誰だって,無駄働きはしたくない.医者の仕事の効率性となれば,本人ばかりでなく,患者の命にも影響してくる.医者が無駄働きした挙句,過労死しては,本
人や家族はもとより,患者だってたまらない.だから,医者が無駄働きしていないかどうか,多くの人が関心のあるところだろう.
医者がやる仕事の中で,基礎医学研究なるものがある.相手は人間様ではなく,培養細胞やネズミである.この種の仕事の効率性はどうだろうか?よく,偉い学 者が,”私は臨床医になるよりも,研究で患者さんに役立つ道を選んだ”と,のたまっているが,ただひたすら多額の研究費を浪費しただけ,治療薬の開発に全 く結びついていない例の何と多いことか.
これが民間ならば,たとえ世界最大の製薬会社の中央研究所で あろうとも,20年間の間に犬の吐気止めしか開発できなければ,閉鎖の憂き目に遭う.しかし,学術機関となれば話は全く別である.研究費の額や一流雑誌へ の掲載論分数さえ確保すれば,その研究が治療薬の開発にどう繋がろうが,知ったことではない.このような例は枚挙に暇がない.
○UCLAのStanley Prusinerはプリオン病の研究でノーベル賞をもらったけれども,いまだにプリオン病の治療法はない.同じノーベル賞でも,ピロリ菌の研究に比べたら雲泥の差である.
○PubMedで調べると,2006年末までに,アルツハイマー病に関連して,400余りの論文がNatureとScienceに載ったが,アルツハイマー病の予防あるいは治療薬はまだない.
○脳梗塞急性期を対象とした神経保護薬をめぐっては、これまで、1000以上の薬剤が動物モデルで検討され、114の薬剤が臨床試験に入ったが、いまだFDAに承認されたものは一つも無い。(Neuroprotection:
the end of an era? Lancet 2006;368:1548)。
これでも,Nature,Scienceに論文を載せることに血道を上げる医者の気が知れない.昭和の御世じゃあるまいし,今時,Nature, Scienceに1−2本書いたって,どうにもなるもんじゃないでしょ.もう,いい加減に店じまいして,あとは仕事がなくて困っているPhDの方々に任せ て,医師免許を持っている人は,すべからく臨床をやりましょうや.