問題は弁当ではなく美意識
無銭飲食と居眠りの場としてのランチョンセミナー

ランチョンセミナーについてのアンケートでは、「参加している」と答えた医師の割合が最も高かったのは20歳代で、92.0%が参加していた。年齢が上がるにつれ「参加していない」と答えた医師の割合が高かったそうな。それはよくわかる。経験を重ねれば重ねるほど、自分と同年代で肩書きが重い連中が如何にイカサマ・ペテン師かがわかるようになるからだ。若さの最大の欠点は、ジジイどもの言うことに、一々反発を感じるだけの経験が欠けていることだ。あの野郎、またでまかせ言いやがってとペテン師の首根っこを押さえるだけの腕っ節に欠けるのである。だからといって、経験を重ねたら、ランチョンセミナーなんて、あほらしくて出なくなるかというと、必ずしもそうではないらしい。

ランチの弁当くらいで処方誘導はされません。(40歳代勤務医、総合診療科)

ばかたれ!だったらなんで「ランチの弁当くらい」てめえで用意できねえんだよ!幼稚園児だって、遠足の時はお弁当を持って行くだろうが、ったく。40を越えたおっさんがこれだからな。

ランチョンセミナーは医薬品に対する学会員のリテラシーを示す重要な指標である。そもそも、大会運営費を製薬企業に負担してもらおうという、学会のたかり根性に問題がある.例によって学会のお偉いさん方は,ランチョンセミナーがないと学会が運営できないとでも言いたいのだろうが,そんな程度のリテラシーの学会だったら止めてしまうがいい.会員にとっての学会の最大の意義は,その学会に所属していることを誇りに思わせるところにある.企業にたからなければ運営していけいないような学会に,存在意義はない.

実はランチョンセミナーを廃止するのは簡単だ。実際に日本精神神経学会にはランチョンセミナーがもと もと無い。これは同学会の活動に患者が積極的に関与している伝統があるためだ。他の学会でも全く同様に、患者から意見を採り入れれば、ランチョン セミナーは確実に廃止できるのだが、そうしないのは、学会幹部ばかりでなく個々の学会員のリテラシーがその程度だということを示している。肝心のお医者様達が喜んで製薬企業のロゴの入ったボールペンをもらっているようでは、いくら学会理事長の首をすげ替えようと、臨床研究規制をICH-GCPにしようと、何も変わら ない。

そもそもランチョンセミナーがなければ運営できないような,たかり根性てんこもり学会には教育を云々する資格はない.ランチョンセミナーに「参加 している」と答えた医師の割合が最も高かったのは20歳代という事実が何よりの証拠だ.いくら個々の医師が研修医に「MRに会うな」と指導しても,成果が現れないのは当然だろう.

私も、弁当くらいで処方は変わらないと思う。しかし、私は弁当は食わない。というより、そもそもランチョンセミナーには出ない。もちろん私は、そんな暇人ではないからだ。1分でも時間が惜しい昼休みは,若い人とworking lunchだ.ここで彼らの仕事ぶり,考えから数々のネタを仕入れる.メールやSNSなどでは決して得られない,私にとって貴重な学習の場である.

一方、「弁当ぐらいで処方は変わらない」と自慢する奴は、持て余した暇な時間を無銭飲食と居眠りに充てる.タダ飯でおなかが一杯になったら,偉い 先生の話を子守歌に会場で高いびきというわけだ。そこには学会に来ているたくさんの若い人から学ぼうというどん欲な学習態度は微塵も見られない. そんな奴が,普段の診療で患者から学べるわけがない.

弁当で処方が変わるかどうかなんて、実はそんなことはどうでもいいことだ。たとえ遅れて入場して弁当を食い損なっても、あこがれの先生のお話 をありがたいと思えれば処方を変えるだろうし、弁当食べてぐっすり眠って偉い先生のお話なんか全然聴いていなければ処方は変わらないかもしれないし,ボー ルペンをのサブリミナル効果(古い!)で変わるかも知れない。だから,どうでもいい.

ボー ルペンのような些細な贈り物でも処方行動が変わるというエビデンスがある一方で、弁 当ごときで自分の処方は変わらないと自負する医師達がいる。しかしどちらが正しいかは実は本質的な問題ではない。真に問題なのは、ランチョンセミナーを開催する企業に運営費を負担してもらわなければ、つまり企業にたからなければ開催できないような学会と、 そんな学会に喜々として参加し、昼休みを無銭飲食と居眠りに充てるような学会員達のリテラシーである。幼稚園の遠足でも昼食は自 分の家庭で用意した弁当を持って行く。自分の昼食さえ用意できないような大人に、自分の処方行動は弁当ごときに影響されないなどと大見得 を切る資格は無い。

真の問題は自分の美しさをどう意識するかだ。無銭飲食と居眠りで暇を潰す人々が集まるランチョンセミナーは,医薬品リテラシー振り込め詐欺の場に 他ならない.職業人たる医師としての誇りを失って,昼飯を企業にたかる惨めな人々が,「バルサルタンは他のARBよりお安いお値段でより素晴らし い効果があります」との陳腐な営業トークが華々しく展開された場所だったことも,医師としての自分の誇りも,きれいさっぱり忘れられるような便利 な記銘力障害をお持ちの先生方 が集う場所だ.

口先だけで「全ては患者様 のために」と言いながら、そういう場に出入りして無銭飲食と居眠りで暇を潰す自分の姿に恥じらいを感じられるかどうか,こんな姿は家族はもちろん,患者にも決して見せら れない.そう思えるかどうか真に大切な問題だ.ランチョンセミナー会場とは、自分 の美意識が試される 場所なのだ。

参考
弁当くらいで処方は変わりません
訪問規制強化で変わる医師とMRの付き合い方

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