さえ自分で確保できれば,ロンドンなんかにぺこぺこしたくない.そう思っている.イングランド対スコットランドのフットボールの試合における双方のけんか腰は,日本対韓国戦の両国感情の比ではない.
スコットランド議会がイングランド議会と合併してから300年たつが,この300年と,江戸開幕以来の400年との間には,単なる100年の時間差があるだけではない.片やラグビーやフットボールの試合に見られるような,葛藤と強烈な対抗意識の300年であり,片や強力な中央集権国家形成の400年なのだ.
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