基礎医学の研究者をしながら,臨床を志している人とのやりとりの中から.
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基礎医学と臨床医学の相違点は数々あれど、一番本質的なのは、おそらく、自分で制御可能な対象を相手に仕事をするか、自分の力では全く制御不可能な環境の真っ只中で、自分の力では全く制御不可能な対象を相手に仕事をするかだろう。
もちろん、基礎研究場面でも、トップジャーナルのエディターを納得させるという、非常に困難な仕事にも挑まねばならないこともあるが、そこを何とかしようとするところが、仕事の本質である。一方、臨床はそうはいかない。
食事療法も満足にできないぐらいだからインスリン導入なんてとんでもないという、一人暮らしの統合失調症の患者さんが、血糖が400を超えて外来にやってきても、外来に来てくれるだけでもありがたいと思いながら、日夜診療を続けなければならない。科学やら理論やらを全く弁えない現実とどうやって折り合いをつけるかを考える作業の連続に耐えられるかどうか。不条理という名の同居人との生活を楽しめるかどうか。そこが基礎と臨床の分かれ目なのだと思う。
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